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ユーザーの「無自覚なニーズ」をどうやって捉えるか? ITビジネスの次のヒントを考える – 高宮慎一×尾原和啓

ユーザーの「無自覚なニーズ」をどうやって捉えるか? ITビジネスの次のヒントを考える – 高宮慎一×尾原和啓

WEB2.0の時代から数年が経ち、"次のカーブ"へと差し掛かっている日本のインターネット。その役割は、単にコストを下げたり物理的な便利さを提供するだけでなく、物事の価値を上げたり、個人の潜在的なニーズを顕在化させるような新しい方向に進化していくという。ネットビジネスの最前線で活躍する高宮慎一・尾原和啓両氏がその可能性について語りました。

シリーズ
NHK出版 > 10分対談
2014年1月28日のログ
スピーカー
グロービス・キャピタル・パートナーズ CSO 高宮慎一 氏
楽天株式会社 執行役員 尾原和啓 氏

インターネットの次のテーマは”無自覚なニーズ”

尾原 和啓氏(以下、尾原) 高宮さん、こんばんは。本(『ITビジネスの原理』)はいかがでしたか? 高宮慎一氏(以下、高宮) 面白かったですね。梅田望夫さんの『ウェブ進化論』が出たてのインターネットの話で、「1.0」とか「2.0」の方向感をわかりやすくみんなに広められたのに対して、尾原さんの本は「3.0」、その先の「4.0」をみんなに広めてくれるんじゃないかなと思いました。 尾原 そうですね。僕自身はそれらを「第二のカーブ」という言い方をしているんですが、個人的には「日本版ウェブ進化論」のイメージです(笑)。内容で特に面白かったところなどはありますか? 高宮 かなり色んなところで考えるきっかけをもらいました。いくつかあるのですが、1つ目は「マッチングするのがインターネットビジネスだ!」と書いていたところです。結局インターネットビジネスはおっしゃるとおり「人と人の」「人ともの」とか「人と情報を」など、どう”つなげるか”です。 供給側から見たら、それがビジネスであり価値なんだろうとは思いますが、一方で最近よく考えるのは「ユーザーから見たインターネットビジネスの価値ってなんだろう?」ということです。僕はメディアであろうがEC(電子商取引)であろうが、1つのことに収束するんじゃないかと思っています。つまり、インターネットというのは、ものすごくプリミティブ(原始的)なところで言うとアベイラビリティ(利用可能性)、そしてその次が低コストという価値を出しているのではないかと思っています。 たとえばECならば、そもそも日本で売ってなかったものがAmazonによって日本でも買えるようになりました。そして、やがてAmazonでは大量仕入れによって安価に日用品を入手できるようにしています。じゃあ、尾原さんがこの本で言うところの「第二カーブ」はどこにあるのか? ということを考えると、僕は「ディスカバラビリティ(自分でも無自覚な価値の発見)」なんじゃないかと思います。 セレンディピティ(偶然の出会い)であったり、自分でも無自覚なニーズに対して、それをどう発見するのか。または偶然を装ったふりをして何かに出会わせる。どの業界であろうと「ディスカバラビリティ」がテーマになっていく感じがしますね。サーチ(検索)のように、今までは自分が自覚しているものを見つけることの時間短縮が中心だったところに、”まだ見ぬ”ものとの出会いが中心にどんどんなっていく。

“なめらか”になるインターネット

尾原 そうですね。潜在的なインテンションがまだ自分の中でも言語化されていないなど、そもそも自分の中にあるのに気づいていないということもある。その意味での「ユーザー側」ということですよね? 高宮 そうです。だから「第二カーブ以降」という表現がいいのだと思います。本の内容について続けると、他にも「フリーミアム課金」とか「今までは段階的だったデマンドカーブやサプライカーブがなめらかになる」といった話がありましたよね。尾原さんにお伺いしてみたかったのですが、先ほどの「第二カーブ」以降のディスカバリー(発見)を考えたときに、それはどういうことになるのでしょうか? 尾原 すごくいい組み合わせですね! カーブがなめらかになるというのは、クラウドソーシング・サービスの「クラウドワークス」吉田さんが言っている話です。ここで「なめらかになる」という意味は二つあります。一つは、たとえば親を介護しながら仕事を見つけるとか、育児しながら見つけることなどができることです。もう一つは、タスクが細分化されて、30分、1時間など時間やタスクの単位は小さいながらもどうにか「できることを見つける」という意味のなめらかです。 高宮 なるほど。「なめらかさ」という意味では、僕は「量」と「価値」の二つがあるんじゃないかと思います。「量」という意味では、たとえば、コンピュータ・ゲームでパッケージのソフトがあったとして、そのゲームにめちゃくちゃハマる人もハマらない人も、一律でソフト代5,000円を払わないとプレイできないというのが、家庭用ゲーム機などではありました。 でも、オンラインゲームやソーシャルゲームが出てきて、アイテム課金ができるようになると、ゲームにめちゃくちゃハマってめちゃくちゃ価値を感じる人は何十万も払うことができますよね。一方で、そんなにこのゲームを面白いと思わないしお金もないから無料でプレイするか、という人もいる。つまり、ウィリングネス・トゥー・ペイ(お金を支払う意向)がすごくパーソナライズされた形になっているのではないかと思います。 結果、マクロでみると個人に対して払いたい価値を最大化したから、パッケージソフトではある一定のライン以下で切り落としていたものをなめらかに全部取りきって、面積が大きくなっているんじゃないかな。

リアル世界の”質”も上がる

尾原 お金ではなく時間を費やすユーザーがいる一方で、お金を払ってくれる人に対しては限りなく払ってもらえる。しかもレアアイテムを集める、コミュニティの中で「オレが先に集めたぜ」という名誉欲を満たせて満足もある。ちゃんとユーザーがうれしくてお金を払うと。 高宮 それがまさに「質」で。名誉欲求に対する価値観は人それぞれウェイトが違うはずなんだけど、そのウェイトすら加味して最終的にいくら払うのかが決まってくるのはすごくミクロレベルだけど、そこを最適化したことでマクロも最適化される。 尾原 今まではゲームの世界でしか実現できていなかったなめらかなカーブが、リアルな世界に入り込み始めていることを示すのに、本では「クラウドワークス」の例を挙げました。カーブがなめらかだとスキルのステップも1段1段が小さくなります。たとえば議事録がうまく書けたので、次はプレゼン資料にしてみよう。じゃあ次はこのプレゼンでセールスをしてみようなど、成長のカーブもなだらかになっていくんですね。 高宮 そうですね。まさにその需要側の価値付け、つまりウィリングネス・トゥー・ペイがなめらかになったり、対価としての値付けもなめらかになったから、マッチングもうまくできるようになったということですね。先ほどのディスカバリー、昔風の言葉でいえば「ワントゥーワン・マーケティング」もワントゥーワンがリアルに染み出してきているので、同じように変わるかもしれません。 究極のセル生産としての「ワントゥーワン・サプライチェーン」のようなものがインターネットにより可能になりつつあり、需要と供給の両側がなめらかになってちゃんと交差するのではないでしょうか。 尾原 そうですね。本では情報のフローとストックのところで「粒度」という話が出てきますが、クラウドソーシングも仕事をする側(供給側)の粒度が小さくなったことで、色んな仕事と出会うことができるようになり、会社の中だと仕事がある程度決められてしまうのに比べ、自分に合った仕事と偶然に出会うことが多くなるんですよね。

バーティカルメディアの2つの切り口

高宮 フローとストックの話が出たのでその話をすると、結局のところインターネットビジネスは、実はデータベースビジネスなんじゃないかなと思っています。大量の情報を溜め込んで、意味のあるカタマリで必要とする人に返すことで、初めてそれが価値を生む。 たとえば「クックパッド」はユーザーのおいしい料理をつくりたいというニーズに対して、ストックされているレシピというユーザーにとって意味のあるカタマリで出すから、ユーザーはそこにお金を払う。「にんじんの切り方」とか意味のないカタマリでまとめてしまうと、にんじんの切り方がわからないユーザーの問題は解決しますが刹那的ですよね。 最近の流行りとなっているバーティカルメディアの「バーティカル(垂直な)」の定義は、ユーザーに合わせて目的思考で意味のあるカタマリにデータベースを再編することだと思います。そして、そのバーティカルとすごく絡むのが尾原さんの本にも出てくる「コンテキスト(文脈)」です。 このコンテキストは二分化すると考えていて、一つは2ちゃんねるでしか通じない用語や顔文字がめっちゃ出てきて、ハイコンテクストがゆえにコミュニケーションがシンプルで済んでしまうスーパーローカル。もう一つは世界中に動画がバズるなど、すごく情報密度が高いコンテンツで、誰もがわかる超ローコンテクストなスーパーユニバーサルです。どちらのコンテクストをターゲットにするかで、意味のあるカタマリは変わります。 尾原 そうですね。まさにバーティカルの厚さとか、ファッションとか、一人ひとりのストーリーみたいなものをどういう風に組立てるかですよね。

多様性の中に次のビジネスチャンスがある?

高宮 ウェブ進化論的にいえば、インターネットの民主化が進んで世界がフラットになって、アメリカに住んでいる人も日本にいる人もアフリカに住んでいる人も、すべて同じコンテクストを共有して、みんながハイコンテクストなコミュニケーションを楽しめるようになる。何十年というスパンでみればそうでしょう。今は過渡期です。 尾原 高宮さんが「過渡期」と表現したのは「コミュニケーションのためのコミュニケーション」のことですよね? Facebookの「いいね!」と押されるのが気持ちよくてコミュニケーションしてしまうなどがそうです。そうではなく、高宮さんがおっしゃるように色んな「いいね!」が必要で、なめらかなデマンドカーブの中で、たとえば自分が何が好きか、何が強みかを発見させるなど多様化していくことだと思います。多様化していくと必ず多様化した何かの中でバーティカルがうねりを持って取りまとまっていく。 高宮 多様化の中で多様なレイヤーにチューニングしてコミュニケーションを取らせていくというのは、インターネットにおける中期的なビジネスチャンスですね。 尾原 そうですね。中期で考えると、そこ全部がなめらかになっていく。 高宮 インターネットが自らの価値を破壊していくみたいな話ですね。 尾原 本質的には時代がそれを求めていると思うんですよね。でも、シリコンバレーはあまりにすぐにお金にしようとするから、彼らが戸惑っているうちにもしかしたらLINEやニコ動がいけるかもしれないし、nanapiがいけるかもしれない。ハイコンテクストは本当におもしろいテーマだと思います。まあ、この対談もわかる人にしか伝わらないハイコンテクストかもしれませんが(笑)。本日はありがとうございました。

  

ITビジネスの原理3
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おばら・かずひろ
楽天株式会社執行役員・チェックアウト事業長。1970年生まれ。京大院で応用人口知能論講座修了。マッキンゼーを皮切りに、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、KLab取締役、リクルート2回、Googleなどの事業企画、投資、新規事業など歴任。現職は11職目になる。「TED」の日本オーディションに従事するなど、IT以外にも西海岸文化事情にも詳しい。
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ユーザーの「無自覚なニーズ」をどうやって捉えるか? ITビジネスの次のヒントを考える – 高宮慎一×尾原和啓

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