トライセクター・リーダーとは何か?

金野索一氏(以下、金野):みなさんこんばんは。今日は4回目なんですけれども、日経ビジネス・カンパネラ『トライセクター・リーダーの時代』という連載をやっておりまして、今、日本で3つのセクターを超えて活躍されているトライセクター・リーダーの方と対談をして、日経の方に連載をさせていただいています。

その一環で、2人だけで対談するのはもったいないということで、みなさんに公開して、その中身をシェアして日本の社会にトライセクター・リーダーが増えるよう、そういうムーブメントを起こしていこうということで、この企画をやらせていただいています。

今日はみなさんご存知だと思うんですけれども、リクルートで数々の新規事業を立ち上げ、ご活躍をされ、そのあと杉並区の和田中の校長先生をやられて、「よのなか科」という科目を作ったり、SAPIXと組んだり、まさにパブリックセクター。

公立の中学の校長先生をやられ、その後も文科省や大阪府とコラボしたりして、まさにトライセクターのお仕事をされている。

4月からは奈良の公立高校の校長先生をやられるということで、ご活躍中の藤原和博さんをお招きしました。みなさん拍手でお願いします。

(会場拍手)

最初に「藤原さんの話は聞きたいけど、トライセクター・リーダーってなんですか?」という人がいると思うので簡単に説明をしたいと思います。

世の中には3つのセクターがあって、ビジネス、企業のセクター。公務員とか政治家の人のパブリックセクター、税金でやってる組織。それ以外にNPO、非営利セクター。協会とか病院とか学校も一部そういうところに入りますけれども。

そういう3つのセクターがあって、そのどれにでも通用するリーダー、リーダーシップのことをトライセクター・リーダーと言います。

もとはビジネスマンだったけども政治家になりましたとか、あるいはずっとビジネスマンでも、他のセクターのノウハウとか人脈とか視点を取り入れてビジネスとか経営をやってますとか、そういう人のことを言うんですけども。

なぜ今、トライセクター・リーダーが必要なのか?

「なぜ今、トライセクター・リーダーなの?」という話なんですが、理由ははっきりしていまして、少子高齢化という誰も逃れられない世の中の流れがあります。少子高齢化って、中国だろうがアメリカだろうが日本だろうが、民主党だろうが自民党だろうが、どんな政策をとっても、みんなだいたい、社会が発展してくると少子高齢化になってますよね。

そうすると、このパブリックセクターです。国とか自治体の税収が下がるということで、要は働き手が少なくなり、シニアの人が多くなる。そうすると税金で支えなきゃいけない人が増えるということは、パブリックセクターのところの収入、税収が減って、出が同じだったら必ず赤字になるわけですよ。

要は、なんでもかんでも「お上とか、役所とか、国がやってくれるんじゃないの?」という社会はもう終わりつつある。こうやってシニアが多い社会になった時に、なんでもかんでも税金で、政治議員の人に任せるということができない社会になってきた。

ということは、企業とか、NPOとか、自治体・国だけじゃない組織もいろいろ社会的なことを担っていかないと世の中が成り立たないという時代になってきたので、こういうセクターを超えていろいろ仕事ができる人が必要になってきた。

そんなこと言われなくても、それを何十年も前から実行している人が日本にもいて。すごいわかりやすいので簡単に紹介しますけれども、江副浩正さんという方。藤原先生のいた会社、リクルートを作った人です。

転職とか失業のサポートは、何十年も前は今のハローワークである公共職業安定所、職安と呼ばれるところが職業を斡旋していたり、失業者をサポートしていたりしたわけです。税金でやってるサービスなので、あんまりサービスもよくないし、失業者は暗いイメージで、後ろ向きな感じだったわけです。

けれども、江副さんみたいな人が出てきて『とらばーゆ』『B-ing』のような、仕事・ジョブの情報を紹介して、世の中に繋いでいくということが生まれた。雇いたい側と働きたい人をつないでいく、それを民間のビジネスにした。

そういう意味で、まさにセクターを超えて、今までのビジネスの領域のことだけでビジネスをやってたわけじゃなくて、このセクター全体で考えることで、まったく新しいビジネスを作り出していったんですよね。

クロネコヤマトを作った小倉(昌男)さんも、昔は配達は全部郵便局だったところに民間のビジネスを打ち出した。あるいは石川治江さん、この人は「ケアセンターやわらぎ」というNPOを東京都の小金井市でやっていた方ですけど。

まさに老人介護というテーマで、日本で初めて「ケアマネージャー」という、1人のシニアの方の健康状態とか、生活の状況とかいろいろなことを考えて総合的にケアプランを作るという仕組みを作った。

それが2000年の介護保険を導入するときに、国の仕組みとして、いちNPOが作り上げたケアマネージャーシステムを国家のシステムとして導入したんです。

この話で言うと、シニアの介護という問題ですが、税金のセクターもNPOのセクターもビジネスもありますけど、セクターを超えて社会の問題に取り組んでいくことが、今や普通になってきているわけです。

トライセクターという考え方は聞いたことないなと思われますけど、でも実はもう今日本の社会はそういう社会に突入していて、セクターを超えて、いろんな組織や個人が力を合わせて、社会の課題に取り組んでいる。

しかしこういう考え方がない、こういう時代の進展がまだないうちからこういう発想で仕事をしてきた人がたくさんいて、それで銀座にビルがひとつ立つぐらいのビッグビジネスが作られているんです。

そういう意味では、藤原さんがちょうどタイミングよく本も出されて、「三角形クレジット理論」という、トライセクター・リーダーになるための、まさにぴったりなノウハウ・考え方を去年の12月に書かれているんです。

この話も含めて、今やこの発想で3つのセクターを超えてかなえられる社会のニーズは何か、ということでやっていくと、キャリアディベロップメントにつながる、そういう時代になっているということを理解いただいて、今日のお話を始めさせていただければと思います。

ということで、続いて藤原さんの今までやってきた現在までのお話をお願いします。

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