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三木谷浩史 楽天社長×夏野剛(全4記事)

「ネット・モバイル系のベンチャー経営者、9割は辞めたほうがいい人たち」 夏野剛氏がばっさり

新経済連盟を発足させた楽天・三木谷浩史氏とドワンゴ・夏野剛氏が日本の経済や社会問題をテーマに意見が交わしたトークセッション。本パートでは、夏野氏が社長のイスにしがみつくベンチャー経営者たちを酷評しました。

日本のベンチャーへの投資環境について

夏野剛氏(以下、夏野):だいたい30年も同じ釜の飯を食ってきた人たちだけで、経営できるわけないと思うんですよ。多分そういう具体的な話を出すと、その産業構造の転換みたいなものがいっきに動くと思うんだけど。そういう話題は出せるんですかね?

三木谷浩史氏(以下、三木谷):出していますよ。だから逆に言うと新経連を作ったという意味は、僕らは過半数まで入っていないんだけれども、少なくとも独立役員?

夏野:あれ監査役も入っているの?

三木谷:ええ。それもしっかりと言っていて。でもやっぱり、ベンチャーの集まりだから言えるということもあるんですよね。あんまり恐れることもなく。

司会:今ちょうどベンチャー企業についてのメールが来ておりまして、ちょっとお伺いしたいと思うんですが、東京都20代の男性の方です。

「アメリカでは起業支援制度が整備されていますが、日本では支援が少なくベンチャーが育ちにくい環境だと思います。この点について三木谷さんのご意見をお聞きしたいです」ということなんですけれども。

三木谷:ベンチャー支援制度といいましても、別に政府や国が何かをやっているという話じゃなくて、やはりそこに投資をして、そしてエンジェル的に投資をして、そして育てていって次のまたベンチャーキャピタルが出来てという仕組みが出来ているということがひとつなんですね。

ところが、今度自民党が出した、税制大綱で3年後から非上場株と上場株の株の通算が出来なくなる。損益通算出来なくなります。

夏野:なんで? 同じじゃん!

三木谷:何でって。僕らもそれ言ってるんですけど。

夏野:意味不明!

三木谷:一方で、ベンチャー支援だとか起業率を上げろとか言いつつ、全く真逆のことをやっているので、これは是非やめてもらわなくちゃいけないと。誰もベンチャーなんか投資しなくなりますよ。

そうするとベンチャー税制があると言うんですけど、ベンチャー税制なんか自分がやってきたベンチャー投資みたいのは、ほとんど当てはまらないです。

ベンチャーで一括りにするのは危険

夏野:何かTwitter産業のほうに寄っているかな。ただ僕は思うんですよ。

ベンチャーのスピリットってすごく大事だと思うんだけど、やっぱり2000年代前半に数多くのベンチャー企業が生まれて、僕もインターネット・モバイル系の経営者をほぼ全員知っていますけど、9割はもう辞めたほうがいい人たちですよね。完全にしがみついちゃって。

三木谷:そういう意味?

夏野:自分の会社に。つまり、上場したときの株価をそうとう割っているのにもかかわらず、社長をやり続けていて、自分は創業益である程度お金があるからいいんだけど、社長をやっていればみんなが言うこと聞いてくれるから気持ち良くって。

もう株主の立場なんて全く考えていない経営者なんて山ほどいるじゃないですか! ベンチャーに。だからベンチャーと一括りにするのはすごい危険だなと思っていて、ちゃんと成功しているベンチャーで、成長を実現している経営者は賞賛すべきだけれども、単に張り付いている某渋谷の会社とか。まあ言っちゃいけないけど。良くないと思うんです、M社ね。

三木谷:ん? M社? 何それ(笑)? わからないけど。

夏野:まあいいんだけど。

三木谷:すみません(笑)。

夏野:どうせ誰かが書いてくれるけどね。ミク……って書いてある。

司会:(笑)。

夏野:ねっ! いまだに社長やっているでしょ。もう変わったほうがいいんじゃないの!

三木谷:個別企業の話はちょっと。

夏野:でもそういうことがあらゆるベンチャー業界で起こっているね。これって僕何か大企業のサラリーマン経営者がひっ付いているのとほとんど変わらない構図だと思ってるんです。

三木谷:うーん。まあでもそういう……。

夏野:だから新経連はそういうベンチャーを入れないでほしいなとすごく思うのね。

解雇時のセーフティネットを国が用意すべき

司会:あともう1点メールが来ているのでお答えいただきたいのですが、愛知県男性30代の方です。産業競争力会議の分科会で解雇が認められる場合の合理性を、法律で明確に出来ないかみたいな話題が出ているようですが、三木谷さんはどのようにお考えでしょうか。

三木谷:そうですね。僕はプロジェクトの主査ではないので、よくわからないというのが正直なところなんですけど、自分の意見としては今、どちらかというと早期退職なり早期自主退職なりという形で、実質的には結構行われているわけですね。そういう中で、もう少ししっかりと決めたほうがいいんじゃないかという人はいると思います。

夏野:僕はそんなの雇用解雇の条件? 仕事が出来なきゃ終わりだよ。当たり前じゃん!

司会:仕事が出来ないっていう判別をどういうふうに決めるかをね。

夏野:だから僕は、セーフティネットを国が用意するべきだと思う。

三木谷:うん、そうですね。

夏野:だから失業保険の期間を2年とか3年とかに延ばしてもいいから、民間企業の雇用計画は自由にするべきだと思うんですよね。その代りに、年金とか保険を企業に切り離した方がいいと思う。自分で掛け金を多くすればたくさん貰えるとかね。そういうふうにしていかないと、今企業の負担が多すぎるよ。自由に業態が変わっていくから。企業が潰れちゃうから。

楽天とAmazonの違い

司会:それから楽天さんの今後についてお伺いしたいんですけれども、さっきちょっと本番前に伺った楽天市場とAmazonさんの違いみたいなもの。ちょっとそこを是非ともお伺いしたいのですが。

三木谷:楽天は1997年に、「小さな企業とか中小の商店が自分で簡単にインターネット上にお店が作れて、日本中に商品を売れたらおもしろいよね」というコンセプトで始めて、現在だいたい4万店舗ぐらいあるんですけれども、そこは1億5千万種類ぐらいの商品を売っているんですね。

売っている主体は店舗で、価格も競合と比べて、実質90パーセントぐらいの商品は楽天が1番安かったりするんですけど、あんまり価格には包括せずにむしろこの店舗から買っている。楽天はその場を提供しているというモデルなんですね。

一方、全ての競合さんは自分が売り主で、その中に店舗も一応商品を流せるという形になっているので、コンセプトも哲学も全く違うもんだと思っています。どうですか?

夏野:僕は楽天のほうが今のITっぽいなと思うんです。つまりインターネットって複雑な社会のよさを、インターネットを使うことで価値に出来ると思うんですね。Amazonのモデルというのは、言ってみればイオンをネット上で作っているようなもんだと思うんです。

だから僕はこれからどんどん、Amazonはプライベートブランドにいくと思うんです。それが1番利益率が高いから。一方で楽天のモデルというのはいろんな商店が、要はマーケットプレイスをどんどん作っているビジネスモデルだから、実は楽天そのものが売っているものはあるけれどもそれは一部で、その全体のいわゆる場を作っているのね。

場を作ると何が強いかというと、仕入れとかそういったものを自分でやるということは、逆にそこが外れたらもうだめなんですよ。マーチャンダイザー。それに対して楽天のモデルはいろんな人が使ってくれて、むしろ自分で出店するよりも楽天で出店したほうがお客さんが来るというwin-winの関係を作ればみんなのビジネスが成り立つという。

お客さんと商店の出会いの場を作っているわけだから、ここの機能を作る人が誰かいないとね。やっぱりインターネットではバラバラになっちゃうと、Googleでいちいち探せないというビジネスモデル。

楽天は世界に通用するビジネスモデル

夏野:アメリカでよく地方都市に自称コンサルタントという人がいるじゃない。日本にもいるけど。新聞の切り抜きとかを適当にやって、月間5万円ぐらいであっちの靴屋とこっちのなんとかで、50人ぐらい会員がいると、月間5万円が250万円の収入になるみたいな。そういういるんですよ。自称コンサルタント。この市場は楽天が全部取っているなと思っている。

三木谷:(笑)。とっているというか、その人たちも楽天を使っているんですよ。

夏野:それもある。やっぱり本当はその人たちに価値なんてないわけですよ。「大企業のマーケティング担当者をやっていてました」とかアメリカでもいる。「僕はフィラデルフィアにいるときに、コカ・コーラのマーケティングをやっていました。今個人コンサルタントです」なんて人がいっぱいいるんだけど、でも実はノウハウなんかほとんどなくて過去の経験でやっているでしょ。

ここのマーケットがシステムのプラットホームの、しかも送客も出来る楽天がごそっと取っているから、俺アメリカに行けると思う。

三木谷:うん。頑張っています。本も出しました。

夏野:アメリカに行けると思うんだよね。世界中でこのモデルで行けるなと、実は1番インターネット的だなって勝手に思っていて、おもしろいなと。

三木谷:店舗の周りにコミュニティがあって、ファンがあるというコンセプトですからね。

司会:ワイン、いっぱい買っていらっしゃるんでしょう(笑)?

三木谷:ありがとうございます。

司会:(笑)。

夏野:もうちょっと値引きしてもらいたい。この量だったら卸から直接買った方がいいかもしれない。

司会:今マーケットプレイスのお話出ていますので、こちらのご本をご紹介いただきたいのですが。

三木谷:はい。日本で3冊出していて、最初翻訳本を出そうかと思ったんですけども、やはりもう1回書き直そうということで、英語でMarketplace3.0。Webで2.0とかいろいろありましたけど、新しい形のショッピングであるということでMarketplace3.0と。

楽天はかなりユニークなことをやってきたじゃないですか。ビジネスモデルもユニークだし英語化もユニークだし。みんなユニークなことをやってきたので、何でそういうことをやってきたのかみたいなことを世界の人に知ってもらおうと思って、英語で書きました。

夏野:いいねえ。やっぱり新しいことをやって、成功している人が言わないと説得力がないから。だからこれからもどんどん突っ走ってほしいですよね。

三木谷:突っ走りまくります!

炎上が日常茶飯事なのはいいこと

夏野:ねえ! それでそれと共に、何かこの3年間の間に、安倍政権の間に何かやってほしい。特に新経連で。

三木谷:そうですね。

夏野:ちょっと何か。じゃあ、新経連過激派とかでも作る?

司会:(笑)。名前がちょっと……。もうちょっと柔らかで穏やかな感じの名前お願いできますか?

夏野:革まろ派とか。

司会:(笑)。

夏野:っていうか、みんな少し抑え気味な感じがするんだよ。みんな大人な感じで。

司会:大人でしょ、みなさん(笑)。

夏野:だめ? やっぱり国会でディズニーランド行っちゃだめ?

司会:国会でディズニーランドね。

夏野:ただもう少しはっきりと物を言う人も最近出てきていて、テレビを見ていてももっと言っていい感じに僕はなっている感じがする。

三木谷:そうですね。

夏野:炎上が日常茶飯事になってきていて、みんな慣れてきている。そういう極論をちょっと。

三木谷:そうですよね。マスコミのほうが例えば曲がった報道をしても、インターネットで反論出来るということが出てきている。

夏野:最近ね。

三木谷:はい。これは非常にいいことですよね。

夏野:じゃなきゃ僕に出番はないと思うんだよ。テレビとか新聞とかの出番が最近どんどん増えているから。「極論」は喜ばれるんですよ、最近。まあ、慶応の立場があるからかな? 経営者じゃないっていうたたずまいで。

三木谷・司会:(笑)。

みんなに配慮していても日本は変わらない

夏野:だから誰かが言わないとだめなんで、新経連なんとか部隊。アカデミックな極論部隊。エキストリームエコノミクス。

三木谷:なるほど。

夏野:何かそういうのをやらないと。みんなに慮ったことやっていても日本は変わらないと思うんですよね。

三木谷:そうですね。

夏野:やりましょうよ。エキストリームエコノミー。

三木谷:やりましょう。まずドワンゴさんに入会してもらわないと。

司会:(笑)。本当ですよね。本当にその通りだなと。

夏野:ドワンゴ、そういう対外活動ほとんど関心がない会社だからさ。

司会:その辺りは4月16日開催の新経済サミット2013でまたいろいろ見えてくると思うんですよね。

三木谷:相当おもしろくなると思いますから。かなり過激派。それこそインターネットに過激派を呼びますから。

司会:インターネットの過激派。

夏野:日本側からも過激派を呼ばないとまずいんじゃないの?

三木谷:そうですね。

夏野:俺が行くか。

三木谷:特別緊急出演。

司会:(笑)。新経済サミット2013でディズニーを叫ぶ夏野さん。

夏野:なんでディズニーなんだよ。せめて豊島園にしてくれよ。

司会:(笑)。

日本を変えるために必要なこと

司会:ユーザーの皆様、番組終了予定時間が8時なんですが、2分ほど過ぎて3分になろうとしています。本当に時間が短くて申し訳ないんですが、最後にお2人から言い残したこと……と言ってしまうとここから30分ぐらい長くなりそうなんですけれども。

番組の感想ですとか、それから今ご覧いただいているユーザーの皆さんへのメッセージなど、何かございましたら。夏野さんはいいんですか?

夏野:僕はいいの。僕は生きている。

司会:(笑)。じゃあ、三木谷さんお願いいたします。

三木谷:僕ですか? ありがとうございました。本当にいい機会をいただきまして。多分見ている方々は若い人が多いと思うんですけど、そういう人たちが中心になって日本を変えていかないといけないと思います。

やっぱり文句ばっかり言っているんじゃなくて、行動するということがとても大切かなと思うんで、みんなで一緒に新しい日本を作っていけたらいいんじゃないかなと思っています。ありがとうございました。

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