コンピューターの答えは信用できない?
エンジニア兼人事担当者らが語る“採用IT化”の今

パネルディスカッション #1/5

2017年2月17日、人事とITをキーワードに、エンジニアリングやテクノロジーに関する理解を深めるためのイベント「人事 to IT カイギ」が行われました。第1回目のテーマは「エンジニアのキャリアパスとしての人事」。その第2部では、グリーCTO藤本氏とクックパッド庄司氏によるパネルディスカッションが行われました。近年、注目度が高まりつつあるHRTech。でも、日本では未だに手動で採用を行う企業の方が多い印象があるのはなぜでしょうか。

HRTech、使ってる?

モデレーター:前半お2人からいろいろお話を聞いて、どういう思いで人事をやろうと思ったかっていうのはなんとなく察してたんですけど、もう少しちょっと具体的に取り組みを聞いていきたいと思います。いくつか話してたりもしてたんですけど、もっと「こんなこともやってる」、あるいは先ほど「やってない」という話も。

案外、エンジニアが人事になっても「別にそこはそのままだよ」みたいな、そのへんはもう少しちょっと聞いてみたいなと思っております。

そんななか、たまたま僕が見たやつで……。これこれ、「HRTechがもたらす変化」。これ、どこかの会社の方が書いてたんですけど、人事ってそもそもこういう領域あるよね、と。

採用、育成、研修、配属、評価、労務管理、健康管理、働き方。あとここ、労務のところ1行で書いてるけど。労務ってたくさんあるんで、まぁこのへんで話せることがあると思うんですけど。

例えばここはこう、別にお2人が人事部長になったからとか関係なく、普通の会社だったらもっと手作業でやってるけど、自分たちのとこは自動化してやってますよとか。なんか、どんな感じですか? 例えば採用って、いわゆるアプリ化とか、そういうシステム使ってます?

藤本真樹氏(以下、藤本):先に前段を言っておくと、そんなにすごい話は出てこないので。

(会場笑)

モデレーター:すごい話が出てこないっていうのが、たぶんみなさんにとっては「そんなもんなんだな」と。それでいいと思うんです。

藤本:そんなもんです。

モデレーター:でも使ってるでしょ、たぶん。

藤本:でもあれなんですよ。いや、これ、あまり言うなって言われてるんであれですけど。言い方、なんだっけ……。あっ、「厳選採用」を今していまして。

(会場笑)

モデレーター:採用をそもそもちょっと……控えてるんですね?

藤本:厳選採用してるんです、そこはなんだろう、ちょっと、スケールメリットとデメリットというか……なので、そこまでがんばってないというのが正直なところではあります。また、新卒採用とかやってるんで、そこはサービス入れてたりするけど、まぁそんなにやってない。

モデレーター:クックパッドは中途採用、なんだっけ。フォームのシステム使ってる?

庄司嘉織氏(以下、庄司):いや、なにも使ってなかったです。

モデレーター:えっ、なんか使ってるじゃん。クックパッドの採用サイトいくと、なんだっけな……。フォームから応募が入ってきて、後ろで候補者管理ができるやつ。

庄司:はい。「IT化」的なものはやってるけれども、精度を上げるためになんとかというのはぜんぜんやってないですよね。

モデレーター:でも、IT化はしてるよね?

庄司:IT化はしています。

HRTechは進んでいる、でも日本の選考フローに合わない?

モデレーター:あのね、なんか2人の文脈が、世の中の一般の人に比べて、けっこう深いんです。

(会場笑)

普通の会社は、そもそもIT化とかされていません。応募されてきた人から普通にメールが来て、手動で管理するような会社がまだまだ多いんです。「『システム化』って言うけど、そんな特別なことはやってませんよ」というのは、それが特別なことだったりするんです。

庄司:なるほど、そういう意味だと、完全にシステム化はしています。採用は、そうですね、やっています。評価とかもすべて貯まるようになってます。

モデレーター:評価って?

庄司:面接官が実際どう評価したかも、貯まるようになってます。

モデレーター:それは、評価プロセスとかは、採用に関連してる人からすると、前の人がどういう評価をつけたかだとかはすべて可視化されていて……。

藤本:けど、じゃあそれを次、統計をとって……。例えば「こういう感じだったらこういう人がいいんじゃないか」みたいなリコメンドがあるかというと、そんなものはない、みたいな。

モデレーター:そこまでは、ねぇ。でも、世界的にはそれは進んでいるんですよ。

庄司:進んでる。けっこうそういう話はあって、ちょっとお試しでシステムを入れてみたりするんだけど、「日本の選考フローに合わない!」がけっこうあるじゃないですか。

モデレーター:スーパーあるあるですね。

庄司:だからけっこう辛いなぁと思うんだけど、たぶん日本も近いうちそうなるんじゃないかなとは思ってます。

候補者へのリコメンドはすでにシステム化

モデレーター:例えば、候補者をどうリコメンドするかとかもあるけど、採用プロセスあるじゃないですか。「メールを何日以内に返しました」、あと「この人に連絡したけどもう1回リマインドしたほうがいいよ」とか。そういうのはシステムでやってるんですか?

庄司:そういうのはシステムでやってます。さすがに。

モデレーター:なんかね、あの、うちの会社はわりとそのへん、手作りでして。そういうの使ってないんですよ、人事……。

庄司:自分たちで作ったシステムがもうあるんですか?

モデレーター:えっとね、Redmineです。

(会場笑)

庄司:なるほど。

モデレーター:まぁまぁ、ぜんぜん。でもそれもちょっと先ほどの話と似てて。僕、一緒に働いてるエンジニアの部長に、「さすがに手作業つらいから、なんとかして」と言ったら、「わかりました」と言って、Redmineで。

(会場笑)

でもけっこうおもしろくて。Redmineのデータベースを叩いて、スケールで見出しで全部グラフにして。どこのエージェントからどのくらいの応募があって、このエージェントの書類通過率はこうだとか、そういう数字出したりはしてるんです。

でも、いわゆるSaaSとかは使ってないです。

藤本:じゃあ、ここ(スクリーン)に書いてあるのも、今エンジニアリングに携わってる人から見て「これ絶対無理じゃね?」っていうのは別になさそう。だいたい「ガッツあれば、それっぽくできそうかな」ってことが書いてあったりするじゃないですか。今後の可能性みたいな。

モデレーター:いっぱい言ってるけど。

藤本:それは、すごく夢物語というよりも、別に程度はともかく……。たぶんここにいらっしゃるみなさんも、ちょっと「時間とコンピューターリソースがあれば、まあまあやってみたいし、ちょっとできちゃうかもね」とか思っちゃうようなことが、(スライドの)右側にはけっこう書いてあるよねっていう。

モデレーター:そういう感じに受けていいんですね。

システム化されていく採用に、人間は慣れていく

僕は「ビッグデータ・ディープラーニングで選考精度の向上」と言うけど、そんなにコンピューターが出した答えを……信用したらいいと思うんだけど、信用できないんじゃないかなっていう。人間って。

藤本:あ~、はいはい。

モデレーター:リコメンドって、アルゴリズムの中がわからないと、人間ってそれを信用できないという心理的な問題があるじゃないですか。ディープラーニングで100人くらいの候補者の中の1人に選ばれても、なんか「ちょっとな~」みたいな。

藤本:ははは(笑)。あっ、俺、しゃべっていい? これ。

モデレーター:どうぞどうぞ。しゃべってください。

庄司:先に言っとくけど、アルコールが入ってるからね。

藤本:入ってません!(笑)。

(会場笑)

2つあって。まず、もう趣味ですが、「ビッグデータ」「ディープラーニング」とか書いてあると、とりあえずひくね。

(会場笑)

モデレーター:でも、やってみたいとは思っている?

藤本:いや、先ほどのアメリカの話とかと近くて。結局……でもこういう、非決定的な問題に対して計算機を使おうというのは確実に広がっていくと思うし、人間は慣れていくと思う。会社組織としては、上手に使うことに早く慣れなきゃいけないと思う。

ただ、そのままやっていると、マジでわけわかんない方向へいくし、「これAIで最高っす!」みたいなところへバンバンいって死屍累々……みたいなことも同時に起こる。なので、「これはいけるんじゃない?」「これはまだ計算機でやるには適さないね」を、会社全体として上手にできるようにならなきゃいけないというのは、この3年、5年、10年あるよねっていう。

あと、けっこうマクロな話ですけど、もう1つ。これはまさにアメリカンなサービスのように、先ほどの「いろんなサービスが日本に合わねぇ」といって、でもまぁ進化していって、またさらわれていくっていうのがあるあるなループじゃないですか。

同じように、最初は「イマイチだね」といっていて、でも基本的にノウハウは積み上がるし、レバレッジが利く話なんで慣れていく。そんなことをやっているうちに、「他はすごく進んでるね」みたいなことは往々にして起きるので。そういう練習はしてみたいなーとかがあります。それができる程度までは、一応今のコモディティなテクノロジーのベースはきているよねっていう話。

モデレーター:そういう感じなんですね。

「Workable」がすごい

庄司:先ほど言っていたのは、要は「100人見て1人をレコメンド」っていう話で。「いい人を出す」はやっぱけっこう難しいと思うんだけど、逆に「明らかにダメな人だけ最初に弾く」は現実的にできるんじゃないかなぁっていうのは1つある。

あともう1つ言うと。これね、サービス名とか言っちゃっていいのかな? 海外の「Workable(ワーカブル)」っていう、選考フローとかを管理するソフトウェアがあるんだけど。これちょっとね、うちのグローバルチームでは使ってるんだけど、けっこうすごくて。

「こうなってると確かに楽しいなぁ」っていう。ちょっと選考フローに合わなくて、日本ではまだ使ってないんだけど。

モデレーター:「All-in-one recruiting software」。

庄司:そうそう。

モデレーター:「for ambitious companies」。

庄司:普通にChromeのエクステンションとかも出してて。社員に「この人オススメです」みたいなに言われて。その勧められた人のFacebookとか開いてエクステンションを使うと、たぶん裏でデータベースを持ってるから、GitHubからなにからなにまですべてのアカウントを表示してくれるんですよ。けっこうエグくて。「どこでつなげたの!?」みたいなのが。

モデレーター:これ、日本に合わないのはあれでしょ? LinkedInとか、そういう向こうでスタンダードになってるものを日本人があまり使ってないから、データベースがそもそもない。

庄司:それが一番大きいね。あとは人特有のhatenaとかQiitaが出てこないとか。とはいえ、本当にFacebookからGitHub、Twitter、Instagramとか、いきなり全部出てくる。

今までも人事をやってきた人って、そういうものを教えてもらって、手動で探してたじゃないですか。

モデレーター:相変わらずやってるよ。

(会場笑)

レジュメに名前が載っていると、みんながアカウントを探してきて。「あっ、なんか1文字変えたら出てきました!」みたいな(笑)。

(会場笑)

庄司:まさに、そのぐらいは自動化されてる。

モデレーター:あ~、なるほどね。

庄司:……というのがあったりとかして。もともとこれも本当に使いやすくて、アテンドしたりとか、カレンダーにインバイトしたりとかは当たり前にできる。1つの人間に対するスレッドみたいになってるので、そこで人事とか、みんなでこうディスカッションして……みたいなのもできるし。

人事部メンバーとか、採用のリーダーにしか見えないコメントみたいなも書けたり。けっこうそれなりにちゃんとしててすごい。

人事にエンジニアがいないと道具の選定がイマイチになる

モデレーター:それ、グローバルで使ってる?

庄司:グローバルでは使っています。

モデレーター:そういうのを使う時って、誰が言い出すんですか? 「使おう」って。

庄司:うーんとね、日本にも採用ツールいっぱいあるんだけど、イケてないから「ちょっとグローバルを含めて探して」と言って。最初はいろいろ探してもらって、出てきたものを僕が一緒に見て、「これちょっとやってみよっか」みたいな感じです。

モデレーター:それは、嘉織さん(=庄司氏)が部長になってから出した指示によって選ばれた?

庄司:そういう言い方をするとすごくかっこいいんだけれども。どちらかというと採用チームから「これイマイチだからなんとかしたいんだけど」と言われて、「あー、じゃあ調べてみて」が正しいかも。

モデレーター:なんかね、もっと具体的な話が聞きたいんですけど。

ちょっとズレちゃうんですけど、会社でなにかちょっと困るなっていうか、悩みが。人事にエンジニアがいないと、こう、道具の選定とかでイマイチなものを選んじゃうことが起こったり、逆にそういうアクションのトリガーがなくて、ずっとそれまでどおりの道具を使い続けていたり。

見てると「どこかにああいう道具もあるんだけどなぁ」と思うんだけど、遠くから打診するだけだとみんな忙しいから、「またエンジニアは道具の話ばかりしてるから」みたいな。そういうリアクションが返ってきちゃって……。

藤本:返ってくる?(笑)

モデレーター:返ってくる返ってくる。でもそれはやっぱりこう、人事の中にエンジニアが入っていったっていうことがけっこう大きいのかな。

庄司:一次選定をエンジニアができるというのは、けっこうでかいかなと。

藤本:でも先ほども言ったけど、基幹は本当ね、難しいよね。いろいろ。

モデレーター:大丈夫です、うちもIEでしか動かない勤怠管理システムがあるし。

(会場笑)

藤本:なかなかねぇ。

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