私たちはたくさんエネルギーを使っている

田中孝治氏:このスライドは、総合研究開発機構のホームページに掲載されている図です。横軸が年です。縦軸が1人あたりの消費エネルギーを示しています。この辺が数百万年前、原始人から始まっています。

原始人のころからだいたい18世紀くらいまでですかね、ほとんど1人当たりのエネルギー消費量は横ばいで、あんまり変わっていないことがわかると思いますが、19世紀くらい、みなさんよくご存知のワットの蒸気機関なんかが登場したころ、産業革命があったころから、非常に急角度で1人あたりのエネルギー消費量が増加しているということがわかると思います。

このエネルギーの増加量、この増大したエネルギーを何でまかなっているかというと、そのほとんどが石炭や石油、いわゆる化石燃料と言われているエネルギーでまかなわれています。化石燃料の消費がエネルギー問題の1つということになると思います。

どんなことかと言いますと、これは『原子力エネルギー図面集』というところから引用してきたんですが、こちらが世界の人口を表しています。2014年に約72億人で、中国とインドで約4割弱くらいの人口を占めています。それで、こちらが世界の1次エネルギーの消費量、国別の消費量になってます。中国が非常に大きくて22パーセント、アメリカは人口は3位にもかかわらず16パーセント、インドは人口は18パーセントを占めているにもかかわらず6パーセントしかありません。

これくらいの割合でエネルギーが使われているんですが、これを1人当たりの平均にした棒グラフがこの図になります。世界平均はここです。日本は世界平均を上回っています。私たちはたくさんエネルギーを使っていますね。

カナダ、アメリカは断トツでたくさんエネルギーを使っているんですけど、先ほど人口の多い国として登場した中国やインドは、世界平均を下回っています。ということは、たぶん中国とインドの人たちは、これからどんどん1人当たりのエネルギーが増加すると思いますので、1次エネルギーの消費量というものはどんどん増えていくだろう、ということは容易に想像がつくと思います。

化石燃料とウランは有限な資源である

では、それを支えるエネルギーはどれくらいあるんだろうか、ということなんですが、この図は、「資源エネルギーの確認埋蔵量」で、これは2016年のデータです。石油は51年あると言われています。天然ガスは53年、石炭は114年、ウランは102年とされています。

この図は何を表しているかというと、私たちの暮らしを支えている化石燃料およびウランを含む埋蔵燃料は有限ということです。例えば中国、インドが今後どんどんエネルギーを使うようになってくると、資源の乏しい私たち、とくに日本なんかは非常に苦しくなるんじゃないか、ということが想像できます。

ただし、みなさんもよくご存じだと思うんですけど、この図のこの数値って非常におもしろいんですね。これは2016年のデータなんですけど、2003年の図では、石油の可採年数は41年となっていました。11年くらいたって、51年になっています。石油とか石炭の由来は、化石由来が主流です。そういうものは掘ればなくなってしまいます。可採期間が伸びている理由の1つは、掘削技術が進んで、いままで採れなかったところの石油や石炭が取り出せるようになったためです。

実は化石由来ではないのではないかという説も世の中にはあります。「実は無尽蔵に地中にはあるんですよ」、というような説を唱える人もいますが、化石燃料は有限な資源であるということが、一応定説になっています。

それで、このスライドは世界の1次エネルギーの割合を示しています。可燃性再生可能エネルギー、これはバイオマスみたいなものですね。新エネルギーというのは、風力ですとか太陽光発電です。あと水力、原子力、ガス、石油、石炭とあります。ガス、石油、石炭、この化石燃料と言われるもので8割以上を占めています。それと、あと原子力がここの領域にあって、埋蔵資源で私たちの暮らしというのはほぼ成り立っているということが言えます。

日本は一次エネルギーの自給率が低い

あと重要なのが、石油や石炭、こういう埋蔵資源というのは世界中に均等にあるのではなくて偏っています。例えば原油ですと、生産量の4割以上が中東です。45パーセントが中東。あと2割が中南米、北米というところで、残念ながら日本にはほとんどありません。石炭は、ヨーロッパ・ユーラシアが35パーセントくらい、アジア・オセアニアが32パーセントくらい、北米が27.5パーセントくらいなんですが、こういう化石燃料というのが偏在しているというところも、このエネルギー問題の特徴であります。

そうすると、どういうことになっていくかというと、これは長期エネルギー需給見通しの関連資料です。、資源エネルギー庁のホームページで見ることができます。この表は、日本の自給率を表しています。2010年くらいは一次エネルギーの自給率が2割弱くらいありました。それが震災もあって、2012年にはもう10パーセントを切っています。危険水位に日本は陥ってしまっているというような状況が、1つあります。

今日は電力の話なので、発電関係を説明したいと思います。日本の発電設備がどれくらいあるかを、「電気事業便覧」から引用しました。水力、火力、原子力、新エネルギーの割合をこの円グラフで示しています。その絶対値はこちらのほうに書いてあります。

日本の発電設備は、埋蔵資源由来のもので8割以上になっています。だけど、先ほどの円グラフで見ましたように、日本にはこの火力発電を行うための燃料というのはなくて、輸入しなければなりません。ウラン鉱石も海外に依存しているということで、世界的に、一次エネルギーの需要が増えれば、有限な資源ですので、それの不足というものは問題になってくると思いますし、それが日本にはもともとない、というところが大きな問題であります。

さらに、日本が抱えている問題としましては、原子力発電所の運用というのが、非常に厳しい状態にあります。発電設備としましては10パーセント以上の発電設備があるんですけど、それが今なかなか使えない状態にあり、あと火力発電所も、なかなか新規に作るのはむずかしい状況にあります。と。

原子力発電所には耐用年数がある

太陽光、風力発電等の自然エネルギー、これの導入量もなかなか増やすことができないという、こちらもなかなか厳しい状況が続いています。それが私たちの国が置かれている状況です。さらに、原子力発電所に関して、先ほど10パーセント分くらい設備があるというお話をしましたが、耐用年数というのがあります。これも経済産業省のホームページに掲載されています。

現在、耐用年数は40年です。そうすると、2030年代になりますと、半分くらいが耐用年数が来てしまいます。そうすると、廃炉の措置がはじまる。さらに2050年くらいにはもうゼロになってしまいます。40年だと短いので、もし60年に延長したとしても、2050年くらいにはもう半分以下になってしまうという状況にあります。これを回避するには、新たに原子力発電所を作るか、原子力発電所に代わる発電システムをなにか調達しなければいけません。

いま2017年ですから、2050年はあと30~40年の話なんですね。すでにある発電所ですが、例えば大型の火力発電所も新規に作るにしても10年くらいかかります。今まだ開発途上のものは、当然20~30年かかると思いますので、今のうちにこれに対して手当てを考える必要があるというところが、私たちの抱えているエネルギー問題だと考えています。

それと、私たちのエネルギーを支えるのは、ほとんど化石燃料というお話をさせていただきましたが、化石燃料を燃やすと温室効果ガスというものが発生します。それによる地球温暖化が最近ニュースで非常にたくさん取り上げられていると思うんですが、これはそのバランスを表している図になります。

温室ガスは増えすぎても減りすぎてもいけない

私たちの環境の気温を決めている源になるのは、やはり太陽光です。太陽光で地表が暖められて、7割くらいが大気・地表で吸収されます。1回吸収されたエネルギーはまた宇宙空間に向かって放射されていくんですが、私たちの地球の周りには温室効果ガスというものがありますので、また地表の方に戻ってきて、ある平衡状態になり、平均気温としては14度になています。

もしこの温室効果ガスがなければ、平均気温はマイナス19度くらいになってしまいますので、とても住めたものではありません。いま指摘されている問題といいますのは、この熱をまた戻してあげる温室効果ガスが、今度は増えすぎてしまっている。そうすると、地表の温度がどんどん上がっていって、異常気象を起こしたり、あるいは北極の氷が溶けて水位が上がり、地表が少なくなるといわれています。こうしたエネルギー問題と温暖化という環境問題は、密接した問題であるということが言えると思います。

ちょっとまとめますと、まず、私たちの抱えているエネルギー問題としましては、埋蔵資源の有限性と偏在があります。世界の人口の増大とエネルギー消費量の増加が、今後確実に見込める状況にあります。さらに、エネルギー消費量の多い国は資源を輸入しています。日本は、今極めて低いエネルギー自給率になっています。

これらをなんとかしなければいけないというのが、エネルギー問題であります。さらに、ここから派生するような問題として、一次エネルギーの8割以上を化石燃料に頼っているのですが、この化石燃料を消費すると温室効果ガスが排出されます。温室効果ガスが増えるということは、気温の上昇、あるいは気候の変化、海水面の上昇をもたらします。こういう環境問題も近年、深刻な問題と認識されています。

私たちはどのように電気を使っているか

じゃあ、こういう問題を解決するにはどんな方法があるんだろうか。ということで、太陽光をもっと活用することができないだろうか、ということが考えられます。太陽の放射エネルギーというのは、ここに非常に大きな数値が書いてありますが、だいたい世界の年間消費エネルギーを、1時間でまかなえるくらいのエネルギーが地表に降り注いでいます。

どれくらいのエネルギー密度かというと、大気圏外、つまり、太陽から地球くらいの距離で、大気を通さないところで平米1.4キロワットくらいです。だから平米当り電熱器くらいのエネルギーが、常に地球に注いでいるという状況にあります。

これをもっと有効に使えないかということなんですが、その前にちょっと、私たちがどうやって電気を使っているかということを復習してみたいと思います。電気を使う仕組みとしては、まず電気を作るところがあります。先ほど出てきました原子力発電所、火力発電所、水力発電所、こういったところで電気を作って、それを需要箇所、一般家庭ですとか工場、ビルに電気を運ぶ送電網というものがあります。

電気は、みなさん中学で習ったように、「オームの法則」に従います。この発電所から需要地までは電線で電気を送ります。電線の中を電気が通る時は、絶対に少しの抵抗がありますので、その抵抗で発熱が起きてエネルギーの損失となります。ですから、電流をあんまり流さないようにするために、高電圧で電気を送って、需要地の近くで低い電圧に変換して使っているというのが、私たちの電気の使い方です。

この時に、「電気を作る量と使う量が一致していなければいけない」、という条件があります。これは同時同量と言われています。原子力発電所、火力発電所、水力発電所でどうやって電気を作っているかというと、発電機が一定の周波数で回っています。例えば、こちらのエリア、関東方面ですと50ヘルツ、富士川をはさんで関西の方に行くと60ヘルツとなります。こちらの需要量が変化すると、需要が少なくなると発電機を早く回転させようとします。

太陽電池パネルのメリットとデメリット

一方、こっちの需要が多くなると、発電機の回転が遅くなるような働きがあって、周波数が変動してしまいます。そうすると、きちんと電力を送れないということがあって、電力会社は、使う量と発電する量、これが同じ量になるようにコントロールしながら電気を供給しています。

地上の太陽発電システムに関して、家庭用の一例を示します。最近、家庭用の屋根の上に太陽電池パネルがたくさん上がっているのが見られると思うんですけど、太陽電池モジュールで発電した電気エネルギーをインバータで交流に変換して、電力網に接続します。

家の中で全部消費されてしまえばいいんですけど、余った分は逆潮流と言って、商用系統に電気を供給する、売電ということが行われているんですが、この量が多くなってくると、先ほどの同時同量を成立させる制御が非常にむずかしくなってきます。

家庭用だけじゃなくて、最近ではこういうメガソーラーという発電所、太陽電池パネルを使った発電所がどんどん増えてきています。太陽光を使ってクリーンなエネルギーで非常によいシステムではあるんですが、この欠点としましては、安定した発電あるいはどれだけ発電するかというのが予測できないということがります。

あと、夜は発電ができません。快晴の日と曇り、雨の日で日射量が変化すると、それに応じて発電量が変化してしまって、しかもこの変化が読めないということがあって、先ほど出てきた同時同量を成り立たせるのが非常にむずかしいんですね。