2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
Life Inside a Dead Whale(全1記事)
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マイケル・アランダ氏:もしクジラが1頭、海に落ちて、人間がまわりにいなかったら、複雑でユニークな生態系が形成されるでしょうか(訳注:「鯨骨生物群集」の原語は”whale fall”)。実は、そのとおりなのです。
クジラが海で死に、その死骸が海中深く、少なくとも1000メートルは沈むと、そこには「鯨骨生物群集」が形成されます。
深く冷たく、暗い水中には、エサは豊富にはありません。ですから、鯨の死骸が出現すると、その豊富な栄養分が、海底の生態系を大きく変えてしまうのです。
史上初めて観測された、自然発生の「鯨骨生物群集」は、1987年に科学者チームが偶然発見したもので、「深海探査艇」と呼ばれる深海の探査目的で作られた潜水艦での探索中のことでした。
科学者チームが鯨骨の中で発見したバクテリアは、熱水噴出孔などの場所で見つかるものによく似ていました。新種の二枚貝も見つかりました。
そこで、海洋生物学者たちが研究のために「鯨骨生物群集」を探し始めました。その結果、こういったバクテリアや二枚貝は、非常に特異な生態系の一部であることがわかったのです。
第1ステージは、鯨が死んですぐ、海底に達した時点で始まります。
最初に現れる清掃動物は、オンデンザメやヌタウナギ、そして端脚類と呼ばれる、エビに似た小さな甲殻類の一種で、死骸から肉をはぎ取って、骨だけにしてしまいます。
これらの生き物は、総合して1日に40から50キログラムもの組織を食することができます。
しかしこれらの生物がこれほどの割合で食べ進んでも、鯨ほどのサイズのものを消費するのには数年かかります。
これらの生物が肉をほぼ剥ぎ取ると、第2ステージが始まります。無脊椎動物の群れが登場します。甲殻類や軟体動物、多毛類などです。多毛類は、海水温が極端に低い場所のような、極限の環境でも生存が可能な環形動物で、残り物であれば何でも食べます。鯨の組織の分解物を含む、周辺の沈殿物も例外ではありません。
他の場所では見ることのできない生物もいます。例えば、1987年の最初の「鯨骨生物群集」では、まったく新たな海生巻貝の科が発見されました。
2年ほど経過すると、バクテリアが、鯨骨の上に敷物のようなコロニーを形成し、第3ステージが始まります。これらのバクテリアは脂肪や油分などの、鯨骨の脂質をエサとして、ほとんどの生物にとっては猛毒である硫化水素を合成します。しかしここでは、硫化水素は生態系にとっての鍵となります。
生成される硫化水素が、硫化物を好むバクテリアや、これらをエサにする微生物らによる生物群を形成し、ややあって他の清掃生物が加わります。それぞれの鯨の死骸には平均して、185もの多様な、硫化物を好む種がいます。
このステージは50年から100年と、数10年単位で続き、その様子は熱水噴出孔や冷水湧出帯など、海底で見られる特異な事象に酷似しています。
熱水噴出孔とは、ミネラルを豊富に含む熱水を海中に噴出する、海底の割れ目です。冷水湧出帯とは、硫化物やメタンを豊富に含む液体やガスの「塩水溜まり」を指し、これもまた海底に存在します。
本来は不毛である海底において、こういった場では、多くのエサを得ることができるので、多くの生命が繁栄するのです。
しかし、これほどまでに水深の深い環境の研究は困難なので、いまだに「鯨骨生物群集」で見つかる珍しい生命種を研究したり、熱水噴出孔や冷水湧出帯で見つかる種との関係を探っている段階です。
「鯨骨生物群集」にコロニーを作る微生物が、どのように拡散するのか、新たな鯨の死骸をどのように見つけることができるのかなどは、まったくわかっていません。
また、生物学者たちは、捕鯨で「鯨骨生物群集」が減ることにより、海底の生命がどのような影響を受けているのか、研究を続けています。
そこで研究者たちは、鯨骨をはじめ木材、海藻その他のバイオマスを人工的に海底に設置して、微生物がどのように流入してくるかを探り、答えを見出そうとしています。
これらの場にコロニーを形成する生命は、酸素や日光などを用いず、他の生命には毒となる化学物質に満ちた環境で生き抜くため、ありとあらゆる適応をしているのです。
地球上の生命の不思議について知りたい方には、鯨の死骸はうってつけです。
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