宮﨑駿の現場復帰について思うこと

乙君氏(以下、乙君):えー、次の話題にいきます。

「スタジオジブリ復活、宮崎駿監督『引退撤回』で新人募集」というニュースがありますが、まぁこのニュースは一応置いといて、なにか言いたいことはあるのかと、論客から。

山田玲司氏(以下、山田):あのね、俺けっこうね、『風立ちぬ』好きだったのよ。

乙君:絶賛してましたね。

山田:そう、「風立ちぬ」良い映画だよ。「風立ちぬ」のポイントでなにが良いっつーとね、「オタクはオタクでいいんじゃい」っていうね。

「人は好きなものだけやっていいんじゃい」「時代、関係ねぇ」「国連脱退忘れる、忘れる」精神で。

好きなもの作って、クレソン食いながら「忘れる、忘れる」って言いながら。

「自分が作ったもので何万人が死のうが関係ねぇ!」っていう人のエンジニアの叫びをアニメーターが作った。

つまりアニメを作ることによって「喜ぶ人もいれば、悲しむ人もいたはずだ」「関係ねぇ」「俺はこれがやりたかったんだ」っていう。1人の、個人の遺言だったんだよね、あれって。

乙君:なるほど。

山田:いろいろな部分あるんだけど、まぁ「風立ちぬ」の話はともかくなんだよ。まぁこういう傑作を描いてさ、気持ちよく引退したかったと思うんだよ。

ただ、クリエイター魂。「自分は生きている」「なにかしたい」。そしてなにか描き始めたら、「やっぱりやりたい」ってなっちゃうところも、俺は好きなんだ。

だから、宮崎駿謝罪会見しろって岡田(斗司夫)さん言ってたけど、別にしてもしなくてもどうでもいいよ。だっておもしろいもん。

乙君:みんなわかってましたからね、「絶対続くわ」みたいなの。

ナウシカはもう見れない

山田:ただし、みんなが待ってるものと、これから宮崎さんが作るものがどれだけ悲しい距離があるかっていうのはもう作る前からわかっちゃってるんだよ。毛虫(のボロ、2017年7月に公開予定)作ってる段階で。

要するに毛虫作ってる段階でもう1回生まれたいんだよ。あの人、タマゴ大好きだからね。タマゴからいっぱい孵化すんじゃんわーって、ポニョーみたいなさ。

あれってさ、新しい生命が吹き出すの大好きなんだよあの人。それはそういう過去があったから、生命に対するなにかがあるんだよ、そして母なんだよ。

で、みんながほんとに観たい映画っていったら、やっぱりナウシカでありラピュタであり。せいぜい、もののけくらいのものをみんなが待ってるわけだよ。

そしたらさ、もうどんだけがんばったって、みんなガッカリするんだよ。で、これは黒澤明が最後に撮った「夢」とかの映画もそうだけど、おじいちゃん映画っていうジャンルがあるんだよ。

それが、大監督が最後に作る映画ジャンルっていうのを、ハヤオに作らすなって話なんだよ。それはいくらか儲かるよおじいちゃんだから。だけどそれは遺言になっちゃうんだよ。

ノスタルジーと遺言なんて、「それやったじゃん」って話なの。あとはヘタすると、ヘタな遺言だからメッセージ性が強くなりすぎてお説教ぽくなってしまうのと、嫌なノスタルジーの、あの頃良かったってのが入っちゃうんだよ。

そんなん「みんな待ってねーよな」っつって。だったら「ナウシカ撮ってくれよ」って本音で思ってんだったら「ナウシカやれデモ」ってのを武蔵台でやればいいじゃないか。

「待ってるのはナウシカだ!」ってやればいいじゃん。結局でもそんなんふざけんなって話じゃん。最終的にこの宮崎さんが長編撮ったとして、必死でがんばるよ、新人アニメーション募集して。

そこでいろんな人たちが伝統芸の継承があるわけだよ、職人養成があるわけだよ、で、箔付けになるよね、俺は宮崎さん最後やったから。

いいところもいっぱいあるけど、最終的には興行的なジャッジに晒されて、最終的に宮崎さん、痛い、悲しい思いをする、そして日本が大嫌いになっていく、アニメが大嫌いになっていく、忘れられる、忘れられる。

忘れる忘れる忘れられる? みたいな感じになっちゃうじゃんハヤオが。お前そんなことさせんなよなって話なんだよ俺としてはさ。

だったらいちばんいいのはなにかっつーと、こいつを助けられるヤツは数人います。1人は大塚康生(宮﨑駿の元上司)さんです。

乙君:大塚康生さん。

ディズニーに移籍してはどうか

山田:はい。と、ジョン・ラセターです。あと、あなたの好きな鈴木さんもそうですけど。鈴木敏夫さんの話はまぁいいとして、ナウシカの話、宮崎さんがしてさ。

継承っていうのを言ってられる時代っていうのは80年代くらいまでで、実際に悲劇が現実になっちゃったときにあんなもん作れないっつってるからナウシカ作れないんだよ。

彼自身、策がないんだよ本当いえばさ。だったらこういうときは彼を被害者にしてしまったほうがいいと思うんだよね。もうね、拉致ですよ拉致。

だから「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」と一緒で、もう宇宙船で拉致って、ディズニーに置くと。そうするとそこにはジョン・ラセターが待ってるんだよ。ハヤオ、サムアップみたいな(笑)。

乙君:無言の。

山田:組もうぜ、みたいな。忘れる、日本の興行忘れる、鈴木敏夫忘れる。

乙君:敏夫も忘れる、やっぱり。

山田:問題は敏夫がそうなると黙っちゃいないっすから。

乙君:黙っちゃいないっすね。

山田:いま言ってるジョン・ラセターってのはディズニーのボスでありピクサーのボスですから、そしてハヤオ信者ですから、そしてハヤオの友達ですから。

ハヤオがものを作るときに、ラセターに観せられるかなって思いながら作るから、ラセターのために作ってるようなもんなんだよ。そのラセターが「ハヤオ、俺のために作ってくれよ、全部ワスレル」。そんときに敏夫に伝令が行きます。

乙君:伝令が行くんですか。

山田:「すいません、ハヤオさんのために一番よくわかってくれるあなたがメンタルトレーナーとしてディズニーに入ってもらえませんでしょうか、鈴木さん」。

乙君:おおー。

山田:もうハヤオのことなら任せろって鈴木さん思ってるから。で、もう待遇よくディズニー・スタジオに鈴木敏夫合流ですよ。

なかなかいいチームできたでしょ、そしたらラセターと組んで一緒にストーリーボード描いちゃう。宮崎駿の映画のつくりかたっていうのは基本的にストーリーボードをバーッて描いて、後づけで物語を作ってくってパターンだもん。

移籍すれば宮﨑駿の孤独も解決?

乙君:へえー。

山田:これはピクサーお得意技。ピクサーもストーリーボードやっててここちょっと矛盾あるよねとかみんなで考える。こういう場に宮崎駿置いてみ、どうなる? 孤独じゃなくなんだよ。

で、みんなCGは得意だけど手描きできないんだから。もう1人、ヨーダが来ちゃいましたっていう。

乙君:ああそうなっちゃいますね。

山田:東洋からヨーダが来ちゃいましたと。でね、鈴木大拙っているじゃない。要するにアメリカに禅を伝えた男。で、そのアメリカに禅を伝えた男が影響を受けた人間がルーカス、スピルバーグ、そしてあいつですよ、スティーブ・ジョブスですよ。

乙君:ほう。

山田:そう。だからハヤオに言うんですよ。もう一度、大拙になってもらえませんか。

乙君:なるほどね、21世紀の大拙になってくれませんかと。

山田:そうです。そしたらもう、ハヤオやる気まんまんですよ、「しょうがねぇな」って話になりますよ、そしたらさっき言ってた大塚康生さんって、なにかって話。

そこまでオッケー、康生さんの話しますけど、この体制を作ったときに、ハヤオがアウェイに放り込まれてる。で、無茶ぶりされるわけ。だけど、憧れの人はいるわけ、近くに。尊敬されてるわけ。これ。はい、カリオストロ作っちゃいます。

乙君:どういうこと? どういうこと?

山田:この「カリオストロの城」っていうのを作ったとき、最初大塚康生さんがやる予定だったの。大塚康生さんといえばアニメの大家だよね。サスペンションの康生さんだよね。

乙君:ああ、ああ、はい、はい、はい。

山田:ルパンの最初のシリーズを、投げられたシリーズを引き継いで、高畑さんと宮崎さんを引き連れてルパンのファーストシリーズ、奇跡のような名作を作ってからのマモーミモーのあとにつくんなきゃいけなかった「カリオストロの城」を。

「ちょっとやだな」「いいかな」ってなって、「ちょっとハヤオやれよ」って言われて「僕すか?」って言ったハヤオが作ったのが、あの「カリオストロの城」なんですよ。

だから俺はラセターに大塚やってもらいたいわけよ。ラセターの途中で宙ぶらりんになってる企画を「ちょっとさー、ハヤオさん、これやってくんねーかなー、100億出すからさー」みたいな。ディズニー資本だからアリでしょ。

そしたらなにその日本のアニメーター、ブラックだなんだとか言ってつまんないことで叩かれてるおじいちゃんが一気にお金のことは考えなくていいんですよみたいな。ワスレルですよこれ。

宮﨑駿のNASA批判を見たい

これミラクル起こっちゃうほんとに。最後に1つ言いますけど、僕もリクエストあります。なにを描いて欲しいか。俺、宮崎駿名言集いっぱい見ててね、とくに好きなのが、NASAを批判してるヤツなの。

NASAはね、すぐ火星に住むとかバカなこと言い出すじゃない? 「あんなとこ人行ってどうすんだっつの」「そんなことよりもサハラ砂漠に住めよ」って話じゃん。

「サハラ砂漠で人が幸せに住むようなことにお金使ったほうがいいに決まってんじゃねーか」って。なのにすぐに外に行こうって。これってさ、古い女じゃなくてさ、つねに新しい女がいいって言ってんだよね、っていう発言を言ってんすよ。NASA批判ですよ。

乙君:なかなか鋭い指摘ですね。

山田:NASAを批判する少女の話、観たいよねー。そして最後に言われたいよねー、アメリカ人がそれを観るわけだよディズニー作品として。

ハヤオの監督、そしてNASAがやってることって「ちょっと違うんじゃないですか」ってメッセージをバーンとして、最後に俺たち言いたいよね、「盗んだのは、アメリカ人の心です」

乙君:ふーーーっ!

山田:ありがとー! ありがとー! さよならー!

乙君:それで果たしてアメリカ人の心が盗めるのか、ちょっとまぁ。でもおもしろそう。

山田:9分で済んだよ、ありがとうみんな。

アンケート結果は…

乙君:えっと、では公式、ここまででいいですか。 アンケート 取りましょうか。

山田:やり逃げって言うなよ。がんばったんだよ。

本日の番組はいかがでしたか? 1,とても良かった 2.まぁまぁ良かった 3.ふつうだった 4.あまり良くなかった 5.良くなかった

アンケート採ります。 そんな感じです。

ああなるほどね。

山田:ハヤオ再生ですよ。ハヤオ再生して。

乙君:なんだかハヤオさんのことがもうね、あんなに俺観てねえんだよって言ってたのに。

山田:まぁトトロは観てないでーす。

乙君:それワスレルいぜんのシラナーイ。お、いい感じいい感じ、ありがとうございます。

1,とても良かった65.7% 2.まぁまぁ良かった24.1% 3.ふつうだった5.1% 4.あまり良くなかった2.3% 5.良くなかった2.8%

山田:マジっすか。ありがとうございます。

次回の予告

乙君:次回のオンバト公式生放送ニコ論壇時評は7月5日になっておりますね。これも時事ネタを中心にホットなヤツをね、玲司さんに斬っていただきたいと思います。

山田:玲司もピクサーに行ってっていうのがうれしいね。

乙君:そしてですね、このままいくんですけども来週のヤンサンの話をさせてください。 来週はですね、6月14日水曜日、夜8時からになっております。東村アキコをお呼びしましてさきほど終わりましたタラレバ娘の総括と今年の激動の、入院だのなんだのありまして、そういうものを語っていただこうかなと思っております。

そしてアッコ先生を作ったマンガとか、忘れちゃいけないのが海外ドラマ「フレンズ」、これを玲司さん。

山田:いやアッコがね、いちばんこの夏、この春、助けられたドラマは「フレンズ」でした、いまかー!って思ったんだけど、俺も「フレンズ」大好きだから、一緒に「フレンズ」とか「SEX AND THE CITY」の話でもしようかなと思いますわ。

乙君:そんな感じでワイワイやろうと思ってます。そしてアッコ先生への質問も募集しておりますがこれは公式というかチャンネルのほうでやりますんで。人生相談とかもあればぜひ送ってください。あとうちの番組のアニメ動画を募集してます、オープニングの。

山田:ディズニーの方も大丈夫ですから。待ってます。ピクサーの方も大丈夫です。

乙君:ジブリの方でもね。

山田:ジブリの方もね。

乙君:忙しいですかね。

山田:いや、うれしいですね。はい、手描きのヤツを待ってます。

乙君:こちらも募集しておおりますがチャンネル放送のほうでやります。ではでは、今日もありがとうございました。後半、じっくりたっぷり、「メッセージ」の話なども踏まえて。

山田:お前の反論も聞くぞ。

乙君:いや大丈夫です。そんな感じでよろしくお願いします。アスタ・ラ・ビスタ、ベイビー!

山田:ベイビー!

乙君:リンクから移動してください。

エヴァのシンジのようなメンタルの人は…

山田:逃げたな、ちょっと待てよ、逃げてないよ。

乙君:ああ流れてんのねこれ。いやー、でもわかりますよ玲司さん、言ってることは。

山田:だろ。ヤンサン映画だよ、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」。「ヤングサンデー・オブ・ギャラクシー」だよ。

乙君:だったら、やっぱり痛みが足りない。

山田:痛みの話は終わってんだよだから。

乙君:いや違うんです、だからそれは、終わってる人には届きますよ。終わってない人にはぜんぜんわからないですもん。

山田:そこなんだよな、だからさあ、俺ほんとすげー思ったのはそれね、だからシンジにね、乗れてね、ミサトさんはいいですよっつったときに周りのヤツがププッっつったらね、エヴァンゲリオン成立してねーなと思うんだよ。

乙君:あー、はいはいはい。

山田:だからそこに乗れる人と乗れない人がいるから、やっぱエヴァなんだなと思う。「あの映画、乗れる、乗れない」。

もちろん両方乗れる人いっぱいいるけど、エヴァのなかでもとくにシンジに入るくらいのメンタルのキツさにいる人は、まだガーディアンズにはちょっと乗れないよね。「俺は(特別だ)」って人はいるの、わかるけどね。

乙君:うーん。

山田:あなた着てるのは憎悪と憤怒でしょ?

乙君:いやそんなことはないですよ。ガンズ&ローゼズですよ。

山田:ああ銃と薔薇でしょ。

乙君:それはもうみんなハードロックとかメタル好きな人は苦しいのはいいからぶつけてやろうっていうのを、イェーイってやるのがまぁ。ロックンロールが過激化していったらこうなるんですよ、それはわかるんですよ。

で、その「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」は、もしあれが…ちょっと信ちゃんコーナー行きましょう。

山田:なんで? 言いたいことあったら言えば?

乙君:言いたいことっていうよりは、なんかやっぱりさ、70年代の音楽知ってればもっと変わったな、とかさ。

単純な話ね、そういうのもあるし、なんかいろんなこと知ってないとやっぱりこれもっと、あれ、どっか行っちゃった、わかんない映画なんだなとは思いましたね。

山田:いやあのね、ナイトライダーわかってたらものすごいおもしろいのはある。

乙君:とか、小ネタもそうだし、スーパー!とか。

山田:ただし、東方の三賢者までいってないんだよ。こいつどんだけオタクかって話なんだよ。だからがんばってここまで来てんだよ。ていうのはちょっとなーとは思うんすよ。

乙君:ちょっとこのへんで、あんまり言うと俺ファンに殺されちゃうかも知れないんで。

山田:ていうかそっち側もわかる。そっち側もあるんだよ。しょうがないなとは思う、それは。それくらいまだ本格的な地獄が日本に来てないからまだ。だから本格的な地獄が世界的に来てるから、だからみんな乗れるんだと思うよ。

乙君:でも俺はけっこうなんでも特殊なほうらしいので、感性とかいろいろ言われるけど、「変わってるからねー」「しょうがないよねー」みたいな。

だけど、しみちゃんはそうじゃないから、しみちゃんの感想をちょっと後半で聞きたいなと思ってます。

山田:みんなありがとねー。