70年代のアイドルからおさらい
山田:平凡と非凡の間を行き交うアイドル文化です。
乙君:どういうことですか?
山田:わかんない。先週、散々「平凡になろう。非凡撲滅、おかしい」みたいなことを言って。アイドル自体そもそも、そういうことをずっとやってて、これちょっとおもしろかったんだけど。
まず、三人姉妹とかこまどり姉妹だとか、ザ・ピーナッツとか、若尾文子さんとか、その時代は。
乙君:若尾文子。
山田:もうついて行けないから、ギリギリみんながついて行けるんじゃないかっていうところから始めます。
乙君:はい。
山田:70年代のアイドルから。
乙君:はい。
山田:キャンディーズ、ピンクレディー、山口百恵っていますけど。
乙君:なるほど。
山田:この時代、天地真理とか。
乙君:あー。しみちゃんの好きな天地真理。
山田:基本的に、みんなちゃんとしたお嬢さんで、結婚とかされるわけよ、二十歳で。
乙君:確かに。
山田:だから、キャンディーズは、隣のお姉さんチーム。で、ピンクレディーは夜のお姉さんなの。で、両方ともファンタジーっていうのがあって。普通の女の子になりたいなんつっちゃってるわけ。
乙君:うん。
山田:だからもう思考が、これ70年代がとくにそうなんだけど、70年代っていうのは、もう疲れてるからさ。もちろん4畳半の時代だから。
乙君:はい。
山田:だから、もう無理したくない。
乙君:なるほど。
山田:普通でいいやって思い始めた時代なんで、やっぱこれ平凡だった。
乙君:はい。
聖子、明菜、キョンキョン時代へ
山田:問題は、そこから好景気に向かっていくに、(松田)聖子、(中森)明菜、小泉(今日子)時代が来ますね、これ。
乙君:はい。
山田:こうすると、スーパーカワイ子ちゃんの時代が始まるわけなんですけど。
乙君:なるほど。
山田:この、いかに非凡かっていうことだよね。
乙君:なるほど。
山田:もうどうかしてるんだよ。小泉になると、もうポストモダン入ってくるんだよ。
乙君:『なんてったってアイドル』って小泉ですよね?
山田:そう。なんてったってアイドル。これまさにポストモダンなの。
乙君:もうポストモダンなんですね、完全に。
山田:そう。しかも、結婚とかする気ねえし。最初から。でも聖子の場合は、結婚は利用するものなんだよ。
乙君:なるほどね。
山田:だから、ここもちょっともう平凡とは違うけど。
乙君:何だっけ。ガブリエルだっけ。
山田:いいんです。聖子の話長くなるんで。エクスタシーなんでね。そんなこんなで80年代がありますわ。
乙君:はい。
80年代以降はエキセントリックに
山田:そうすると、平凡から非凡で、この時期っていうのは、このあと、ほとんど病気なんて言ったりですね。乙君:え?
山田:知らないか。ポストモダンの時代なんでね。
乙君:ほお。
山田:どんどん普通じゃないってことがおもしろいってことになっていく。で、バンドブーム。メイクする。竹の子族みたいな流れからずっと、どんどんエキセントリック祭が始まっていくわけですよ。
乙君:おー。
しみちゃん:はい。
山田:それで、普通の人たちがものすごく頑張って、普通じゃない祭を始めるっていうのが、追従の繋がりになるのが、この流れなんだけど。
乙君:はい。
山田:問題は、もう1回80年代中期になると、バブル直前なんだけど、やすす(秋元康)登場で。
乙君:はい。
山田:上がり過ぎたアイドルを、もう1回ガーッと下げて。
しみちゃん:オールナイトフジだ。
乙君:雲の上の存在じゃなくって、その辺にいるような、クラスのっていうやつですね。
山田:聖子、明菜の時代に、オールナイトフジで、普通の女子大生もいいよねっていう流れがあったので、普通の女子高生引っ張り出して、超平凡っていうのを作るの。
乙君:なるほど。
山田:これが80年代中期。
乙君:はい。
85年以降に非凡なアイドル需要
山田:ただ、時代はそれを許してくれない。バブルがある85年のプラザ合意以降、日本がおかしくなってきた。どんどん「ジャパン・ワズ・ナンバーワン」になっていって、後期バブルになると、また非凡に行くんだよ。
乙君:ほー。
山田:もうWink。
しみちゃん:来た!
山田:もうおかしいですよ。
乙君:笑わないもんね。
山田:そう。これが、後のドール化に繋がってきます。
乙君・しみちゃん:ほー。
山田:そして森高も、ドールっぽいんです。
乙君:ドールっぽいね。
山田:だけど森高は、「私がオバさんになっても」とか言って、まだ中身があるんですよ。私がいる。
乙君:いや、本当にいい歌いっぱいあるんですよ、森高。
山田:この人アーティストでした。だけど、必死でついて行けるオタクたちの。
乙君:ドラム叩くしね。
山田:オタクたちの体力があったから。精神的な体力が。
乙君:はい。
山田:バブルだから。
乙君:はい。
山田:だからそれが、だんだん疲れてくる。もちろんこの当時、スーパーカワイ子ちゃんの時代だから、観月ありさ、宮沢りえ。
乙君:これ観月ありさなの?
山田:そう。ありさ(笑)。
乙君:ありさ(笑)。
山田:ありさ、りえ、後藤(久美子)来ますね、これ。
乙君:何で宮沢なんだ(笑)。りえじゃなく(笑)。
山田:来ます(笑)。うるさい(笑)。
乙君:玲司さんの、心の距離感が、何かわからない。ありさのほうがタイプ。
しみちゃん:カタカナだしね(笑)。
乙君:りえは、あんまり(笑)。
山田:これは要するに、普通でいいじゃんって言う人たちもいたのに、意識が、日本の経済と株価と。NTT株と同時に、女たちの自意識も上がっていくわけですよ。
乙君:ほー。
山田:それで、もう普通じゃなくなってくる、これ。
乙君:なるほど。
山田:これが、止められなくなっていくわけですよ。だから今の40代後半ぐらいの人、40代半ばぐらいの人たちは、この時代に青春を送っちゃってるもんだから、大変。
乙君:はい。
山田:だから、その上がり過ぎちゃった自意識みたいなもの? 特別感みたいなものが、上がれなくなるみたいな。これまた非凡繰り返すわけですよ。
乙君:なるほど。
山田:だから問題は、ここから混沌としてくるんですよ。ちょっとおもしろくなってきますね、これ。ここから。
バブル以降は「小室派対宇多田派」
乙君:バブルが。
山田:バブル弾けます。
乙君:弾けました。
山田:小室(哲哉)派対宇多田(ヒカル)派に分かれます、これ。
乙君:小室派対宇多田?
山田:小室派っていうのは、要するに天才・小室について行こうという、普通の人たちチームなんだよ、これ。
乙君:うん。
山田:だから、基本的に平凡派なの、この人たち。
乙君:はい。
山田:ただ、黒船来ちゃうんですよ。黒船・宇多田は非凡で来ちゃうわけ。もう「才能あるし、ウチ」みたいな。
乙君:本格でしたよね、こっちはね。
山田:このプロジェクトはともかく、この人普通になれないって大変だから、人間活動するぐらい、この人異常だったわけ。
乙君:うん。
山田:ってぐらい、スーパーだったわけだよね。で、同時に90年代っていうのは、これメンヘラ文化の始まりでもあるんで、非凡コスっていう椎名林檎登場。
乙君:どういうこと?
山田:混乱してくる。この人実は、普通なんだけど、普通じゃないっていうフリをしているコスプレをやってるところあるの。
乙君:なるほど。
山田:ここになってようやく、この人複雑なんです。この人、実は。非常に複雑。内面。
だから表現方法が複雑なんで、行き来するって言うか、わざとフェイクも入れてくる。っていう、何か演じるってことも込みになってきてしまう。
ただ問題は、ここで混沌とした90年代。バブル後半のお祭りやってるときに、やって来ましたよ、ここに、ほら。
乙君:もしかして。
山田:SPEED、安室(奈美恵)登場します、これ。
乙君:アムロって言い方が…(笑)。
山田:イントネーションが(笑)。
乙君:振り向くなー。勘違いさせるからー。
山田:わかりました。お父さんにぶたれたことないのに(笑)。
乙君:アフロですからね、アムロは(笑)。
山田:はい。ごめんなさい。これが、沖縄アクターズブリッジっていうブリッジがかかります、ここで。これなにかって言いますと、努力すれば非凡になれるっていうのを、やるんです、この人たち。
乙君:なるほどね。
モー娘。の台頭
山田:特に、安室のうしろにいたMAXの人たちやSPEEDは、それを、あったね。これ、アイドルの人たちって、ダンススタジオにもともといた人たちが多くて。その人たちはこれのブリッジを経過して、ここから、ある種新しい世界に入って行くんだけど、そこからですよ。問題は、ここのモーニング娘。の発明に繋がっていくわけ。
乙君:発明なんだ。
山田:これ、『浅草橋ヤング洋品店』っていう。
乙君:はい。『アサヤン』ですね。
山田:アサヤンです。そこのテレビ東京。だから、東京ローカルに近いぐらいの、地方局に近いぐらいの局で始まった、バラエティー番組で。
乙君:オーディション番組。
山田:ガチンコファイトクラブとかやってた時代なんです。
乙君:そうですね。
山田:そのノリの中で。
乙君:素人の。
山田:そう。パッとしない女の子たちが、アイドルになるっていうのを、ずっとドキュメンタリーで追いかけて、これ、一種の発明だったわけ。
乙君:なるほど。
山田:それまでは完成品。もしくは密室で生まれていた。黒船外から来る、みたいな。この辺は千葉から来るんだけど。
作るところから見せちゃう。そうすると、どうなるかっていうと、俺たちのモーニング娘。になっちゃうんだよね。
乙君:はー。
山田:これはなかなかすごい。これが決定的に、その後のAKB文化を作ってしまう。
乙君:そうですね。確かにここ、SPEEDと安室奈美恵か。もうレイって言いかけちゃうわ(笑)。までは、何かこの事務所って言うかね。
山田:そう。大人がいるの。
乙君:ちゃんと養成所みたいなのがあって、そこからたたき上げられてきた人って感じですけど、ここ、本当にその経過までの。
山田:技術がいらない。
乙君:その素人臭さがね。
山田:そう。ただ、じゃ、素人の文化がなかったかって言うと、おニャン子なんかそうなんだけど、おニャン子が頑張ってレッスンして、スーパーになる。武道館目指すとか言わなかったよね。素材だけそのものでいけちゃったの。
だけど、あの時代はもう許されない。この時代はもう、弱肉強食時代が始まってるんだよ。バブル崩壊で、どんどん時代が最悪になっていくから、タフでなければいけない、みたいな。
だから、なかなかその、ローカルっぽいし、ブルーカラーっぽいんだよね。モー娘。っていうのは。で、そのつんく♂自身が、わりとブルーカラーの匂いがするわけ。
乙君:そうですね。
山田:要するに、レペゼン大阪じゃん。
乙君:レペゼン大阪ですね。
山田:浪速の根性っていう、何かそういうのがあって、違うんだよ、もう。都市型のものとは。
っていうのがここで来て、これにみんな乗っかるんだよ。頑張んなきゃって気持ちを代弁してくれるんですみたいな感じのモーニング娘。。
乙君:モーニング娘。だと。
山田:当時、大嫌いでした、僕。
乙君:最後にさ(笑)。
ゼロ年代構想とはなにか
山田:その話はあとでします。何で俺がこんなふうになったか。今つんく♂さんのことはすげえなと思ってます。だけど、当時は「ふざけんじゃねえよ、コノヤロー」っていうのは、「日本の未来は誰もうらやまない!」って。「世界はうらやみません!」って言ってました。
そんなことはどうでもいいんですけど(笑)。そんなこんなで50分。やばい(笑)。
問題は、そのあと、ゼロ年代構想っていうのがあって。
乙君・しみちゃん:はい。
山田:非凡を目指す、平凡少女。
乙君:はい。
山田:これ、要するにモー娘。たち。この1軍っていうのが頑張るわけよ。平凡なんだけど、本当は。だけど、バーサス、スーパー歌姫の時代がやって来るわけだよ。
乙君:スーパー歌姫とは。
山田:浜崎あゆみ、倖田來未、aiko、元ちとせ、MISIA。もうみんな歌姫、歌姫。この人たちは、もう抜群の歌唱力で勝負してくる。これがまた同時代に起こってるのが、ゼロ年代の頭。
乙君:なるほどね。
山田:そう。
乙君:Yukiもそうですよね。
山田:そう。ここで何が起こってるかっていったら、やっぱり平凡対非凡の戦いが、ここでまた起こってる。
乙君:ほー。