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土谷愛さまインタビュー(全3記事)

部下のタイプに合わせて顧客をマッチング 社内最年少マネージャーに抜擢、ぶつかった壁と乗り越え方 

本企画、「キャリアをピボットした人の哲学」では、インタビュイーにこれまでの人生を折れ線グラフで振り返っていただき、その人の仕事観や人生観を深掘りしていきます。

今回は、『適職はどこにある? 夢なしOLの「転職・休職・副業・起業」実践ストーリー』著者の土谷愛氏に、今までの人生を振り返っていただきました。本記事では、社内最年少マネージャーに抜擢され、ぶつかった壁と乗り越え方についてお伝えします。

社内最年少で営業マネージャーに抜擢、ぶつかった壁

——前回、営業部で成績最下位だったところからMVPに上り詰めた秘訣についてうかがいました。その後は社内最年少で営業マネージャーになられたとのことですが、マネジメントでぶつかった困難や打開策をおうかがいできますか。

土谷愛氏(以下、土谷):マネージャーになって悩んだ点は2つあります。1詰めは、ほかのマネージャー陣はみんな30代とか40代という中で、私は当時25歳の社会人3年目とかで、本当に新卒に毛が生えたみたいな感じだったので。部下からすると頼りないんじゃないかというのが、不安な点でした。

もう1つは実際にマネジメントするにあたって、何を教えたらいいのかというか。自分が「聴く」8割の営業スタイルで成功したけれども、例えば5人部下がいたら5人にそれをやらせて、同じように成果が出るわけじゃなかったので。どうしよう、みたいな感じでしたね。

部下のタイプに合わせて顧客をマッチング

——なるほど。書籍『適職はどこにある? 夢なしOLの「転職・休職・副業・起業」実践ストーリー』では、部下の強みを見つけてタイプに合わせた戦略を立てたと書かれていましたね。

土谷:最初は自分がうまくいったやり方でアドバイスをしていたんですが、今一つ成果が上がらなくて。自分だって「こうやって話すんだよ」って言われてもできなかったのに、それと同じことをやってしまってるかもと気づいたんです。

自分が得意だったり好きだったり、できるだけ苦痛なくできる営業の方法を突き詰めていった経験から、「メンバーにも同じことをしてあげたほうがいいんじゃないか」という考えに至りました。

そこからよく面談をするようになりましたね。本人が自覚している得意なこと、人から言われる得意なこと、今まで何をしてきたか、どういうお客さんと仲が良いのかなど、メンバー個々人のいろんなことを知る時間を設けて、個別の戦略を考えるようになっていきました。

——個別の戦略というと、例えばどんなものですか?

土谷:例えば新卒ですごく元気な子がいたとして、その子と仲良くなりやすいクライアントは「下町のおじさん」のイメージといいますか(笑)。

「元気でいいね!」みたいに褒めてくれるお客さんが、やはり仲良くなるし通いやすい。一方で「広告の費用対効果はどうなの?」とか「事例とかをたくさん持ってきて」と言うような、ちょっとロジカル寄りのお客さんや、矢継ぎ早に質問される感じの方だと、経験も浅い新卒ではポンポン答えられないことのほうが多くて。

そうするとお客さんのリアクションも悪くなるので、本人も萎縮しちゃってどんどん足が遠のいてしまうんです。

だったらその子にはまず義理人情型のクライアントをたくさん担当してもらって、得意パターンを作る。そうしてちょっと自己肯定感が上がった状態で「もうちょっとロジカルに話す訓練もしてみようかな」みたいに思ってもらえたら、そっちのほうがいいよなと思いました。そうやってクライアントの割り振りを変えたりしていましたね。

人事や他部署の人から「部下がどう思われているか」を探る

——最初は相性の良いお客さんに振りわけて、自信をつけてから次のステップにつなげるという戦略ですね。

土谷:考えたら当たり前な気もするんですけど、なかなかそういうふうに個別にカスタマイズしてくれる上司とか会社って、そんなに多くないのかなと。ベンチャーゆえなのか、私はそういう工夫を好きにやらせてもらえた環境だったのでありがたかったです。

——今のお話を聞いて、やはり部下のことをちゃんと知らないと、上司側もそういう提案ができないんじゃないかなと思いました。当時もすごく多忙だったと思うんですけど、どうやって部下と向き合う時間を作っていたんですか?

土谷:本当におっしゃるとおりで、ただただ時間を膨大に割いたというのが答えなんですけど(笑)。自分の業務の優先順位の中で、部下と1on1でじっくり話す時間とか、それこそ夜に時間があったら「ちょっとご飯食べて帰ろうか」と誘ったりすることを上位にしていました。

とくに相手のことをまったく知らない最初の時期ほどそういう部下とのコミュニケーションを最優先事項にしていたので、それ以外の余った時間で自分の他の仕事をする、みたいな状態でした。そうやってそれぞれの部下のことを知っていくうちに、だんだん少ないコミュニケーションでも意思疎通できるようになっていくんです。

繁忙期で部下も忙しくなって1対1で話す時間がなかなか取れないときは、人事の人や営業部以外の制作や総務のに人から「その子がどんなふうに思われているのかな」とか「社内の人とどういうやり取りをしているのかな」というのを、けっこうたくさん聞きに行ったりしていました(笑)。

年上の部下との関わり方

——自分から見た相手の印象だけじゃなく、ほかの人からどう見られているのかを聞くというのはおもしろいですね。コミュニケーションがもともと苦手だったとおっしゃっていましたが、部下に心を開いてもらうために意識していたことはありますか?

土谷:そうですね。年上の部下もいたので「マネージャーだから」という偉そうな感じを出さないようにしていました。若くてちょっと経験が浅くて「大丈夫かこいつ」と思われてしまいそうな部分が、逆に話しやすさにつながったのかなと思います。

「何か言ってもこの人は怒ったりしなさそうだし、あんまり権限もないから査定にも影響なさそう」と思われるぐらい距離を近くしたというか、近くなっちゃったって感じなんですけど(笑)。話しやすい存在になるように心がけていましたね。

ただ、そもそも就活時代も1社目の時も「自分はコミュニケーションが苦手」と思っていたんですけど、それも間違ったイメージだったなと思っています。だって「コミュニケーションが苦手」ってざっくりまとめすぎてないですか(笑)。

例えば初対面の人と雑談するとか、「俺についてこい」みたいな感じでたくさん自分の武勇伝を話したり、「こうしろ、ああしろ」って教えるようなコミュニケーションは、当時から今もずっと苦手なんです。でも、部下と1対1で深く話すとか、こっちが質問して相手の話を引き出すとか、そういうコミュニケーションにおいては別に苦手意識がそんなにないと気づいたんですよね。

こんなふうにコミュニケーションと言ってもいろいろあるのに、一括りに「苦手だ」と決めつけていたのは、すごくもったいなかったなと思います。

26歳でメンタルダウンして休職…2回目の転職で考えたこと

——部下一人ひとりと関係性を深めていくようなコミュニケーションをされていたんですね。このあと26歳の時にメンタルダウンし、休職されたとのことですが、すぐに3社目の大手IT会社に転職をされています。3社目はどういった軸で選ばれたんですか?

土谷:3社目でぜんぜん違う仕事になったんですけど、なによりも働き方を見直したかったというのが一番の決め手です。やはりベンチャーって、いろいろ整っていないがゆえに、1人の仕事量がすごく多くて、どうしても激務になってしまっていた。

自分が望んでやっていたんですけど、その激務がたたって休職してしまって。やはり長く働けないと意味がないなと思い、長く働けるような環境作りができている会社で働いてみたいなと思いました。その時に、やはり大手のほうが残業や有給の管理がしっかりしているところが多かったので。

あともう1つは職種を変えたかったというのがありました。どうしても営業ってお客さまの都合に合わせることが多くて、呼ばれたら行かないと数字にならないので、働き方が不規則になったり残業が多くなったりしていました。

外回りじゃない内勤の職種も経験してみたかったので、営業企画にキャリアチェンジしようと思いました。

ベンチャーと大手企業、自分に合っていたところ・合わなかったところ

——なるほど。これまで地方のお酒のメーカーや広告ベンチャー、IT大手といろいろな規模の会社をご経験されてきました。それぞれ自分に合っていたポイントや、合わなかったポイントはありますか?

土谷:3社目に入った大手の会社でいくと、その時に求めていたもので実際に得られたものは、やはり圧倒的な働きやすさですね。私は没頭したらすごくやりこんでしまうところがあるので、働きすぎないようにブレーキをかけてくれる仕組みは、自分にとってはすごくありがたかったんです。

冒頭でお話ししたように、人よりも物覚えが悪いぶん、例えば1回インプットしたことを復習したり実践しないと身につかなくて、自分で納得いくまでやろうと思うと時間がかかってしまうんですよね。

どうしても、自分から労働過多な働き方をしてしまうところがあるので。21時にはPCが使えないとか、セキュリティが厳しくて家にファイルを持って帰れないとか、有給が奨励されているような仕組みはすごくありがたかったですね。

——ベンチャー時代は、努力して成果を出せる環境だったぶん、体調を崩すぐらいまで自分を追い込んでしまったんですね。

土谷:そうなんです。一方で、大手に入って合わなかったなと思ったのは、仕事に関わる人数が一気に増えたことですね。細かい部署に分かれていて、その部署の中でも担当が細かく振り分けられていて、すごく関係者が多くなるので、ぜんぜん仕事が進まない感じがしました。

ベンチャー時代と比較すると、自分が進めたいスピード感でまったく仕事が進まない。いろんなところに稟議や会議がステップとして必要になってくるので、仕事の自由度やおもしろみというか、自分の中のワクワクするポイントは減ってしまったので、そこに関してはベンチャーの裁量権の大きい働き方が合っていたように思います。あと、やっぱり関係者が増える分、人間関係の悩みがすごく増えてしまいましたね。

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