2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
常識を覆す観客動員への挑戦(全1記事)
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司会者:日本の成功事例をプレゼンテーションいただきたいと思います。岡村さん、よろしくお願いします。
岡村信悟氏:DeNAベイスターズの岡村です。よろしくお願いします。(ビセンテ氏のセッションを指して)今非常に興味深い話をいただきました。ファンの新たな価値創造をインターネットやAIを利用してやっていくのは、意欲的な試みだと思います。
私たちもDeNAですので、インターネットやAIには注目しています。実は現に「チームを強化するという観点で、AIを活用できないか」、もしくは「マーチャンダイズでAIを活用できないか」とすでに検討しています。一部施行していますが、今日はそういった話ではなくて、もうちょっと大きなビジョンですね。
「これからのスポーツの在り方」。これまではやっぱりプロ野球というコンテンツに寄りかかるというところで、20世紀でいうとジャイアンツの放映権、ブロードキャスティングとコンテンツという関係が典型です。
それは今でも世界的には重要です。けれども、持続的に発展できる成熟社会を作る上では、これだけグローバルが進んでいると、むしろ逆にローカルが大切になっていく。まさに「ローカルアイデンティティ」が重要になっていくときに、きちんとスポーツコンテンツを位置付ける。
そうすると、コンテンツというだけではなくて、そこには場が必要になる。それがスタジアム・アリーナということになります。さらに進んでいくと、「都市全体をスポーツというソフトインフラでより豊かなものにしていって、成熟社会にふさわしい新しいライフスタイルが提供できるのではないか」。そのように考えております。
そういうことを念頭に置きつつ、これまで私どものやってきたことを振り返って、そして今後について、限られた時間ですがおおざっぱに概略を話したいと思います。
私は球団を公共財だと思っています。ある意味参入障壁があり、例えば我々がいる横浜では絶対的に競争が起こりえない。そこで我々は実績を収めてきました。
(2018年の)今シーズンはチームの成績はみなさまご存知のとおり、Bクラスという、ちょっとガッカリなものでした。昨シーズン、日本シリーズにはいけて、今シーズンもファンの動向は好調に推移しました。
横浜スタジアムはだいたい2万8,900人のキャパシティがあり、おかげさまで稼働率が97パーセントを超え、(2018年シーズンは)203万人のお客さまにご来場いただいています。
まさに私が考えている地域のソフトインフラとして、地域の人たちが繰り返し通い、地域の方に支えられる球団になりつつある。そのためにはやはり、球場との一体経営が非常に重要になってきています。
私自身は球団の社長とともに、横浜スタジアムという伝統あるスタジアムの社長をしています。売上もおかげさまで大きく飛躍しました。
ある意味、20世紀だとまさにコンテンツなんですけれども、その重要性はむしろ企業にとって広告宣伝であったのが、まさに野球自体が球場と球団が一体となることによって、その地域に支えられて自立的に展開できるビジネスになりつつあるということが言えると思います。
結果として、横浜に行けば野球が好きな人もそうでない人もなんとなくベイスターズという存在が空気のようにあって、小さいころから1度は横浜スタジアムに行っているんだ、というようなかたちでの魅力的な強いチーム。
でも、この魅力的な強いチームを地域として支えるためには、ビジネスがうまくいかなければいけない。チームを支える強固な事業体制をしっかり作らなければいけないということで、取り組んできました。
私たちは球団と球場というビジネスが、車の両輪として、魅力的な強いチームとチームを支える強固な事業体制がようやく噛み合ってきて、持続的に発展し、かつその発展の先である「そもそも都市・地域との関わりをどうするのか」というところで、今までの球団経営とは違うステージにいけるのではないかと考えています。
これまでの取り組みでとくに重視した、3つの柱があります。おそらくこの3つの柱を追求することが、これからの成熟社会にふさわしい在り様と一致していています。それはこれからも我々が狙っていく、まさにビジネスというか文化を作り出していくということに、つながっていくのだと思います。
まず1つがハード施策ですね。「コミュニティボールパーク化構想」。そして2つ目が「野球観戦+α」、野球観戦だけにとどまらない経験をお伝えする。これはソフト施策だと思います。
そしてそこに通底するのが、やはり「I☆(LOVE)YOKHAMA」です。まさに横浜とともにあり、横浜に支えられ、そして横浜の誇りになる。地域アイデンティティを常に考えながら、これらの施策を打っていくということだと思います。
コミュニティボールパーク。昔は日本人は野球ばかりだったわけですけれども、もう野球だけではなく、むしろサッカーが好きな人が多かったり、バスケットボールも最近流行ってきている。
そうしたなかで、なんとなく球場に野球を観に行くだけではなくて、球場に行くこと、我々でいうと横浜スタジアムに行くことによって、そこで新たなコミュニケーションが生まれる。
家族で・恋人で・会社の同僚でという、新しいつながりを生み出す触媒として動くというかたちで、街に開かれた、まさにほかにはない個性的なスタジアム。その地域ごとにあるスタジアムというものを作ろう、ということでやってきました。
横浜スタジアムは、狭いけれども、我ながら非常に美しい球場だと思います。40年前に市民が作った球場です。そしてもっと遡れば、横浜開港以来外国人居留地があったところの彼我(ひが)公園が横浜公園になって、おそらく日本で最初にクリケット場ができたのもそこだと思います。
戦前からのさまざまな伝統があり、歴史と文化を背負いながら市民の力で建てられた球場。これを青く染め、周りの横浜公園では球場内にとどまらない賑わいがあり、これが街にも響き渡る。街の中心となって、磁場となっていくという姿です。
さらに、2020年に東京オリンピック・パラリンピックの野球・ソフトボールの会場になるということで、今の2万8,900人のキャパシティを約3万5,000人に大増席し、まさに世界に発信していくのにふさわしいスタジアム(となります)。しかも、今までの個性的なスタジアムのかたちを保存しながら拡充していくことにチャレンジしています。
横浜にとって、神奈川にとって重要な拠点。パリでいえば凱旋門とか、ローマでいえばコロッセウムなど、中心的なモニュメンタルな建物があります。国際都市・横浜において、一番モニュメンタルな建造物は横浜スタジアムであると思います。
これがまさに、横浜公園の一機能として、都市に開かれたスタジアムとして新たにリノベーションされるということです。
さらに「野球観戦+α」。とにかく野球がお好きな方・マニアの方は徹底的に野球が好き。でも、野球が好きじゃなくても、連れられてきた恋人や無理やり来させられたお母さんなどにも楽しんでいただけるということで、だいたい70試合あるうちの半分くらいは、我々はイベントをしています。
日本でいえば、お正月の餅つきやひな祭りなど、季節ごとの歳時記があります。それと同じように、開幕が始まるオープニングシリーズでは、ドローンを80台飛ばしました。盛り上がります。
春になると、女性のための『YOKOHAMA GIRLS FESTIVAL』。夏になると、子どもたちの『キッズスタジアム』。子どもたちを中心にイベントをやっていくということで、決められたリズムを1年間刻むことによって、その1年間はほかの年とはまた違うかけがえのない年になるという仕掛けをしています。
そして横浜スタジアムでベイスターズの観戦をして、オリジナルのサワーをやビールを飲んだり、横浜は洋食の伝統がありますので、そのお店と作ったベイメンチカツを食べたり、さまざまなかたちで五感を通じて楽しんでもらうということを心がけています。
そして、「I☆YOKOHAMA」。地元の横浜市ともしっかり連携協定を結んでいます。DeNA全体で考えると、実はスポーツだけではなくて、ゲームもありますし、オートモービルもヘルスケアもあります。そうした企業全体で横浜と連携しながら、ベイスターズ、ハマスタを中心に横浜の賑わいを作っていこうという協定を結んでいます。
そして、神奈川県全員の小学生、幼稚園生にベイスターズの帽子を配る。
それから『青星寮カレー』という、選手が寮で食べているカレーを給食のレシピとして提供する。
「ベイスターズの帽子をもらったよ」とか「今日は筒香(嘉智)と同じカレーを食べたよ」「監督と一緒にカレーを食べてきたんだよ」という経験を、子どものうちからしてもらう。まさにお母さんにとっても、子どもにとっても、小さいころからそこにベイスターズ、ハマスタがあるというものを作っています。
このように我々は、これまで3つの柱に基づいてイベント、チーム、オリジナルフードというようなかたちで取り組みを行ってきました。本当は詳細はここではお話しきれません。ポイントは、とにかく野球だけが好きな方以外も楽しめるような空間を、ハード・ソフトで展開する。それによって、ライト層も含めて、横浜スタジアムを訪れていただくファンを増やすということでした。
これからはエンタメ空間として、今の横浜を中心に展開している空間を、さらに磨き上げていくということです。今までは365日ということではなくて、試合がある「70試合×大体3時間」を考えてきました。
でも、それだけに満足せずにやっていこうということです。なぜなら我々は、球場を持つようになったからです。球場は365日、ずっとそこにあります。ということは、野球の興行をやっているとき以外もその空間の賑わいを作るということが、我々のビジネスにも裨益(ひえき)・貢献します。地域にも貢献するだろうということです。
そこで「球場外・球場内」「日常・非日常」として、非日常が興行のあるときというようなかたちで区分けをしました。それぞれのところでさらに深掘りをして、いろいろな施策を展開していこうとしています。
例えば「球場外」と「非日常」であれば、先ほどご覧になりましたように、球場外でライブビューイングをたくさんやるとかですね。それから「球場内」の「日常」といいますと、試合がない日でもいろいろなイベントをやる。例えばOBたちに集まってもらって、レジェンドマッチをやる。
このようなかたちで、365日24時間、エンタメ空間を広げていこうとしています。今まではスタジアムを中心に、スポーツによる心踊る体験が70日×3時間あったものを、365日×24時間やることによってコミュニティを形成し、つながり、共感・共鳴を呼び、まさに横浜370万人都市、神奈川でいうと910万人都市の真ん中に、こうした公共の磁場・人を惹きつける場所を作るということにチャレンジしたいと思っています。
スライドをご覧ください。横浜は本当に近代発祥の地です。今年は明治維新から150年ということで、横浜は開国以来、日本を牽引してきた都市です。地の力があると思っています。
とくにご覧になっていただいています「みなとみらい」は、横浜にとって新市街地です。私ども横浜スタジアムがあるのは、横浜公園周辺。これは関内・関外と呼ばれていまして、まさに横浜旧市街地なんです。
世界の大都市のどこを見ても、旧市街地と新市街地があります。そのなかで旧市街地こそが、さまざまなかたちで地域の人たちを惹きつけ、また外国も国内のほかの地域からも人を惹きつける磁場になると思います。そして、そこが地域の個性を作り出す。
そのときに私が考えていることは、今までとは違う歴史文化を尊重しながらも、スポーツを切り口に都市空間を変えていくことです。まさにスポーツというソフトインフラが、我々のこれからの成熟社会のライフスタイルを変えて、より豊かにするものとして主導する。
これは、今までの日本にはなかった考え方だと思います。そうしたものを、まさに370万人都市という、ポテンシャルのある横浜で実現したいということです。
横浜公園周辺は、先ほど申し上げました2020年には東京オリンピック・パラリンピックの野球・ソフトボールの会場になります。我々の横浜スタジアムは、今そのために大改修をしています。そのとなりには、横浜市役所があります。
この横浜市役所も、実は2020年にみなとみらいに移転します。横浜市役所の跡地がどう開発されるのか。仮にそこを、もし我々のスタジアムとシナジーの出る新たな空間を作り出す仕掛けとして新しい再整備をできたとしたら、横浜という旧市街地をスポーツによってより豊かにする。
これを私は、「横浜スポーツタウン構想」と呼んでおります。「2020年にオリンピックをきっかけとして、どういう姿になるのか」というのが明らかにされ、2025年までには、実際にそれを展開していくことが可能になると思います。
そのときに、今日本政府が目標としている「スポーツ産業自体を2015年に5兆円、2025年に15兆円と3倍にする」というものにぴったり合うかたちで、コンテンツと場であるスタジアム・アリーナ、それを中心にさらに都市全体が変わります。
場合によっては、新しいスポーツ産業・文化、先ほどご説明のあったようなかたちで、より大きなバーチャルの空間も含めて作り出すことができるのではないかと考えています。以上、簡単ですが私の話とさせていただきます。ありがとうございました。
(会場拍手)
司会者:岡村さん、ありがとうございました。Jリーグが、「地域密着」という言葉をよく言っています。まさになさっていることは、地域密着というか、本当の街全体の活性化とか社会の課題を解決する手段となられているんだな、というのをすごく強く感じました。ありがとうございました。
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