ヴァンパイア伝説を科学で説明
マイケル・アランダ氏:ヴァンパイアの話は何世紀にもわたって語られてきました。よくあるのは顔色の悪い死人が歩き、太陽を恐れ、血を求めるというものです。しかし、そのような神話にもある程度の科学的根拠があるのです。
どの国にもヴァンパイアの話は存在します。中国では悪霊が生を奪い、インドではちゃんと火葬されなかった人が悪魔になったという話になっています。こういった言い伝えは病気の広がり方に対する深い誤解によるものとされています。疫病の流行時には人々は恐れ、ランダムで起こる病気に対する説明が必要でした。
しかしポップカルチャーにおけるヴァンパイア神話は特定の症状があり、医療状態によって説明できると科学者は考えています。関連が考えられる最初の病気はポルフィリン症。血液中のポルフィリンが多すぎるために引き起こされます。
血液中にはヘモグロビンと呼ばれるタンパク質があります。これが酸素と二酸化炭素を移動させます。ヘモグロビンの真ん中には炭素、窒素、水素でできたポルフィリンリングがあります。酵素がポルフィリンをヘム基に変換します。しかしポルフィリン症患者にはこの酵素を十分に持っておらず、ポルフィリンが増えて問題が起こります。
それによって太陽光に敏感になり、炎症や水ぶくれが発生します。しかし、それは外出時に限ります。ポルフィリンの多寡により歯や口が赤や茶色になります。血を飲んでいるかのようにも見えなくもありませんね。
今では治療可能ですが、昔は理解されなかったためにさまざまなストーリーが生まれました。ポルフィリン症は遺伝性ですので、ヴァンパイアが家族を感染させたということにもなります。
死者が歩くとされるのも病気のせい?
これに似た起源としてペラグラが挙げられます。ある2つの栄養素の摂取不足によって起こります。ビタミンB3と呼ばれるナイアシンと、トリプトファンと呼ばれるアミノ酸です。
普通、食べ物をエネルギーに変えるためにナイアシンが使われます。不足しているとトリプトファンからナイアシンが生み出されます。しかしどちらもない場合には不具合が生じます。
300年前、多くのヨーロッパで小麦の代わりにトウモロコシが主食になりました。安くてよく育ちましたが、栄養はあまりありませんでした。メキシコではヨーロッパに来る前から栽培されていました。穀粒はライムと混ぜた水で処理されていました。それがビタミンの開放となったわけですが、ヨーロッパではそう処理されませんでした。
さらに残念なことに、トウモロコシにはトリプトファンがなかったので、体内でナイアシンになることもできませんでした。どんなにトウモロコシを食べてもビタミンを摂取できなかったため、ペラグラがいたるところで発生しました。
ペラグラの症状はポルフィリン症にも似ています。太陽光に敏感で外出すると炎症が起こります。時に炎症は悪化し、手がただれ血色が悪く紙のようになります。口も赤くなり舌が腫れます。舌に歯の跡が残ったので、ヴァンパイアは大きな犬歯があるという説が生まれました。脳の神経も悪化し、精神病や不眠症も引き起こします。太陽光アレルギーに加えると、なぜヴァンパイアは寝ないのかという説明にもなります。
ペレグラやポルフィリン症はともかく、死者が歩くとはどういうことでしょうか。これは全く違う原因がありそうです。強硬症と考える人もいます。強硬症は、てんかんのように神経中枢のシグナルに影響します。しかし痙攣とは違い、完全に体が硬直し、すべてが止まったかのような状態になります。動けなくなって心拍数が下がり、あたかも死んだような状態になります。
昔の医者には人が実際に死んでいるかどうかを調べる機械などもなかったので、強硬症患者は死んだと思われることがありました。死人をどうするのか。埋めたのです。
埋められた人が出てきたら、ヴァンパイアかと思ってしまいますよね。まるで悪夢です。
これら3つの症状は現在も実在しますが、幸運なことに治療可能で予防も可能です。結局のところ、恐れるものではないということです。