【3行要約】・仕事で成果を出すには周囲の協力が不可欠だが、多くの人は「自分でやらなければ」という思い込みに縛られています。
・37歳から3回転職し成功を収めた濱さんは、周囲に助けてもらうスキルこそが成果の鍵だと指摘します。
・上司への10分以内の確認、午後2時の頼み事など、具体的な「助けてもらう技術」を実践することで、自分らしいキャリアを築けるといいます。
前回の記事はこちら 業務の指示をされたら、10分以内にすべきこと
——濱さんの著書『なぜか助けてもらえる人の小さな習慣 チャンスと味方がみるみる増える』の中では、周囲に助けてもらう技術について書かれています。濱さんが37歳から3回の転職をし成果を出されてきたのには、周囲に助けてもらい、味方になってもらうスキルが鍵になったのではないかと思います。
特に、上司とのコミュニケーションでは、「業務の指示の確認は10分以内にする」と本の中でも書かれていますが、これについて詳しく教えていただけますか?
濱暢宏氏(以下、濱):はい。仕事を頼まれたら、10分以内に上司に確認するということですね。上司に何か指示されたとして、その瞬間はわかるんだけど後から「あれ、なんだったっけな」ってなってしまった経験はないですか?
だから「何をいつまでにどういう状態にするか」を、ちゃんと自分の言葉に置き換えて「これで合っていますか」と確認する。あとその業務を達成するために自分1人でやるより、誰かの力を借りたほうが良ければ、上司からその人に依頼してもらう。
自分1人でできるのか、誰かの力を借りたほうがいいのかを整理して「こういうふうにやろうと思っています。進め方はこれでいいですか」みたいな。上司としては、指示して10分以内でそれを言われたら「いやぁ、こいつできるな」と思いますよね。
頼み事を相手に気持ちよく引き受けてもらうコツ
——上司の頭もまだ切り替わってない10分以内というのがポイントなんですね。あとは、「頼み事を相手に気持ちよく引き受けてもらうコツ」についてもうかがいたいです。書籍の中の「頼み事の2日前に小さな好意を示す」というのはおもしろいですね。
濱:ありがとうございます。これはふだんから「これおいしいからよかったら食べて」「これ絶対おもしろいからよかったら見てみて」といったコミュニケーションをしておくということですね。
そうすると、結果的に、そのやりとりをした2日後とか3日後とかに何か頼んだら、気持ちよく引き受けてくれることが多い。だから2日前を狙ってやると不自然さが出ちゃうんだけど、ふだんから小さいギブをしていくのが、パワー基盤を作るという意味でもものすごく大事なんですね。
——なるほど。ふだんから職場でのコミュニケーションを避けずに、小さなギブをする習慣を持つということですね。
濱:そう。要は相手が「気にかけてもらっている」と思えるかどうかがすごく大事なんです。リモートワークでも、Slackで「相手のことを気にかけてますよ」ってサインを出すことはできますから、そういう関係性を常にキープしておくことですね。
午後2時台が頼み事の成功率を高めるゴールデンタイム
——おもしろいですね。あとは、「午後2時台が頼み事の成功率を高めるゴールデンタイム」というのも新しい視点だなと感じました。
濱:そうですね。朝9時から夕方6時まで働くとして、何時が一番、上司が自分の話を聞いてくれるだろうかというのを考えたんですよね。いろんな職場環境があると思うので、2時というのは絶対的な時間ではないのですが、みなさんとみなさんの上司にとって何時が一番いい時間帯かを見出していこうというのが僕の提案です。
総じて僕の周りの上司って、朝は会議とかで忙しくて、夕方になると取引先のところに出掛けて行くんですよね。それで夜になって会社に戻ってくる人も戻ってこない人もいるけど、けっこうみんな疲れている。「夜はあんまりクリエイティブな仕事ができないなぁ」という話もあります。
一方で、午後2時は、お昼を食べてちょっとリラックスしていたり、「昼一の仕事を終わらせたから、夕方に向けてもうひとがんばりするか」みたいな傾向が比較的高い。そういう時は自分が相談したいことや頼み事がある時に、引き受けてもらえる確率が高かったんですよね。
30代後半からの転職で後悔しないためのポイント
——周囲に助けてもらうためのコミュニケーション術は、転職や異動で新しい職場になった時にも大事ですね。濱さんは37歳で異業種に転職されましたが、30代後半からの転職で失敗しないためのポイントはありますか?
濱:何をもって後悔するか、失敗とするかだと思うんですよね。僕はWant・Need・Canを考えて、自分が何をしたいかをちゃんと考えることが、生きる姿勢として絶対に大事だと思っています。
短期的にやりたいことというより、100歳までどう生きたいかを僕は考えているんです。自分が85歳でこういうキャリアを積みたいかや、「65歳でこうなりたい」とか考えて「じゃあ40代はどう生きよう」と考える。そしたらやっぱり経営者になろう、となったんですよね。
だから、遅かれ早かれ上場会社の経営者をやりたいというのは、将来のプランから逆算した時に思っていました。なので、自分が(将来)何をしたいかを考えて、そこからどこの環境がいいかを逆算する。
そこでもしうまくいかなかったとしても、「この環境は自分に適してないことがわかった」という試行錯誤の一環だと捉えれば、ぜんぜん失敗じゃない。何もしないことのほうがむしろ失敗だと思うんです。生きることはすべて実験の途中だとすれば、ぜんぜん失敗じゃないですよ。
100歳までのキャリアを決める
——先ほどおっしゃった自分のキャリアを100歳まで決めてらっしゃるっていうのは、何かきっかけがあったんですか?
濱:そうですね。ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットンさんが出した『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』という本を読んだ時に、やっぱり過去の棚卸しをするのは重要だと思いました。
要は今の自分を理解するために過去の自分をちゃんと棚卸しして、自分を知るのはすごく大事な作業だと思っています。その上で、自分がどう生きたいか、それはいつどういう状態になっていれば実現できるかと、未来をデザインすることができるんですよね。
僕は自分のライフパーパスを作って、「ライフパーパスをやり続けるためにはこういう前提が必要だよね」「この前提のためにはこういう仕事についている必要があるよね」「この仕事ができると、85歳の時にはきっとこういうことができるよね」みたいなのを書いては消してを繰り返して、仲間たちと話し合って「それ、いいね」とか言いながら、未来のライフラインチャートを作ったんです。
そうすると、今「こういう仕事をやったほうがいい」というのが見えてきます。それで転職してみて違ったら、そのアプローチは違ったというわけだから。「じゃあこっちの山道から登ろう」というふうに、大して気にせずやればいいんじゃないかなと思います。
我慢して生きるのが一番もったいない
——転職で失敗したとしてもプロセスの1つだと。目的のためには別の道もあるということですね。
濱:そうそう。ぜんぜん失敗なんてないと思う。だから同じ場所にとどまってどんどん時間が過ぎていって、85歳ぐらいになって「うわ~、後悔したぁ」ってなるよりは、やってみて違ったってことがわかったほうが、自分らしく生きるという意味で成功に近づくのかな。
自分らしく生きないことのほうが失敗というか、生き方としてもったいないですよね。
「いつか定年したらこれやろう」とか、我慢して生きるのが一番もったいない。そうやって我慢して生きるには、将来なんて保証されているわけじゃないし。だからやりたいことを毎日やり続けられる人生を成功として、試行錯誤していくのがいいかなと思います。
AI時代に自分らしく生きるには
——ありがとうございます。30代~40代でキャリアで悩まれている方に向けて、最後にメッセージをいただけますか。
濱:はい。僕はとにかく、多くの人が自分らしく生きられるといいなと思っています。AIと共存していくという時に「自分の仕事がなくなるんじゃないか」とか「自分の将来は大丈夫かなぁ」とか、いろいろと心配になる人が多いと思うんですよね。
でも自分らしく生きるために、自分が何をやりたいかという意志を持つ、つまりはWantと、周りに助けてもらえる力を身につけていく関係構築力、この2つはまだ、AIにはできないと思っています。
AIの時代に自分らしく生きるってことは、ちゃんとやりたいことを持って、自分らしく生きるために「今いる環境が違うなぁ」とか「我慢してるなぁ」と思ったら、どんどんチャレンジをする。
そしてぜひ僕の本を読んでいただいて(笑)、周りの人に助けてもらえるような環境を作る。そうして多くの人が、自分らしく生きていけるといいなと思っています。
——30代~40代になると責任が増えて、なかなか周りに頼れないという方も多いかと思いますが、周りに助けてもらうという視点がすごく大事なんだなと思いました。
濱:そうそう。けっこう30代~40代って、子ども時代に「自分のことは自分でやりなさい」とか「人に迷惑をかけちゃいけません」って言われ続けてきたと思うんですよね。
だから自立と自力はやっぱり違うんですよ。自立は全部自分でやるってことじゃなくて、困った時に助けてもらえる信頼できる仲間を増やすことだと思っています。だから「全部自分でやりなさい」とか「周りに迷惑をかけちゃいけません」っていうのはちょっと違うんじゃないかなと思いますね。読者の皆さんが、自分らしいキャリアを築いていかれますことを応援しています!
——濱さん、ありがとうございました。
関連サイト:
『なぜか助けてもらえる人の小さな習慣 チャンスと味方がみるみる増える』