2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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藤崎実氏(以下、藤崎):こんにちは。WOMJ理事の藤崎実と申します。まずは簡単に自己紹介させていただきます。私はWOMJ設立時からのメンバーで、現在「事例共有委員会」という勉強会を2ヶ月に1度のペースで運営しております。
WOMJは、クチコミの健全な発展を目指しており、今まで1年に1度、「WOMマーケティングサミット」というイベントを開催していましたが、今年からリニューアルして「クチコミフェスタ」になりました。
ではさっそく、このセッションの要点を最初にお話しさせていただきます。
タイトルの解説になってしまいますが、データや調査結果は、過去を振り返って「こうだったんだ」と分析するものです。今日はそれとは少し違って、Twitterのツイートのデータからどんな未来が見えてくるのか。つまり、過去ではなく未来を探る1つの指針としてTwitterのデータを活かそうというご提案です。
では、自己紹介をしていただこうと思います。櫻井さん、よろしくお願いいたします。
櫻井泰斗氏(以下、櫻井):櫻井と申します。本日はたくさんの方々に来ていただいて、とても緊張して身が引き締まる思いです。がんばってやっていきたいと思います。
私はTwitter Japanで働いています。マーケットインサイトアンドアナリティクスという部署に勤めています。なにをやっているのかというと、ツイートデータを解析したり、ユーザーインタビューをしたり、そういった調査を実施しています。みなさんのマーケティングのヒントとなるようなインサイトを発掘し、ヒントにして、広告主さまや代理店さまに提言する。そんな仕事をしております。
以前は広告代理店に働いていたり、マーケティングリサーチ業界で働いていたりしました。キャンペーンをプランニングしたり、その効果を測定したりするには、どんなデータが必要かなど、そのあたりはくわしいと自負しております。
藤崎:ありがとうございます。
では、今日の最初のトピックスです。ここに「ご飯に関するアンケート」があります。こちらに関しては櫻井さん、お願いいたします。
櫻井:Twitterの人の話を聞きに来たのに、なんでこんなにもアナログなアンケートをするんだろうと思われるかもしれないですけど、ちょっとだけ付き合ってください。みなさん、ランチはもう食べましたかね。ランチを食べていない人はいますか? ……1割くらいいますね。
ランチでカレーを食べた人、手を挙げていただけますか? 「今日、カレーを食べたよ」という人、「ラーメンを食べたよ」という人、「ラーメンに餃子を付けたよ」という人はいますか? だいたい3人、3人、0人という感じですね。
マーケティングリサーチはこういったやり方をしています。「ランチでなにを食べましたか」と聞き、「覚えている人、教えてください」で回答してもらう。これを、ツイートデータを使ってやるとどうなるのか。
次は、こんな波があります。これがラーメンです。これが餃子です。同じようなランチの献立ですけれども、ちょっと波形が違うんですね。
例えばカレーだと、これは毎時あたりのツイート数ですが、日によっては、夜のピークでどーんといきます。ラーメンは、昼間にちょこっとスパイクが見えますが、夜間には敵わない。餃子はもっと顕著で、昼間にちょこっと山ができて、夜に山ができる感じですね。
ここでみなさんに考えていただきたいのですが、このデータを見て、もしもご自身の実家の家業がラーメン屋だったら、中華料理屋だったら、どういうヒントが得られると思いますか。この波形を見たら、実際にどんなことがツイートされているのか、気になるのではないかと思います。
藤崎:これは、スパイクをもっと上げるのか、谷のところをもっと持ち上げるのかなど、いろんな捉え方ができるということですよね。
櫻井:そうですね。これが今の需要だと思います。自分のお店では、どのようにこの需要を捉えているのか、どう使うのかを考えるのもよいかと思います。「昼間に餃子のスパイクがないから、食べさせるためには他の店と同じようなものを出していたんじゃだめだ」と考えるきっかけにもなると思います。
藤崎:昔、広告の文脈で「金曜日はワインの日」がありましたけど、そういうものもツイートデータを見て、どこがスパイクしているのかを確認することで、「じゃあ木曜日に設定しよう」となる。なにか新しいヒントが見つかるかもしれないし、そういった素材になりえます。
櫻井:そうですね。今日みなさまがこのセッションを聞いた後、会社に持って帰っていただくものがあるとしたら、「あの人はカレー」「あの人はラーメン」「あの人は餃子」の話を、ランチのあとにツイートデータを見せて語っていた人がいたな、と覚えていただければよいです。これが本日の一番大事な要旨ですね。
藤崎:次に、クチコミとはなんぞやを、櫻井さんに教えていただこうと思います。いわゆるUGC(User Generated Contents)ですよね。そのあたりの見解を教えてください。
櫻井:簡単に固めのレクチャーからすると、今回、クチコミフェスタということでみなさんに集まっていただいているのですが。いわゆる「インターネット上のクチコミ」が、私が分析している対象になります。
クチコミとは、固い考え方をすると、インターネットの一般的なユーザーが、自分たちで作ったコンテンツ=UGCです。横文字なので、覚えて帰るとちょっとドヤ顔ができます。なので、「UGC」だけでも持って帰ってもらえればと思います。
UGCは、インターネットの歴史を見ていくと、こんな変化をしていました。私もこの登壇の前に、Yahoo!さんが作ったインターネットの絵巻物みたいなものを見て、2ちゃんねるやはてなブログなどはそうだったなと思っていました。
初めのころ、掲示板やフォーラムがありました。先ほどは2ちゃんねるがありましたけれど、アットコスメや楽天、goo、Yahoo!ブログが出てくる。そして最近、ソーシャルメディアが出てきた。
掲示板/フォーラムとブログ、これとソーシャルメディアはなにが違うのか。この2つには、必ず件名があるのです。2ちゃんねるなど、昔は私もよく見ていましたが、「なんとかについて語るスレ」「なんとかがなんとかな件について」といった「なんとかな件」、そういった特定のテーマに関する情報のUGCでした。
ブログも同じですよね。「今日のクチコミフェスタの櫻井の話のつまらなさについて」といったタイトルがあって、私が炎上とかしているわけです。……私、いつも余計なことを言うんですけど、サラッと流していただいてけっこうです。
(会場笑)
UGCを分析する目的の1つとして、まず「炎上監視」がありました。これは、エゴサーチによるブランドのクチコミ分析でした。いろんなデータ解析ベンダーなどが、掲示板の書き込み分析、ブログの内容を分析するといったツールを開発しておりました。
藤崎:書き手が、きちんとしたテーマや主題を立てて「今日、Twitterのセッションを聞いた櫻井さんのなになにについて」と、自分のコンテンツとして意識して書く文化が、先にあったということですね。
櫻井:そうなんです。この掲示板/フォーラム、ブログからソーシャルメディアに進んでいくとなにが変わるのか。そこにはタイトルがないんです。
Twitterなどの、いわゆるSNSでなにか投稿しようと思うと、いきなり初めに「140文字以内でなにか書いてくださいと」「今なにしていますか」「今どんな気持ちですか」という問いかけがあり、「その瞬間の感情や思考を投稿してください」と促されます。これはブログや掲示板/フォーラムにはなかったフォーマットだと思います。
こういった瞬間の感情や思考が投稿されると、今までのエゴサーチだけではなくて、本当にさまざまなテーマ分析が可能になります。
藤崎:例えば、Twitterはタイトルがいらないから「お腹が減っちゃった」など、ふつうに考えたらタイトルがつかないような、ちょっとしたつぶやきでも気軽にツイートできる。そうした、人の気持ちに近い気軽なつぶやきがたくさん集まっているということですね。
櫻井:そうですね。「お腹すいた」も1つのデータですし、「彼に振られちゃった」「ラーメン食べた」「餃子食べた」もデータです。その集合体が、先ほどの波形になったりしているわけです。
藤崎:実体験で言うと、去年『スターウォーズ/フォースの覚醒』の公開時、初日のTwitterを見ると「最高だった」「ラストシーンは秘密です」が、山のように投稿されていました。あれはきっと、みんな映画館を出たときに思わずつぶやいたり、誰かに言いたいけど、言うとネタバレになるので、ツイートしていたんだと思います。
そういうちょっとした感想は、PCの前でタイトルをつけてブログで書くものではなく、もっと瞬間的なものです。つまりTwitterは、ユーザーの感覚と直結していて、その感情をリアルタイムで反映するものなのだと思いました。感覚的なツイートが可視化されて、第三者にもわかるのがおもしろいですよね。
櫻井:昔なら『スターウォーズ』のクチコミを調べようと思ったとき、映画のレビューサイトがまずありました。その次に、映画についてレビューしている、いわゆる映画インフルエンサーのブログが手段として出てきたと思うんです。
そこにソーシャルメディアが登場したことで、発言の垣根が非常に低くなった。私みたいな、にわかのスターウォーズファンが「今日のスターウォーズ最高」「5回は見るわ」な感じで、本当に気軽な気持ちでツイートをしているわけです。これがクチコミの現状だと思います。
藤崎:つまり、テーマを持って書くのではなく、ユーザーのリアルな気持ちが反映しているつぶやきだからこそ、そこから、なにか見えてくるんじゃないかということですよね。
櫻井:そうです。昔の掲示板/フォーラム、ブログは、投稿しようと思ったときから投稿したところまで、ある程度の時間と労力が必要でした。そういうプラットフォームでは、少し理屈っぽくなれたり、考えるリードタイムがあったりしましたよね。
ただ、Twitterのような、その瞬間瞬間、そのときの想いを投稿するプラットフォームだと、考える時間が短い。より人間の本心に近いものがデータとして投稿されるようになった。それは1つ、大きな変化だと思います。
藤崎:人の感覚に直結する結果が出るわけですね。それは分析する価値がありますね。
では、次のテーマに行きます。Twitterの特徴を教えていただけますか。
櫻井:Twitterは、おかげさまで日本の月間利用者数が4,000万人に到達しました。もちろん1人で2つアカウントを持っている方もいるので、ユニークではないんですが、のべ4,000万のアカウントが、月間でアクティブに使われている状況です。
歴史を振り返えると、このサービスができたのは2006年です。まだiPhoneが日本で発売されていないタイミングだったと思います。その後、2007年に日本語に対応しました。そのあと、2011年に日本オフィスが設立され、以後、継続的に利用者が増え続け、去年、3,500万人という月間利用者数を発表しました。
ただ、利用者が若い層が多いというイメージが大きかったです。そのため、我々としては、当時使っていなかった社会人の方にも「情報収集ができる場所ですよ」「ニュースを見つけるためにTwitterに行きましょう」と伝えていきました。
昨日のヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの選挙速報も、本当にTwitterを見ると、刻々と状況が変わっていて「フロリダ、どうしたんだ?」とざわつき始め、最終的には「フロリダでトランプ勝利!」と、リアルタイムに情報源として使われるようになりました。そういったみなさまの認知もあり、今では多くの社会人の方々にも使っていただけるようになりました。
藤崎:しばらく前までは公表していなかった数字ですよね。
櫻井:おかげさまで、日本ではTwitterが非常にみなさまに愛されています。そういった背景もあり、今回4,000万人という数字を発表しました。
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