2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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藤崎実氏(以下、藤崎):もう1つ、年末がありますよね。
櫻井泰斗氏(以下、櫻井):年末のデータを引っ張ってくると、いろんなことが見えてきます。
まず、高校生が「こわい」「やばい」という言葉をツイートしています。これは受験ですね。一方、大学生や主婦は、「忙しい」という単語でした。大学生はバイトが忙しい、主婦は大掃除や家事が忙しい。30代男女は働き盛りです。私もここに属する世代ですが、「めんどい」が出ます。
藤崎:「めんどい」は、すごいですね(笑)。
櫻井:「仕事が忙しい」じゃなくて、「仕事がめんどくさい」かと思うのですが。期末ですので、いろいろ締めなどがあり「めんどい」というツイートがありました。
藤崎:「こわい」「やばい」のツイートが高校生で増えるのは、受験にまつわるので切実なんですね。試験が迫っていたり、そういうことですね。
櫻井:受験生向けになにか応援メッセージを出したいときには、こういうツイートの波がわかっていると、どのタイミングがベストかもわかると思います。
藤崎:「こわい」「やばい」は、ピックアップした言葉なんですか。
櫻井:そうですね。たくさんの形容詞を属性別に見ているんですけれど。
藤崎:「こわい」「やばい」は本当の生の、彼らが出している単語ということなんですね。
櫻井:そうですね。
藤崎:その年末の形容詞が、お正月にはどうなるんでしょうか?
櫻井:高校生だと「こわい」「やばい」の話をしているんですが、「悲しい」の単語が、正月は減少に転じることがありました。代わりに上がってくるのが、高校生、大学生、20代女性で「あつい」なんですね。よく見ていくと、この「あつい」は、スポーツの文脈で語られていることがわかっています。
藤崎:スポーツ……箱根駅伝とか、そういうことですか。
櫻井:最近はラグビーも人気ですし、高校サッカーもありますよね。応援する気持ちがあるので、高校生も正月はスポーツを見て……。
藤崎:「こわい」「やばい」がいったん休止するわけですね(笑)。
櫻井:休止して、家族と楽しい時間を過ごしているのかなと思われますね。これを踏まえて、どのようにマーケティングを組み立てていくかは、けっこうヒントになります。
藤崎:「悲しい」が下がっているのは、日本で一番幸せな時期ということですかね。
櫻井:お正月が悲しいと思っている人はあまりいない。この結果を見て、思うんですよね。
藤崎:たしかに、あまりいないですよね(笑)。おもしろいですね。次、いきましょうか。
櫻井:「悲しい」を軸にキャンペーンを組むなら、クリスマスと年末がベストですね。
藤崎:「悲しい人キャンペーン」をやるなら、年末とクリスマス(笑)。
櫻井:そこはあらかじめ、「悲しい」の単語が出るとわかっているので。今日のテーマでも、ある未来予想をして、それに対して、どういったキャンペーンを当てていくか。感情の波を理解してキャンペーンを組み立てる、新しい方法だと思います。
藤崎:これはすごく使えますね。後追いで調査結果を出すのではなくて、未来予測のデータとしてTwitterが使えるというお話ですね。
次は、成人式です。
櫻井:成人式は、20代女性の間で「なつかしい」という言葉が増えたりします。成人式以降には「こわい」がたまに上がります。これはなにかを見ていったところ、「雪」の関連語が多く出てきました。よくよく見ていくと、「雪が降って運転が怖い」が、主婦や30代女性で増えていました。
藤崎:男女で運転が上手い下手などではなく、例えば「雪の日はチェーンをどうしよう」も含めて、女性にとっては運転が怖いということなんですか?
櫻井:そうですね。雪の日にチェーンやタイヤ交換の宣伝を打つときは、ターゲットを女性にするといいかもしれないですね。
藤崎:なるほど、そういうことですね。チェーンやスタッドレスタイヤなどのCMには、よく男性の有名タレントが出てきて、カッコよくメッセージしています。
でも、主婦を代表するような女性タレントが出てくるなど、女性目線でメッセージしたほうが、主婦や30代女性には刺さるかも知れませんね。あるいは、男性タレントでも「奥さんっ! このタイヤを使えば大丈夫です」と言うと、「なるほどね」と思うかもしれない。
櫻井:そうなんですよね。実際に使っている方と、購入決定をする方が違うケースもあると思うんです。ツイートを見ていくと、どういうベネフィットを感じているのか、あるいは、どういう不安を感じているのかが見えてくる。そのインサイトを、キャンペーンのクリエイティブに落とし込むのも、1つあると思います。
藤崎:この「なつかしい」「こわい」は、本当に生のつぶやきから抜いてきているということですが、ソーシャルメディアユーザーは素直なので、その単語を使ったキャンペーンを打つと、反応してくれたり、リツイートしてくれたりすると思います。
では、次のスライドに行きます。本日のまとめですね。
櫻井:今日はいろいろと例を紹介しました。本日いらしているお客様にどういう業界が多いのかわからないので、ぜんぜん合っていない人もいるかもしれません。ですが、今日お伝えたかったことは、この3つです。
1つ目は、クチコミ分析。これは難しく言うと、User Generated Contentsからマーケティングにも有用な情報を見つけるプロセスです。昔のアンケートなどのオンライン調査やグループインタビューといったマーケティングリサーチ、あるいはお客様相談窓口に直接来るような声とは違った特徴を持つところです。
なにが違うかと言いますと、Twitterのようなソーシャルメディアは、ブログや掲示板と違って、件名がありません。件名があるようなUser Generated Contentsのエゴサーチが主流だったものに対して、もう少し異なった角度から消費者心理を覗き込むことができるようになった。これが、Twitterを初めとしたソーシャルメディアの特徴です。
では、そのソーシャルメディアのUser Generated Contentsをどのように分析すればいいのか。まさに2つ目は、今までのエゴサーチや炎上チェックではなくて、攻めることなんだと思います。
日々ツイートされているような言葉を、先ほどのラーメンのタイミングや、眠いというタイミング、学生はどういう形容詞をどこでツイートするのか、グループの軸などを見てみる。あとは感情ですね、「お腹すいた」「眠い」、そういったものに注目すると、なにかしらのマーケティングのチャンスが見えてくると思います。
藤崎:ありがとうございます。いろいろなことが、人々のツイートというかたちで可視化されて、それをデータ化して、次のマーケティングに活かすことができる。これが櫻井さんの主張であり、Twitterでできることです。
リアルタイムコミュニケーションツールは、Twitterの最大の強みです。ぜひ、今後のみなさまのマーケティングや広告活動に活かしていただきたいですね。いつどこのタイミングで出すことも可能ですので、活用する価値が十分にあると思います。
時間、若干過ぎそうですけれど、質問の時間がありますので、いくつか受けたいと思います。
質問者1:素晴らしいお話をありがとうございます。
私も仕事でクチコミを扱うことが多いのですが、ブランドのエゴサーチであれば「クライアントの商品名を検索する」で第一アクションは起こしやすいです。しかし、ブランド名をとくにつけないような、感情みたいなものの特徴を探すのは取っ掛かりが難しいと思っています。なにかを探すことに仮説を立てなければいけないと思っています。その際、どのようにされているのでしょうか。
櫻井:いくつかパターンがあります。例えば、お客様が代理店の立場だとして、ハロウィンに対してなにか仕掛けようと思っているとき、「ハロウィン」は1つの軸になると思います。あるいは、ブランドが化粧品で、女性のメイクを盛るタイプだとすると、「メイク」「盛る」といった、ブランドが提供するベネフィットを軸にして分析する方法もあります。
あとは使用シーンですね。清涼飲料水で水分補給をベネフィットとして推したいときには、「部活」とかですね。それを使用されるシーンを軸に、分析することがあります。今言ったイベントだったり、その製品が持つベネフィットだったり、その製品が使われるオケージョンだったり。そういうところから手を広げていくのが、初めの取っ掛かりと思います。
質問者1:わかりました、ありがとうございます。
藤崎:他に、なにかありませんか? せっかくの機会なので。どうぞ。
質問者2:お話をありがとうございます。日頃Twitterを見ていて、課題に思っているのが、リアルで感じている部分と書き込んでいる部分にズレているものもあることです。そのズレをどう考えればいいのかは、データを見るときの課題だと思うんです。それをどう考えていますか。
櫻井:例えば、実生活でやっていることに妄想が入ってきたりとか……。
質問者2:そういう部分もあります。あまり例えが良くないかもしれませんけど、芸能人が不倫したとすると、バッシングがすごく起こるわけです。そこの論調の違いに、SNSの独特の部分がある気がしているんです。必ずしもリアルな世界を反映している部分もあれば、そうでない部分もあるので。そうでない部分をどう認識して、どうマーケティングに活用していくのでしょうか。
櫻井:政治的なトピックスなどは、ソーシャルメディアを分析したときに、定量的な見方をすると、間違うこともあると思います。そのため、初めは意見を定性的に捉えたほうがいいと思うんですよね。
例えば、不倫賛成と不倫反対でツイート検索したら、反対のほうが絶対にツイート数が多い。でも、もしかしたら一定数、不倫賛成の人がいるかもしれない。なぜかというと、不倫賛成と心で思っていても、ソーシャルメディアに投稿しづらい話題だからです。私が不倫賛成をこの場で啓蒙しているつもりはないんですけれど、そういうことだと思うんですね。
ただ、不倫賛成と主張する人は、具体的にどういうことを言っているのか、少数意見を見てみる。それは、不倫賛成の根拠を理解する意味では役に立つと思うんですよ。あまり定量的に見るのではなくて、あくまで定性的にですが。気をつけなきゃいけないトピックスは、そのあたりを考えるのがいいと思います。
藤崎:ありがとうございます。
時間も押してきましたけれども、もう1名だけ。せっかくの機会なので、どうぞ。
質問者3:Twitterの分析だからこそわかったことなど、今までありましたか。そういうところがないと、このあたりのコンサルの人が、「正月は栗きんとん食べますよ」と考えるんじゃないかなと思うんです。どうでしょうか?
櫻井:本日は大きなところしかお見せできていないんですけれど、関連語をすごく下まで遡っていくと、けっこう詳細な意見があったりするんですね。それが、これから来るトレンドだと思います。
例えば、ハロウィンを分析したときに、「仮装」「渋谷」が出てくるんですが。下のほうに、「告白」があったんですよ。おそらく、自分で考えていても気付かない。「ハロウィン」「告白」で調べてみると、「ハロウィンの勢いに混じって告白しちゃえ」みたいなツイートがあったりしたんです。
これは、1つのおもしろい発見だと思います。時間が許すのであれば、そういう些細なところも見ていきながら、今はメインストリームではないかもしれないけど、これから出てきそうな種を見つけることもあると思います。それは1つの事例で、今日はあまり、そういった「へーっ」というのがなかったかもしれないですが。時間と労力をかければ、そういうところも発見できると思っています。
藤崎:160万ツイートくらいになると、定量的になってしまうのですが。実はおもしろいことや新しい芽は、ググググっと入って、1つひとつの定性的なものがちゃんとわかるようになる。そこがポイントなんですかね。
櫻井:そうですね。ツールがなくても、ツイート検索で期間を絞って検索してみたりできるので。
日本酒について1月1日はどう語られているのか、クリスマスに日本酒を飲んでいる人はどういう心理なのかを比べるだけでも、ずいぶんヒントが出てくると思うんですよね。ツールを使う・使わないに限らず、日々の、本能に近いようなTwitterの声を見ていくのは、参考になると思います。
藤崎:よろしいでしょうか。他になにか質問がなければ、これで終わりにしたいと思います。
Twitterは私たちの生活のインフラとして、あるいはマーケティングのツールとして、今後もいろいろ活用されていくと思います。櫻井さん、今日は貴重なお話ありがとうございました。最後に拍手をお願い致します。
(会場拍手)
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