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宇宙に漂う無数のゴミ「スペースデブリ」が人工衛星に当たるとどうなる? 

宇宙に漂う無数のゴミ「スペースデブリ」が人工衛星に当たるとどうなる? 

2017年8月3日、東京ウィメンズプラザにて、公益財団法人 日本環境教育機構が主催するセミナー「地球環境と宇宙太陽発電〜宇宙から地球へエネルギーを送ろう」が開催されました。講師を務めるのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)にて宇宙太陽発電の研究を行なっている田中孝治氏。未来の発電システムとして注目を集める宇宙太陽発電の仕組みと、その可能性について解説します。宇宙太陽発電とは、宇宙空間に太陽光パネルを打ち上げ軌道上で発電をし、その電力を地球に送るという壮大なスケールの発電システムです。はたして、実現することは可能なのか? ロマンあふれる宇宙工学の世界を紐解きます。

シリーズ
地球環境と宇宙太陽発電 ~宇宙から地上へエネルギーを送ろう~
2017年8月3日のログ
スピーカー
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科学研究所 准教授 田中孝治 氏

人工衛星を構成するパーツ

田中孝治氏 では、人工衛星の機能をブロック図で表します。人工衛星というのは大きく2つのパーツにわかれています。1つがバス部と言われているところで、これが人工衛星の基本的な機能を司るところです。電源があったり、地上と交信するテレコマン装置、人工衛星の姿勢を制御する姿勢制御装置、推進装置、パネル等の構造体、熱管理システムです。こういうもので、基本的なところが構成されています。 これに、ミッション部が搭載されます。ミッション部が人工衛星の目的になるところですね。例えば通信衛星だったら通信装置、科学衛星だったら科学観察装置です。 人工衛星の中は、この電源というところが大きな割合を占めるところで、太陽光で発電を行って、人工衛星の各機器を動かすというのが、衛星のかなり初期の段階から使われている仕組みということになります。 今、人類で一番大きな宇宙機というのが、みなさんご存知だと思うんですが、国際宇宙ステーションになります。この国際宇宙ステーションの羽根のようなところですね。ここが大きな太陽電池パドルになっています。1つの長さが、約35メートルくらいです。2つあって、だいたい70~80メートルくらいの長さになっています。これが1、2、3つ…いや、4本ですかね。4本あって、だいたい120キロワットくらいの電力を供給できるようなエネルギーシステムが、すでに宇宙で働いていることになります。 ちなみに発生電圧はどれくらいかというと、百数十ボルトです。これをレギュレーターで124ボルトにコントロールして、船内に供給しているというシステムになっています。 宇宙機の電力システムの概要なんですが、ほぼ家庭用の太陽発電システムと同じようなものです。太陽電池アレイ(注:複数の太陽光発電パネルを組み合わせたもの)があって、電力制御機があるんですけど、家庭用の場合はここがインバーターになっていて、50ヘルツなり60ヘルツなりの交流電力に変換をして、家庭内の機器に供給します。人工衛星の場合は直流ですべて動かしますので、電力分配器でそのまま直流電力を分配します。ほぼ家庭用の太陽発電システムと同じようなものが人工衛星にも搭載されていることになります。

いつか、空と宇宙の境目を観光できる日がくる

これは、比較的大電力の人工衛星の例を示したものなんですけど。昔NASDAが上げたADEOS、地球観測衛星ですと、8キロワットくらいの電力システムが搭載されていたり、その次のETS-VI、これもかなり大きな大型衛星ですけど、6キロワットくらいの電力システムが搭載されました。大電力になりますと、効率を上げるために高電圧が必要になってくるんですが、人工衛星の場合は100ボルトくらいがだいたいの最大電圧で、これより高い電圧になってきますと、高電圧と呼ばれる領域になってきます。 100ボルトといいますと、家庭用だとコンセントで使える電圧ですし、外国なんか行くと200ボルトくらいの電圧も普通に使われています。人工衛星では100ボルトを超えていくと高電圧という世界になりまして、特別な仕組みなり、放電を防止するような対策が必要になってきます。300ボルト以上は、特殊な機器以外では使われないというような環境になります。 こういう人工衛星が飛んでいる環境というのはどういうところかというところも、少し紹介させていただきたいと思います。地球の表面には大気の層があります。どれくらいの厚さかというと、20~30キロメートルくらいの大気の層があるんですが、これのサイズ(地球の模型)にするとほんの1ミリくらいの厚さにすぎません。 このスライドからは、そういうところに、ちょうど日没の太陽光が当たって、大気の層がオレンジ色になり、だんだん上空にいくと薄くなっていって、濃い色になっていって、最後は粒子が少ない領域になってくると、真っ暗な領域になるようすがわかります。こういう環境がどういうふうに使われているかというのが、この表は示しています。 地表で一番高いところ、エベレストのてっぺんが8,848メートルになります。その上空に飛行機等が飛んでいる領域がありす。さらに上にいって、高度100~200キロメートルくらい、これが空と宇宙の境目と言われているような領域になっています。 初期の宇宙観光は、この領域での弾道飛行で観光を行うということを目指して、例えばヴァージン・ギャラクティック社等が機械開発を行ったりということが今なされています。まだ宇宙観光は実現されていませんが、最初のターゲットはこの辺の領域が目指されています。

高真空と微小重力

さらに上の高度に行きますと、今度は人工衛星の領域になっています。先ほど紹介しましたように、高度400キロメートル付近に国際宇宙ステーションがあります。さらに上空36,000キロに行くと、静止軌道になります。先ほどお話ししたように静止軌道は非常に有用な軌道です。通信衛星があったり、気象衛星があったりと、そういう人工衛星で使われている領域ということになります。 こういう領域の特徴をまとめると、こうなっています。まずは、人工衛星が飛んでいる領域の特徴としましては、高真空があげられます。高真空ってなにかと言うと、周りにある粒子の数が少ない状態です。そうするとどういう特徴があるかというと、例えば太陽光が遮られないとか、太陽光が遮られないので、強い紫外線がある環境、あるいは太陽からの放射線が遮られませんので、非常に厳しい放射線環境になります。あと、周りに粒子が少ないので、物が蒸発しやすい環境ということになります。 ほかの特徴としましては、これは高度にもよるんですが、比較的低い高度ですとプラズマがたくさんある領域、電離層プラズマというのは聞いたことがあると思いますが、そういう領域もあります。あと、これから後で紹介しますが、デブリの存在も重要です。デブリが存在していたり、原子状酸素が多く存在しているところがあります。 原子状酸素というのは非常に反応性が高い物質で、人工衛星に使っているようなプラスチックフィルムを、どんどん侵食していったりというような影響があります。こういうものによって、人工衛星は損傷を受けたり、破壊されたりという可能性があるような環境でもあります。 あと、人工衛星等が飛んでいる環境の特徴としましては、微小重力がもう1つあります。私たちは地上では重力というのをあまり考えずに使っているんですけど、人工衛星で機能するもの、とくに機構装置なんかは微小重力環境下できちんと動くものを搭載しなければいけないのですが、なかなかこれを地上で検証するというのがむずかしい課題です。こういうところで発電所をわざわざ作っていこう、ということなんですが、もうちょっと紹介しますね。

宇宙に漂うゴミ、スペースデブリ

先ほど、粒子が非常に少ないところと紹介しましたが、じゃあ地上はどれくらいあるんだろうかと言うと、1立方センチ当たりにだいたい10の19乗個くらい粒子があります。手を動かしてもちゃんと空気があるということがわかると思います。私たちの頭の上には数十キロくらいの大気の層がどーんと乗っかっていますので、1,013ヘクトパスカルくらいの気圧がかかっています。 これがエベレストの頂上くらいにいくと、圧力が3分の1くらいになります。高度30キロくらいにいくと1,000パスカルくらいで、人工衛星の軌道までいくと、10の19乗個あった粒子が10の13乗個くらいの数、6ケタくらいの差があります。さらに静止軌道までいくと、1立方センチ当たり数十個しか周りにものがないような領域になります。 さらに静止軌道に至る途中、ちょうど国際宇宙ステーションが飛んでいるくらいの領域には電離層と言われる領域があります。プラズマ化した物質があります。そこは、あたかも金属があるような振る舞いをする領域でもあります。こういう電離層があるおかげで、昔よく短波が流行ったと思うんですけど、BBCの放送なんかを日本で聴けたりします。そういったご利益もありますが、電波の伝播に影響があります。 次に、スペースデブリについて紹介したいと思います。スペースデブリ、みなさん聞いたことありますか? あんまり馴染みがないですかね。これは宇宙のゴミです。『ゼロ・グラビティ』という映画を、みなさん見られていると思うんですけれど、あの映画の中で、ちょっときっかけは忘れてしまったんですけど、どこかの国が衛星破壊実験をしたのかな。それで、その衛星が壊れ、その破片がゴミとなって、軌道上にあるものを次々に壊していくというようなお話だったと思います。人工的な宇宙飛翔体の破片というようなものを宇宙デブリと呼んでいます。 これはちょっと昔のデータなので、今はもっと増えていると思うんですけど、だいたい今まで3,000回くらい打ち上げが行われていて、3,000トン以上のものが宇宙空間に持っていかれています。そのうちの95パーセント以上が、ゴミとなっています。問題なのは、このゴミが地球の周りを非常に速い速度で飛んでいることです。 例えば、国際宇宙ステーションと同じ軌道にもしそのゴミがあったとしたら、そのゴミの速度というのは国際宇宙ステーションと同じ速度で飛んでいるんですね。そうすると、先ほどの秒速7キロメートルというような値を紹介しましたけど、ゴミも7キロメートル/sで飛んでいます。

小さな破片でも人工衛星が破壊されるおそれがある

7キロメートル/sってどれくらいかって、なかなか想像つかないと思うんですけれど、先ほどちょっと出た大谷投手が160キロの剛速球を投げたとして、それはだいたい秒速40~50メートルです。ピストルの弾になると、それの10倍くらいの速さになります。7キロメートルというのは、さらにその10倍という速さになります。それがもし正面衝突すると、相対速度は10キロメートル/sを超えてしまいます。 そうするとどういうことが起きるかなんですが、これは学生が実験している一例を持ってきましたが、宇宙研に「二段式軽ガス銃」という装置があります。ここに直径7ミリのナイロン球があります。 IMG_3011 二段式軽ガス銃は、このナイロン球を約7キロメートル/sで打ち出すことができます。これを金属の物体にぶつけたら大きなクレーターが生じます。 IMG_3017 非常に小さい球にもかかわらず、この小さい球の直径の、数倍の大きさの大穴が金属板にあきます。これが人工衛星だとすると、こういう小さなものがぶつかっただけでも、非常に大きな被害が発生してしまいます。デブリ対策の研究というのはいろいろなされているんですが、太陽発電衛星のような大型宇宙機に関しても、デブリに関する問題というのは非常に深刻な問題になる可能性があります。 じゃあ、どれくらいの頻度でぶつかるんだろうかですが、これが非常に重要なんですけど、小さなものほどたくさん衝突します。断面積が10平米、だから3メートル四方よりちょっと大きいような板が宇宙空間に10年間漂っていたとすると、0.1ミリメートル径くらいのものだと、1,000回くらいぶつかります。 1ミリ径くらいのものだと10年間に1回くらい、1センチ径以上だと1万分の1回くらいになるんですが、7ミリの大きさでこれくらいの被害が出ますので、1センチ以上のものが人工衛星にぶつかったら、人工衛星はたぶん壊れてしまいます。こういう環境も想定したものを開発しなければいけないということになります。 こういう環境の中で発電所を作っていくというお話をこれからするんですが、その前に、なんでそんな研究をわざわざしているのか、というところをご説明していきたいと思います。

  

公益財団法人 日本環境教育機構tw_prof

日本環境教育機構は「ともに環境を考える」をテーマに、環境セミナーの開催や助成金の支給をはじめとした公益活動を行っています。
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