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CEOトークセッション(全1記事)

2020.03.09

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ITベンチャーのCEOたちが語る「CTOとの付き合い方」 テックカンパニーに成長するためにやったこと

提供:インターノウス株式会社

2020年2月6日、インターノウス株式会社が提供する国内初/国内唯一のCTO/VPoE養成講座・転職支援サービス「OCTOPASS(オクトパス)」のキックオフイベントが開催されました。全10回のCTO/VPoE養成講座とCTO/VPoE求人を提供するオクトパスが始まることに先駆け、IT業界で急成長を遂げるベンチャーCEO・CTOが一堂に会し、それぞれの知見を語る今回のイベント。CEOセッションでは、レガシー業界をテクノロジーを用いて改革を起こすGA technologies、MOON-X、WAmazing、ookamiの4社が登場し、CTOとの関係性や自社におけるCTOの役割について語りました。

不動産Tech「GA technologies」

中舘宏輔氏(以下、中舘):では、早速ですが樋口さんから、会社と自己紹介をお願いします。

樋口龍氏(以下、樋口):みなさん初めまして! GA technologiesという会社の代表をやっている樋口と申します。

弊社は2013年に創業したのですが、「不動産」と「テクノロジー」ということで「PropTech」という言葉を聞かれたことがある方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

2名しかいらっしゃらないですね。そんな領域なんですが、X-TechやFinTechと同じように、不動産テックとか、建設とテクノロジーということでConTechなど、そういったレガシーな領域にテクノロジーを入れるということをやってきました。

我々の会社は基本的には実業を自社でやりながらも、そこにテクノロジーを入れるという形をとっています。なので、社内には社員が400人ぐらいいるんですが、エンジニアや技術者が30数パーセントいて、設計士や不動産の仕入れのプロ、エージェントのプロ、あとは大工さんまで、さまざまな社員が在籍しているので、ワンストップな(不動産サービスを提供している)会社になっています。

僕自身はエンジニアではなく、営業マンとしてずっとビジネスをやってきた人間です。ですので今日この場からは一番遠いところにいるかなと思うので、僕から参考になる話はないかと思うんですけど。

(一同笑)

リアルなビジネスをやっていて、テクノロジーという領域なので、そういった意味ではお話ができるのではないかと思っています。本日はよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

日本のものづくりとテクノロジーを組み合わせる「MOON-X」

中舘:それでは長谷川さん、お願いします。

長谷川晋氏(以下、長谷川):こんにちは、長谷川です。

去年の8月までフェイスブックジャパンの代表取締役をやっていたのですが、そのあと起業しましてMOON-Xという非常に怪しい名前の会社を立ち上げました。先ほど樋口さんが「不動産とテクノロジーの組み合わせ」と、おっしゃっていましたが、MOON-Xは「日本のモノづくりとテクノロジーの組み合わせ」というのをビジョンに掲げています。

みなさんご存知の通り、日本は本当に良いものを作っている方や良いものを作っている会社がたくさんあるんですが、そういった方に限って発信が苦手だったり、「テクノロジーがちょっと……」みたいな方だったり、それこそインスタンス化が本当に最後の最後だったりするので、そういった良いものを作ってらっしゃる方とコラボレーションして、僕らのテクノロジーを使ってグローバルスケールで発信をしていって、もっと日本のモノづくりを世界に向けて羽ばたかせる。

そんな会社をやりたいと思って去年の8月に創業しました。今日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

中舘:ありがとうございます。加藤さんお願いします。

インバウンド客と観光資源をマッチングする「WAmazing」

加藤史子氏(以下、加藤):みなさんこんばんは。WAmazingの加藤と申します。

弊社は2016年の7月に創業したので、3年半ぐらいの会社です。何をやっているかと言うと、みなさんに倣うとTravelTechということになりますかね。インバウンドという、外国からやってくる旅行者の人たちと日本の観光資源をマッチングするB to Cのマッチングプラットフォームサービスを運営しています。

実は日本人の日本国内旅行市場は20兆円ぐらいあるんです。インバウンドも毎年伸びているのですが、5兆円ぐらいなので、まだ日本の旅行市場のほうが大きい。日本人の旅行市場のほうが大きいのに、日本の旅行会社というのはすごくアナログなんですよ。

ですが、インバウンドで来るアジアからの旅行者の人たちは日本よりスマホ普及率が高かったりします。また、日本は赤ちゃんからお年寄りまで含めた全員の平均年齢は48歳ぐらいなんですが、中国や台湾とかで30代で、東南アジアになると国の平均年齢がみんな20代なんですね。なのでインバウンドの人たちはデジタルネイティブ世代の人たちなんですね。

国内の旅行会社って、せっかく良いコンテンツを持っているのに、新聞広告や「大人の休日倶楽部」でいつまでも吉永小百合さんがアイドルの人たちをターゲットにやっていらっしゃるので、これはもったいないなということでチャレンジしています。

会社としては非常に多種多様なエンジニアが在籍してくれていまして、弊社の特徴で言うと外国人エンジニアが多いですね。

例えば中国の「Wechat」やWechatの上で動くアプリ「WeChat MiniApps」というミニプログラムの開発をしようとすると仕様書からして中国語だったりするので、中国人のエンジニアが開発してくれたりしています。今日はちょっと私も自信がありませんが、よろしくお願いします。

(会場拍手)

Nike超えを目指すスポーツメディア「ookami」

中舘:尾形さん、お願いします。

尾形太陽氏(以下、尾形):株式会社ookamiの尾形太陽と申します。

うちはスポーツの会社なんですが、元陸上選手の為末大と、NewsPicksの方々に支えられて立ち上がった会社です。今日はNewsPicksのCTOの方がいらっしゃっています。

僕たちははスポーツメディアを作っています。立ち上げたときに世界で一番大きいスポーツ関連会社だったのはNikeなんですが、「そのNikeを超えるんだ!」という思いで立ち上げました。今はだいたい月間で400万人ぐらいに使っていただいている「Player!」というメディアを作っています。

日本国内のスポーツ産業はまだまだ未発展というか発展途上なんですが、世界的にはすごく大きな市場で、今も成長している市場です。ただ、その中で日本国内ではまだまだ産業化されていない領域が存在しています。とくに僕らは日本国内のマイナースポーツやアマチュアスポーツと言われていたカテゴリを産業化することを目指して、まずは日本一のスポーツのメディアを再構築してやろうと思ってやっています。

現在40人くらいの規模でやっています。よろしくお願いします。

(会場拍手)

創業期のCTOに求めること

中舘:ありがとうございました。今日はCTOに関するイベントなんですが、「CEOから見たCTOってどうなの?」みたいなお話も聞いていきたいので、そのまま尾形さんにお聞きしたいと思います。

御社には中村さんという優秀なCTOがいらっしゃると思うのですが、中村さんとの出会いと、創業期に尾形さんからみてどういうCTOだと助かる、もしくはどういう人だとキツイな、といったその辺りを教えてください。

尾形:私は孫さんが好きだったので10ヶ月ぐらいソフトバンクにいたんですが、中村さんはそのときの友達の友達でした。創業時にエンジニアなしで立ち上げてしまったのでエンジニアを探していたら、一緒に起業していたメンバーの友達だったので、そのつながりでお願いしました。なので、出会って2年間ぐらいは学生だったので学生としてやっていて、今はCTOでずっとやってもらっているという感じです。

創業時に求められるCTO像はよくわからないのですが、今は中村がいないと成り立たないですし、これからももっと一緒にやっていきたいと思っているパートナーです。

彼の好きなところは2つぐらいあって、どこでも寝られるというのと、あとはぜんぜん風邪をひかないというところですね。

(一同笑)

僕もぜんぜん風邪をひかないんですが、僕らはほぼ皆勤賞みたいな感じで、もちろん技術力も高いですし若くてバイタリティもあるんですけど、振り返るとそれはすごい強みだなと感じています。

いろいろな開発の事業があると思うのですが、僕たちは本当に若者たちが立ち上げた学生起業みたいなベンチャーだったので、キャッチアップできてないこともたくさんありますし学ばないといけないこともたくさんあって、トライアンドエラーだらけだったので、そんな中でもメンタル的にも体力的にも崩さずにやり切っているのは1つの強みかなと思います。

中舘:大事ですね。ありがとうございます。

技術寄りのCTOからバランス型のCTOへ

中舘:では、加藤さんにおうかがいします。御社は今までCTOが2人いらっしゃって、創業期は元クックパッドの舘野さん、今は元ヤフーの?野さんがいらっしゃると思います。その2人のエンジニアに対して、こういう接し方を加藤さん自身がしているとか、ステージごとにどんなCTOが求められるか。その辺りをお話しいただいてもよろしいですか?

加藤:そうですね。創業期は舘野と一緒で、そのとき舘野は、ちょうどクックパッドを辞めたタイミングでした。辞めてからいくつかの会社の技術顧問をやりながら「次はどうしようかな?」と、考えてたときでした。そのときにちょうどある人の紹介で出会って、初めましてということで、私は起業前だったんですが事業プランを説明して「ぜひCTOでお願いします!」と言ったら、「いや、そういうのやってないんで」と、断られちゃいまして(笑)。

それで「じゃあ、技術顧問でも何でもいいので、とにかく手伝ってください」というところからスタートして、3ヶ月ぐらい業務委託契約でやってもらった中で彼が技術選定もしました。結局、WAmazingも1人もエンジニアがいない状態で創業してしまったんですね。

舘野は当時、「この人たちはITプラットフォームサービスを作るって言ってるけど、エンジニアが1人もいなくてどうするんだろう」と思っていたらしいです。3ヶ月ぐらい経って「フルジョインします」ということで、株も持ってもらって取締役にもなってもらったという出会いでしたね。

接し方で言うと、舘野は本当に技術寄りのCTOという感じで、プロダクト作りにはすごく愛着とスピードがあるタイプだったので、まず作るのが速いんですよ。彼自身もコードを書いてくれましたし採用もしていましたが、PDCAを回すのはすごく早くて、ありがたかったですね。

吉野の場合は、ヤフーは大きな会社なので4つぐらいカンパニーがあって、それぞれにCTOが1人ずついるんですが、そのディレクターというか助監督みたいな立場でした。そこからWAmazingのCTOになってくれました。?野はどちらかと言うとスピードというよりB to Cのプラットフォームサービスだと、どうしてもプロダクト作りにB側のバランスというか事業者さん側の意向とか、そういうところをうまく含めながら進めなければいけないところがあって、そういう部分のマネジメントに長けていて、どちらかというとバランス型のCTOかなという感じがします。

なので舘野のときは、舘野の前職がクックパッドやはてなとか、B to BじゃなくてB to C向けのWebサービスだったので、プロダクトを作ってユーザの反応を見て、数値をみてすぐに改善するのがすごく得意でしたし、?野はうちのビジネスモデルを以前もやってきて組織や事業者側の調子も見ながら全体をコーディネートできる人材だなと思っています。

中舘:ありがとうございます。では、最適なタイミングでバトンタッチできた感じですか?

加藤:そうですね。舘野は創業から丸3年間一緒にやってくれて、途中で?野がエンジニアマネージャーというかたちで入りました。舘野の退任のタイミングで?野がCTOになり、半年ぐらい経ったところです。

専門領域・ビジネス・キャラクター

中舘:なるほど。ありがとうございます。それでは長谷川さん。創業間もないと思いますが、創業メンバーにこのあと登壇いただく塩谷さんをCTOとして選んだ理由を教えていただいても良いでしょうか?

長谷川:逆にそのときに気付いてなくて今少し後悔していることが1つあって、見ての通り2人とも顔が濃いんですね。だから2人で揃って打ち合わせとかに行くと先方がちょっとドン引きしてしまうということは、先に考えておけばよかったなという感じです。

なんで選んだかなんですが、僕にとっては唯一無二で最高だと思っているから選んだのですが、3つ理由があります。1つはエクスパティーズ、専門領域のところ。2つ目がビジネスセンス。あと3つ目はキャラですね。

エクスパティーズ、専門領域のところは、どちらかというといわゆる開発者ではないので、何かコーディングができるというよりは消費者に対する価値やビジネス・ブランドを最大化するためにどのテクノロジーをどう使えばいいのかという部分の設計ができて、それに必要な組織を作れるという専門能力。そこがすごく大事かなと思っています。

ビジネスセンスというのは、先ほど中舘さんが、「今後はファイナンスもちょっとやります」とおっしゃっていましたが、やはりCTOはビジネスのキャッチボール相手なので、資本政策からオフィス移転から組織から、やっぱりいろいろとキャッチボールをしたいんですよね。なので、キャッチボールをするに足る相手であることが、僕にとってはすごく大事です。

3つ目はキャラなんですが、エンジニアやエンジニアのトップはみんな良いやつなんですよね。ですが一昔前は、キャラが立っていてちょっと取っ付きにくいのがカッコイイ、みたいなカルチャーもなくはなかったと思うんです。

そういう意味では、自分自身との相性が良くないと、CTOとCEOの相性悪いとか、もう地獄以外の何物でもないので、その辺りの人間的なところもすごく大事だなと思いました。結論としては、エクスパティーズ、ビジネス、キャラクターの3つぐらいかなと思っています。

創業期のエンジニア採用で苦労した理由

中舘:ありがとうございます。では、樋口さん。創業時のインタビュー記事を拝見しまして、けっこうエンジニア採用で苦労をして「採用したはいいけどすぐに辞めちゃった」みたいな失敗もあったと聞いたのですが、その際のエピソードをお聞きしてもいいですか?

樋口:エンジニアの採用に関しては、2013年に会社を作っているんですが、創業から不動産のテック領域をやると決めていて、僕がエンジニアではないのでエンジニアを採用しなければいけないと。当然人脈もなければ友達もいなかったので、本当に試行錯誤していたんですね。それで、採用したエンジニアがなぜ辞めてしまったかと言うと、今では本当にお恥ずかしいんですが、例えばアプリのエンジニアを採用しました。

そのエンジニアの方に「ホームページを作ってくれ」と。「僕はそういうのを作れない」と言われて、それに対して「なんで作れないんだ!」みたいな会話をしたり、エンジニアの企画寄りの方を採用して、その人自身は手を動かせないのに、その人に「手を動かして作ってくれ」と言ったり。

そもそもの原理・原則がまったくわかっていなかったので、せっかく採用したエンジニアが本当に半年ぐらいで辞めてしまったという状況もありました。

「これではまずい」ということで、たった2ヶ月だけですが自分自身がプログラミングの学校に通ってみたり、そもそもITの歴史も知らなかったので、グリーの初期メンバーだった方にITの顧問になっていただいて「そもそも日本のIT業界とは?」とか、「どういうサービスが流行っているんだ?」といったことを教えていただきました。

そういうことを毎週何時間も復習させていただく中で自分自身に知識が付いて、そのタイミングで良い方が1人見つかって、そこから一気に組織が広がったという感じです。なので、組織ができるまでは2年ぐらい掛かりました。非常に苦しかったタイミングがあったという感じですね。

職業のダイバーシティを楽しめる人材を集める

中舘:今は社員の4割ぐらいがエンジニアなんですよね。そこから一気にここまでエンジニア組織を拡大してテックカンパニーになったコツというか、どういう環境を作ったらエンジニアが働きやすくなったり生産性が高まるとか、CEO目線で何か気を付けていることはありますか?

樋口:我々の場合すごく難しいのが、技術者の方と設計士さん、現場監督さんは当然キャラクターが違うので、まず起こった問題としては「僕もあんなに明るく振る舞わなきゃいけないのか」とか、逆にリアル側の人からすると「パソコンをずっと見ていることってさぼってることじゃないか」みたいな。ありえないんですけどそういう風土がありました。

(一同笑)

樋口:そういった環境だったので、はじめは交わるのが最初は非常に難しかったんです。それで人が辞めてしまったりということがあったので、会社に入社していただく前に、いかに価値観共有ができるか。要するに、我々は不動産の実業にテクノロジーを入れているので、マネタイズは不動産の取り引きなんですね。

なので、そもそも入社していただく段階で職種のダイバーシティがある。だからさまざまな人がいると。そういったリアルな領域をやっている隣にエンジニアがいるという文化を作ってきて、それを楽しんでもらえるような方を採用するようにしました。

その特徴は何かというと「設計士が何に困っているか」というのは、おそらく普通にエンジニアリングしていたらわからないことなんですね。でも隣に設計士がいるので、課題をとても理解できる。

ですので、働きやすくいろんな制度を整えたというよりも、我々の強み(リアルとテックのメンバーが融合すること)に対してエンジニアの方々にどんなメリットがあるのかをしっかりと出していったことで、そういうことをしたいエンジニアが採れるようになってカルチャーフィットしてきたのかなと思います。

いかにしてアナログ業界を変革するか

中舘:ありがとうございます。思ったよりも時間がないので、みなさんに1人ずつ回答していただければと思います。

みなさん「〇〇Tech」というキーワードでお仕事をされていると思うので、アナログの業界をテクノロジーを使ってどのように変革していきたいか、尾形さんから順番にお話を聞かせてください。

尾形:うちは純粋にメディアやコミュニティ領域なので、ピュアにインターネットをやっています。僕らはメディアなので新しさは何かと言うとAmazonとかとそれほど変わらなくて、スポーツの情報を扱っているんですが、情報の流通コストが下がるということ。

今までは、サッカーの日本代表や錦織選手などのメジャースポーツとして、テレビに乗っからなければ発信できませんでした。ですが、Amazonで「誰が読むんだろう?」という本がポンっと置かれていたらロングテールで売れることと同じように、スポーツのロングテールということで、学生スポーツや高校生のスポーツを配信したら、お父さんやお母さんが熱量を高く見てくれます。これはテレビのテクノロジーではできなくて、インターネットで流通コストが下がることによって発信できるようになりました。

Jリーグやプロ野球を足しても数千試合ぐらいですが、日本中の試合を全部足したら年間で100万試合ぐらいあるので、このスポーツの中のロングテールを取りに行くという、ピュアなインターネットテクノロジーを使っています。なので、最近のAIやロボットみたいなことはあまり考えずに、純粋に情報の流通コストを下げてたくさん集めて、そこでパーソナライズとレコメンドを利かせていくというベタなやり方をしていますね。

情報発信とジェンダーギャップをテクノロジーで解決する

中舘:ありがとうございます。では、加藤さん、お願いします。

加藤:旅行業を普通にやっていると、京都や東京、大阪にはインバウンド客がたくさん来るのですが、本当に来てほしい、疲弊している地方なんかは、とくにアナログの人たちばかりなので上手に情報発信ができない。

SNS時代なので人気の地域は勝手にソーシャルで拡散されて、そこはどんどん人が来るようになって、知られていないようなところには誰も来ないからソーシャルで拡散されずに永遠と来ないという二極化になっています。

昨日も青森県に行ったのですが「青森でも良いところはたくさんあるじゃん!」ということが発信されることで、観光産業は国策に位置づけられていますが、そのお手伝いたしたいということが1つ。

もう1つは、アジア各国と日本でジェンダーギャップがすごいんですよね。日本は比較的年寄りの国で、アジアは若者の国です。そうすると新しいテクノロジー、例えばスマホのキャッシュレスは中国では5年ぐらい前から当たり前になっていて、道端のミュージシャンもQRコードを掲示して「WeChatで払ってくれ」みたいな状態になりました。

そんな部分と、先に先進国になった故にまだまだガラケーの人も多いという日本のアナログ部分のギャップをつなぐ存在になりたいと考えています。そこは日本のテクノロジー側を押し上げることで解決できるかなと思っています。

「コンシューマイズファースト」をディスラプトしたい

中舘:ありがとうございます。長谷川さんお願いします。

長谷川:僕はP&Gという、いわゆるオールドスクールな、トラディショナルなブランドを持っている会社に10年いて、パンパースやジレット、SK-IIといったブランドをやってきました。そうした経験の中で、本当に良い製品や良いブランドは本当に消費者の生活を豊かにする。

ワクワクしたり楽しくなったり、そういうパワーを持っているということを僕は学んだので、それはすごい大切にしたいと思っています。だからこそ僕らは、そういうブランドをTechを使いながら出していくという話なんです。

P&Gに入ると最初に学ぶ考え方が「コンシューマー・イズ・ボス」なんです。上司が上司じゃない、消費者が上司だと。だから最終的なディシジョンメイキングは上司におうかがいを立てるのではなく、消費者に答えを聞いてインサイドを拾って、消費者にとってベストな選択をしていくということが最初に教わることなんです。ですが、トラディショナルなビジネスモデルは意外と消費者が遠いんですよね。

メーカーだとモノを作っても、それを卸さんに渡して小売さんに渡して、小売さんでようやく消費者と接点があるので、実際に誰が買ってくれているのか。ユーザーがどう使ってどう思っているのかという距離感がすごく遠いんですよね。

だけどテクノロジーを使うと、直接売るだけじゃなくて直接つながって、直接フィードバックをもらって、本当の消費者ファースト「コンシューマー・イズ・ボス」ができるということは本当に素晴らしいと思っているし、僕らは創業が8月で11月にはビールを出したんですが、直接売って、それでフィードバックをもらっています。今に売っているビールはそのフィードバックに基づいてレシピとかの作り方も含めてチューニングをしているんですよね。

そういうことが消費者と直接できるというのは「コンシューマー・イズ・ボス」を本当にテクノロジーを使って本質的にやるのがすごくいいのかなと思っているのと、もう1個はグローバルスケールですね。

それこそ前職がフェイスブックだったので、Facebookだと24億人、Instagramだと10億人が世界中で同じプラットフォームサービスでつながっています。だから10数年前だったら、例えばインドで商売したいと思ったら現地チームを作って向こうの商習慣でネゴシエーションして、それでギリギリやれるという感じでした。

ですが今はこの部屋の中からでもクレジットカード1枚とスマートフォン1台があったら、インド人に向けて自分のブランドを直接発信できてしまう時代になっていて、別に日本人に向けてインスタ上で発信するのもインドだろうがヨーロッパだろうがアメリカだろうがやり方はまったく変わらないんですね。

だからグローバルビジネスの垣根が圧倒的に下がっている。その中で、テクノロジーを使ってグローバルなスケール感のあるビジネスを高速で作っていくことは、すごくやりやすくなっていると思います。僕らがディスラプトしたくないのは、そういうブランドのパワーや魅力ですね。

逆にディスラプトしようとしているのは「コンシューマイズファースト」ですね。テクノロジーを使って消費者と直接つながって、それをモノづくりにも反映するということと、高速でグローバルスケールを追及していくところ。それによって世界中のたくさんの消費者に、ブランドの良さをわかってもらって生活を豊かにできると思っているので、僕らはそういうことをやろうとしている会社です。

不動産にまつわる不条理を変える

中舘:ありがとうございます。最後に樋口さん、お願いします。

樋口:不動産って大なり小なり買うか・借りるかをしていると思うんですが、売買だと一生に2回買うか買わないか。賃貸でも4回引っ越すか引っ越さないかという、ものすごくタームが長くてほぼ(取引を)しないので、不条理なことも仕方ないと思っているんですね。

日用品だと日々買うので使い勝手が悪ければ消費者の声が届きますが、この業界は本当に我慢をしてきている業界です。でも、不動産は一生に1回の買い物ですし、引っ越しも何回もするわけではないので、我々はそこを変えていきたいと考えています。

では、どんな問題が起こっているかと言うと、売買だと出てくるプレイヤーが多いんですね。メディアが出てきて、メディアの先にはいろんな不動産会社がいる。それにファイナンスも付けないといけないので金融機関が出てきます。保険も付ける必要があるので保険会社も出てくる。最後は登記をしないといけないので司法書士まで出てくるという。1個の物件を購入するにもかかわらず、いろいろなプレイヤーが出てきてしまいます。

それによって、そもそも不動産を買うという行為が面倒くさいのに、買うという意思決定をしたあとも非常に面倒くさい。なので「もういっか」となってしまうんですね。そこを我々がワンストップで、メディアをやりながら自社でエージェントを抱えて、今はまだできていませんが今後はファイナンスのところもできるようにやっていきたいと考えています。

賃貸のほうもイノベーションを起こしたいと考えています。今までは家を借りることになったら1回店舗に行かなければいけませんでした。旅行のチケットで考えたら、インターネットで予約して、そのあとに旅行代理店にチケットを取りに行かなければいけないというUXはないと思うんです。でも不動産の場合は、ネットで内見の予約をして店舗に行かなければいけないという面倒くささが残っています。

そこで、我々がインターネットで内見の予約をしたら店舗に行かずに物件に自分一人で行けて、気に入ればそのまま電子で申し込みできる。これをワンストップで提供しようとしているので、不動産のそういった不条理な部分をテクノロジーで変えていくために取り組んでいきたいなと思っております。

中舘:ありがとうございます。それでは時間になりましたので以上とさせていただきます。ありがとうございました。

(会場拍手)

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