ハリウッド、ディズニーに対する嫉妬
西野亮廣氏(以下、西野):いや、今日来てよかった。いい番組っすね。
亀山敬司氏(以下、亀山):なんじゃそりゃ(笑)。
西野:やっぱり具体的に話が進むほうがいいっすわ。
亀山:そうそう。
西野:ちょっとすいません。僕本当にこうやって本番中に連絡先を交換させていただいたの初めてですわ。
亀山:じゃあ仕事やろうか(笑)。
西野:絶対やりましょうね。すぐやりましょうね。
亀山:やるやる……いや、この仕事(収録)やろうぜ(笑)。
西野:これ仕事なんですね。忘れてた。もう本当に収録どうでもよくなってきてるんですよ(笑)。
亀山:(笑)。
西野:テレビをやっていて、自分がすごく尊敬してる先輩方が、ハリウッドスターが来たときに「ようこそいらっしゃいました!」ってやるじゃないですか。もう悔しくなってきて……。「なんでハリウッドに負けなきゃいけないんだ」と思っちゃって。
亀山:なるほど。
西野:ディズニーの新作が出たら、もう日本中がこぞって取り上げるのが……。僕は日本が好きなんでだんだんムカついてきて、「これは潰さないと」みたいな。
亀山:(笑)。
西野:じゃないと、この嫉妬がなくならないですね。あれを倒さないと。
世界に誇れる日本のアニメ
亀山:まあでも、結局勝負できる世界があるとしたら、やっぱりアニメとか3DとかCG系とかかなとは思うね。
やっぱりどうしても民族の差があるからさ。どんなにいいモノを作っても、やっぱりイエローじゃない。やっぱりホワイトが中心になってくるし。
西野:はいはい。
亀山:それでいうと、やっぱりアニメは世界に誇れるだけの原作があるし、実際に海外からもアニメに関した引き合いが多いし。うちもゲームをやってるけどね。アダルトゲームの場合は海外でもいけるし。
西野:ああ、なるほど。
亀山:普通のアダルトだったらもうコピーされて終わるわけよ。でもゲームってコピーできないからさ。だから、それだと世界を狙えるわけよ。
西野:日本の強みというのは何ですか?
亀山:それでいうと、やっぱり2次元は強みなんじゃないかな。
西野:2次元?
亀山:3Dでもいいけど。要は、アニメとかそういった分野のコンテンツは強いね。やっぱりアイドルとかもまだ弱いじゃない?
西野:やっぱりそうですか?
亀山:アイドルもやっぱり、どうしても人種の壁があると思うんだよね。
西野:確かにね。
亀山:まあ韓国とかはがんばってるわけよ。彼女らは初めから英語とか日本語とか全部勉強から始めて、戦略的に海外を狙うというのがあるじゃない?
西野:そうですね。
亀山:日本はマーケットが中途半端に大きいから。
西野:そうですね。ここで回せますもんね。
亀山:吉本ももう、「大阪のおばちゃんでも稼げますみたいな」ところあるじゃない(笑)。別に世界に行く必要がない。
西野:そこである程度回っちゃうから。
ディズニーランドの知財戦略
亀山:別に日本のアニメも日本しか目指してなかったんだけど、たまたま他から見たらレベルが高かったから。
最近、中国は日本の絵を真似ていいものを描くようになってきたんだけど、やっぱり原作のストーリー的なものとか、そういうものはなかなかできないんだよ。その部分はやっぱり時間がかかる。10年20年じゃ真似できないみたいな。
西野:なるほど。
亀山:それでいうと、フランスの老舗の服屋とかバッグ屋みたいなもので、日本のその部分というのは、しばらくみんながほしがるわけだよね。
西野:なるほど。
亀山:でも、これを海外も含めてもうちょっと大きいものにしないと。
西野:そうですね。
亀山:みんなほしがるから、制作会社自体が買収されそうなんだよ。権利がどんどん持っていかれて、制作会社を買収されるって感じ。
西野:ふんふん。
亀山:それよりかは、外でちゃんと儲かる仕組みを作らないといけないなと思ってる。それでいえばやっぱりディズニーはうまいよね。
西野:うまいですね。
亀山:やっぱりIP(Intellectual Property=知的財産)の使い方というのは、もうはじめからディズニーランドに落とす計画までちゃんとあるわけじゃん。ちゃんと映像で売り込んでから。
西野:あれは見事ですね。
亀山:日本でのアダルトというのも結局仕組みが大事で。俺はもともと売り切りだった時代に委託にしたわけよ。3ヶ月に100本とかビデオを送って、3ヶ月経ったら返してくださいみたいな。100本やって80本返って、20本お買い上げみたいな。だから営業マンがいらない。
西野:なるほど。
亀山:そうやって、委託販売だとどんどん棚が増えていくわけ。棚が増えると、今度はPOSを無料で配って。そうすると何が売れたかというデータがどんどん入ってくるじゃない。
それで効率が良くなると、ほかよりも1.2倍とか1.5倍とか多く売れるわけ。多く売れると今度はギャラも多く出せるので。どんどんいいほうに回っていくんだよ。
作品の質があがって、流通もよくなる。だんだんシェアが大きくなると、発言権が多くなるから、支払いも「他に払えなくてもうちだけは払ってくれる」とかね。
西野:そういう仕組みをね。
亀山:仕組みってけっこう大事で、AmazonとかApple StoreとかYouTubeとか、いろんなプラットフォームの仕組みがあるじゃない? そういうのはやっぱりアメリカのほうがうまいよね。
西野:うまいわ〜。なんかむかつくんですよ。「これいい!」とか思ったら、だいたいディズニーやってたみたいな。
亀山:そういう貪欲なまでに、「1つのキャラクターをどう売り込むか」みたいなことはやるよね。
西野:あいつらうまいっすよね。
亀山:だからその分投資できるのは当たり前で。はじめから5〜6種類のキャラを作って、子供がどれに食いつくかという市場調査もやるわけよ。
西野:やってるんですよね。
亀山:そうそう。「ここに(子供の)集まりが多いから、このキャラクター」とかやって(笑)。
今の人は「モノ」ではなく「体験」にお金を払う
西野:ムカつく。悔しい……この番組で前、お話ししたんですけど、絵本を売ろうと思ったときに、1冊目とか2冊目とか出したんですけど、たいして売れなかったんですよ。
これは売れないと作ったことにならないから、売るまでの導線をきっちりデザインして、もう作るだけ作って売ることは人任せという育児放棄を1回やめちゃって、ちゃんと売ろうと思ったんですよ。
亀山:はいはい。
西野:「じゃあ、売れてる作品ってなんなんだろう?」って。作品は生活する上であんまり必要じゃないけど、「売れてる作品って何があるのかな?」と考えていったら、例えば、シンガーポールのマーライオンの置物だとか、広島の宮島の三角形のペナントだとか。
亀山:昔あったね。
西野:あんなん買ったじゃないですか。
亀山:うん、あったあった。
西野:「作品にはあんまりお金は出さないけれど、思い出にはお金を出すな」と思ったんです。それで、「そういえば、おみやげって売れてるぞ」と思ったんですね。「こんだけ時代が変わってるのに、おみやげ屋さんって今日も元気だな」とか思って。
「なんでおみやげって買っちゃうのかな?」と考えたときに、思い出を残すための装置として必要だと。
亀山:なるほど。
西野:それで、「そっか、おみやげだ!」と思ったんですね。自分の作品をおみやげ化しちゃえば、必要なものになると思ったので。
絵本をそれまで3冊ぐらい描いていて、絵本の原画があるので、原画のリースを無料にして、全国誰でもどこでも自分の原画展を開けるというふうにして。
大分ではサラリーマンの方が、横浜ではOLさんが、名古屋では中学生が文化祭の演し物として、自分の原画展を開けるようにしてあげて、「出口で絵本を売らせてね」と言ったら、この絵本が超売れたんです。
つまり、絵本として売れたというか、どちらかといったら、おみやげとかグッズとして売れた。「これでいいんだ」「体験とおみやげでいいんだ」と思って。
それで「モノが売れるんだ」と思ったら、「そういやディズニーランドがそうだな」と思ったんです。ディズニーランドこそ世界最高峰のおみやげ屋さんだったんです。
亀山:なるほどね。
西野:体験が楽しければ楽しいほど、その体験を残そうとするから、あの出口でグッズをバカスカ買っちゃうよなと思って。なんかむかつくんですよね。
亀山:だから、若い子は金払ってスマホの動画を見ようとは思わないけど、ライブとかには何千円、何万円ってなけなしのお金を払っても、あの一体感と体験を買う。
西野:そうですね。
亀山:うちらも「VR THEATER」というのをやっていて。これはホログラムでやっているんだけど。結局、その会場に行って、みんなでワッとやる体験ができるんならお金を払うという。
西野:体験ですね。
亀山:体験がほしい。
西野:体験。
亀山:うん。
西野:体験と出口のおみやげですね。
亀山:そう。最近中国人も爆買いから、もう爆体験みたいなことになってきてるけど。
西野:ああ。
亀山:彼らも早いよ。
西野:早いっすね。
亀山:もうバカバカ買ってたのが、もう最近は「おいしいもの食べたい」とか「どこかの旅館泊まりたい」とかになってたりね。
西野:そっちじゃないですもんね。
亀山:やっぱりみんな、もう食うもん食って、ほいしいものを手入れたら体験しかないからね。
西野:体験に流れちゃいますね。でも、そこをいろいろ考えてるディズニーが全部先回りしましたね。むかつく、本当に勝ちたい!
ビジネスの起爆剤になるコンテンツ
亀山:いやいや、まあ別にいいじゃない。別にディズニーは気にしなくても、マイペースでいけばいいよ。彼らは彼らですごいなとは思うしね。
結局仕組みが大事だって言ってるけど、始めはどうかというと、単にどこかのおっちゃんがネズミを描いたりしたところから始まって、そこから火が点いたということがあるわけよ。みんなそれがおもしろいと言ってね。そのあとの人たちがビジネス的にどんどん展開していって、組織っぽくなったと。
それでいうと、例えば、ゲームを作るときでもやっぱり起爆剤があるわけよ。うちらは昔でいうとエロかな。
みんなコンテンツを見たいから来るじゃない。そこで新しいいろんな体験から別のモノを売っていくとか、プラットフォームを作っていく。だから、スタートのときにはやっぱりコンテンツがいるわけよ。起爆剤が。
西野:そうですね。
亀山:だからそれでいうと、やっぱり世界でも認められそうなものが必要なんだよ。
西野:なるほど。
亀山:そうそう。前、紀里谷監督と映画をやったんだけど。日本人は1人しか出てなくて、あとはもう外国の人。
それはあんまりうまくは売れなかったけども、ちょっとやってみようかなと思うのは、彼が世界のマーケットで勝負したいと言ったから。
西野:あれも本当におもしろい男ですよね。
亀山:うん。それでルーマニアかどっかで撮るとか、そういうのがあったから「じゃあ、やってみよう」みたいな話だったの。
西野:へえー、なるほど。
亀山:今までと同じようなスタイルで、「日本で〇〇で放送して、DVD売って、こうやります」というモデルだと、あんまりおもしろ味がないし。
だから仕組みは俺が作るけど、そのなかで売れるコンテンツとかは、やっぱり情熱がいるのよ。パッションとか思い入れがないとさ。俺ははっきり言ってコンテンツにはなんの思い入れもないからね(笑)。
西野:(笑)。
作り手へのリスペクトを忘るるべからず
亀山:俺、『艦これ』やったことないし(笑)。
西野:だからいいんだろうな。なんかフラットにいけるんでしょうね。
亀山:うちの作品なんかほとんど見たことないから。
西野:なるほどね。
亀山:でも、俺だけではダメなのよ。俺だけでは仕組みしかできないから、本当に感動させるものができない。
西野:なるほど。
亀山:だからゲームであれ映像であれ、それはやっぱりそういうやつらが、なんかもう「何この1つの手のサイズだけでこんだけもめてんだ?」みたいなあるじゃない?
西野:はいはい。
亀山:やっぱりそういうのを見てると、「うわっ、すげー」と。
西野:そこはもうぜんぜんノータッチなんですね。
亀山:夜中までやってると、「お前らすげーな」みたいな(笑)。
西野:そこも口出したりされないんですか?
亀山:いや、そこは別に俺の部分じゃないから。
西野:違うんだってなるんですね。
亀山:というか、そもそも失礼だよね。
西野:言っちゃうと?
亀山:言っちゃうと。だって、もうみんな風呂も入らないで一生懸命やってるわけよ。たぶん自分の世界観のなかでやっていて、自分が「こんな部屋作りたい!」ってときに、俺がいきなりダサいぬいぐるみを置こうとしたら、「勘弁してよ」ってなるじゃない(笑)。本気で作ってるときに嫌じゃない。そんな話じゃないかな。
西野:いや、おもしれー。
亀山:だから、できあがったら売りに行くよっていうことで。
西野:お願いしますよ。僕Facebookでしつこくメールしますからね。
亀山:(笑)。
西野:「大将、ぜんぜん話進んでないじゃないですか」って行きますからね。
亀山:大丈夫、大丈夫(笑)。うちは決裁早いから。
西野:やったよ! もう飲みに行きたいですね。今日4本撮りなんですって。
亀山:(笑)。
西野:これしまったな〜。飲みに行ったらよかったですね。亀山さんが最後だったらよかったんですよ。このまま飲みに行けたじゃないですか。
亀山:そうだね、まあいいよ。今日は23時以降なら飲んでもいいよ。
西野:マジっすか? 夜空いてるんですか?
亀山:たぶんその頃になったら空くかな。もうちょっと先かな? まあ24時には空くよ。
西野:もう具体的な話がいいんですよ。この話があって、こう進んだみたいなことがけっこう好きなので。
亀山:でも、吉本通してやるんじゃないの? 大丈夫?
西野:ちょっとその話も追々しましょうか(笑)。
亀山:(笑)。