なぜ日本でビットコインの取引量が世界一に?

古川健介氏(以下、古川):確かに最近、日本でお金周りのサービスが急激に増えたような感じがするんですけど、それってやっぱりアベノミクスからの流れが?

木村新司氏(以下、木村):両方だと思っています。やっぱりスマートフォンの同時接続、お金がビットコインみたいにネットに乗り始めた。そして経済というところからやらざるをえない、というのはあると思いますね。

古川:中国だとけっこうビットコインというか暗号通貨周りの規制が入ったりしている中、日本は取引量が今世界一になっていたりします。日本って、この分野でプレゼンスをこれから発揮できそうなものなのか。どう思われますか?

木村:実はDasCapitalって、海外の取引所、韓国の取引所など、いろんなところを見て話もしてるんですけど、日本はやっぱりちゃんとルールができちゃったので。

古川:ああ、法律が。

木村:はい。例えばですけど、ビットコインを持っている人などが、法律がまだできていないところにビットコインを送る。そこの中で「Ethereumを買います」というと、やっぱり怖いですよね。国がbanするかもしれないので。

そういう意味でいうと、日本の取引所だとbanはもうないだろうというのがあります。海外でボリュームあって、エクイティもある。そのため「日本に送って取引するほうがいい」という人は増えるだろうなとは思っていますね。

古川:これ、なぜ日本は法律を先駆けてできたんですかね?

木村:わからないですけど、いろいろビットコインや仮想通貨の業界の人がかなり働きかけてこうなったというのは僕はあると思っています。なので、すごくそこの功績は偉大だなと思っていますね。

古川:感覚的には日本は遅れそうな雰囲気があるじゃないですか。でも、けっこう先駆けてもうそのへんが整備されているというのは……。

木村:そうですね。なんでなんですかね? やっぱりなぜかマウントゴックスが渋谷にあったというのが一番大きいかもしれないですよね(笑)。

古川:それはそうですね。確かに。なるほどなぁ。

仮想通貨の参入障壁はまだまだ少ない

古川:けっこう日本でこれからFinTech系のサービスをやりたい人もいると思うんですけれども。これからもしそういったサービスを誰かがやるというときに、どんなアドバイスしますか? なにやったらいいですかね? 「なにかお金周りでサービスやりたいです」みたいな人に。

木村:やっぱり自分がほしいものを作ったほうがいいというのは、まず前提としてあります。そこから、ビットコインや仮想通貨のところって、けっこううまくいき始めてますよね。それはなぜかというと、やっぱり今までけっこうグレーというか、投資もそんなに入ってこなかったし、投資できないよって人がほとんどでした。だから、プレイヤー側の数がすごく限られていた。

上場している大きな企業とか含めて「そういうグレーなことはできないよ」があったので、やっぱりプレイヤーの数がすごく少なかったんですよね、仮想通貨の業界というのは。そういう意味で言うとまだまだブルーオーシャンです。

既存の金融システムや法定通貨の世界の金融システムというのは、プレイヤーがもうすでにいるし、規制もできているし、規制はある意味守れるようにもなっています。だから、なかなかチャンスは作りにくいだろうなとは思いますね。

そういう意味でいうと、仮想通貨のほうはまだまだ参入障壁になるような規制も少ないですし、できることがあるんじゃないかなとは思っていますね。

古川:じゃあ仮想通貨・暗号通貨周りがけっこうやるとしたらまだまだチャンスが?

木村:あると思いますね。僕は海外もいっぱい見てるので、そこにある機能でまだ日本にないものがいっぱいあるんですよね。そういうのをいっぱい作ればいいと思いますけれどね。

古川:アメリカなど、ほかの国で暗号通貨の盛り上がりはどんなものなんですか? 日本にいるとけっこうかなり熱が上がっている感じがするんですけど、ほかの国もそうなんですか?

木村:そうですね、新興国は取引所のランキングとか見てても、インドなどまだ1日300BTCみたいな。

古川:ああ、そんなものなんですね。

木村:そういった感じなので、まだまだですよね。インドネシアでいうと1日2,000BTCなので、「今からかな」という感じですけど。

古川:へえ。

一気ではなく「じわじわ」と

木村:まあアメリカといったら世界ですけど、そこではCoinbaseがあったり、PoloniexやBittrexがあったりしますけど。アメリカは世界全体としてのプレイヤーがいる感じではありますけど、Coinbaseのユーザーが今伸びているという情報が出ていたので、アメリカの人もすごく増えているのかなとは思ってはいますけどね。

古川:日本人はやっぱりFXとかがあったから入りやすかったんですかね?

木村:いや、絶対そうだと思いますね。

古川:やっぱりそうなんですね。

木村:はい。レバレッジが大好きなんですよね。

古川:大好きですよね。この前ルノアールに行ったら、隣のおばさんみたいな人たちがビットコインの話をしてたりして、すげーなと思ったんですよ。

木村:すごいですよね。

古川:なかなかないですよね。

木村:そういった場所でEthereumなんてワードを聞いた日には、そろそろ終わりが近いかなとか思っちゃいますね(笑)。

古川:そうですよね。50歳ぐらいの人に「リップルを買おうと思うがどう思うか?」みたいなことを聞かれたりして、すごく盛り上がっているんだなとは感じますね。

木村:そうですね。はい。あまり……じわじわといったほうがいいと思いますけどね(笑)。

古川:そうですね。確かに(笑)。

決済は表面積が広いほど当確率が上がる

古川:ちょっと最後のほう、あと10分ぐらいしかないんですけど、未来についてもう1回聞いてみたいなと思うんですけれども。スマートフォンで先ほどのような変化があったというのはわかりやすいと思うんですけど、その次みたいなものが出たときに、お金周りがどう変わるかを想像していたりしますか?

木村:決済周りに関していうと、実はそんなに僕は変わらないだろうなと思っていて。ネットワーク効果みたいのがやっぱり決済にはあるんですよね。

Squareがなぜ広がっているかというと、やっぱりネットワーク効果なんです。Squareを使うじゃないですか。そのときに「これ、Squareって言うんだ。いいな」と思って、何パーセントかの人がSquareを使って「自分の店でも使おう」となるんです。

やっぱり決済って、使われる面積というか表面積が広ければ広いほど、それに当たる確率が多くなる。PayPalとかもそうですけど、「僕も使ってみよう」「うちの店でも使おう」みたいなところがあるので、規模が出ちゃうとネットワーク効果がすごく効くんですよね。

そうなるとデバイスは実はそんなに関係なくて。次のデバイスの中でもそれが入れば、みんなが使っているほうが便利だし、触れる面積が多いので「こっちでもやろう」みたいになっちゃう。あまり決済のプレイヤーというのは、そんなに変わらないだろうなと思ってますね。

古川:いわゆるPayPalがPC時代からスマホになっても変わらず強いみたいな感じと一緒ってことですね。

木村:そうですね。

古川:例えばARとVRが来たとしても、ほとんど影響ないというか。

木村:その隙にパッと作って出てきたプレイヤーもいると思いますよね。PayPalがいて、Squareがスマホで専用端末がいらなくなってパッと出てきたというのはあるので。端末の良さを活かして、その隙に入っていくメインのプレイヤーになるというやり方はあるかもしれないです。

しかし、「スマートフォンになったからといって、PayPalは死ななかったよね」というのが結果かなと思っていますね。

古川:なるほど。おもしろい。

社会の課題を解決し、その対価をもらうのがビジネスマン

古川:例えば起業家の人もたくさんいると思うんですけれども、ちょっと話が逸れますが、木村さんが投資したいと思う人ってどういう基準で選んでいるのかをちょっと聞きたいなと思っています。

木村:そうですねえ、人ですね。人となにをやりたいかみたいなところで。人でいうと、やり始めていきなり全部うまくいかないんですよね。どんなものでも磨かないと、みんなに使ってもらえるようなものにならない。やっぱりすごい気迫でPDCAというか、プロダクトを改善していける人が必要かなとは思っていますね。

もう1つは、どんなにもがいてもその事業領域にそのタイミングが来てなかったらやっぱりダメなので。例えばビットコインの話でいくと、3年前、マウントゴックスのexchangerが始めたわけですけど、その頃にどんなにもがいてもやっぱりどうにもならないんですよね。

ただ波が来るときがあります。その波が来る2年前ぐらいにちゃんとその位置を陣どっている人たちだなと思ったところには、投資したいなと思います。

あとやっぱり起業家というのは、社会の課題を解決をして、人を集めて、お金を集めて、テーマがあって、その課題を誰か社会にいる人たちの代わりに解決をして、その対価としてお金をもらうというのがビジネスマンだし、起業家のやるべきことだと思うので。それをすごく理解されている方がいいなと思っていますね。

古川:それは、会ってすぐわかるものなんですか? 「この人はこれできそうだな」みたいなものって。

木村:そうですね。最初に言った気迫みたいのはわかりますけどね。

古川:なるほど。

木村:あとは、「社会をすごく良くしたい」というのは、長くやっていくとブレないですよね、そういう人って。それはいきなりはわからないですけど、話すとだいたいはわかったりするんです。そう簡単にはブレない人というのは、いいなと思っていますね。

古川:なるほど。

経営を習慣化し、長期的に続けられる状態を作る

古川:「木村さんに投資を受けるとすごいうまくいく」というイメージあるんですけれども、どういったコミュニケーションしているんですか? なにを伝えているのかという。

木村:だいぶ変わってきたんですよね、それでいうと。昔はけっこう戦略とか「こうしたほうがいい」というアドバイスをしてたんですけど、最近、実はそういうのはほとんどしないようにしているんです。

古川:あっ、そうなんですね。

木村:僕も39歳なので、感性も鈍ってきているので(笑)。変にプロダクトの思想を押し付けたくないというのはありますね。なので、そう考えているんだったら、その人が考えているビューというか、見え方がたぶん普通の人とは違って、僕に見えていないこともありうる。

なので、あまり(自分の思想を)入れたくないなと思っていて。世界観をすごく大事にしたいなと思っているんです。

例えばWantedly。最初から投資してましたけど、仲(暁子)さんはすばらしいし、やっぱりビューがあるんですよね。どんどん新しいプロダクトが生まれてきて。

そこよりも、経営していく中で「こういうふうにマネジメントしていったほうがいい」「会社はこういうふうに運営していったほうがいい」など、会議・会議体の作り方、レポーティングフォーマットの作り方、あと評価制度はいつぐらいに入れていったほうがいいなど、そういうアドバイスのほうが効くかなと思っていますね。

古川:けっこう習慣が大事という話をよくされていますよね。

木村:そうですね。習慣が大事みたいな話でいうと、今日もちょうどアドバイスしてたんですけど、やっぱり事業はけっこう長くて。普通のスタートアップって、だいたい1年半ぐらいでみんな心が折れて辞めていくんですよね。

古川:なるほど。そうですよね。確かに。

木村:そうならないようにやっぱり習慣化して、あまり疲れすぎず、あまり休みすぎず、いいバランスで長期的に自分たちが作りたい価値、解決したい課題をみんなで解決できるような状態を作るのがすごく大事なので。

あまり「びゅーと盛り上がってパーッとやめていきました」「ダメでした」みたいなものよりも、「明確にビジョンが定まって、みんなでバランスよく、ペースよくやれるのがいいんだよ」と教えている感じですかね。

古川:なるほど。マラソンみたいな感じなんですね。

木村:マラソンなので。

古川:そうですよね。

木村:短距離100メートル走ではないのです。

起業家は投資と事業の両方できないといけない

古川:ありがとうございます。だいぶ僕、聞きたいことばっかり聞いちゃっているんですけれども、逆に木村さんが「これを言っておきたい」「これ伝えたいみたいなもの」ってなにかあったりしますか? 急に言われて困ると思うんですけど(笑)。

木村:はい。言っておきたい……そうですね、なんか最近、投資家だと思われているんですよね。投資家じゃないんですけどね(笑)。

古川:確かに投資っぽい面と事業家っぽい面が両方ある感じはしますね。

木村:両方できないといけないと思っているんです。事業だけで伸ばすのは、日本はそんなに大きくないのでそれほど伸びる事業ってそんなにないんですよ。今でいうとメルカリぐらいのサイズのやつは、滅多に出てこないです。20年に1本だと思うんですよね。

そんなの出てこないので、投資もできないといけないし、事業もいくつかできないと大きな会社にはならない。だから、それもやって投資もやるし事業もやる。ダブルヒッターじゃないですけど。右打ち左打ちっていう感じですかね。

古川:投資がめちゃくちゃうまくいっているイメージがあるのかもしれないですね。ハズレないというイメージがあります。

木村:まあ、たまたまなんですけどねえ。はい。

古川:すっごくコケたやつってないんですか? めちゃくちゃ失敗したようなものです。

木村:あります、あります。言わないだけですよ(笑)。

古川:なるほど(笑)。そうですよね。はい。ありがとうございます。というわけで、木村さんでした。もし直接聞きたいことがあったら、ぜひ木村さんに話しかけてください。

木村:気軽に。

古川:気軽に。怖い人だと思われがちなんですけど。

木村:そうなんですよね。僕も5年前ぐらいまでは若手起業家だったので(笑)。そう思われちゃうんですよ。怖い人になっちゃっているので。

古川:怖くないです。はい。非常にやさしいので、ぜひ声かけてください。

木村:そうではないので、気軽にお声がけください。

古川:はい。というわけで、木村さんでした。ありがとうございます。

木村:ありがとうございました。

(会場拍手)