2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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幅允孝氏(以下、幅):続きまして、松島さんにもご自身の取り組みをご説明いただければと思います。
松島靖朗氏(以下、松島):おてらおやつクラブの活動をお話しさせていただきます。お寺って、みなさんどうですかね? 身近に感じられる方、ぜんぜんわからないという方、いろいろな方がいらっしゃるかなと思います。
お寺という場所は、仏さまをお祀りして、いろいろな食べ物をおそなえする場所でもあるんですね。(仏壇を指して)こういうかたちで、仏さまの前にいろいろな食べ物がおそなえされている場所です。
この「おそなえ」なんですけれども、大切な方が亡くなったり、今だと先週はお彼岸の時期でしたね。お墓参りをされたり、ご先祖さまにおそなえ物をされる、「ご供養=お供え物をおそなえする」ということを聞かれたことがあると思います。
この「おそなえ」というのは、「供給資養」という言葉の一番前と一番後ろの2文字を取って、「供養」と言います。「供給」はおそなえをする行為です。「資養」はその行為をすることで「した側の心が養われる」という意味のある行為なんです。
要するに、「おそなえ」というのは仏さまを尊敬し、その思い、気持ちを行為として外に表して、その行為を通じて心を養うこと。そんな意味のある行為なんですね。
このおそなえ物として、お寺にはいろいろ集まってくるわけなんですけれども、一方で、社会問題として「子どもの貧困」がこの10年くらいキーワードになっています。この春からは「こども家庭庁」という子どもの貧困問題をどうしていくのかを考える省庁が始まりますが、7人に1人が生活に困窮しているんです。
さらに、ひとり親家庭のうち、お母さんとお子さんだけで生活している家庭に絞って見てみると、2人に1人の子どもたちが生活に困窮しており、特に食べる物に困っている。これはどこか遠くの外国で起こっている話ではなく、日本国内で起こっている話としてあります。
おてらおやつクラブの活動を始めるきっかけになった事件が、2013年5月にありました。大阪の都会にあるマンションの一室で、お母さんと息子さんが餓死状態で発見されるという、ショッキングな事件です。お母さんがお子さんに宛てた「最後に、お腹いっぱい食べさせてあげたかった。ごめんね」という手書きのメモが残っていたんですね。
私もこの事件をきっかけに、何か自分にできることはないかということで、日常的にお寺にたくさんあるおやつを子どもたちに届けたいと始めたのが、この活動です。
松島:「どういうかたちでおやつを届けているのか」をお話しします。全国にはひとり親家庭がたくさんあって、それを支援する団体がたくさん立ち上がっています。例えば、地域のサポートである「こども食堂」は今、日本全国に8,000ヶ所ほど開設されています。私たちの活動は、その地域の団体の周辺にあるお寺さんを支援団体とつなげることで、この地域の見守りを作っていく活動です。
ですので、全国にあるお寺と全国でひとり親家庭を支援している団体をつなげる。そしておやつを届けるという活動をしています。
今、活動を始めて8年ほど経つんですけれども、47の都道府県、1,800のお寺が地域の681の支援団体とつながって、毎月3万人くらいの子どもたちが全国のお寺から届くおやつを楽しみに待ってくれている。そんな活動になってきています。
幅:すごい数ですよね。
松島:そうですね。
幅:ちなみにお寺って、全国にどのくらいの数あるんですか?
松島:よい質問ですね(笑)。いろいろなデータがあるんですけど、7万7,000くらいあると言われているんですよね。
幅:今は7万7,000ヶ所くらいある中の、2,000弱のお寺が参加している。
松島:2,000を多いと捉えるか、まだまだポテンシャルがあるのでもっと活動を広げていってくださいね、という期待もあるのか。いっぺんに広がったのは、それだけお寺が全国にたくさんあったからでもありますね。
幅:確かにそうですね。それこそお寺という場所が持つ特性として、昭和初期の頃には、本当にコミュニティの中心としてお寺が機能するような時期がありました。
一方で、核家族化などによって、地域のつながりみたいなものがどんどん希薄になってくるのと比例するように、お寺がそれぞれの場所においてどんな存在か、どういう人とのつながりを提案するのかが、少しずつ見えなくなってきた時代も一時期あったと思います。
松島:今でもそうだと思いますね。
幅:あぁ、そうですか。でも、このおてらおやつクラブを通じて、また新しいつながりを、結び目を作り直していくというのが、このプロジェクトを聞いた時に、最初に「すごくおもしろいなぁ」と。
もちろん子どもたちのためでもあるし、一方でお寺という場所の見え方をも変えるような試みなのかなと思ったんですけど、そこまで目論んでいらっしゃったのか、どういう考えだったのかをちょっと教えていただけますか?
松島:何も考えていなかったです。
幅:(笑)。
松島:ちょうどお坊さんになってすぐの頃にこの事件があって。寺にはたくさんのおやつがあって食べきれないくらいいただくので、「せっかくお坊さんになったんだからいいことをしないと」という、個人的な動機でした。
幅:それ以前はおそなえなどはお寺の中でみなさんで食べたり、配ったり、数の多いものは地域に配っていたんですか?
先ほどの(写真の)カルビーの「ポテトチップス うすしお味」などは、1人で食べられる数ではないじゃないですか。
松島:そうですね。お子さんが来られる行事も定期的にあるので、おやつとして持って帰ってもらうこともありました。でも、毎日のように「どこにおすそわけしようか?」というのを考え続けていて、これも、1つの住職の仕事というか、悩みの種なんですね。
幅:なるほど。「これはこの人に、あれはあの人に」といった感じですね。すみません、ちょっと話の腰を折ってしまいました。
松島:いえ、ありがとうございます。今もまだ続いていますが、コロナ禍で3年ほど、そういう地域のいろいろな支援をしている団体さんが、活動できなくなりました。
それで、奈良の事務局に直接、全国のお母さんたちから「おやつを送ってほしい」というお問い合わせが殺到したんですね。直接ご家庭にお送りするというのは前からあったんですけど、年々増えてきて、直近の2022年度は8,000世帯まで奈良のNPOの事務局からお送りする状態になってしまって。
先ほどのバリューブックスさんの本がたくさん集まるセンターじゃないですけど、お寺が物流センターになってしまう。これはもう限界だということで、どうしようかと1つの課題があったんですよね。
「たすけて」の声は増えていく一方なんですけど、活動のかたちとして、奈良から送り続けるのは難しくなったというのが、コロナ禍が始まってすぐくらいからの動きですね。
とにかくお米を中心にどんどんお送りしようということで、毎日物流センターになったお寺で仕分けして、お送りしていたんですけど、やっぱり8,000世帯に奈良からおすそわけを送るのは限界で。せっかくネットワークがあるんだから、全国どこからでもご家庭にお送りできるように分散しよう、というチャレンジを3年前にしました。
松島:課題は明確で、1つは個人情報に配慮しないといけないことでした。NPO事務局だからと相談してくれて、荷物を送る先の個人情報を開示してくださったお母さんなので、その個人情報を他に共有することが難しいんですね。さらには、お送りして終わりではなく、つながり続けないといけないという課題もありました。
2つの課題の解決策は、身近なところで見つかりました。みなさんスマホをお持ちでしたら、「LINE」と「メルカリ」のアプリがきっと入っていると思います。この2つのアプリの仕組みを、おてらおやつクラブのおすそわけに実装しようということになりました。
「LINE」はほとんどのお母さんたちが日常的に使っているため、相談窓口にできるということですね。さらに、フリーマーケットのアプリは、売主と買主が個人情報を開示することなく、ものを送ることができる匿名配送の仕組みがあります。この2つを仕組みの中に入れることで、お母さんたちの日常により近づいていこうという、DXをしたということですね(笑)。
幅:オンラインの入口のたやすさと、メルカリの匿名配送をガッチャンコしたというか、合わせたということですよね。
松島:具体的な流れとしては、今、事務局の相談窓口が24時間365日「LINE」でつながっています。「いつでも相談してください」と。地域のお寺さんに相談したあと、おすそわけが必要なご家庭の情報をヤマト運輸さんのシステムを使って共有し、地域のお寺から最寄りのご家庭に匿名でおすそわけを送れるようにしているんですね。
荷物は完全に匿名で、受け取ったお母さんたちの声も匿名なんですけれども、送り主のお寺さんに届くように、そこもしっかりとフィードバックできるような仕組みを作りました。
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