スドケンのパフォーマンス論

田中研之輔(以下、田中):あと2、3人。どうぞ。もう聞いた? 聞けた? なかなか会えませんよ。どうぞ。

(会場挙手)

質問者12:さっき、質問力だったりとか、興味があることには貪欲になるべきって言ってたんですけど。会社で実際に活躍している人たちに共通して、感じる能力だったり、考え方ってありますか?

須藤憲司氏(以下、須藤):なるほど、グッドクエスチョンですね。活躍してる人たち。やっぱり、今やってることがおもしろいと思ってる人のほうが、活躍してる割合が高い気がするなぁ。当たり前のことを言っちゃって申し訳ないんだけど、「この仕事、ぜんぜん興味ないわー」って言う人が活躍してるイメージはあんまりないよね(笑)。

能力じゃないんだよなぁ。スキルとかでもないんだよね。楽しんでる人が、結果を出してるっていう感じがするけどね。そんな気がします。

田中:今そんな質問なので、ちょっと角度を変えて聞きたいなと思ったことがあって。パフォーマンス論なんですけど。

須藤:はい。

田中:ビジネスをやってると、パフォーマンスを発揮しなきゃいけないじゃないですか。例えば、月末までになにかパフォーマンスを発揮しなきゃいけないとき、人間の能力差はどの人もほとんどないと思ってるんですよ。だけど、パフォーマンスを発揮しなきゃいけないために向けた、計画性と準備。スキル差じゃなくて。そこの執着心で、すごくレベルが違うかなってあって。受験もそうなんだけど。

それを能力と呼んでしまえばそうなんだけど、スドケンさんって、ピークパフォーマンスをもっていくために、どうやって工夫してるのか。キャリアを考えないというのはわかるんだけど、パフォーマンスは出さなきゃでしょ? ビジネスだから。そのコツっていうか。

須藤:そのコツ。個人とチームとで、たぶん違うんですよ。僕の仕事って、会社の本業って、こういう場に来たらさ、それは個人プレーじゃん。別に誰かに、「社長、こう言ってください」って言われて、囁き女将みたいな人がインカムで喋ってくれるわけじゃないから(笑)。

こういうのは個人戦なんだけど、ほとんどの仕事はチーム戦なんですよ。みなさんが会社員になっていくと、一流のアスリートとかアーティストとかも、実は、チーム戦だと思うんですよね。その舞台に立つお膳立てをするためのチームだとか、本来は存在してて。その人たちとのやりとりとか、その人たち全体を含めたパフォーマンスを発揮しなきゃいけないので。

僕なんかそうですよね。会社なので、僕1人ががんばって「イェイ!」とかやってもしょうがなくね? ということを思っています(笑)。みんな全体で、パフォーマンスを最大化するためにどうしたらいいかという、まず発想に立ってますから。パフォーマンスの指標が、自分個人じゃなくて、わりとチームとかそういうことになる。

そうすると、やっぱり僕ね、結局行き着くところは、人をどう動かすかだと思ってるんで、人に対して、一人ひとりに対して、どういうコミュニケーションを取ったら、この人の気持ちが動くのかな、考え方がこっちに向いていくかなっていうことを考えてますね。

だから、自分自身のピークパフォーマンスをどう持ってくかというのは、すごく逆説的に言うと、自分の周りにいる人たちのパフォーマンスをどういうふうにピークに持っていけるかっていうことを考えるようにしてますよね。

理想の社長とは

僕個人の……、例えば、さっきのプレゼンの大会に出ますよね。新経済連盟のプレゼンは、2,000人で、英語でしゃべらなきゃいけなくて。めっちゃダメ出しされるし、超怒られるから。今でも覚えてるのは、俺が赤坂見附のカラオケ館で、たぶん6時間くらいプレゼンの練習をしてた。人に見てもらって、「どう?」って。「ちょっと今の流れが良くないですね」って、お前ふざけんなって思いながら(笑)。

でも練習するわけ。そういうのは、やるよ。若いときはね、そういう練習はすごく大事だったりするので、さっきのお膳立てとか、そういうのも大事なんだけど、どこかのタイミングからは、そのお膳立てとか、そういう準備みたいなことを超えて。だって、ここの教室に入って来て、このレイアウトになってて、「あれ、今日、俺大丈夫か。ぜんぜん事前の打ち合わせと違うけど、大丈夫かな」って、あるわけですよ(笑)。

田中:(笑)。

須藤:それは、慣れだよ。

田中:場数。

須藤:かな、と思います。

田中:その組織のパフォーマンスを持っていくのにすごく興味があって、ちょっと聞いてみたいんですけど。どうやってやるの? ここのチームをパワフルにしたいんですよって言ったら、やっぱり一人ひとりに時間取る?

須藤:僕は、一人ひとりに、まず時間取ります。

田中:素晴らしい。すごい。それは、1on1はどれくらいの? 30分とかやってる?

須藤:まず30分でいいから、とりあえず、俺が話すんじゃなくて全部聞きたい。「あなたは何をしてるの?」「あなたはどうしてるの?」。

田中:それは、どういう時間? スドケンさんとミーティングみたいな、スケジュールがバーっと入ってるの? みんな。

須藤:そうそう。

田中:それは、月1? 週1?

須藤:自分のチームは週1でやってますよ。もちろん。

田中:だって70人いますよね?

須藤:それはね、半期にいっぺんくらいやって。でも、だいたい「ランチとか行こうぜ」って誘って行ってる。個人の話を聞くのは、やっぱり1対1のほうがいいから。たぶんなんだかんだ全員と飲みとか飯に行ってますよ。

田中:いい社長だなぁ。ねぇ?

橋本真里子(以下、橋本):ねー。

田中:これができる社長はいないと思う。これ、やらないと思う。これを効率化させるのがピラミッドで、要は、ここに指令を出して、お前ら行っとけってやっちゃうから、ああいう組織になっちゃって。まぁ、300人くらいになると、またそうせざるを得ないのかもしれないけど。

須藤:それでも、1対1で行けなくても、じゃあちょっと3人一緒に行こうぜって言って、いろいろ話を聞きたい。

田中:それはリクルートで教わったとかあります?

須藤:いや、そんなことはない。飲みは好きですけどね。そんなことをしなくても飲みに行くから、行きましょうよって。

田中:『ゼクシィ』を立ち上げた渡瀬さんも同じことをおっしゃる。渡瀬さんも1on1でやる。それを聞いたときに、「本当ですか!?」って。すごく大変じゃないですか。だけど、大事なのね。

須藤:僕は大変だと思わないんですよ。人の話を聞くのが好きだから。「なんでそう思うの?」とか、すごく知りたい。

田中:30分×70人とか、思わない?

須藤:あ、ぜんぜん思わない!

田中:いいねぇ。

須藤:むしろ、一緒に営業に行ったりするほうが、それよりもさらに楽しい。「最近、何がおもしろいの?」って聞くじゃないですか。めっちゃおもしろい。

従業員が生き生きすることで会社は成立する

田中:なるほどねー。あと1人くらい。どうぞ。聞きたい人?

質問者13:須藤さんって、今、社長でいらっしゃるじゃないですか。須藤さんって、自分でやりたい方って思ったんですけど。逆に今、組織の中で、ほかの部下とかいるわけじゃないですか。仕事を振り分けていかないと、組織として成り立っていかないじゃないですか。須藤さんはどういうかたちで仕事されてるんですか? 下にどういう指示を出して、どこまでの部分で、自分が……。

田中:指示出しってことね。

須藤:指示出しね。例えば、僕の会社の場合、会社の組織図がピラミッドになってまして、社長が一番下なんですよ。それで、事業部があって。

田中:そうなの?(笑)。

須藤:そう。

橋本:逆ピラミッド。

須藤:そうそう、本当にそうしてる。それはすごく簡単で、俺は、お客さんよりも従業員が一番大事なんですよ。従業員が生き生き働かなきゃいけないんで、この人たちが最大にがんばってくれないと、会社って成立しないから。この人たちが、まず、キーマン。

もっと言うと、従業員の家族のほうがちょっとくらい上で、大事。なぜかって言うと、その人がご機嫌に働くためには、家族の協力が必要なんですよね。だから、けっこう、僕の価値観はそうですね。

マネージャーとかは、そのチームを支えている。指示出しすることって、ほとんどない。基本は、この人たちが自分の頭で考えて、自分で実行までやるから。困ったら助けるし、サポートするし、なんなら自分でやるけど。

あと、自分もマネージャーをやったりするので、そのときは、「どうする?」とか言いながらみんなで一緒に会議をして。昨日も夜22時くらいまで、1個1個エクセルのリストを作って、優先順位決めようって、1から6まで数字付けていくのを、3時間くらいみんなでやってました。普通に、いちメンバーとして。

田中:わかりました。みなさん。聞けましたでしょうか? あっという間で、もっと聞きたいんですけど。でも、スドケンさんのこれまでの考え方の核心部分にいくつも迫って、おもしろい時間だったと思います。第2回は、橋本さんにもまたお越しいただけるみたいなので。

スドケンさんが出してくれるメッセージと自分もすごく似てる部分もあるんだけど、要は、みんなが次の時代を作っていくと思ってほしいなと。歯車になって、せっかく生きてるのに、何十年もただ組織の中でというよりは、やっぱり作り手になって、それは立場っていう意味じゃなくて、それぞれの場所でそういうふうになってほしいなと思うので。

今日はどうもありがとうございました。

須藤・橋本:ありがとうございました。

(会場拍手)