加速度的に人が増えると、変革は難しい

モデレーター:ちょっと文脈が変わっちゃうんだけど。

また自分の会社なんだけど、エンジニアリングの文脈でいくと、少しこう、「SNS作ってます」とか競争が激しかった分野に比べて、若干遅れてる部分っていうのがあるんですよ。例えばデータサイエンスの部分とか、デジタルマーケティングの部分とかね。

そういうのって、ログを大量に送りつけて、すべて解析して数字を見て改善していくなんて、ソーシャルゲームの会社なんか、もう2007年、だから10年ぐらい前からやっているじゃないですか。

藤本:徐々に徐々にね。

モデレーター:そうそう。うちの会社がそういうのをやり始めたのがここ2年ぐらいなんですよね。やると、業績はパーンと伸びるんですよね。でもそういうのが、誰かがリードしなかったらそういうことって起こらなくて。

そういうのをやってなくても会社としてはいくんだろうけど、やってると、マーケティングが世の中の標準になった時に、「遅れてるな」っていうことに初めて気づくわけじゃないですか。なんかそれに近しいものがありますよね。

藤本:その時にまぁ、すごいリーダーがいて、一気に会社を変えれればいいけど。これが1,000人、2,000人、1万人ですってなって、なかなか変わらないっていうのはけっこうありそう。加速度的に人数がいれば、それは難しくなってくるから、そこには時間がいるよねっていう話でした。

Netflixの独特過ぎる人事制度

時間かな?

MC:そうですね。

モデレーター:質問とか。

MC:せっかくなので質問とか?

モデレーター:質問してみたい人、たぶん1人か2人ぐらいですけど。

庄司:なんかちょっと不安になってきたんだけど、これ聞いて人事部長になりたい人っているのかなぁって……。

(会場笑)

モデレーター:人事部長になりたい人はいないかもしれないけど、なんかその方向性にちょっとアンテナ張っとくとか、投資しといたほうがいいんじゃないかなという感覚ぐらいはあるんじゃないですかね。っていうか、僕も思う。

庄司:かっこいい話みたいなのが1個だけあって。僕の話じゃないんだけど、Netflixの話なんだけど。

(会場笑)

質問ないんだったら。2分ぐらいですけど。

モデレーター:いいよ。

庄司:たぶん知ってる人も多いと思うんだけど、Netflixの制度がすげぇかっこよくて。例えばソフトウェアエンジニアだったら、Netflixで働くソフトウェアエンジニアの給料は、みんな一緒なの。なにかっていうと、求人に出ている最高の金額が出る。世の中の、他の会社とかも含めて。

全員その給料で入ります、と。さらに上げるんだったら、「他の会社に行ってオファーもらって、これより高い金額になったら上げます」「しかもその時にエンジニア全員」ていうのをやってて。

なぜかっていうと、それは、「お前らだって最高の人材だろ? 最高の人材には最高の金払うよ」と。ただ、クォーター単位だったかな? 2回連続評価が下がったらクビです。給料が下がるっていう概念がないから、クビですっていう制度を入れた人事部長がいて。

すげぇかっこいいんだけども、この人事部長が2期連続で評価が下がってクビになったっていう。

(会場爆笑)

これはねぇ、ここまで含めて最高にロックでかっこいい! っていう。

エンジニアより「採用できる人」のほうが市場価値が高い

モデレーター:おもしろいけど、今なんでその話をしたの?

(会場笑)

庄司:いや、これなにがすごいって、ロックでかっこいいっていうのもあるんだけど。ちゃんとその制度が、作った人に対しても動いてるっていうのはけっこう大事だと思っていて。

そういうこともできる立場なんだよ。僕はやらないけど、そんなことは。でもそういうことも含めて、けっこうチャレンジングなところがいっぱいあるんじゃないかなということで言うと、けっこう楽しいところも……。

モデレーター:それは「人事やってみたら?」っていう、みんなへの激励ね?

庄司:そうそう。

モデレーター:そういう意味ね。文脈がよくわからなかった。

庄司:そう。日本だったらクビになかなかできない。そういうのとか、楽しさがあるのと、あとはよく思ってるのが、もうぶっちゃけて言うと、今エンジニアって売り手市場じゃないですか。

モデレーター:今ね。

庄司:なので、エンジニアを採用できる人事の人間って、めっちゃたぶん、いいんですよ。

モデレーター:重宝される?

庄司:重宝される。要はゴールドラッシュでいう、ツルハシ振る人になれるんですよ。ゴールドラッシュの時って、みんな「ゴールドが出るぞー」って言ってゴールドをガーってやって儲けようとしてる。今エンジニアって、すごいゴールドなんですよ。

優秀なエンジニアってすごく高いお金で買えるって言ってるんだけども、それをそもそも採用できるっていう人間をみんな絶対雇いたがるので、そのスキルを持っておくのはけっこう市場価値としてもいいんじゃないかなっていう。ゲスい話でした!

モデレーター:ははは(笑)。

「人事」の肩書があったほうがコミットできる

MC:質問がある方が。

質問者1:お話ありがとうございました。今月から、120人ぐらいでエンジニアが70~80人ぐらいいる会社のVP of エンジニアをやっています。

なので、人事系のこととかもアクションをとれるんだけれども、やっぱりそういう「人事部長」みたいな肩書きがあったほうが動きやすいことってあるのかな、どうなのかなっていうのは、実際どうですか?

それまで、普通のエンジニアリングマネージャーとかだけをやってる時と今と比べて、ちょっと聞きたいと思って。

庄司:あの、2個あると思っていて。どうしても「お手伝い」になっちゃうんです、人事部じゃないと。人事部に限らず、肩書きがないと「手伝います」みたいな。だから、根本を変えることができない。

あとは怒られない立場にいるのって、結局あまり改善できないんですよ。なんかやった時に、「おい人事部、なにやってんだ。てめぇふざけんな」って言われるところにいないと、やっぱりね、どうしても他人事になっちゃう。そういう意味では、この肩書きを持って、辛いけれども、まぁよかったなとは思います。

藤本:まぁなにがしたいかによりますけど、やりたいことができてないんだったら、できるほうに。僕は基本的に、横の人はあれこれ言うけど、最後は「決めるやつが決めて責任を取れっ」ていうスタンスなんで。「その責任が人事にあることでうまくいかないんだったら、じゃあいってやるか」かな? と思っている。すごーい。

(会場笑)

質問者1:ありがとうございます。

モデレーター:ほかに。あっ、じゃあ後ろの方。

部署間の線引はする? しない?

質問者2:えっと、まぁ人事で結局この、情シスっていうか、LDAPの話とか出てくる時に、そことの絡みとかもけっこう出てきて。結局そこまでやると、人事だけでとどまらなくなって、情シスも経理も……とか。そういったところにまで話が飛び火していくこともあると思うんですけど。

そのあたりの線引きというか、ここから情報システム、結局そこに対してはみ出していくのかどうなのかっていったところを、どうやってハンドリングされているのかなっていうのはちょっと気になっています。

藤本:会社規模によると思うんですけど。夢のない答えをすると、僕は情シスも人事もレポートラインなので、一応最後に調整できる立場にいますっていうのが1つ。

あと、うちの会社は今、1,200~1,300人ぐらいの規模かな? 正社員で。なので、それぐらいだと、ちょっとコストを払える。なので人事のほうに、わりとそういう情シスっぽいことをやる人が2人ぐらいいて、バックオフィス側の、基幹システムとかやる人たちがまた数人のチームがいる。

だから「そこが決めるよね」みたいな体制になってるので。まぁ役割はそこで、ね、ってなっちゃって。まったく参考になってなさそうだけど、一応……。答えが出ねぇなぁ、どうぞ。

モデレーター:答えとしては「全部持ってる」っていうこと。

藤本:そう。

(会場笑)

モデレーター:もう区切ってない。

藤本:はい、なんで、権力を取りにいくのがいいんじゃないですかね?(笑)。

(会場笑)

モデレーター:(庄司)嘉織先生は? 情シスは見てるの?

庄司:情シスは見てなくて。うちで言うと情シスを「社内IT」と言うんだけれども。それは、うちね、おもしろくてね、インフラ部が持ってるんだよね。社内IT自体を。

モデレーター:インフラが持ってることよくあるよね。

庄司:そう。それはけっこう理にかなってて。やっぱエンジニアが必要なので、それを持ってるのが理にかなってるなと思ってて。

モデレーター:質問の回答からいくと、むしろ線をやっぱり引かずに、内側に入れちゃえっていうこと?

庄司:そうそう。なんで、そういうのをやるチームがいろいろ連携が大変なんだったら、むしろその、全員とは言わないけども、情シスの人の、リーダークラスの何人かを、もう全部人事部とかに兼務させちゃったらどうかな。

というのも「人事部だからこのアカウント発行していいよね」みたいな感じでやると、けっこう簡単に進むんじゃないかな、みたいな。

モデレーター:質問の意図は、「そういうふうにどんどん広がっていくけど、線引きはどうしますか?」だったんだけど、答えとしては、「線引きはむしろしない」っていうことになっちゃう。

庄司:線引きをしないほうが……実現したいこと考えると逆に結局線引きできないと思うんだよね。

モデレーター:だそうです。

質問者2:ありがとうございます。

普通の会社はなかなかエンジニアが上に立たない

モデレーター:僕、ちょっと今日はね、エンジニアばっかりの話をしちゃって申しわけないと思ったんで。エンジニアじゃない人たちが、今日のこの話を聞いてどうしたらいいんだろうって思った人、もしかしたらいるかもしれないんですよ。その人たちに対してなんか、ありますか?

庄司:めっちゃある。ありがとうございます!

(会場笑)

本当に、僕は人事がわからないんで。人事部に来てるんだけど、本当になんもわかんないんだよね。労務のこととかなんもわかんないから、社労士の勉強してる人とかに「いや嘉織さん、それできないっすよ」みたいなのばっかり言っちゃうから。

結局、エンジニアとしてはわかるけれども、人事のことはまったくわからない人間が上に立って、人事のプロがみんな周りにいるから成り立ってるんだよね、僕は。人事部長として成り立つのって、まわりに人事のプロがいるから成り立ってるのであって。

だから、そういう「人事のプロの方々にはありがとうございます」っていうのと。もう1つは、エンジニアがもしも上に立ったとしてもいじめないであげてください(笑)。

(会場笑)

モデレーター:そういうこと。

庄司:はい。

モデレーター:要は、普通の会社はなかなかエンジニアが上に立たないんで。

庄司:そう。そうね。

兼務でいいからエンジニア人事仲間を見つける

モデレーター:現実的になんかこう、HRテックとか、こういう話が来ましたとか。さっきみたいにエンジニアがある程度噛んでないとまずいことが起こるかもしれないねみたいな文脈の中で、「でも自分はエンジニアリングのことわかんない」っていう人事の人に対して、どういうアプローチがある?

庄司:人事権を発動して、エンジニアを自分の部署に引き込んじゃうとかね。

モデレーター:そうなんだよね、それけっこう大きいと思うんです。

庄司:本当にでかくて、6月に人事部長になってから、1月にちょっと組織変更があったんだけど。僕1人じゃ足んないなと思って、人事部にもう1人、兼任だけどエンジニアを入れたのね。大事だと思うので。

なので、人事部にエンジニアを抱えるべきじゃないかなって。人事部長にするんじゃなくて、兼任とかでかまわないから、抱えるっていうことが大事じゃないかなと思います。

モデレーター:そこまでやるかどうかは、ちょっと僕わからないんだけど、仲いいやつ見つけるといいよね。

庄司:そう、飲み友達ぐらいでいいから、エンジニアの仲間を作る。

モデレーター:いやいや、本当に本当に。

庄司:本当に大事だと思います。

モデレーター:なんか仲良しエンジニアが1人いて、なんでもお願いできるっていう人を1人作ってると、自動化とか。

庄司:そう、みんなが、たぶん下手すると5時間~6時間くらい心すり減らしてやってることをエンジニア友達に相談すると、「あ、ちょっと待ってて」って言って、3時間ぐらいで自動化したツールが出てきたりとか、普通にするので。そういう友だちを作っておくといいんじゃないかと。

エンジニアリング、ソフトウェアはもはや特別なものではない

モデレーター:大丈夫ですかね?

藤本:なんだっけ?

モデレーター:けっこうなんか、アドバイスとか。

藤本:なんだろう。今後ともよろしくね(笑)。

(会場笑)

庄司:そうなるよね。

藤本:でもまぁ、本当なんか自分にとってあれだけど、んーと……うん。お伝えの仕方はすごい難しいんですけど、エンジニアリング、ソフトウェアみたいなものはもはや特別なものではないので。

だからこそ当たり前に意識しなきゃいけないし、上手に使わなきゃいけない。けど、同時にすごいその特別視してどうこうする必要もないと思うんで。

例えば、電気を使うじゃないですか、日々。使ってたりするじゃないですか。ちょっとレイヤーはあれですけど。同じように、それでできることとかを理解するっていうのは、一応必要ではあるけど。

逆にそれをあたりまえのものとして上手に使うっていうことだけ。使ってみようと思うだけでぜんぜん話が違う。

それでどうするかは会社によっていろんなアプローチがあると思うんで、まぁここで個別論は出ないですけど。そういうことがあれば素敵なんじゃないかなと思ったので、今後ともよろしくお願いします。

モデレーター:はい。じゃあ、今後ともよろしくお願いしますというところで。

(会場笑)

モデレーター:いったん、お終いにしたいと。

庄司:あっ、人事の人間も募集してるんで。

(会場笑)

藤本:厳選採用。

モデレーター:厳選採用で(笑)。

(会場笑)