2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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担当者:私のセッションでは、「創業145年の大企業におけるアジャイルへの挑戦」をお話ししたいと思っています。よろしくお願いします。大日本印刷株式会社の情報イノベーション事業部という事業部の中にあるDX基盤開発部、アジャイル開発推進グループに所属しています。
私はもともとフロントエンドを専門とするエンジニアだったのですが、その後にUIデザインのコンサルティングだったり、自社プロダクト開発のUXデザインだったり、プロダクトオーナーの補佐だったりを経て、アジャイルを推進する人を最近はやっています。
本日は、弊社の中でどのようにアジャイルな活動が始まって、その活動を広げるための仕掛けとして、組織とその中の人である私がどういう動きをしているのか紹介していきたいと思います。
弊社を知らない方もいると思うので、少し紹介したいと思います。創業が1876年で、従業員数が37,000人くらいいる会社です。
印刷会社というと、本とかポスターの印刷を思い浮かべる方もいるかと思うのですが、こちらがセグメント別の売り上げ比率です。情報コミュニケーション部門というのが半数を占めています。ICカードを製造していたり、決済のシステム開発など、システムの開発も行っている側面があります。
弊社は、印刷技術の応用や発展によって事業展開をしていて、145年、世の中の変化に適応しながら変化を繰り返してきたという歴史があります。そんな会社の中で、どのようにアジャイルな活動が始まっていったか、というところから話していきたいと思います。
2012年とか2013年くらいに、次の事業の柱となる新規事業開発の高まりがありました。もともと受託開発もやっていて、計画通り開発はできていたのですが、例えば1年とか1年半かけて作ったサービスの収益が上がらなかったり、ユーザーが獲得できないというような厳しい現実がありました。
そこで、エンジニアリングの面から何か解決できないかと、各開発ロールの専門家を集めた検討チームを結成しました。リーンアジャイルを掲げて、先駆者のコンサルティングを受けながら、仮想案件での試行錯誤を経て、実プロダクトのリリースをしていくということをやっていました。
そこのチームでは、いくつかプロダクトを生み出していたのですが、その取り組みをもっと周りのチームにも広げていきたいということで、2019年にアジャイル開発推進グループが誕生しました。ここは推進にコミットする組織で、実践知を可視化して、普及や教育、チームの立ち上げの牽引をするというのがミッションでした。
私はもともと先ほどのチームにUXデザイナーとして関わっていたのですが、ここのチームの専任のメンバーとして関わり始めました。最初の専任は私1人でした。
推進にフルコミットして暗中模索するというところから始まったのですが、そうこうしているうちに会社全体でもアジャイル推進という取り組みが始まりました。2020年にはグループ人員が強化され、今に至るという流れが大きくあります。
これまで、いくつかのプロダクトをリリースしてきました。好きなキャラクターを選んで、オリジナルグッズを作るサービスや、困っている人と助ける人をつなぐ助け合いのアプリといったC向けのものから、「LINEチラシ」のチラシの配信も実は弊社が関わっています。
こういったプロダクトの話もすごくおもしろいのですが、今日はこの推進のグループが誕生してから、今までどういう推進をやっているかという取り組みのお話をしていきたいと思います。
ではさっそく組織側の視点から、少しずつお話をしていきたいと思います。現在、DNPでは真のアジャイルを根付かせるため、全社展開に向けてアプローチ中です。DXによる価値創造を掲げて、新規ビジネスの創出から社内システムの基盤革新まで、変化に迅速に追従するアジャイル開発の導入と、ビジネスと開発とシステムが一体となった推進を掲げて、教育、実践、環境、体制の面から取り組もうとしています。
この取り組みを牽引しているのが、DXの推進組織です。私の所属するアジャイル推進グループは、この情報コミュニケーション部門のもっと現場寄りにある推進組織になります。
このDXの推進組織が毎週やっている全社アジャイル推進会議という定例会があるのですが、ここではDXの推進とか品質保証とか、人材系の部署などが一堂に集まって、全社レイヤーの推進活動をやっています。
テーマは、例えば品質保証、教育、アジャイルチームの評価をどうすればいいのかとか、担当レベルとマネジメント層、それぞれにどう話をしていけばいいのかとか、単体チームでは立ち向かえない全社レイヤーへの課題を対応してもらっています。
そういった取り組みをやっているのですが、取り組みを支える仕組みとして象徴的なのが、ICTアジャイル開発手当というものです。2020年4月にICTアジャイル開発手当というものができて、スクラムチームのメンバーの一人ひとりに手当が出るようになりました。
ヒューマンスキルとしても、より高度な取り組みだということで、手当が支給されています。会社が意味や価値を理解して、行動として示してくれている例かなと思っています。
こういった推進の取り組みには、外部コーチの力も借りていて、株式会社アトラクタの原田さんに入ってもらっています。
コーチには、チームのコーチングと同時に推進もアセスメントしてもらっています。例えばガイドラインやツールの整備、役職別研修の拡充、また、それのレビュー、社内におけるCSPO(Certified Scrum Product Owner)、CSM(Certified ScrumMaster)の認定研修の実施もしてもらっています。
ざっくり、こういう大きな会社の動きがある中で、中の人である私の視点でどういう動きをしているかを後半は話していきたいと思います。
中の人としてやっていることですが、全社推進に対しても関わっていて、事業部で実践してきた事例のインプットをしたり、現場だけでは解けない課題のエスカレーションをしたり、あとは社内オリジナル研修を現場としてレビューしています。
一方、個別チームの現場での実践に対しては、「チームを新しく作りたい」という時に、立ち上げの牽引として、学習のサポートとかワークショップの実施をしています。チーム外の活動としては、社内勉強会や社内コミュニティの運営をやったり、ポータルサイトで関連情報の情報発信をやったりしています。
今日は、この取り組みを3つの視点から詳しく話していきたいと思います。まずは、「推進の、『なぜ?』に向き合う」ということをやってみました。
先ほどお話しした、いろいろな部門が集まっている定例会に、私も毎週参加しているのですが、社内オリジナル研修をレビューしている中で、コーチから「DNPさんはなぜアジャイルを推進したいんですか」と聞かれたんですね。
それまでレビューしてもらった研修の中では、XPやスクラムがどんなものかとか、必要性もIPAの資料や引用の記事で語っていたという背景がありました。ただ、会社全体に「うちはこういうことをやっていきたいんだ」と伝えるためには、自分たちとしての「なぜ?」が必要だと思いました。
一方で、ちょうど私はその頃にCAL1(認定アジャイルリーダーシップI)の研修を受けていて、その中で私たちが求めているのは、アジャイルではなくて、そこから受けられる恩恵だという話があったんですね。明確なゴールがなければ成功しないし、私たちにとっての成功とは何なのか、whatよりwhyが大切だという話がありました。
そこで、さっき紹介した全社推進の定例会の中で、メンバーに対して「なぜアジャイルなのか、向き合うワークショップをやってみませんか」と提案をして、やってみることにしました。
これは個々人が出したテーマをまとめたものになるのですが、DNPが変化に対応していくためだとか、新規ビジネスで本当に必要なものを作るため。今までは要望があったものを作ったり、デジタル化をやってきたけれど、使われてるものを作りたいという意見があったり。
一方、働き方に関するものだと、個人が考えながら開発できるようにとか、成長を感じやすくして自発的にやっていってほしいとか、個人の考えや志向を尊重をしていきたいというような話が出てきました。
この会議体には、私よりも、倍社歴がある方たちや、直接開発に関わらない部門の方も参加されているのですが、さまざまな部門の推進メンバーが、変化に前向きに向き合っていて、アジャイルを捉えているということを、その場の全員で確認することができました。なので、研修で聞いた「『なぜ?』に向き合う」はとても大事だなと思いました。
(次回へつづく)
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