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前年比600%!? 〜BtoBベンチャー企業広報のノウハウ〜(全1記事)

掲載数が前年比600パーセントに ニッチ領域のBtoBベンチャーが取り組んだ広報活動とは

BtoB企業の広報・バックオフィスにまつわるノウハウはオープンに共有されにくく、担当者が自社の課題を抱えこんでしまうという問題があります。そんな中、バックオフィス向けコミュニティ「CBsync」を主催するゲーム制作会社の株式会社オルトプラスが、広報担当者・マーケター向けのイベント「ファンを増やす『BtoB広報・PR戦略勉強会』」を開催。実際にBtoB企業で活躍する現役広報担当者3名が登壇し、立ち上げの苦労から今に至るまでのリアルな話が披露されました。本記事では、2018年に掲載件数が前年比600パーセントを達成した、SNSマーケティング企業の広報活動の裏側を紹介します。

企業のSNSマーケ支援の先駆けが登壇

芹沢美稀氏(以下、芹沢):みなさんこんばんは。今ご紹介にあずかりました、ラバブルマーケティンググループの芹沢と申します。今日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきましてどうもありがとうございます。

一方的に私が喋るのもな……と思っているので、もし喋っている時に「もうちょっとこれが聞きたい」とか「質問がしたい」というのがあったら、ぜひ聞いていただけたらと思っています。インタラクティブにやりたいなと思うので、ご協力をお願いします。

今日、実は私がトップバッターで話す予定だったんですけれども、私はセミナーを昨日だと思っていて、張り切ってオルトプラスの前まで来たんですが、実は今日だったということを知りました。今日は別の予定を入れていて、入りが遅れるかもということで、急遽変更していただきました。ありがとうございます。……という雑談を加えながら、始めたいと思います。

自己紹介させていただきます。ラバブルマーケティンググループの話は、この後にさせていただきます。社長室付で広報PRをやっています。株式会社コムニコという、SNSを専門にしたマーケティングのエージェンシーの創業時にジョインしました。

みなさんが今使っていらっしゃるようなTwitter、Facebook、Instagram。まだ日本でそんなに使ってる方がいない時から、企業さんに向けて、SNSのアカウント開設とか運営をサポートするというサービスを提供していました。

けっこう“なんでも屋”で、その後シンガポールに行って、東南アジアの市場調査とか現地パートナーさん探しをやって、2018年に今の株式会社ラバブルマーケティンググループに移りました。ホールディングカンパニーでコムニコの親会社にあたります。今、グループ各社の広報PR、ビジネスアライアンスなどを担当させていただいてます。

BtoCマーケティングを中心に支援

ラバブルマーケティンググループという会社を知ってる方っていらっしゃったりします?

(会場挙手)

あっ、ありがとうございます。元々知り合いの2人しか知らないですけれどもね。

(会場笑)

ラバブルってあんまり日本では聞かない言葉なんですけれども、「愛される」というような意味になります。「愛されるマーケティング活動をサポートしましょう」というコンセプトで作ったホールディングカンパニーです。

世の中にあふれている情報の流通量が、もはや、私たちが消費できるよりもはるかに多く流れていて、なかなか今までみたいなマス広告が効かなくなってきた、という実感がみなさんもあると思います。

企業のマーケティング領域がどんどん細分化されてきている世の中で、企業から生活者へ、いかに適切なタイミングで価値ある情報を届けられるか、といったところのお手伝いをしているのが、私たちの会社です。私たちのクライアントさんは、ブランド企業のマーケティングご担当者様や広告代理店様が多いです。

多事業展開のグループ広報PRは「ファンづくり」が基本

今、ラバブルマーケティンググループは、3つの事業で4つの子会社を持っています。先ほど自己紹介でお話しさせていただきました、株式会社コムニコ。ここはSNSを専門にしたマーケティングエージェンシーです。株式会社24-7(トゥエンティフォーセブン)というのが、マーケティングオートメーションツールの導入サポートをやっている会社です。

あと2つはHRテック事業です。一般社団法人SNSエキスパート協会というのを立ち上げまして、SNSマーケティングに関する検定資格とか講座を提供しています。検定合格者は、1,600人ですね(注:登壇時点。最新は、2019年1月で1,700人)。全国の方に受けていただいています。株式会社ハウズワークという会社が、マーケティング・PR・Webの領域に特化した人材のマッチングエージェントになっています。

こういった会社が4社ございまして、親会社を含めたすべての会社の広報PR、ビジネスアライアンスを担当しています。

組織図としては、社長直下に社長室があります。そこで今、私と2名の広報担当者、計3名で業務を担っています。社長室のミッションとしては、ラバブルマーケティンググループに関わるすべてのステークホルダーに、正しい情報を届けて信頼関係を築いてファンになってもらおうと。

私たちが絶対に忘れてはいけないのが、「ファンになってもらうためのコミュニケーション活動であること」。これは忘れないようにメンバーと共有しています。

“社外向けの攻めの広報”とは

今日のポイントです。みなさんの聞きたい話とズレてはいけないなと思っていて、私が今日話すポイントが想定しているものと違うのもあれなので、先に言っておきます。

ザックリですけど、広報の仕事ってすごく多岐にわたると思っています。「広報PRをやっています」と言っても、いわゆる大手の誰もが知っているブランドの広報担当者とBtoBベンチャーの広報担当者って、やっていることが全然違うと思うんですね。

(スライドを指して)これは、広報の仕事をざっくりと私がマトリックスにしました。

攻めの広報と守りの広報があって、社外向けと社内向けがあって、今日は“社外向けの攻めの広報”に特化して話します。社外向けの攻めの広報って何かと言うと、“サービス販売、売り上げにつながる広報”と“採用につながる広報”というところに寄って話をさせていただきます。

2018年に掲載件数「前年比600パーセント」を達成

「前年比600パーセント」というところを、今回のセミナーのタイトルに付けていただきました。正しく言うと、2017年の上半期と2018年の上半期を比較した時の掲載件数の伸びを比較させていただいて、600パーセントというところです。9件だったのが2018年の上半期には54件というところまで到達、達成をしています。

もう少しみなさんに数字を見せたくて、2018年が3,200パーセント。2015年に広報PRを立ち上げた時は、掲載件数は年間たった3件だったんですよ。それを16年、17年、18年と(続けていった)。広報PRを立ち上げた2015年から2018年というのは3,200パーセント(増えた)。32倍の掲載件数までなんとか到達できました。

私自身、広報PRのバックグラウンドは全くありません。元々営業経験が長いので、「つまりは広報PRの経験がなくても、正しくやれば掲載件数はある程度達成できるな」と、広報を数年やってきて思ったことでございます。

ニッチ領域の知識を活かして、専門メディアへ寄稿

実績をいくつかご紹介させていただきます。私たちの事業は、いわゆるデジタルマーケティング領域です。デジタルマーケティングって非常に範囲が広いですけど、業界メディアが必ず存在するんです。

そこへの寄稿です。ITmediaマーケティングやZDNet Japan、Web担当者Forum、MarkeZine(マーケジン)やSalesZine(セールスジン)といった、デジタルマーケティングに携わっている企業のブランド担当者さんであれば必ず知っているようなメディアで、連載をやらせていただいてます。

BtoB領域というのは非常にニッチなので、逆にそれを活かしています。つまり「ニッチということは専門家になれる」という意味でもあると思うので、専門家の立場として、企業の「これからSNSマーケティングをやらないといけない」とか「何もわからない」という方々向けに、業界の先駆者のような立場で寄稿させていただいています。寄稿の多くは、こちらから編集部に企画を持ち込みさせていただいて、掲載につながった事例になります。

キー局の報道番組に「専門家」として出演

寄稿以外の掲載実績をご紹介します。BtoBの会社で、なかなかキー局の報道番組に出演というのは難しいと思うんですけれども、ただこれも実際にやってみたらどうなるのかな、とやってみた事例です。

みなさん、朝ってニュース番組を見られますよね? テレビ東京の『Newsモーニングサテライト』はマーケットの情報が多い番組です。そこに、毎週火曜日に「リーダーの栞」というコーナーがあるんですが、みなさんご存じですか? 各界のリーダーが、自分に影響を与えた本を紹介するというコーナーです。

これはただ本の紹介をするだけではなくて、その会社の情報、サービスといったところも併せて紹介してくれて、枠としては5分、6分ぐらいあるんです。なおかつ、テレビ東京ってオンデマンドのサービスを持っていて、過去のアーカイブ動画が見られるんです。

つまり、テレビで放映されるだけではなくて、アーカイブされて今後も見てもらえる可能性が高いのです。「リーダーの栞」を制作している会社に企画を持ち込んで、採用された事例になります。

フジテレビ『ノンストップ!』という情報番組の事例です。ここでSNSでの炎上に関して話題になっている時に、SNSエキスパート協会の代表理事が炎上の専門家という立ち位置で出演させていただいています。

日経MJの事例です。マーケティングジャーナルというだけあって、SNSとか新しいトレンドを1面で扱うことが多いんです。Instagramを使ってレストランや恋人を探す若者が増えているという記事の中で、SNSの専門家として情報提供をさせていただきました。コムニコの取締役のインタビューや調査結果を出していただいています。

BtoBベンチャーの広報活動における3つのポイント

いろいろな活動をやってみて、3つポイントがあるなと思っています。1つめが注力ポイントを定めるというところです。4つの大雑把なマトリックスで言うと、BtoBのベンチャーで認知度が低いのであれば、サービス販売、採用広報に特化する。どれも大事だけど、どれもはできないので注力ポイントを定めるというのがまず1つ。

あと広報って営業担当者だなと思っていて、それもBtoBの営業担当者がやってる活動と非常に近いと思ってます。もちろん企画を作って、提案するといったことも大事ですけど、何よりも大事なのは数値管理していくことだと思ってます。何もしていないのに取材が来ることなんてほぼないので、自分たちの会社が今、どこにいるのかを決めて数値管理する。

広報の成果指標を大きく3つに分けると、プロセスとアウトプットとアウトカムですね。例えば広報を立ち上げて間もないところで、いきなり広報活動で1年で売り上げを10パーセント上げてと言われても、非常に成果が見えにくいです。

そういった会社さんは、プロセスというところに目標を定めて、例えば「ニュースリリースの本数が今まで月に1本しか書いてなかったのを10本にしてみよう」とか、メディアのコンタクト数が今3件しかないのでこれを毎月3件増やしていく、新規メディアの開拓数を同じようにやっていく、企画の提案本数を今まで1本しかやってなかったのを3本にしてみるといったところの、行動管理をしていく。

なんとなく行動量が増えてきたなというのが見えてきたら、今度はアウトプット。アウトプットいうのは、プロセスに対するメディアの掲載件数や露出評価、あと例えば社内報の発行とかイベントの開催数といったところに、数値目標を置く。今、私たちは露出件数を数値管理していて、今後、露出評価や売り上げ貢献、採用件数も数値管理していきたいと思っています。

BtoBかつニッチ領域だからこそ「教えてあげる」スタンスを取る

BtoBのベンチャーの広報ってトライ&エラーだなと思ってます。失敗がほとんど。うまくいくことなんて、その中の数パーセントです。1つ言えるのは、BtoBのニッチな領域だからこそ、自分たちの専門性を出す。メディアに取り上げてもらうという発想を変えてみて、逆に「教えてあげる」という考え方を取ったんですね。

今までのやり方を疑ってみるというのが大事だと思ってます。露出量が大事な時もあると思うんですけど、ラバブルマーケティンググループと言っているだけあって、一方的に情報を発信するというのが、あまり正攻法ではないなと思っています。広報立上げ当初、ニュースリリースを実際に書いて何回か一斉配信をやってみたんですけど、今は、リレーションのある記者や編集部に対してその方が興味のありそうな情報を個別に送付しています。

私たちの情報を必要としている人に情報を届けるというのは、マーケティングも広報も一緒だなとは思っているんです。とはいえ、露出量が大事な時もあるなと思っていて、ここも使い分けだなと思っています。

あとは、いろんなパターンを試してみる。寄稿であったりですとか、例えばテレビ局や制作会社に行って、担当者の興味のある切り口で提案してみるとか。

これが、いわゆるラバブルマーケティンググループの広報PRの話です。ぜひ、みなさんも試せるものがあれば、試していただきたいなと思っています。これで私の話は以上です。

ありがとうございます。

(会場拍手)

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