2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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山崎啓輔氏(以下、山崎):続きまして、沢渡あまねさんによります、メインプレゼンテーション。「地方企業の働き方『今』と『これから』」ということで、お話しいただきたいと思います。あらためまして、よろしくお願いします。
沢渡あまね氏(以下、沢渡):あらためて、よろしくお願いします。
(一同拍手)
沢渡:沢渡あまねです。今日は静岡県森町におります。「地方企業の働き方『今』と『これから』」。こんな話をしていきたいと思いますが。
「これから」を考える上で、これからの時代に求められるマネジメント。これからの時代の私たちの勝ちパターンってなんだろう? こんな投げ込みから始めたいと思います。
1行でいうと、こちらです。従来の地方都市に色濃いのですが、地方のみならず、日本全国にいえると思うんですが「従来の製造業型・統制型・管理型一辺倒の制度やカルチャーが、もはや組織と個人の成長リスクに。ジワジワ負けパターンになっている可能性がある」。ここから入りたいと思います。
VUCAの時代、不確実性が増す時代といわれています。あるいは、ITも含めた技術革新がものすごく早い時代。人口の構造も変化してきています。少子高齢化、働き手が少なくなっていく時代。なので我々は変わっていく必要がある。こういう話なんですね。
沢渡:(スライドを指して)こちらをご覧ください。私の新刊『バリューサイクル・マネジメント』に詳しく書いているので、ぜひみなさん組織の中で議論していただきたいんですけれども、向かって左側。統制型ピラミッド型の絵。「旧来製造業型モデル」と書いていますが、この向かって左側の絵のモデルが、過去50年、60年。日本が労働の法制度を含めて最適化してきた「勝ちパターン」だったんですね。
みんなが同じことをやる。同じ環境で同質性の高い人たち、基本的に逸脱を許さないやり方。コミュニケーションは組織の中でクローズドにやっていって、意思決定は口頭主義、対面主義、井戸端主義。年功序列の世の中で年上の人が答えを持っている。組織の中で答えを持っている。それにさえ従えば勝てたやり方だったんですね。
答えを出せた。儲けられた。二次請け、三次請け、多重請け構造の中で、親会社が言っていることを聞いていれば、ビジネス成り立ったわけですよね。ところが今、そういう時代ですか? という話なんですね。
不確実性が増してくる。組織の中に答えがない。過去に答えを求めにくい時代。右側のやり方。オープン型と書いていますが。個人と個人がつながって、あるいは組織と組織がつながって、越境してコラボレーションすることによって、答えを自ら見出していく。
あるいは、いわゆるアジャイル型。小さく回して小さく失敗して、次の成功につなげていく。あるいは、小さく回して小さく成長していくというようなやり方にしていかないと、答えを出せない時代になってきているというわけですね。
沢渡:これ、私は二項対立を煽りたいわけではないんです。組織の健康診断に使ってほしいなと思うんですね。統制型も素晴らしいんですよ。答えが出せる領域。例えば「決められたプロセスや手順に従って、このメンバーで物を作れば売れた時代」であれば、ものすごく合理的なモデルですね。管理する側、される側双方にとって。
管理する側。答えが出せる領域においては、基本的に逸脱がないように監視すれば答えが出せますから、管理コストがかからないんですよ。あるいは、考えなくていいです。管理される側、手を動かす側も言われたことさえやっていればお給料が貰える。
60才までがんばれば「おめでとうございます、定年です。潤沢な年金と退職金で家族共々幸せな老後が待っています!」という時代においては合理的ですよね。答えが出せますし。
一方で、変化の要素が入ってくる。あるいはCOVID19のような、今まで向き合ったことのない未知のリスクが入ってきたり、IT技術が進化していたり、新しいものが入ってくると、たちまち思考停止しがちなリスクがあるんですね。
管理する側も「監視する」以外のマネジメントの仕方を経験したことがない。その畑で20年、30年育って、オープン型のマネジメントできますか? コラボレーションできますか? という話なんです。
プレーヤー側も思考能力。主体的に問題提起して、主体的に共感者を集めて、主体的に能力を持っている人とつなぎあって、答えを出していく。あるいは、それこそダム際でも成果出せるように、ITを使って垣根低くつながって成果を出すようなやり方に慣れてないので、思考停止する。行動停止するというリスクがあるんですね。
ですから、部分的にでも右側のオープン型のやり方に変えていく。あるいは、職種単位でもオープン型に変えていく。あるいはそういう経験を積んでいく必要が、管理職もプレーヤーも含めてある、と。こういう議論をしてほしいなと思います。
沢渡:見方を変えると、今までの日本のピラミッド型社会は「男性正社員・終身雇用前提モデル」だったんですね。週5日×8時間以上働けて、サービス残業も休日出勤も厭わず、上司や会社の指示には従順に従い。別に「逆らえ!」と言っているわけではないですよ。
私はこういう性格なので、サラリーマン時代から本部長とよく喧嘩したりしていたんですけどね。
山崎:はい(笑)。
沢渡:それで飛ばされませんでしたけれども。いい会社でしたよね。
山崎:(笑)
沢渡:転勤、配置転換も厭わず、毎日同じ場所で同じメンバーと時間を過ごし“飲みニケーション”やタバコ部屋にも週末ゴルフにも積極的に参加して。そういう人たちだけで勝てた時代だったんですが、もうこのモデルは「負けパターン」という話ですね。多様な人材が答えを持っている時代ですから、多様性に反するやり方なんですね。
別の絵で示すと(スライドを指して)こういうことです。過去50年、60年、日本が“正”としてきたやり方は、同質性の高い人たちが長時間・長期間、終身雇用定年まで顔を合わせて、決められたことをこなすモデルでした。それでよかったんです。
一方、オープン型イノベーション型。越境して答えを出していくやり方においては、異質な人たち。社内に答えがなければ、すぐ「ない!」と言って外とつながる。異質な人たちがそれぞれに最適な時間や空間、働き方で、過去に答えのないテーマに向き合って成果を出していく。こういうやり方に変えていく必要がある、ということかなと思います。
沢渡:統制型のみんながみんな、事務職も企画職もエンジニアも「うちは製造業だから製造現場と一緒。9時~5時出社して、昼休みも45分。かきむように社食に行ってまた戻ってくる」というやり方は、クリエイティブワーカー、例えば物事を解決したり、あるいは新たな物事を生み出していくワーカーとは相性が悪いんですね。
山崎:はい。
沢渡:「相性が悪い可能性がある」と、まずここを疑ってかかる必要があるんですよ。日本じゃ「生産性が低い!」と言われていますけれども。
こちらご覧ください。これは私がやっている組織変革Labの講義か『バリューサイクル・マネジメント』を見ていただきたいんですけれども。クリエイティブワーカー、ナレッジワーカーの勝ちパターンを絵にしたのがこちらです。
なんとなくわかると思うんですよね。例えば「AIを使って新しいビジネスを立ち上げなさい」と言われたとしましょうか。その瞬間、その企画担当者の頭にアンテナ立ちますよね。「AIか。ビジネス。ビジネスモデルって俺ら作ったことあったっけ?」と、考えるためのアンテナが立つわけですね。
思考のアンテナが立つ。それを日々意識して過ごす。それをずっと机にかじりついて、パソコン操作するフリをして解決しますか? という話なんですね。ある時に閃くんですね。仕事をしていてかもしれない。雑談していてかもしれない。私はダム際でフラフラしていると、頭の中が忙しいんですよ。
山崎:ああ。
沢渡:発想しまくって、アイデア浮かびまくって。ダム際に来て「あ、そうか。このテーマだったら神田さんに相談したいな!」と思って、すぐチャット立ち上げて神田さんに話しかける。こういうことですね。
遊んでいて、家事しながら。私の知り合いのIT企業のエンジニアで、家で無心に皿を洗っているとめちゃめちゃアイデアが浮かぶ、という人がいますね。
山崎:すごい。
沢渡:こういうものでしょ? 犬散歩させたり、朝起きた時とか。
山崎:そうですね。
沢渡:これは同じ環境で仕事しているだけでは駄目で、リフレッシュを取り入れたりとか、自分なりのアイデア、自分なりの「ひらめく勝ちパターン」をいかに実践できるか。環境を開放するかですね。
山崎:そうですね。
沢渡:調べる。深く考える。そのための余白や余力も大事。答えを持っていそうな人と「神田さんちょっと。大見さんちょっと。山崎さんちょっと」とつながって、そして、そのテーマの解像度を上げていく。あるいは解決をする。つながって仕事できるようにする。
ご覧ください。固定的な環境でこのサイクル回りますか? という話なんですね。今、イノベーティブジャパン、DXと言われていますが、従来のしがらみが邪魔してなかなか実現できない。今、日本に求められるのは「いかに我々を過去の呪縛から解き放つか」。
製造業型、統制的なやり方から、いかにナレッジワーカーを開放するか。ここにかかっていると言っても過言ではないと、私は確信をしています。
沢渡:まとめるとこういうことです。こちらのスライド、よろしければバシバシ写真撮ってください。社内で議論してください。なんなら私を講演に呼んでください。
「固定化された環境はイノベーションリスクだ」という話ですね。同じメンバーでずっと同じ仕事をしている。同じ景色で同じ考え方の人たちで、イノベーションが起こりますか? 問題解決できますか? という話なんですね。
繰り返しになりますが、統制型にもオープン型にも、いずれも合理性はあるんです。統制型もトップダウンの最初のひと押しの意思決定が早いとか、あるいはなにか事業を拡大していく。スケールアウトしていくフェーズにおいて力を発揮する。さまざまなメリットは当然あります。
一方で統制型オンリーなやり方は、主体的に思考する人・行動する人が、垣根を低くつながって行動するチャンスを失ってしまう。思考できない人材を量産してしまう。「思考停止ジャパンまっしぐら」という話なんですよ。
今でもそういうことを感じるところって、諸々あると思うんですけれども。部分的にでも、あるいは部署単位・テーマ単位でもオープン型のスタイルに馴染んでいきましょう。チャレンジしていきましょう。そういうことを謳いたいです。
沢渡:別の言い方をすると「ハイブリッドを乗りこなす」。働く場所もハイブリッドになっていますね。オフィスワーカーとリモートワーカー。あるいは三島と東京。浜松にいる私。(別の場所にいる人たちと)静岡にいる人たちとがつながって仕事をするということが、ここで起こっているということですね。
顔のハイブリッド。パラレルキャリア。複数の企業に属する人。一方でフリーランス。ある時は物書き、ある時は企業の取締役顧問みたいな、私のような人材もこれからどんどん増えていくでしょう。
ハイブリッドな人たちを使いこなし、乗りこなし。業種・職種のハイブリッド。フィンテックなんてわかりやすいですよね。金融×IT。アグリテック、農業×IT。今までにない職種との掛け算によって新しい物事を起こす。ないし、既存の問題を解決していく。
そのためには、つながる垣根を下げていく。無駄に相手とつながる垣根を上げていませんか? 例えば事務作業1つ取っても「(書類は)すべて手書きで郵送しなければいならない」となった瞬間、多拠点で働いている人材と契約できますか? つながれますか? という話なんですね。
こういうところ1つ見ても、つながる垣根を下げていく。それによって、ハイブリッドを乗りこなしていく組織と、ハイブリッドで活躍できる人材を育てていく。この必要性は、いかなる職種においてもある。そう、私は確信しています。
沢渡:今、全国を見ていても、格差が深刻に広がっているなと感じるんですね。私も350以上の企業、自治体、官公庁を見ていますけれども、1つ目が大都市と地方都市の格差。
別に(都市と地方の)二項対立を煽るわけではないですが、事実、この1年間を見ても、COVID19の被害が少なかった地方都市においては「別にテレワークって関係ないよね」「うち製造業だから、みんな出社で当たり前だよね。不公平だから」というように、小さな世界の不公平感でもって、新しいやり方に取り組まない。
その結果、一方で東京のような、残念ながらCOVID19の蔓延が早かった地域の企業の人たちは、テレワークのようなやり方を事実上経験したんですよね。事実上経験するというのは、ワーケーションに対しても大事だと思っていて。経験した結果、その中の何割かは「意外にイケるね。そこで多拠点の人とつながって仕事できるね」ということがわかってしまったんですね。
そこからビジネスモデルが変わっていった。採用モデルが変わっていった。すなわち「ビジネスモデル変革が起こった」という話なんですね。この経験格差は間違いなく起きる。
沢渡:2つ目。私も浜松にいます。浜松でも老舗の製造業で新しいやり方、変えていっているところがたくさん生まれてきています。素晴らしいことだと思います。大都市、地方都市に関わらず、地方都市でも先進企業とレガシー企業、鈍感企業の格差は広がる一方。
それが働き方の格差。事業継続性の格差。「またナンチャラというウイルスが流行した時も、実質自宅待機とか、休業と復活を繰り返すんですか?」という話ですよね。人材獲得・維持力格差。先ほど入江さんが「新卒人材の『テレワークできる企業への人気』が高まっている」なんて話をされていましたけれども、人材維持・獲得力の格差につながっていく。
それかビジネスモデル格差。稼ぐ格差。ひいてはブランド力。その組織や、その職種がファン、共感者を得る力の格差につながってくる。この二極化は、間違いなくジワリジワリと進行しています。
浜松の製造業で新しいやり方と取り入れた企業もあります。このあとお話しますけれども。「うちは製造業だから無理。中小企業だから無理。地方都市だから無理。」あるいは「現場の人たちと不公平だから働き方はみんな古いまま」。全部が思考停止で成長停止のフレーズです。はっきり言って将来を考えると「緩やかに滅びてください」としか、私は申し上げられないです。
山崎:はい。そうですね。
沢渡:そういうことだと思うんですね。日本全体の生産性が下がりますから、ここは正しくアップデートしていく必要がある。正しく稼げる。正しくいい人が育つやり方に変えていく必要がある。そう、私は確信しています。
山崎:確かに。
沢渡:そんな中、いいニュースが1つあるんです。IT・デジタルは、みんなに公平なんですね。
どうしても東京・大阪のほうがいい人材が集まる。情報が集まる。まだまだ優位性あると思うんですね。残念ながら立地は無慈悲、不公平です。一方で、デジタルはみんなに公平なんですね。今日、ダム際でコラボレーションしているこの状況は、まさにそうです。
山崎:確かに。
沢渡:ITは公平。だから地方都市も中小企業も、デジタルで格差を埋めよう。デジタルで挽回しよう。
山崎:確かに。
沢渡:こういう話ですね。
山崎:そうですね。
沢渡:補助金とかの後押しもありますし、行政も後押ししているところもありますし。
一方で、ちょっと耳の痛い話をしたいと思います。「地方都市の問題地図」。私、浜松で生活をしながら、こういうことを申し上げるのは非常に勇気がいるんですけれども。「ジャンジャン言え!」と後押ししてくださる事業者の方も多いので、言っちゃいます。
これ、細かくは説明しないです。よろしければキャプチャー撮って見てください。「アイタタタ……」と思うんですね。一番大事なのは下の赤の部分です。「良い人材が集まらない」「多様な人材が活躍できない」「新たなビジネスモデルが生まれない」「高利益体質になれない」。
「地方だから(給料)安くて当然だよ」。そんなところにいい人が来ますか? という話ですね。ジリ貧・衰退・過疎化まっしぐらですが、いいんですか? という話なんです。よくこういうものを書き出すワークショップなんかもやっていますので。
前向きに問題を洗い出して、立場が違う人たちとコラボレーションで解決する。こういう議論をしていきたいななんて思います。その最初の“一丁目一番地”として、こんなスライドもよろしければ写真撮って、まずは中で話し合ってほしいなと思います。
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