史上最大の素数の発見
マイケル・アランダ氏:地球と太陽の位置関係がちょうど今くらいの位置関係にあった頃から、今に至るまでに起こった、いいことやそうでないことに思いを巡らす時がやってきました!
地球上の科学にとってはまたとない1年となったこの年ですが、「SciShow」では最大の、最古の、最速の、もっとも驚きだった2016年の発見にスポットライトを当てたいと思います!
1月初頭に史上最大の素数が見付かったとの知らせが駆け巡りました。小学校の算数で習った記憶はあるかと思いますが、素数はその数自身と1のみで割り切れる数です。
その具体的な数字を言うと1ヵ月はかかってしまうので言いませんけどね。2,200万桁にもなる長さですから。簡潔に言うと、2の74,207,281乗-1と同じ数です。
2のn乗-1で表せられる素数をメルセンヌ素数と言います。
この最大の素数はメルセンヌ素数検索事業、GIMPSによって発見されました。インターネットにつながれた複数のパソコンを利用して今まで利用されていない素数を探したのです。
このメルセンヌ素数検索事業というのは、個人個人がプログラム処理の一端を各個人のコンピューターで担うというかたちをとっている、地球外知的生命体調査団の様な市民科学研究事業です。
GIMPSはこの新しいメルセンヌ素数を、素数ではないかもしれないメルセンヌ数の中からふるい分けして見つけ出しました。
例えば、2の4乗-1は15で、3と5でも割り切れますよね。
そもそも、私たちが素数にこだわるのはどうしてなのでしょうか。単に数学的喜びのためだけにではありませんよ! もっと重要なことのためなのです。
素数を使えば、クレジットカードを危険から守ることができます。あなたがインターネットで何かを買う時に使うクレジットカード番号はカード情報を守るために暗号化されます。
ほとんどの場合に用いられるのは、2つの大きい素数を掛け合わせて暗号化した情報を介するRSA暗号方式です。
力づくでその掛けられた2つの素数を分解し、クレジットカード情報を盗み出すのは至難の業なので、販売元のコンピューターはその情報を解読するための素数を知らないといけません。
クレジットカード番号を守っている素数は300桁あたりの数値ですから、GIMPSが発見した数値はRSA暗号方式に用いるには大きすぎます。
しかし、すばらしい数学的成果ですし、このことによって、コンピューターをフル稼働させておくことの成果を知らしめられたのです。
紀元前141年の最古のお茶が発見
また、同じく1月に最古のお茶の物理的証拠が考古学者によって提示されました。
紀元前59年に書かれたとされているお茶の記述が最古のお茶の記述であることから、そのあたりにお茶が飲用されていたのだろうとされていましたが、実際のところ、お茶がどこから来て、いつ人々に飲用され始めたのかははっきりしていませんでした。
お茶の葉は脆いので、何世紀もの間にわたって残っているということはこれまでありませんでした。今回の驚くべき発見により、お茶が飲み始められたのは紀元前141年のことだろうという記録の塗り替えが行われたのです。
1990年代に奇妙な植物の群生が漢王朝の劉啓の墓から発見されました。米や粟の様に原型を留めているものの他に、お茶の芽のような形をしている葉っぱもありましたが、それがお茶かどうかは定かではなかったのです。
ほかの葉っぱ同様、お茶の葉もシュウ酸カルシウムから成る植物化石と言われている小さく硬い結晶を含んでいます。植物化石は顕微鏡でその姿を見ることが出来ますし、また、それによって葉の選別も可能です。
研究者が質量分析法を用いて調べると、葉っぱからカフェインやテアニンなどの化学物質が発見されたのです。カフェインは様々な植物に含まれていますが、テアニンはお茶の仲間の葉にしか含まれていません。
さらに。発見されたお茶はとてもいいものだったのです。お墓から発見された茶葉は、俗に、厳選されたお茶、などと言われている、お茶の芽がついた葉だったのです。
このことで、私たちが思っていたよりも2100年も前から中国皇帝が美味しいお茶をたしなんでいたことがわかったのです。
最高時速160キロのコウモリ
最後に、鳥関係です。町一番の水平飛行者が現れました。ほ乳類の、ブラジルのオヒキコウモリです。
隼は世界一速い動物として知られています。重力を利用して最速時速300キロで下降することができるのですから。しかし、重力を利用しないと記録はそれほどではないでしょう。
それまでの水平飛行最速記録保持動物はアマツバメとして知られている鳥の仲間で、時速110キロの記録でした。
ブラジルのオヒキコウモリは長い夜に獲物を狩りに行く飛行時間でその記録を遥かに凌駕する、最高時速160キロの記録をあっという間に打ち立てたのです。
オヒキコウモリはチーターのように瞬発的にスピードを出し、獲物を追いかけて捕獲するのでしょう。
研究者は7匹のオヒキコウモリに小さな無線送信機を剥がれる接着剤で付けて、正確なデータを取るために飛行機で追跡したのです。
鳥というものは飛ぶのが得意なものですし、羽だってスピードが出るようなつくりになっているものです。そう考えると、ほ乳類が最速チャンピオンの座を鳥から奪ったというのはとても驚きなのです。
なにはともあれ、このことは私たちが見落としがちな、世間一般で考えられているコウモリの飛行能力と適応能力を見直すきっかけとなったと科学者は述べています。
2016年の驚きの科学はこんな感じでしたが、2017年にはもっと驚きがあるに違いありません。楽しみに待っていましょう!