2024.10.10
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SaaSエンジニアの成長戦略(全1記事)
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香月雄介氏:「SaaSエンジニアの成長戦略」というテーマでお話しします。本日は、SaaS企業で働くエンジニアが成長するために、何を意識すればよいかについてお話しします。
まず、自己紹介ですが、香月雄介と申します。株式会社ペライチの共同創業者でCTOをやっています。
私のキャリアですが、新卒で広告制作会社に入社しまして、iOSエンジニアとして勤務していました。そのあとフリーランスのWebエンジニアになり、2014年に株式会社ペライチを代表と一緒に共同創業したという経緯があります。
現在では、開発組織全体のマネジメントやプロダクト戦略の策定、エンジニア採用などにコミットしています。
弊社の紹介を少しだけします。弊社はだれでも簡単にホームページを作れる「ペライチ」というサービスを展開している会社です。パソコンもしくはスマホと、インターネット環境さえあれば、専門知識がない方でも、どなたでもご自分でホームページを作ることができて、インターネット上に公開できるというサービスです。
現在利用者数が30万人、これはちょっと情報が古いですが、34万人ぐらいを突破したところです。
中小企業の方だったり、個人事業主の方、スモールビジネスユーザーがメインのユーザーさんです。ホームページの作成や自社ブランドの紹介、イベントの告知など、さまざまな用途で使えます。
弊社の概要・沿革ですが、2014年に会社を設立しました。もともとは東京の茅場町にあるコワーキングスペースの一画を借りて、私も含めて3名の創業メンバーでサービス開発を行っていました。資金調達を機にオフィスを渋谷に移し、現在も渋谷にオフィスを構えています。
直近では2020年9月にラクスル社より、さらなる資金調達を行って、よりサービス拡大を目指している状況です。
弊社のビジョンですが、「『つくれる』のその先へ」というビジョンを掲げています。ホームページを作れるというサービスではあるのですが、お客さまが本来求めているものは、ホームページをただ持つこと、作ることではなくて、その先にあると考えています。
例えば、集客がしたい、自社ブランディングがしたい、ひいては売上を上げたいといった、作ったその先まで弊社のサービスで満たしたいという思いでサービス開発を行っています。
ということで、本日の内容に入っていくんですけれども、本日お話しするテーマですが、「SaaSエンジニアの成長戦略」というテーマになります。それを語る前に、SaaSという業界でどんなエンジニアが求められるかについてお話しします。
そのために、まずSaaSの業界特性ですね。そして、SaaS業界で求められるエンジニア像について発表して、そのうえで成長するためにどのようなことに取り組むべきかについてお話しします。
まず、SaaS業界の特徴がどういったものかについてご説明します。
SaaSの業界特性として、SaaSをご説明する必要はないかもしれませんが、クラウドで利用できるソフトウェアのことです。インストール型のパッケージソフトではないということです。
細分化されたさまざまなサービス領域が存在しているということで、(スライドを示し)右下のは小さいですが「カオスマップ」を見てもらえるとわかるとおり、例えばHR、Back Office、Marketing、プロジェクト管理など、さらにその中で細分化されたさまざまな領域が存在しています。
ホリゾンタルSaaSや建築業務系、製造業務系といったバーティカルなSaaSのように業種別なども存在しています。各領域で独自の提供価値を持ったプレイヤーがひしめき合っているといった、そんな状況かなと思います。
企業がSaaS業界を勝ち抜く肝がどこにあるかというと、まず、自社のサービス領域での顧客基盤の拡大を素早く行っていくということ。あとは顧客満足度向上による解約率の低減が重要かなと思っています。要は、顧客満足度の高いサービスを提供することで、より長く使ってもらうことが重要という話ですね。
そのうえで、自社の領域とシナジーが効く領域をいち早く見極めて、競合に先んじてカバーしていくことが重要だと考えています。
例えば、「ペライチ」でいうと、ホームページ作成という領域に対して、最初はサービス提供をしていましたが、サービス拡大・顧客基盤を拡大していくにつれて、決済領域も求められる声が増えてきたので、決済もシナジーが効く領域として提供していきました。
そういったかたちで、カバー領域を増やしていくことが重要です。カバー領域を増やす目的で、業界全体でM&Aが活発に行われている状況かなと思っています。
すべての領域の提供価値を自社で担うことは、現実的ではないので、どこまで自社で担うかは見極めが必要です。どこまで内製するのか、もしくはアライアンスを組んで提供していくのか、資本業務提携なのか、ジョイントベンチャー、もしくはM&Aで、他社と提携しながら領域を広げていくという選択肢もあるかなと思っています。
先ほどお話ししたように、業界全体でM&Aが非常に多くて、毎月のようにニュースが流れてきます。M&Aが多い理由としては、効率的にサービス領域拡大と顧客基盤の拡大の同時に実現できることが理由にあるかなと思っています。
参考までに、当社の事業戦略ですが、メイン領域であるWebページ制作とシナジーの効く周辺領域ですね。例えば決済やCRM、予約といった領域にも注力しています。エンドユーザーのデータを保持することによって、解約率の低減を目指しています。
要は、ホームページ作成だけではなくて、作ったページで物やサービスが売れるような決済だったり、メルマガ配信ができるCRM、店舗をお持ちのお客さまだったら、予約機能も自動で提供できる仕組みで、いろいろな周辺領域を磨き込んでいくというかたちですね。ここまでがSaaS業界の特性のご説明でした。
ここからは、そんなSaaS業界で、どんなエンジニアが求められるかというお話になります。
先ほどのSaaS業界を勝ち抜く肝である顧客基盤の拡大だったり、解約率低減、サービス領域の拡張ということに対して、基本的には、高機能なサービスを提供するだけの高い技術力が求められると思っています。
それに加えて、SaaSならではのものでいうと、深い顧客理解が重要になってくるかなと思っています。どれだけ顧客の課題や痛みだったり、どういった機能を求められるかを深く理解しているかということですね。
今日は、「技術」というより、どちらかというと「顧客理解」について深く話していきたいと思います。
まず、「なぜ顧客理解が重要なのか?」というお話をします。
まず1つとして、SaaSの多くがサブスクリプションモデルであり、継続してもらうことがビジネスの前提になっています。そのためには、顧客満足度向上が重要です。
(スライドを示し)左側が従来の買い切り型だとした時に、最初に販売にかかったコストに対して、1回の販売でコストを回収できるのが特徴になります。
一方で、右側のサブスクリプションモデルのほうは、販売コストに対して、継続してもらってはじめて、セールスコストが回収できるわけですね。
お客さまにとっては、価格が安いので導入しやすい一方で、販売側はすぐに解約されると赤字になってしまいます。逆にいつまでも継続してもらえれば、利益率が大きく上がっていくといったモデルになります。
そのため、顧客満足度を向上することで、継続してもらうことが非常に重要というモデルの1つですね。
もう1つが、SaaS開発は、顧客の利用状況に合わせて、不具合だったり、まだ満たされていないニーズであるアンメットニーズを素早く柔軟に解消していくことが重要なため、アジャイル開発がよく用いられるという特徴があるかなと思っています。
(スライドを示し)左側のV字モデルですが、これはよくソフトウェア開発ではよく見る図だと思います。一般的なソフトウェアの開発工程のプロセスと、テスト工程との対応関係を示した図ですね。
ウォーターフォールでは、このV字モデルが一気通貫で1回だけ通るみたいな感じだと思うのですが、アジャイル開発においては、各スプリントごとにV字を何回も回します。
短期間でV字プロセスを繰り返すアジャイル開発においては、全工程一気通貫して、顧客理解を高めておくことが重要だと考えています。
なぜかといいますと、必然的に顧客接点を持つ上流工程だけでなく、下流工程においても顧客理解をしておくことで、素早い実装だったり、手戻り防止が可能になってくるからですね。
逆にいうと、下流工程を担当するエンジニアの顧客理解が足りていないと、プロダクトオーナーの説明コストが毎回大きくかかってしまいます。設計や実装に携わるエンジニアの顧客解像度が高いことが非常に重要だと思っています。
要は、「SaaSにおいては顧客を理解することでひとつ上のエンジニアになれる」ということです。
ここまで、SaaSの業界特性、業界で求められるエンジニア像についてお話ししてきました。
ここからは、SaaSエンジニアとして成長するために、どのような取り組みをしていけばよいかについてお話しします。
マーケターでもカスタマーサポートでもないエンジニアが、顧客理解を深めるには、何をすべきかという話です。
方向性としては、大きく2つあると思っています。定性と定量の両方の理解が必要です。まず定性は、「顧客の声・行動を見る」ということです。
定性的に顧客を理解するには、顧客接点を能動的に作り出すことによって、顧客理解につながる情報を得るということです。
例えば、カスタマーサポートの問い合わせから情報を把握するところでいうと、カスタマーサポートは顧客の定性的なフィードバックが得られる貴重な機会です。
頻繁に来る問い合わせや要望から、顧客課題の解像度を上げることが可能です。自分で能動的に問い合わせを見る時間を作ったり、ひいてはエンジニアとカスタマーサポートの部署合同で、定期的に顧客の声の共有会を設けることが効果的かなと思っています。
また、ユーザーインタビューやっている会社さんは多いと思いますが、ユーザーインタビューというのも、エンジニアも積極的に参加すべきです。なぜなら顧客に対してインタビューを行い、定性的な情報を得たほうがいいと思っているからです。
手っ取り早いのは、自社サービスのユーザーさんにインタビューのお願いをすることですね。顧客に目の前で実際に操作してもらうユーザビリティテストも有効だと思います。
このあたりの話は、今日は細かい話ができないのですが、『ユーザビリティエンジニアリング』という書籍に詳しく書いてあるので、非常にお薦めです。ユーザビリティの評価方法から、ユーザーインタビューの具体的な手法まで体系的に学ぶことができる、いい本です。
続いて、データから理解する定量的な話です。今だとSQLやマーケチームや、カスタマーサポートの部署でもSQLを使おうという動きが普通にあるとは思いますが、やはりデータ構造、細かく理解しているエンジニアだからこそ、さまざまな切り口から詳細な分析が可能だと考えています。
例えばパターン分析において、ユーザーのデータから目標を達成したユーザーグループと、そうでないユーザーグループに分けて、共通点をあぶり出したとします。
どういうことかというと、課金してくれたユーザーと、まだ課金をしてくれていないユーザーに分けます。課金ユーザーに共通する行動と、課金していないユーザーに共通する行動パターンは何か。その両者の違いを分析する話ですね。
こういったところから、どうすれば課金ユーザーにつながるのかが見えてきます。
また、マジックナンバーを見つけるみたいな話でいうと、これもパターン分析の一種なのですが、特定のアクションを規定回数以上行うとサービス継続率が飛躍的に向上するティッピングポイントみたいな数字を見つけることも効果的です。
継続率の高いユーザーから逆算して、どういった行動を取っているかを発見する話ですね。
このあたりの定量分析に関しては、闇雲に自分だけでやるのは効率が悪いので、すでにマーケティングチームだったり、経営チームが指標としているデータを基に分析していくのが効率的かなと思います。
このように定性と定量がありますが、関係性でいうと、定性的なユーザーの声や行動から仮説を立て、定量データで検証していくことが効率的です。
これをグルグル回すことによって、顧客解像度がどんどん上がっていくと思っています。
すなわち、顧客は何に痛みを感じているかだったり、顧客ニーズを満たすうえで、どのような機能開発を行う必要があるかがわかってきます。
最後にまとめです。SaaSエンジニアとして成長するには、開発スキルだけではなく顧客理解を深めることが重要です。そのためには、問い合わせだったり、ユーザーインタビューなどの顧客接点から顧客の課題を把握する取り組みが有効ということです。
ここまで話した内容というのは、本日参加されている多くのエンジニアの方にとっては、けっこう本業ではない領域だと思います。だからこそ、本業ではない部分にあえて時間を使うことで、顧客解像度を上げ、本業の比率を上げていくという考え方もあるかなと思っています。
顧客理解に業務時間の5パーセントでもいいので、使う習慣を持つこと。さらに一歩踏み込んで、そういった習慣をチームに取り入れることで、SaaSエンジニアとしての成長につながるかなと思っています。
最後にちょっと告知なんですけれども、当社でもエンジニアを募集しております。弊社の場合は、中小企業や個人事業主向けのSaaSですが、そういった方向けのサービス作りが好きなエンジニアの方を大募集していますので、ご興味のある方は、recruit@peraichi.co.jp宛に、「エンジニア募集要項希望」の旨をお送りください。
ということで以上です。ご清聴ありがとうございました。
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