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やりたいことを見つける、実現する(全5記事)

電通から世界規模の国際人権NGOへ--本当にやりたい仕事はどうやって見つけるか

異なる分野で活躍する3名―ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)・趙正美氏、リクルートライフスタイル・加藤史子氏、立命館大学・琴坂将広氏が一堂に会し、起業や就職を目指す学生に向けてやりたいことの見つけ方や実現の仕方について語りました。このパートでは、国際人権NGOで活躍する趙氏が難民のために働こうと思ったきっかけについて振り返りました。(IVS 2015 Spring Workshop より)

やりたいことの見つけ方、実現の仕方

小林雅氏(以下、小林):ありがとうございます。みなさんこんにちは。インフィニティ・ベンチャーズの小林と申します。よろしくお願いいたします。

今回はですね「やりたいことを見つける、実現する」というセッションを考えてみました。みなさんの中で、やりたいことが明確にある人のほうが少ないんじゃないかなと思っております。

先輩方から「実際にやりたいことってどうやって見つけたのか」というようなことを伺っていきたいと思っております。楽しみにしていただければと思います。

では、スピーカーのご紹介をしていきたいと思いますので、簡単にそれぞれ自己紹介をいただきたいと思っております。では、ヒューマン・ライツ・ウォッチの趙さんからお願いします。

趙正美氏(以下、趙):ヒューマン・ライツ・ウォッチの趙正美と申します。今日はどうぞよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

ありがとうございます。

簡単に自己紹介をさせていただければと思います。生まれたところからで恐縮なんですけれども、だいぶ昔(1974年)の4月に生まれまして(笑)。

私、名前からわかるとおり、在日韓国人の2.5世なんです。

2.5っていうのは、父が2世、母が1世なので、その間に生まれる子どもが2.5世です。1990年、高校1年のときにアメリカに留学しようとしたんですけれども。

私、韓国籍だから韓国のパスポートを本当だったら持っているはずなんですが、韓国政府に「パスポートをくれろ」と言ったら「お前にはパスポートをやらねえ」っていうすごいしびれる体験をしました。

難民認定され、パスポートなしでアメリカに行った

なんでパスポートもらえなかったかというとですね、韓国っていうのは昔、独裁政権で。軍がクーデターを起こして政権を乗っ取ったんです。民主主義政権じゃなかったんです。

その時代があって、私の両親が民主化運動、今でいうビルマ(ミャンマー)のアウンサン・スー・チーさんみたいなことをやっていたもんですから。

当時の韓国政府からものすごく嫌われておりまして、活動をさせないように趙さん一家にはパスポートを出しちゃだめ! みたいなことに決めたわけですね。韓国政府が。

私は全然民主化活動も何もしてなくて、アメリカに留学したかっただけなんだけど、パスポートをもらえなくて。

しょうがないから「パスポートなしでいっかー」みたいな感じで。そんな軽くはなかったんですけど。パスポートなしでアメリカに行ったんです。パスポートなくても、アメリカには行けるんですよ。

どうやって行くかというと、たぶんみなさん将来そんなことはないと思うんですけど、何かあった時のためにお話しておくと……まずね、アメリカからビザをもらう。

アメリカに入っていいよっていう証、学生ビザをもらって、あと日本を1回出るじゃないですか。で、もう1回日本に帰って来なくちゃいけないんですけど、日本政府から「帰って来てもいいよ」という許可の2つがあれば、パスポートがなくてもアメリカに行けるんです。そんな感じで、パスポートなしで1年アメリカで勉強して帰ってきました。

パスポートが出なかったときに、日本から行って帰って来ていいよ、という証の再入国許可証というものをもらいました。

法務省ってとこに行けばもらえるんですが、パカッと開けると1ページ目に「日本は難民協約を批准しているからお前は1回帰って来ていいよ。でも外国にいる間日本政府はお前の身元は保証しないよ」と書いてあって。

あー「難民なんだ」みたいな。すごい衝撃的で。私、東京生まれで一軒家に住んでて、私立の女子校とかに通ってたんで。「日本政府は今、私のことを難民って呼んだんだな」っていうのが、16歳ですごいびっくりする出来事であり。

それがきっかけ難民ってなんだろう? というのを調べ始めてですね。単純なんで「これはもう、私は難民のために働くしかない!」と。やりたいことが弱冠17歳で見つかってしまったというね。「将来は私は絶対難民のために働くんだ!」と、すごい志を強くしたわけですね。

就職活動は初任給が高い順に受けた

で、高校生の時に、難民を助ける国連機関の国連難民高等弁務官事務所、略してUNHCRというところがあるんですけれど、そこの東京事務所があったのでそこでボランティアを始めて。

もう、本当に、ゆくゆくはケニアで難民キャンプをつくる! カンボジアで井戸を掘る! みたいなことを考えておりまして、国連職員を目指してました。国連に入りたかったので、そのために一番良かろうよ、みたいな感じでSFCに入りました。

で、その次に、お前なんで電通に入ってんだよ! みたいな……。ここ笑うところなんですけど(笑)。

SFCに入って、本来ならばアメリカないしはイギリスの大学院に進学して、難民のことを勉強して、国連難民高等弁務官事務所でジュネーブ勤務というのが夢のストーリーだったんですけど。

大学院に行こうとしたときにですね、親に「アメリカで大学院に行きたいお~」とか言ったら「そんなお金はねーよー」と言われて「そうですよねー」という感じになり。

しょうがないんで、1回就職することにして、とにかく早くやめて大学院に行きたかったんで、初任給が高いところが一番いいと思って、初任給が高い順に受けたんですよ。

ほんと、就職する気がなかったから超どうでもよくって。マッキンゼー、電通、IBMとか「初任給たけー」。みたいなところばっかり受けて、受かった中で一番初任給が高かった電通に行きました。

小林:ちなみに電通の初任給っていくらだったんですか? 

:当時、24万とかだったんじゃないですかねー。ただ単純に、30歳ぐらいまで働くとすぐ年収1000万に到達するみたいなのを基準に選んでました。3年間で1000万くらい貯めれる会社ばっかり受けて。

ところが、まったく3年間で1000万円は貯まらず(笑)。電通っていうのは「日本のトレンドを作る会社だよ」と言われていて、トレンドを追いかけて食べたり買ったりしてたら、お金が貯まらなくって、電通で働き続けるはめになってしまい。

かれこれ14年半、電通で長い楽しい広告人生を歩んでおりました。

電通から世界最大の国際人権NGOに転職

14年半で辞めて、今勤めているヒューマン・ライツ・ウォッチという国際人権NGOに転職したんですけれども。

私の高校時代の塾の友達に土井香苗っていう人がいて、彼女が日本でヒューマン・ライツ・ウォッチのオフィスを立ち上げたのが今から7年前なんです。

立ち上げるというときに、たまたま一緒にご飯を食べてて。なんか「私こういうの日本でやるから! 弁護士とか辞める!」みたいな。それこそやりたいことが超見つかっちゃった人みたいにワキワキしており。

その時に資金調達のためにパーティーとかをやるんだけれど、パーティーとかやったことがないから、どうしたらいい? と相談されたのが関わることになったきっかけで。

私、広告代理店にいたので、パーティーとかも得意だから「じゃ、パーティーとか手伝おうか?」とかうっかり言っちゃったのが、その後の人生を左右しまして。

結局5年ぐらいプロボノとして、電通の仕事をしながらヒューマン・ライツ・ウォッチの仕事を手伝っていたら、2年半前に彼女から電話がかかってきて「人件費確保したから、YOUやめてこっちきちゃいなよ!」みたいな感じで。

「まあそうですか」みたいな。だいぶ大きな決断だったんですけれども、やっぱりやりたいことをやるのがいいかな、みたいな。それで転職して今に至るということです。

ヒューマン・ライツ・ウォッチって、みなさん初めて聞かれた方が多いと思うんですけれども、人権問題を監視する国際的なNGOでして、世界で最大級の国際人権NGOです。

40年くらい前にアメリカで生まれて、今でも本部はニューヨークにあります。1997年に地雷禁止条約っていう、いわゆる地雷を使わないようにしようっていう具体的な条約を他のNGOと一緒に作ったことで、ノーベル平和賞をいただいている団体でございます。

人権問題もいろいろあるんですけれども、ヒューマン・ライツ・ウォッチはほとんどすべての人権分野を扱っていまして、メジャーなやつでいうと子どもの権利とか女性の権利とか、あと最近ニュースになっているLGBTの権利だとか。

私の大好きな難民だとか報道の自由とか、あと武器とか。新しい武器を開発しないように禁止する条約を作るみたいなこともやっていたりだとか。

あと拷問にも反対していて、アメリカはこんな拷問をやっていた! と暴露したりとか、そういうこともやっています。

命がけの活動を続けるヒューマン・ライツ・ウォッチ

すいません、最後はすごく簡単に。なんか、NGOって聞くと、アフリカとか行って毛布とか配るみたいな活動をみなさんなんとなくイメージされるかと思うんですけど、私たちはそういうのはやらない団体なんです。

毛布を配るような人道援助の活動をしないNGOも結構珍しいんですけど。何をやっているかというと、人権侵害が起きてる現地に私たちの調査員が行くんです。そこで何が起きているかを調べて、調べたことをプレスリリースとして発表するんですよ。

そうするといろんな形でテレビが取り上げますよね、たとえばイスラム国とかが女子を20人誘拐して性奴隷にしている! とか調べたりしてニュースリリースで発表すると、NHKとかがニュースにして、イスラム国ひどい! みたいな世論が高まる。

ただ「ひどい」って世論が高まってもイスラム国の人たちはやめないので、それをやめさせるっていうところまでの活動をしているんですが。

どうやってやめさせるかというと、誰しも頭が上がらない人っていますよね。みなさんもオカンに頭が上がらないとかあると思うんですけど。

頭が上がらない人を探し出して、その人に「あいつにやめろって言いなよ」みたいな感じで根回ししてやめさせるみたいなことをしています。

例えば、シリアって国がありますね。シリアがめちゃめちゃ内戦しているのは知っていますよね。シリアがクラスター爆弾とか使っちゃいけない兵器をばんばん使っているので、やめさせたいんですけど。

私たちとかアメリカとかが「シリアやめろ!」と言ってもシリアは全然やめる理由がないから「うるさい」みたいな感じで言うことを聞かないので。シリアは誰に頭が上がらないかな、と考えると、シリアはロシアに頭が上がらないんです。

ロシアも簡単にはものを聞いてくれないんですが、少なくとも「シリアにクラスター爆弾を使うのはやめろって言いな」とか「シリアに武器を輸出するのはやめろ!」というのを直接ロシアに言ったりもするし。

直接言ってもロシアはあまり聞いてくれないから、国連を使ってロシアにプレッシャーをかけて「やめないと恥ずかしいよ」というふうに持っていったり。というやり方で、起こっている問題を止めるという活動をしています。

小林:ヒューマン・ライツ・ウォッチの活動はすごくて、調査員が命がけなんですよね。シリアであったと思うんですけど、爆撃されて市民がけっこう何百人も死んでるじゃないですか。

政府の公式発表って「死んでない」とか発表するんですけど、病院に行って死んだ人を調べるみたいな。すごいなこの人たちは! みたいな。動画とかでドキュメンタリー(にしたり)みたいな。

NHKスペシャルみたいな動画を作って、例えば国連とかで流しているんですね。そういうメディアチックなところを合わせてやってるような非常におもしろい団体、NGOですよね。そんな感じで合ってますか? 

:その通りです。

小林:ありがとうございます。

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