2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
前説・働きごこち研究所 藤野貴教(全1記事)
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藤野貴教氏(以下、藤野):みなさん、こんにちは。今日この3人(株式会社エクサウィザーズ・石山洸氏、株式会社モザイクワーク・杉浦二郎氏)がそもそもどうして集まったのかというと、株式会社エクサウィザーズが開発したAI「HR君」という、採用活動を振り返るツールが出たのがきっかけでした。
それを僕が(石山)洸さんのFacebookで知って、シェアしたんですよね。「これはおもしろい!」と。すると洸さんが「ありがとうございます!」とコメントをくれて、このAIについて「一緒にしゃべりましょう」と言ってみたら「やりましょう!」と孫正義ばりの即レスが来ました。
そこで、コメント欄にメンション付けて杉浦二郎さんを呼び出して「じゃあ、二郎さんも一緒にやりましょう」と声をかけたら「やりましょう!」と返事が来て。だいたい7分ぐらいでイベントの開催が決まりました。そんな感じで1ヶ月前に急遽やることになって、今日に至るといった流れですね。
僕は「人とテクノロジーの協働」というテーマの専門家として活動をしていて、『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方』という本も書いています。テクノロジーが進化した時代に、人はどんな価値を生み出していけば社会は良くなるのか、なにより自分自身がハッピーになるんだろうかを自分なりに研究していて、そんな自分が考えていることを世の中に伝える仕事をしています。
もともと僕はアクセンチュアという会社で働いていたのですが、そのあと人事コンサルティング会社とベンチャー2社を経験してきました。今自分で経営している会社は「働きごこち研究所」という名前なのですが、会社員の当時は働くことが苦しいと感じていた人間で、「できれば働きたくない」という気持ちもあったりするんですね。
いざ働き始めると、仕事でもそれなりに成果が出てきて、人から評価されたり出世していったりしながら、大きな仕事を任されたりします。でも、なぜか心が渇くという経験をしたんです。どうしても心が満たされないと。
つまり、働くことに対して悩んでいたんですね。26歳のその頃はちょうど結婚したばかりということもありましたし、「働き方改革」なんて言葉もありませんでした。深夜残業のため、終電ですら帰れない日々が続くなかで悩み続けていました。
そのときに僕が決めたのは「東京を卒業する」ということ。東京から逃げ出すという意思決定をしました。今から13年前のことですね。
どうしてそう思ったかというと、あるとき名古屋支社に出張することがありまして。それは金曜日の夕方からの出張だったんですね。東京で知り合った奥さんの実家が愛知県の田舎だったこともあって、仕事を終えたあとに立ち寄ったんです。
そこは海の近くあって、すごいド田舎なんです。季節は5月下旬なので、田んぼは田植えが終わったばかり。水が張られている田んぼが夜中にどうなるかというと、カエルの大合唱です。もううるさくて眠れないんですね。
今でも体感覚的に覚えているのですが、そのとき体の中をビリビリビリビリ!となにかが走ったんです。「俺はこういうところで生きていたほうが絶対にハッピーだ」と。それが幸せだと思っちゃったんですよ。
その結果、私は今こういった場所で子育てをしながら生きて、働いています。これ、実は“直感”と呼ばれるものだったのではないかと思っています。当時、東京の同級生や昔の会社の同期に「なんで愛知行くの?」と理由を聞かれたり「どうやって生きていくの?」と戦略について聞かれることもありました。そんなときも「いや、そんなのあとからついてくるから。俺はもう、心が決まっちゃってんだ」なんて言っていたんです。
次の月曜日に会社に戻ったんですが、先週まで超バリバリに会議をファシリテーションしていたのが、まったくやる気のない感じになっていました。さすがに火曜日の夕方ぐらいに「お前、どうしたんだ?」と上司に言われて。「俺、もう限界なんです」「結婚したばかりなのに、やばい感じになりそうで」なんて答えました。
申し訳ないんですけど、名古屋に転勤で飛ばしてもらうか、もしくは辞めさせてもらいたいですと正直な気持ちを言いました。すると、当時はまだ使えるやつだと思っていてもらえていたのか、もしくはすごく優しい人だったのか分かりませんが、名古屋に飛ばしてもらえたんです。
自分の中では直感で決まっていたので、そのまま独立して生きていくことになります。この直感というのは、後に僕が人工知能を学ぶようになってから、人間が持っている強みだということに気づくわけです。
「なんで?」と言われても「分かんないけど、そうなんだ」という。その直感に従って、ときに人生の意思決定をしてみてもいいんじゃないかと思うようになりました。
「いかに楽しく働くか」をテーマに研究して、研修講師やコンサルタントのような活動を10年ぐらいやってきました。2015年にテクノロジーの勉強会に参加したんですが、そのときに「うわ! 人工知能ってめっちゃ進化してんじゃん! これおもしろいじゃん!」と感じました。人工知能は仕事も働き方も変えるし、そもそも人間自体を変えるかもしれないという直感が起きましたね。
もともと僕はプログラミングが嫌いで、それが理由でアクセンチュアという会社を辞めたぐらいの、どちらかというとテクノロジー嫌いな人間だったんです。なのに、人工知能がきっかけでテクノロジーが大好きになってしまいました。
そのとき僕が思ったのは、テクノロジーが人の仕事を楽にしてくれるというよりも、僕を楽にしてくれるんじゃないかということです。仕事をしていく中で「これはやりたくねえな、どうにかなんないかな」ということが、どうやらこれで1つ解決できるかもしれないと思ったんですね。
「楽しく」という字を訓読みすると「らく」ですよね。楽で楽しく。「楽」を訓読みすると「たのしく」なるということに気づいて、テクノロジーは僕たちの仕事を楽にしてくれるんじゃないかと感じました。
それで生まれた時間や心の余裕を使うと、自分たちはなにができるのだろう。人間として楽しく働く、楽しく生きるということはどういうことなんだろう。そんなことを考える時間が生まれると思ったんですよ。どうやって楽しく働くのか、自分はどう生きたら幸せなのか、テクノロジーは教えてくれませんよね。それこそが人間の仕事だと思って、僕は今テクノロジーという文脈で、「どうあれば人間はハッピーになれるか」を考える仕事をしています。
そんな中で、2017年5月に『2020年 人工知能時代 僕たちの幸せな働き方』という本を出しました。今年の1月には『ホンマでっか!?TV 』という明石家さんまさんがMCをしている番組に出たんですね。そこでは本当にくだらない話しかしなかったんですけど。
LINEに「りんな」という女子高生AIがあるんですね。そのAIがキャバクラで働く女の子のLINEに導入されると、お客さんとのやり取りをAIが自動配信するような話をしたんです。「ホンマでっか?」という話ですから、本当かどうかは分かんないですよ。
でも2018年にはそうなるかもしれないという話をしたところ、さんまさんに「売れない中華料理屋の店主みたいな顔しやがって」なんて言われまして(笑)。こういう顔だからしょうがないんです、やらしい顔なんで。ありがたいことにカットされていたので、よかったんですけど(笑)。
キャバクラを経営する会社で幹部として働いていたMBAの仲間がいるんですが、彼と話をしているときにキャバクラの女の子たちに「藤野さん、めっちゃキャバクラ行きそう」って言われるんです。僕は年に1回行くか行かないかぐらいですが……まぁ、それはどうでもいいですね(笑)。
その女の子たちって、待ち時間に営業をしているじゃないですか。営業メールを送ったりするんですが、それが嫌で辞めていく子が多いという話があったんです。お酒の席で隣に座って働くのは嫌じゃないんだけど、営業してこいと言われるのが嫌で辞めていくと。そんな話を聞いたときに、それって自動化できないのかなと思ったわけです。
また、おじさんからのしつこい誘いのLINEを、データを集めれば学習できると思ったんですね。おじさんを躱すテクニックを学習していけば役に立ちそうじゃないですか。「アフターしろ」とか「同伴しろ」という誘いをどう断るか、かつお店にはちゃんと連れてこれるようなものを作れないか、という話をマジで話しまして。それって、「りんな」で遊んでいるときに思いついたんですよ。
ここで思ったのは、テクノロジーというものをあんまり難しく捉えないことですね。今目の前にあるもので遊んでいるときに、その経験が体に残っていると「あ! ここであれ使えるかも!」という発想が出てくるんじゃないかと。僕はこれが、テクノロジーのことを学んでいて楽しく感じる瞬間なんですね。
できるかどうかは分からない。でも、テクノロジーになにができるかという最前線の知識があれば、きっとこれぐらいのことはできるんじゃないかという予測が立つんですね。
ちなみにこの話には余談があって、おじさんのほうもAIがコミュニケーションするようになって、キャバクラの女性が使うAIに対して口説き始めるという、『ジョジョの奇妙な冒険』におけるスタンド同士の戦いのようなものが起きるんじゃないかということで。その先に、世界はどこに行くんだろうと考えるのが楽しいんですね。
人工知能時代はもうすでに始まっているのですが、この時代におけるリーダー像の在り方としては、「テクノロジーリテラシー」が必要だということです。それはプログラミングができるということではなくて、「テクノロジーでなにができるか」というケーススタディを知ったうえで遊び、なんとなく使い方が分かっているからアイデアが出てくるという状態を指しています。でも、テクノロジーには詳しいんだけど人間のことは分かっていない、という人を育てちゃいけないとも思うんですね。
それはなぜか。僕がおもしろいなと思ったのは、AIを研究している人、それこそ(石山)洸さんと話をしていても、話に出るのは人間のことばかりなわけですよ。
人工知能に心を持たせようと思っている人は「心とはなんなのか」、人工知能に意識を持たせようと思っている人は「意識とはなんなのか」、または「自我とはなんなのか」について突き詰めて考えているわけですよね。
僕は瞑想もするのですが、その瞑想を通じて「自分の内的宇宙とはなんだろう」といったスピリチュアルっぽいことにつながるわけですよ。テクノロジーの話をしているのに、気が付くと人間の話をしているわけです。
それって、すっごくおもしろいと思っていて。やっぱり人間のことが分かっていなかったらできないだろうとみんなが言うわけですよね。これってすっごくおもしろい。人工知能学会で行われているのは、半分ぐらいのテーマが「人間の身体」や「瞑想中脳の状態はどうなるのか」といった哲学的な問いなんです。だから人工知能のテクノロジーの話っておもしろいんですよ。根っこは人間のことですから。
ですから、人間にはそもそもどういった感情があって、どうなったときに人はやる気になるのか。それを分かっているリーダーじゃなきゃ駄目だと思うわけです。
「みなさん、人工知能に仕事を奪われないように進化してください。危機感を持ってください」なんて語る経営者がたまにいるじゃないですか。これってものすごくイケてないじゃないですか。
そういうことを言われたら気分が悪くなりますし、人はどうなったらうれしくなるのかという機微が分かっていたら、組織をそんなかたちで動かそうとはしないはずです。テクノロジーという言葉を使って人をコントロールしようする人たちはいます。それって、やっぱりアンハッピーな方向に行ってしまうと思います。
人間はどうなればハッピーなのかについて幸福学などでも研究されていますが、そうしたことを分かったうえでテクノロジーのことも分かっているという、そういう人がこれからのリーダーなんだと思うんですね。
今日はまさに、この人工知能時代におけるビジネスリーダーだと僕が思う2人にこれからお話しいただこうと思っています。後半のパネルディスカッションでは一応「HRテック」というテーマで行ないますが、もしかしたらHRとは離れちゃうかもしれません。「人間」という話が出てきてもいいと思っているので、ここまでの話を聞いて「どう思った?」「どんなこと感じた?」ということをグループで共有してから、(石山)洸さんのセッションに入ろうと思います。
僕のプレゼンテーションは以上です。ありがとうございました。
(会場拍手)
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