「僕はカメラを盗んでいません」
記者:TBSテレビの『いっぷく!』のオクダイラと申します。富田選手自身の口から聞きたいのですが、ハッキリと我々の前で宣言していただけますか? カメラを盗んだのでしょうか、盗んでいないのでしょうか?
冨田尚弥氏(以下、富田):僕はカメラを盗んでいません。
記者:それはハッキリと誓えますか?
富田:はい。
記者:怪しい人物が左手首を掴んで、自分のカバンになにかを入れようとした。この人物に対しては、どのような感情を抱きましたか?
富田:その時ですか? 今ですか?
記者:その時です。
富田:その時は怪しいというか、カバンの中に僕はレース用の帽子とレース用のゴーグルが入っていたので、それを取り返すことがもう先決でした。
記者:怪しいと思ったとしたら、自分のカバンの中に入れられた物に対しても怪しい、とは思わなかったのでしょうか?
富田:その時は、その人に危害を加えられたり争うことが嫌だったので、僕はバックを取り返してその場からすぐに離れました。
記者:バッグの中に入れられたもの、それは非常に重い物だったと思います。怪しいと思うんですが、どうしてすぐに確かめようとしなかったのでしょうか?
富田:渡された時になにか言われたのですが、その時になにを言われたのかわからなかったのですけど、僕はその時それをゴミだと勘違いしてしまいました
記者:カバンのなかには自分の商売道具、水着やゴーグルが入っているわけですよね。中に入れられたのは危険物かもしれません。なにか影響を及ぼすかもしれません。当然、中を確認しようと思いませんか?
富田:アジア大会に限らずそういう国際大会では、バッジとかそういうのを渡されたりすることは選手の間ではすごいあるので、僕はそういうのだと思って勘違いしてしまいました。
記者:その場で開けて周りの人に見せるなり、なにかしらを行えばずいぶんと状況は変わってきたのではと思うのですが、何故そのようにしなかったのでしょうか?
富田:僕はそれを渡されたあとに、すぐにゴミ箱に入れようとしたのですが、バスに乗るまでにゴミ箱が無かったので持ち帰ってしまいました。
記者:代理人の弁護士にもお伺いしたいんですけれども、その怪しい人物というのは富田選手しか目撃していないんでしょうか? 例えば防犯カメラだったり、他の係員であったり、なにか目撃情報はないんでしょうか?
弁護士:今のところ、富田選手の供述以外にありません。第三者が見たとか、防犯カメラに映っていたとか、そういう確認は取っておりません。
記者:この会見で富田選手、本当に冤罪であるという、自分の濡れ衣、自分の潔白を晴らせると思っていらっしゃいますか?
富田:この会見だけでは、全ての人に信じてもらうことは出来ないと思っています。
警察が見せてきた映像はどのようなものだったのか?
記者:こんにちは。日本テレビ『スッキリ』のオオタケと申します。富田さんが警察から見せられた防犯カメラの映像には、第三者は映っていなかったのでしょうか?
富田:その映像を見せられた時に、僕、通訳、JOCの方に、机越しで、机を挟んでスマートフォンで見せられたという形なので、すごい画面も小さかったですし遠かったので、ハッキリとは……その人が映っているかもわからないですし、僕が盗っている、とされる映像も見ることは出来なかったです。
記者:いわゆる記者席に座っている防犯カメラの映像がありました。そこは富田選手も見ているわけですね? その映像が鮮明ではなかったということですか?
富田:はい。
記者:先ほど弁護士の方のお話ですと、右半身しか映っていなかったというのは、どの状態の防犯カメラの映像なんでしょうか?
富田:それはプールを映している映像です。
記者:記者席に座って、その第三者が映っているであろう方角からのカメラの映像、ということですか?
富田:はい。
記者:そうしましたらいずれにせよ、この防犯カメラの映像には富田さんの言う第三者が映っているというふうに主張されるわけでしょうか?
富田:その映像だけ画像が粗かったですし、画面の左のほうに僕が映っているはずなんですけど、僕の身体も切れているくらいギリギリにしか映ってないので、ちょっと見てみないとわからないですけど、難しいかなと思います。
記者:富田さんが見た映像というのは、富田さんが端っこにいて、身体全部は映っていなかったということでしょうか?
富田:はい。
記者:そうしましたら、例えば第三者がいるであろうという部分は切れていた、という主張をなされている?
富田:それは切れていたと思います。
記者:どのあたりに座っていたか、そこからの映像でわかりましたか? 警察が言うには、段の上に椅子が並べられていたと。で、警察の話では右から3つ目の椅子の前にカメラが置いてあったという判断なんですが、だいたい富田さんはどのあたりに座っていたんでしょうか?
富田:椅子というのはどういうことか教えてもらっていいですか?
記者:記者席、1つ高い段になっていますね。富田さんはその段に座っていたと思います。その段の上に、壁に沿うような形でズラッと記者が座る椅子が並べられていたと。右端から3番目にカメラが1台置いてあったと警察は言っています。そのあたりに富田さんは座っていらっしゃったんでしょうか?
富田:僕はその椅子があったのもちょっと覚えてないですし、そこにカメラが置いてあったのも覚えていないです。
記者:他のカメラの映像は鮮明だった、と先ほど仰っていました。富田さんが記者席に座っている時の映像だけが鮮明ではない。同じメーカーの、同じ解像度のカメラだと聞いています。その部分だけ映像が粗いのはちょっと不自然だと思うのですが、富田さんいかがでしょうか?
弁護士:ちょっと宜しいですか。富田選手としては、見た事実をそのまま話しているんで、今のご質問に対してどう答えるか。富田選手はカメラに対する知識がありませんので……。
記者:わかりました、ごめんなさい。では事実関係で言いますと、富田選手が見た1つの映像だけは画像が粗かったという事実で、全身は映っていなかった、ということが事実なわけですね。わかりました。
付き添いでJOCの本部役員の方がずっといらっしゃったと言います。その方には、警察も防犯カメラの映像を見せたと言います。そのJOCの本部役員の方にも、しっかりとした事を喋っていただきたい、というふうにお考えでしょうか?
富田:はい。僕がさっき言った通り、僕、通訳、JOCの方と一緒に見ていたので、防犯カメラの映像は一緒に見ました。ただ、僕が盗ったシーンというのは見ていないと思います。
記者:という事は、JOCの本部役員の方も、警察が言うことに対して疑問を持っているかもしれない、ということでしょうか?
富田:すいません、もう1回言ってもらえますか?
記者:富田選手と同じ映像を見てるわけですよね。そうするとその瞬間を、警察は見せたと言いますが、そのJOCの本部役員の方も見ていない可能性がありますね、富田さんと一緒の映像であれば。であれば、警察が見せた映像に対してその方も疑問を感じていらっしゃる、そのように考えて宜しいでしょうか?
富田:はい。
韓国警察には映像を公開してほしい
記者:最後にもう1点ごめんなさい。もうこの際、富田さんどうでしょう。警察に、もし今回の映像が鮮明に映っているのであれば、その映像を公開して頂きたいというふうにお考えでしょうか?
富田:はい。僕は、(韓国の)インチョン警察が言ってた時間帯(10時48分)というのは、アリバイのほうがありますので、見せてもらいたいです。
記者:すいません、ついでに言いますと、確かに当初の報道では10時48分ということがありました。
先ほど私が警察に確認したら、犯行が行われたとされる時間帯は11時48分ということで、富田選手がやはり練習を終えて会場から出て行く時間帯と符合するんですよね。ですから警察が言う11時48分がその通りであれば、状況的に言いますと、富田選手は練習を終えて自由に行動できるということになると思いますが、いかがでしょう?
富田:僕が聞いているのは、10時48分という報道しか聞いていません。
記者:わかりました、以上です。すいません。
処分内容を受けての心境
記者:まず、カメラを盗む、盗まないではなくてですね。知らない不審なAという男に左手をつかまれたわけですよね。得体の知れない黒い物体を勝手にバッグの中に入れられた。大会期間中に自分の体を押さえつけられているという状況に身の危険を感じたわけですよね。
その時点で周りにいる関係者であったり、外部の警備員など誰かになぜそのようなことを伝えようと思わなかったんですか? なにか怪我をしたらその日、泳げなくなりますよね? そういった不審人物がうろうろしているということであれば、なにか警備の方や、周辺の方に言わなくてはという気持ちにはならなかったのですか?
冨田:手首を強くつかまれただけなので、怪我とかをしたわけではないので、特にそういった考えは浮かばなかったですね。
記者:あと韓国にまだいる間に水連ですとか、青木団長などに「僕はやっていない」という風に伝えたという話が先ほどありましたが、ただそれを受けてでも、その後選手団の追放もあり、帰国してから選手団からの登録の停止もありました。
そういうJOC、水連を含め、今どのように思っていらっしゃるのでしょうか? まず、本当にやっていないということを信じてくれたのであれば、処分が違ってくると思うのですが、今の処分内容をみてどのような感情をお持ちになっていますか?
冨田:僕が、韓国の警察署で認めたのは事実ですし、それについて日本選手団が判断したわけなので仕方なかったと思います。
会見まで1ヶ月以上の時間を要した理由
記者:帰国後、羽田空港で「ご迷惑おかけしました」という謝罪がありました。で、その時に釈明をしようと思ったのだけれど、釈明は後にした方がいいと風にデサントからアドバイスされたということなんですけれど、そこから今1ヶ月以上経っています。なぜここまで時間がかかってしまったのか、その理由をお聞かせ願えますか?
冨田:まず、釈明したかったのは羽田空港だけではなく、金浦の空港でも「僕はやっていない」ということを強く言いたいということは訴えました。
記者:それは誰かに圧力をかけられて言えなかったという状態なのか、自分の口から言えない理由があったのでしょうか?
冨田:いえ。僕の口から言えない理由はなかったですけど、その前に僕はデサントの社員でしたし、会社の指示に従って、アドバイスを受け僕もそれに納得して後日会見を開こうということになりました。
記者:今日はやっと本当のことが言えるというお気持ちなのでしょうか?
冨田:はい、そうです。
弁護士:ちょっと、あの1点ありまして、ひとつは処分が決まる前に記者会見をやることは、いかにも水連と対峙するような状況があったもんですから、水連に迷惑をかけたことは事実だということで、水練に迷惑をかけたくないという彼の気持ちがあったということです。
ただ、私も冨田君と会ったのは10月11日で、彼から事実関係を聞き出したり、資料等を集め、一連の記録を作るまでに時間がかかるわけです。しかし、水連の職員はなるべく早く記者会見をやりたいという気持ちもあって、記者会見が今日という日付になったわけです。
彼自身の精神状態もありましたし、体調も考慮に入れながら記者会見を今日開いたという判断は、私は遅くはない思います。
記者:最後にもうひとつなんですが、冨田選手自身がカメラを盗んでいないということを1番信じている方はどなたでしょうか?
冨田:1番は両親ですし、家族であると思います。
記者:ありがとうございます。
否定するタイミングを逃し続けたのは何故か
記者:読売テレビ『ミヤネ屋』のフジムラでございます。よろしくお願いします。誰かわからない人に物を入れられて、手を掴まれたと。上のほうへは報告しなかったけれども、というお話でした。例えばその後バスに乗って、選手村に帰るなかで、他の仲間にもたくさん会うわけですよね。さっき俺変なヤツにあったよ、なんか入れられたよ、とか、誰にも言ってないんですか?
富田:バスは定期的に来るものなんですけど、(今回の)アジア大会の時はすごい不定期だったので、僕が(カバンに物を)入れられた後すぐに、チームメイトから一緒に帰りましょうって言われて、そのバスに間に合うように行ったので(話すタイミングがありませんでした)。
そしてバスの中はすごい空いていて、日本のチームメイトも少なかったですし、僕は1人で座っていたので、言うことは無かったです。
記者:富田選手のなかでは、もう忘れてたんですか? それともずーっと心のなかでは、何か変なのに会ったな、何か入れられたなというのは、ずーっとあったんですか?
富田:忘れてはなかったですけど、そんなに深くは考えてなかったです。
記者:宿舎に帰っても全く言うことは無かったわけですね?
富田:宿舎の相部屋の先輩とその後会うことは、僕の次の日レースがあったので早く寝ちゃって、次の日の朝は先輩が起きる前にそのレースのほうに向かってしまったので、喋ることはなかったです。
記者:陳述書を拝見すると、相部屋の方と一緒だったので、ゴミは自分の部屋にまとめて置くようになっている、というふうにくだりがあったんですが、これはどういうことですか? ゴミの処分というのは、部屋のなかでどういうふうにしていたんですか?
富田:選手村の部屋の中にはゴミ箱は無くて、僕はいつも、例えば(部屋内の)3箇所であったり、その3箇所のなかでもいらない袋だったり、そういうのは全部、出て行く時にひとまとめにしてそこに置いていくんですけど、もう次の日がその出て行く日だったので、僕はそこに置いておこうと思って、準備をしていました。
記者:すぐに捨てたい物ではなかったのですか? 別に持っておいてよかったのですか?
富田:僕はもう壊れているものだと思ったので、そんなすぐにゴミ箱に入れよう、という思いはなかったです。
記者:そうならば本来、普通に自分が普段出しているゴミとカメラは、一緒になっているはずですけれども、そのカメラだけはどうしてスーツケースにあったんですか?
富田:僕は普段、出していくゴミは無いです。
記者:あ、宿舎ではゴミは出ないんですか?
富田:そうです。選手村の外に出て何か買い物を、という事は無いので、そんなにゴミは出ないです。
記者:さっき弁護士の先生からも、帰国前にすでに「やっていない」と関係者に言っていたということなんですけれども、これは事実ですか?
富田:僕はアメリカで練習していたんですけれども、そのコーチを一番信頼していて、そのコーチに一番初めに「僕はやっていない」と言ったところ、会社の上司のほうに今すぐに言いに行けと言われて、言いに行きました。
記者:それはいつですか? 合意書を作った前ですか、後ですか?
富田:合意書を作った日です
記者:その日というのは、合意書を書く前ですか? 書いた後ですか?
富田:書いた後です。
記者:どうして書く前に言わなかったんですか? 書いた物を見ると、これはもう認めた、謝罪したことになっていますよね。
富田:僕はその文章をハッキリと見せられてわけではなかったので、もう何が起きてるか、わからない状況でした。
記者:じゃあぶっちゃけて言うと、韓国の警察にハメられた、と思っていますか?
富田:合意書っていうのは韓国の警察が作ったわけではないので、それは思っていないです。
記者:一連の事件についてはどうですか?
富田:僕のカバンに入れてきた人は何人かもわからないので、それはわからないです。
記者:何度も「それは違うよ」と言えるタイミングがあったと思うんですが、なぜ言わなかったんですか?
富田:警察署から戻ってきて、選手村に着いた瞬間にもう、信頼している上野(広治)競泳委員長に言おうと思って、JOCの方に競泳委員長を呼んでもらえますか、と伝えたところ、上野先生は不在と言われたので、言える時が無かったです。
記者:最後に、一緒に大会に出た仲間や、日本で応援していたファンもいると思うので、言いたいことっていうのがあれば、仰ってください。
富田:僕が強い意志を持って警察署で「やっていない」と言えば良かったのですが、僕の心が弱くて、大変迷惑をかけてしまったので、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
記者:ありがとうございました。
犯行を否定しなければ、との思いに至ったキッカケは?
記者:テレビ朝日のイイムラです。心境の変化を伺いたいんですけれども、最初は犯人扱いされていることを気が付かなかったと。その後、どうも盗みということで疑われているんだな、というふうにお思いになったわけですね。
その後、最初に認めてしまったけれども、その後、それはやっぱり否定しなければいけないなと思ったのはいつなのか。また、その否定しようと思ったキッカケというか、心境の変化はどこにあったのでしょうか?
富田:僕は、次の日にみんなと同じ飛行機に乗れるからと言われて認めたにも関わらず、次の日に出国もできず、ずっと滞在している状況だったので、それでは話が違うぞと思って、言おうと思いました。
記者:それは、そのままであれば、あるいは言わなかったかもしれない、という事なのでしょうか?
富田:僕の心はヤバいかもしれないですけど、次の日にみんなと一緒に帰ることが出来ていたら、言わなかったという状況もあり得ると思います。
記者:で結局、略式起訴という形になったわけですけれども、このように罪にならずに、公にもならずに、という事であれば、そのままという事もあり得た、ということなんでしょうか?
富田:はい。
記者:わかりました。ありがとうございます。
JOC、水連、デサントの対応に言いたいことはあるか?
記者:東海ラジオ『ヨヂカラ!』のゲンイシと申します。迷惑をかけましと思っていろいろな行動をしたというのは、これまでのご説明でわかりまいた。その相手であるJOCにしても水連にしてもデサントにしても、迷惑をかけたというふうに解釈して、追放したりいろんな処分を科したり、という事に結果的になったわけですけれども、そのJOCや水連やデサントに対する対応に、今となって疑問と思うことってありますか?
富田:罰金であったり、そういうお金を払って、払ったというのは僕のことを早く出国させようと思ってしてくれたことだと思うので、特に意見は無いです。
記者:でも、今ここに至るまで非常に物が言いにくい状況にあったということで、ある意味(今は)言いやすくなったという状況だと思うんですが、そのあたりについては、今だから言いたいな、って思う対応はありますか?
富田:上野先生を呼んでください、って言った後に、本部のほうに行ったんですけど、その時にもういきなり通報っていう形じゃなくて、まずは韓国警察よりも選手を信じて、僕に弁明の場を与えてもらったら、こんな大きなことにはなってなかったかなと思います。
記者:JOCは無言で引き渡すようなことになったわけですよね。これについては、疑問には思わなかったですか?
富田:僕が韓国警察のほうで認めてしまったのが悪いと思います。
記者:今、取ったいろんな行動があって現在に至ると思うんですけれども、その中で一番、自分の中で後悔している、やり直したいなと思うことはなんですか?
富田:あの時カメラをその場で出して、その人に渡すことが渡すことが出来ていれば、今の状況はなかったと思います。
記者:ありがとうございました。
弁護人「異国での冤罪で、彼はパニックを起こしていた」
記者:フジテレビの(聞き取り不明)と申します。先ほど富田選手のお話の中で、「僕の心が弱くて」という言葉が何度かあったと思います。日本を背負ってやっていらっしゃった選手なので、ここは違うぞというのは主張できたのではないか、という気持ちも少しあるのですけれども、心が弱くてというのは、どこの部分が一番心配で、自分の心が弱くなってしまって、韓国警察で認めてしまったのか、教えていただけませんでしょうか?
富田:僕が一番不安だったのは、韓国に残って、いつ帰国できるのかも分からないような状況になるのが一番怖かったんですけれども、それでも韓国に残って「俺はやってない」と言える心を持っていなかった自分が悪いと思います。
記者:なにが一番、そうさせるのを阻んでいましたか?
富田:やっぱり次の日帰国っていうのがあって、それで帰国できないとJOC、水連、デサントのほうにも迷惑がかかると思ったので、それが一番、自分の中で嫌でした。
記者:実際に帰国できなく今こういった状況に、その時よりも事が大きくなってしまったかもしれないんですけれども、それを受けてどのように思いますか?
富田:認めた自分が悪いと思います。
記者:ありがとうございます。
弁護士:1点だけ弁護人から申し上げておきますけれども、日本でもそういうことは良くあるんです。例えば痴漢冤罪。迷惑防止条例で捕まった場合に、認めればすぐに帰してやるよ、と言われて、やっていないんだけれども、認めてしまう。認めなければお前の身柄は拘束だぞと、起訴するぞと言われると、やっていなくてもつい認めて、48時間以内に返される、ということがよくあります。
これは私の検察官としての経験、また弁護士としてもよく経験することです。ましてや彼の場合は異国の地、韓国語で言葉もわからない、不安が当然襲ってきたと。なんで警察で言えなかったのかと、冷静に客観的に、第三者的に考えればそういう事は言えるんだけれども、当の立場に立たされれば、彼はパニック状態になっていた。
なんといっても、日本を代表するスイマーだと言っても彼はまだ25歳の青年ですから、そういう場面に置かれた時に、彼がどういう不安感でいたか。その時にもっともっとJOCや水連の方が、なぜ彼をもっともっと弁護してあげなかったのか、というところは、弁護人としては非常に残念に思うんですけれども。補足でした。
他の選手に悪影響だと思って言わなかった
記者:TBSテレビ『あさチャン!』のタカノと申します。まず、帰国されたときに、「ご迷惑をお掛けしています」というふうに謝罪されたんですが、そこから今日、まずこういった事態をどのように捉えて、今日はどんな気持ちを伝えたいと思って、この場に来られたんでしょうか?
富田:まず空港では、「ご迷惑」というよりも「お騒がせして」というところを謝りました。
記者:そして今日この場では、どんな事を伝えたいと思って、この場に来られたんですか?
富田:真実は違うということを主張したくて、この会見を開きました。
記者:真実は違うということだったんですけれども、やはり当時の状況を振り返ると、カバンになにか入れられた、すごく不気味な感覚だったと思うんです。
ただその不気味な感覚を持ったままバスに乗って、そのことを誰にも言わなかった、言うチャンスはあったのに言わなかったというのは、やはりちょっと不思議だなと思うんですが、何故、言わなかったのでしょう?
富田:僕も今それをすごく後悔しています。
記者:不気味だなという感覚を1人で抱え込んでしまったのでしょうか。同時の気持ちっていうのはどんな感じでしたか?
富田:僕は前回大会で200mで優勝しているにも関わらず、(今大会では)前日に100mで4位という結果で、次の日に50mという一番僕の中で苦手な種目でメダルを取らなければいけないという状況だったので、そこまで頭が回っていなかったというのが事実です。
記者:周りの選手が活躍している一方で、ご自身がそのような状態に陥ってしまった事を、当時どのように感じていましたか?
富田:それを言ったところで、他の選手にいい影響は与えないと思いました。
記者:やはりやりきれない思いがあったと思うのですが、どのようなお気持ちで過ごされていたのでしょうか?
富田:今日までの、会見までの期間ですか?
記者:はい。
富田:外に出るとしたら弁護士事務所に行くぐらいだったので、本来なら練習をしている期間なので、そのように過ごせないというのはすごい悲しいです。
記者:先ほど、急性ストレス反応というようなお話もあったんですが、具体的にどのような症状が現れて、どのような治療をされているのか、可能な範囲で教えて頂けますか?
富田:医者のほうに薬をもらって、帰ってきて、その時は自分では普通かなとは思ったんですけど、今思うと空港ですごい取材陣に囲まれたりして、通常ではなかったのかなと思います。
記者:後悔されているという事だったんですけれども、改めてその後悔をここで晴らす、ここが大事な機会だと思うんですけれども、一番伝えたいことを改めて教えて下さい。
富田:真実は違って、僕はやっていないということを言いたいです。
記者:というのは、カメラは盗っていないという想いですよね?
富田:はい。
記者:わかりました、ありがとうございます。
2016年五輪への出場は難しい
記者:東海テレビのフクシマです。改めて富田選手の口から教えていただきたいんですが、怪しい男がカバンの中に入れた黒い塊がカメラだと気づいたのは、いつ、どの時点だったのでしょうか?
富田:選手村で、水着を乾かすために僕はカバンを開けたんですけれども、その時にカメラだと気づきました。
記者:今思うと、その怪しい男はなぜそのようなことをしたと思いますか?
富田:その人が何人かもわからないですし、何語を話していたのかもわからないので、僕にはわからないです。
記者:日本代表として、いろいろと普段から行動に気をつけていることがあったと思いますが、今、具体的に挙げられること、日本代表として気をつけていた事、行動としてあれば、具体的に教えてください。
富田:僕は人のレースを見て応援するのが好きだったので、それはよく行っていました。
記者:今後なんですけれども、所属していた会社を、不当解雇で訴訟、訴えるというようなことは考えていらっしゃいますでしょうか?
富田:まだそこまで頭が回っていない状況です。
記者:もう1つ今後についてですが、(2016年リオデジャネイロ)オリンピックについてはどのようなお気持ちですか?
富田:今のままの(2016年)3月31日までの選手登録禁止だと、日本選手権に出れないので、難しいかなと思います。
記者:先ほどと少し被るかもしれませんけれども、もし時間を戻すことが出来るとすれば、いつどの時点に戻って、どの行動をやり直したいですか?
富田:バッグに入れられた時に、その場で返していればよかったと思います。
記者:わかりました、ありがとうございました。