ラピュタを見たことがない

山田玲司氏(以下、山田):裏バクマンのコーナー!

(会場拍手)

山田:あの、「ラピュタ見たことない問題」なんだよね。

おっくん氏(以下、おっくん):裏バクマンとは何か。漫画家を志している人のための。

山田:漫画家になる方法でも漫画家を続ける方法でもあるんだけど。

おっくん:まぁ、いろんな職業に通用する問題だってことで。社会の割り切り方。

山田:そうだね。それもあるね。だからそれがメンヘラに繋がっていくっていうことで(笑)。今回俺が『ラピュタ』を見てないとか、あとなんだっけ?

おっくん:いっぱい見てないし。『バキ』も見てないし。『ベルセルク』も見てないでしょ?

山田:君の好きなものだよね?

おっくん:そうそう(笑)。『Omega tribe』見てないでしょ? あと、『カリオストロの城』見てない、『エヴァ』見てない。『ガンダム』は見てない。

山田:ファーストだけちょっと見た。『アカギ』も見てない。そうなんだけど、それでも28年漫画家やってるっていうのはけっこう……、そこに問題があるって話?

だから、本屋に行ってまず最初の棚に並んでいるものはまず、嫌いだよね。

(会場笑)

山田:だから時代の空気も嫌いなの! そうなんだよ! おっくん!

おっくん:ミスディレクションしていた。

山田:でも『(北海道日本ハム)ファイターズ』は好き! 要するになんて言うのかな、王道が嫌いっていうかな。それで、みんなが「大好きー!」みんな「これ見たー!」ってなってると、「ふざけんな」って思うっていう、こういう性質の人たちってけっこう世の中にいっぱいいると思うんだけど、俺はクリエーター向きだと思うんだよね。

なんか、与えられたみんなが大好きなエサでハァハァ飛びついていく犬にはなるなよってことなんだよ。要するに。

それはいいよ。皆さんお客さんの話だから。でも、もう、世の中に出ているものは過去のものなんだよ。過去のものを再生産してどうすんの?

「みんなが見たことないけど、なんとなくこういうのあったらいいなぁ」「ビジョンが全く浮かびません」っていうものを作るのが、漫画家の仕事だしクリエーターの仕事だから、世の中に出てるものっていうのはもういい。

「なんとなく似ちゃった」っていうのは見てなら関係ないんだよ。そこのふんばりでやってきた部分もある。で、みんながあまちゃん見てるとき、俺はずっと写実主義から印象派について考えてたわけじゃん。

そして歌川広重について考えていたわけじゃん。だから、あまちゃん別に見ててもいいよ。半沢直樹見ててもいいけど、俺は歌川広重を見ているってことが、クリエイティビティに繋がってる。で、それが俺なんだよね。

おっくん:厨二をこじらせてるなぁ(笑)。

(会場笑)

漫画家になりたければジャンプを読むな

山田:厨二病っていうのを英語にすると、イコールこれですかね。バーン! 「ステイゴールド」って思ってる。厨二病の人ってさ、「空から女の子が降ってくればいいなぁ」なんて思ってるって話じゃん。

おっくん:(ラピュタ)見たことないんでしょ?

山田:ない。

おっくん:ないけど、降ってくればいいなぁって思ってるし、世界の中心は俺だと思ってるし。実存主義? 「俺が終わったら世界が終わる」みたいに思ってるし、「いつかビッグになる」ってのもそうだよな。(笑)。

そうそう、「夢が叶う!」みたいなやつだよな。それなしでどうやって生きていくんですかって話だよね。

だからみんな、大人になっていくとそういうことを表立っては言わなくなるけど、実はそういうことを思っている人が実は多いよなっていう、『絶望に効くクスリ』でいろんな人にインタビューしてみて思った。

まぁ、彼らの多くは厨二病だったよね。まだ妄想に取り憑かれているし、何かわけのわからないところに向かっていこうとしてるし、何よりも自分が最高だと思っている人たちばっかり。

自分が最高だと思うのは結構。じゃあ誰が決めるんだって言ったら、「俺が決めるんだ!」っていう主義者。俺もそうなんだけど、じゃないともたない。

それ以外の考え方でいうと、人の評価が自分の評価になっちゃうってことだよね。だから、ジャンプとか読まない方がいいよなっていうのはそこで、漫画家になるならジャンプは読まないほうがいいよなって。

手塚先生がずいぶん前に言ってるの。「漫画を読むな」「漫画家と付き合うな」「編集者と付き合うな」って。

おっくん:編集者とも付き合うな!?

山田:「漫画以外のことが生きてくる」って。神が言ってるんだよ。俺は神の言葉を小学校の頃に読んで信じた。神を。私はついていきますと。そしてここまで来たみたいな。そして道は続くみたいな。

だけどそれは、なんだろうな。案外間違ってないよなーっていうのと。

おっくん:何の本?

山田:手塚先生のだよね? 光文社の『マンガの描き方』だよね。いわゆる漫画の描き方本の中で、石ノ森先生と赤塚先生と、一番有名なやつ。

マンガの描き方―似顔絵から長編まで (知恵の森文庫)

おっくん:(ニコニコ動画のコメントを読みながら)「俺も漫画家になるわ」って。

山田:なれるから大丈夫。