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東小雪×杉山文野×山縣真矢「同性婚」記者会見(全2記事)

「好きな人といるために、自分の生殖器を切りますか?」 LGBT当事者が語った、同性婚を取り巻く現状とは

東京レインボープライド共同代表の杉山文野氏、山縣真矢氏、元タカラジェンヌでLGBTアクティビストの東小雪氏が登壇し、日本外国特派員協会にて記者会見を­行いました。渋谷区の「同性パートーナーシップ証明書」制度の意義や、同性パートナーの抱える問題について語ります。(「同性婚」記者会見より)

活動のキッカケは、カミングアウト本の出版

杉山文野氏(以下、杉山):僕がこういった活動をするきっかけとなったのが、約10年前ですね。まだ学生だった頃に、友人の勧めで性同一性障害のカミングアウト本っていうのを出したことからでした。

僕自身、学生時代はですね、誰にも言うことができずに、自分だけが頭がおかしいんじゃないかと、こう思い悩んでた時期もあって、本当に死んでしまいたいと思うほど悩んでいた時期もあったんですけれども、多くの友人、家族に恵まれて、少しずつカミングアウトを始めた頃でした。

(写真が表示される)

ちょうど写真が出てますけれども、いわゆるどこにでもいるような普通の4人家族、杉山家の次女として生まれまして、あのちっちゃいほうですね。赤いネクタイをした、セーラー服を着ている頃。

右下の写真がちょうど中学生の頃で、1番、体は順調に女性として成長していく一方で、心のほう、気持ちのほうは順調に男性として成長していく。まさに引き裂かれるなんて思い、簡単な言葉ではすまないような心理状況で、ずっと悩んでた頃の写真。

あとは幼稚園の頃の写真はですね、幼稚園だけ男女共学で、男の子たちと一緒に遊んで。疑いようもなく自分が男だと思ってた時期の写真を今日はちょっと持ってきました。

その本を出した時期っていうのは、まだ性同一性障害っていう言葉の認知度もほとんどない時期でですね、まあセクシュアル・マイノリティといえば、イコール水商売ゆえに夜の世界の人とか、イコール、テレビやバラエティに出ている一部の人というイメージ。

どこか自分とは遠い世界の人っていうイメージが強かった頃だと思うんですけれども、まあいまだにそういう部分もあると思うんですが。

そんな中で、どこにでもいそうなすぐ隣にいるような学生、さらにフェンシング日本代表をやっているような選手でも、そういうことがあるんだということで、カミングアウトしたところ、結構話題にして頂いたことがありました。

自分でも思っていた以上の反響がありまして、全国から「僕もそうです」「私もそうです」と。「でも誰にも言うことができません」「辛いです」「苦しいです」「もう助けて、死にたい」と。

そういったもう1000通を超えるようなメールを頂いてですね、以来そういった方たちの相談に乗ったりですとか、全国の学校や企業、あとはさまざまな団体でセクシャリティに関する講演をさせて頂いたり。

あと今はパレードの運営やセクシュアル・マイノリティの子どもたちのサポートを行うNPOを運営したりしながら、今は自分自身で会社を経営して、そういった活動と並行してやっております。

国を変えたいというより、ただ普通に暮らしたいだけ

杉山:たった10年でも、この日本のセクシュアル・マイノリティを取り巻く環境というのは、非常に大きく変わってきてると思うんですけれども。特に先月、渋谷区で日本初の同性パートナー条例が可決されてからのこの3週間というのは、本当に目まぐるしいスピードで変化しているとも感じています。

この条例の件は日本だけでなくて、国内外で大きく話題にもなってるんですけれども、僕は大きく国を変えたいと思って始めたというよりも、ただ普通に暮らしたいというふうに思ってきただけで。

本を出したときもですね、何か大きく訴えてこう社会を変えてやろう、みたいなことで書いたというよりも、ただ「僕は僕です」って言いたかっただけなんですね。

好きな人と一緒に暮らしたいっていう、ごくシンプルな思いが、数が多い人たちには当たり前のようにできるのに、数が少ないっていうだけで僕たちにはできない。それはそろそろスタートラインを一緒にして頂きたいな、と。

そして、数が多い方たちの明日は、この条例ができてもできなくても変わらないと思うんですが、まあそんなに変わらないと思うんですけれども、僕たちにとっては、非常に大きく明日が変わる、大きな1歩だということもお伝えできたらなというふうにいつも思っています。

なので、今回のこの渋谷の件っていうのは、本当に非常にただ素直に嬉しいなというふうに思ってます。それは条例の中身はもちろんなんですけれども、それ以上に「行政がその僕たちの存在をちゃんと認めてくれた」と。

渋谷区では今までいないこととされていた僕たちの存在も、ちゃんと存在を認めて、尊重してくれる町なんだっていうことをまず何よりも嬉しく思っています。

その同性パートナーシップというとですね、性同一性障害は関係ないんじゃないかというふうに思われることもあるんですけれども、すごく、おおいに関係はあってですね。こう見た目はこんななんですけれども、僕自身はまだ戸籍上は女子になります。

なので今、5年近く付き合った女性、ストレートの女性のパートナーがいるんですけれども、見た目は男女、異性のカップルに見えても、戸籍上は女性同士ということで、一緒にいる手段がまだありません。

「法律に合わせて体を切りたくない」矛盾をはらんだ現在の制度

杉山:ならば性同一性障害特例法を使って、戸籍の変更をすればいいんじゃないかと言われるんですけれども、戸籍変更の条件っていうのはまだ非常に厳しくてですね、条件の1つである「生殖器を取り除いていること」という条件に当てはまらない僕はまだ変更ができないということで、まだ一緒にいる手段がありません。

できることなら、僕自身はもうこれ以上、体を切りたくないと。金銭的にも、体も心も負担のかかる手術は、もうこれ以上したくないというふうに思っているんですけれども、やっぱり彼女と一緒にいようと思うとですね、切ったほうがいいのかなと悩んだりもして。

名前は性同一性障害。障害とつくんですけれども、保険はきかない。だけど戸籍の変更の条件には、その保険適用がない手術が必要になってくる、と。これはちょっと矛盾してるんじゃないかなというふうに思います。

自分の体の違和感ではなくて、制度に合わせるために体を切らなくてはいけないっていう悲しい手術がたくさん行われていて。「生殖器を切れば、好きな人と一緒にいる権利を国がくれる」って言ったら、皆さんは自分の生殖器を切りますか? と。

もちろん性同一性障害特例法の条件を変更するというのもあるんですけれども、もしこの同性パートナー条例のようなものがちゃんと進んでいけば、制度に合わせるために体を切るといったような、不必要な手術が軽減される可能性が大きくあるということで、今後に期待したいというふうに思っています。

パートナーシップ条例の可決は、もう渋谷区だけの話ではない

杉山:ただ、一方でですね、今週日曜日(2015年4月26日)にパレードの行われる、この条例が可決された渋谷区で区長選挙があるということで、区長候補の中にはこの条例に否定的な方もいらっしゃって。

今回選挙の結果次第では、この条例の見直しなんてこともあるんじゃないか? と言われていて、今後の日本のLGBTを取り巻く環境が、おおいに変わる可能性があるというふうに思っています。

渋谷区からスタートした、この話題は全国に今広がって、全国の自治体が議論を始めました。ここで渋谷区がしっかりと進めて、形を作れるかどうか? と。はたまた今の流れが止まってしまうのかどうかというのは、今後の日本を左右する大きなポイントなんじゃないかなと思っています。

この渋谷の条例の件は、もう渋谷だけの話ではなくて、日本全体の話だと思っています。同性パートナーの話だけではなくて、2020年東京オリンピックも決まった、日本が今後しっかりと国際都市になっていけるのかと。

多様性の先進国になっていけるのかという大きな分かれ道だと思っていて。少しでも多くの皆様にこの現状をお伝えしたくて、今ここでお話しをさせて頂いております。

細かい話は後ほど質疑応答でさせて頂きますので、一旦この辺で終わりたいと思います。ありがとうございました。

20年間でイベント動員数は5万人に

司会:それでは、山縣真矢さん、どうぞ。

山縣真矢氏(以下、山縣):どうも今日はありがとうございます。私は東京レインボープライドの共同代表の山縣といいます。ちょうど今杉山も申しましたが、今週末、4月の25、26に渋谷区にあります代々木公園にて「東京レインボープライド2015」が開催されます。

今年は渋谷区の同性パートナー証明の話題もありまして、すごく盛り上がると思っています。メディアの問い合わせも昨年の3倍くらいになってまして、参加者も増えると思っています。

私が東京のこのプライドパレードの運営に携わったのは、2002年からになります。日本で初めてこのプライドパレードが開催されたのが1994年の8月で、東京で開催されました。

司会者:2002年でよろしかったですか?

山縣:はい、私が関わったのが2002年です。昨年でちょうど20年っていうことになるわけですけども、その間中断があったりとか、経済的な問題とかマンパワーの問題とかいろいろあって中断をしたりとか、いろいろありながら20年間続いてきました。

主催団体も変わったりとかしたんですけども、それでもずっと会場はですね、渋谷区代々木公園、ほとんどそこでやられていて、渋谷、原宿、渋谷区界隈を行進してきました。2012年からちょうど私どもの主宰する、東京レインボープライドのパレードが開催されまして、今年で4回目になります。

この20年間で、かなり大きく変わってきたことがいくつかあります。まずですね、確実に人数は増えてまして、私どもが開催して4年になるんですけども、東京レインボープライドになってからでも5千人、1万2000人、1万5000人。これ全部1日開催なんですけども、今年は2日間開催なので、大体3万人から5万人の動員を見込んでいます。

広がる参加者の幅、アジア圏や「アライ」の参加も

山縣:えー私どものイベントはですね、企業とかその他のところの協賛金で運営されているんですけども。この間ですね、まあ協賛企業もかなり変化をしまして、最初の頃はですね、ゲイ・コミュニティとかLGBTのコミュニティの中の企業だったりとか、新宿2丁目のゲイバーだとか、そういうところからお金を集めてっていう形でした。

その後、企業、特に外資系の企業が主なんですけども、外資系の企業からのサポートが得られるようになり、最近では日本の企業も少しずつ協賛をしてくださるようになりました。

また会場のほうもだんだん広く、イベントのほうも大きくなってまして、昨年はブース出展数は50だったんですけども、今年は90になって倍近くになっています。

主な企業、主な参加なんですけども、ブース出展に限りますと、まず協賛企業のブースがあります。それから飲食ブース、それからLGBTのコミュニティですね。そういうコミュニティのいろんな活動をしている団体のブース。それから各国の大使館からのブースもあります。

人数だけではなくって、参加者もかなり広がってきていまして、結構アジアの台湾とかタイとか韓国とか、そういうところからもパレードに参加してくださる方が増えています。

それからですね、いわゆるアライ(Straight ally)という、異性愛者の支援者の方ですね。そういう方の参加も増えてまして、ボランティアスタッフなんかでも最近ではアライの方、異性愛者の方とかもたくさん参加してくださってます。

私たち、20年近く渋谷でパレードをやってきたんですけども、今回の3月に可決された条例で、どこまで我々が渋谷で歩いてきたことが、影響があるかはわかんないですけども、私としては多かれ少なかれ、影響を与えてきたんではないのかなと思っていまして、この度可決されたことをすごく嬉しく思いました。

「同性婚を認めたからといって、何を失うのか?」デンマークからのメッセージ

山縣:今回、大使館からのメッセージもいろいろ頂いてるんですけども、最後にデンマーク大使館からのメッセージをちょっとここで紹介させて頂こうと思っています。デンマークというと、1989年に初めてパートナー証明をやった国なんですけども、それで昨年で25周年ということになっています。

デンマーク大使館から今回のパレードに向けて、メッセージを頂いています。北欧諸国で合同でブースを出すんですけども、同性による結婚は北欧諸国、その代表としてデンマーク大使館がメッセージを書いてくださいました。5ヶ国、このデンマーク含め、北欧の5ヶ国は、同性パートナーシップとか同性婚がすべて整ってる国です。

「同性愛者は多くのものを得られました」

その法律ができたことによってですね。

「自分で選んだ人と結婚でき、法的給与を、給付を受けられるようになりました。異性愛者にとっては別に何も変わっていません。つまり同性婚を認めたからといって、失うものは何かあるのでしょうか?」

こういうメッセージを頂いたんですが、これが25年前の話ですけども、ようやく日本もその端緒についたというか、今回の条例とかで日本も大きく変わるんではないかなと思っています。では今週末、パレードのほうに皆さん、ぜひよかったら遊びにきてください。ありがとうございました。

社会的制度を利用できない同性パートナーの現状

司会者:では最後に、東小雪さん、お願いします。

東小雪氏(以下、東):改めまして、東小雪と申します。

(写真が表示される)

今、写真をご覧頂いていますが、私は2年前に東京ディズニーシーにて、日本のディズニーとしては初めてとなる、同性同士の結婚式を挙げました。もうとても幸せな経験で、結婚式を挙げられたことを今でも本当に嬉しく思っています。

結婚式を挙げて、今はパートナーと渋谷区に暮らしています。一緒に会社を経営していて、一緒に家事をして、ときどきケンカをしたりしながら、私は裕子さん(増原裕子氏)のことをとても大切な家族だと思っています。

私は彼女のことをとても大切なパートナー、家族だと思っていて結婚式を挙げて一緒に暮らしていても、日本の今の制度では残念ながら家族として扱われません。同性パートナーだから、困ってしまうということがいくつかあります。

例えば引っ越しをしようと思っても、同性のパートナーであるからという理由で、家を借りることがとてもむずかしいという現状があります。

そして今は、2人とも健康に暮らしているんですけれども、病気や事故のリスクというのは誰にでもあることです。万が一のときに、病院で家族として扱ってもらえるのか、手術の同意書にサインすることができるのか、必ずパートナーとして面会をすることができるのか、不安を抱えながら暮らしています。

法律的に何の保証もなく、社会的な制度を利用できない私たちは「ルームシェアをしているお友達」という扱いに過ぎません。そのために、今お話したことの他に、さまざまな社会的な生きづらさを抱えているのが現状です。

どんな属性を持った人でも暮らしやすい国になってほしい

:私は金沢市の出身なんですけれども、初めて同性が好きだと気がついたのは、16歳の春、高校2年生の頃のことでした。学校のクラスメイトの女の子への気持ちが「あ、これは恋愛感情なんだ」と気づいたことがありました。

そのとき当時の金沢には、LGBTに関するポジティブな情報はほとんどなくて、同性愛であるということは人に話してはいけないことだ、親や学校の先生、お友達にも言ってはいけないことなのではないかと思い、とても辛い経験をしました。

今でもLGBTの子どもたちは自殺のリスクが高い、いじめられてしまう可能性もあるというふうに言われています。今回、渋谷区の条例が可決された時、私はパートナーと一緒に議場におりました。可決された瞬間は本当に感動して、うれしくて涙が出てきました。

これは「今、私と裕子さんが使えるようになるからうれしい」というだけではなくて、やはりまだ自分の性的嗜好だったり、自分のあり方を肯定的に捉えることができない次の若い世代にも、とてもポジティブなメッセージになったと思います。

私たち大人は、これからどうやってこの条例が全国に広がっていくのか、きちんと運用されていくのかを見守って、日本の社会がどんな属性を持った人にも、暮らしやすいものになってほしいと心から思っています。今日はありがとうございました。

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