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2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
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鈴木裕介氏(以下、鈴木):(患者さんの中には)引きこもりとかもそうですし、うつの一番ひどい時に仕事してるんだけど「よく覚えてないんですよね」と記憶をなくしたりとか。
メンタル疲労から来る下痢や片頭痛とかの心身症状も増えているんですけど、それも自律神経が「フリーズモード」に入ることで起こっているんじゃないか、とか。社会全体で、特に若い人にそういう反応が増えてきているんじゃないかと思っていて。
こういう反応を持っている人たちに詳しく話を聞いてみると、やっぱりなにかしら対人関係でトラウマティックなできごとがあったり、対人関係にすごく恐怖しているという事が多くて、あらゆる人間関係に回避的になりやすい。
そもそも「彼氏彼女とかもとんでもない」みたいな。親密な人間関係を作ることが、もう傷になっている。
生田美和氏(以下、生田):恋愛もしないという……。
鈴木:というのがおそらく草食化であったり。そういうフリーズモードに入っていくことのいろんなグラデーションがあるかなと思うんです。こういうところで苦しみを抱えられている方が、少なくとも僕のところには多いし、増えているなと感じる。
これが令和の時代のというか、とても現代的な生きづらさだなと僕は考えているんですね。人と深い信頼関係を築くことができないとか、親密であることに危機的・回避的になってしまう。世の中では「愛がすばらしい」「絆がすばらしい」と言っているけど、自分としてはピンとこない。
「自分はもう、機械のような欠陥的な人間なんじゃないか」という苦悩があったり。近年ベストセラーとして評価される作品とかも、けっこう回避性とかを扱うものが増えてきているかなと感じているんですね。たぶん、時代と共に生きづらさというものの形式って変わってくると思うんですが。
生田:変わってきている気がしますね。
鈴木:生田さんはそうした時代ごとの「痛み」にずっと向き合われてきて、作品というかたちで、なにかしら手はず・対策を……策を講じるって言い方はアレですけどね(笑)。なにか手を差し伸べようとされてきたところがあるんじゃないかと思っていて。
生田:そうですね。フリーズというところ(への策)には、たぶんまだ直接は行けていないと思うんですけど。ただ、時代とともにゲームも移ろってきて。
王道ヒーローものにある、まさに「こう生きると脚光を浴びて、みんなに認められる」みたいな、スポットライトを強く浴びる1人の人間を描くよりは、いろんなポジションや立場にいる人を描こうと。そういうものは増えてきているし、求められているところがあるなという気はしています。
特に、ソーシャルゲームが出てきたことで、一度ゲームを離れた人たちが、生活のわずかな時間で遊べるようになった時に、自分を重ねるような相手を探したりとか。王道をずっと見るというよりは、ちょっと遊ぶ時にいろんなキャラクターが出てきてという、キャラクターガチャみたいなものもあったりするんですけど。
「いろんなキャラをとにかく揃えましょう」みたいな向きはあって。それに後押しされるかたちで、王道ヒーローという型を外れていった人たちというか、「もっといろんな魅力があるはずだ」「いろんな悩みがあるはずだ」という描き方が許されるようになってきています。
鈴木:僕が生田さんの話をお聞きしたいと思った一番のきっかけって、やっぱり『サガ フロンティア』のアセルスなんですよね。
アセルスは、事故で妖魔とハーフになってしまった17歳の女の子なんだけど、別に王子が助けてくるわけでもないし。当時衝撃を受けたというか、すごくエポックメイキングなものを感じて、揺り動かされたものがあるんです。
ああいうオムニバスの1つで、今までとは毛色があまりに違いすぎるけど、それこそこの間の『サガ』の25周年の人気投票で、『サガ』の長い歴史の中で人気が1位のキャラって、本当にすごいなと思うんです。
生田:ありがたいことです(笑)。
鈴木:話の中でちょっと百合っぽさもあるというか。王子さまじゃなくて、か弱い女の子が助けにくるようなことって、たぶん当時としてはぜんぜん典型的ではなかったと思うんですが。
生田:当時の開発2部と言われるところが『サガ』チームだったんですが、作り方がすごく挑戦的というか。一人が全部作るのではなくて、プランナー全員でお話と世界観も分担しようという作り方で。当時はシナリオライターではなくてプランナーというくくりで、その中でシナリオ的なこともやるというかたちだったんです。
プランナーさんがたくさんいらして、「一人ずつ主人公と世界観を考えていく」みたいなことを言われた時に、女性のプランナーが私ともう一方しかいなくて。
なので「王道的なものは、どなたか男性がやってくれるだろう」と思った時に(笑)、じゃあ女性の主人公でやりたいし、やるのであれば主役以外でスポットを浴びる役どころも、だいたい女性で押さえてみるのはどうだろう?ということで、ちょうど夢で見たものもありまして(笑)。
じゃあこのへんを混ぜて、少女漫画的なアプローチをやれば、ほかのプランナーの方とはかぶらないし、採用された時に女性のゲーマーさんたちが喜んでくれるんじゃないかなと思って。それでちょっと推してみたら、うまくすくい取っていただいて(笑)。
鈴木:(笑)。
生田:そこがまたチーム内でも気に入っていただけて、各プランナーさんが描いているシナリオや世界観を聞き取って、私がまとめて書き出すこととかもやったりして。
生田:そういう意味では、1つの決まった成長物語だったり、「勧善懲悪をしましょう」ではなくて、それぞれ自分の価値観でやってみろっていう開発のやり方があったおかげで、たぶんアセルスだけじゃなくていろんなキャラクターが生み出されたんだと思います。
鈴木:仕事の雰囲気がすごく良かったというのは、やっぱりあるんでしょうね。
生田:そうですね、強化合宿というのがありまして(笑)。
鈴木:強化合宿(笑)。
生田:そこでみんながそれぞれ、主人公とか世界観を考えて発表するんですけど、2人しか女性がいないので、私ともう1人の女性の坂本(優子)さんというプランナーさんと、2人でずっと相部屋で話をして。坂本さんはブルー編の担当で、なぜか発表する時に「私は発表はいいから、生田さんだけでやって……」って(笑)。
鈴木:(笑)。
生田:それで私がアセルス編とブルー編、両方を発表して。なんとかそこは通ったっていうか。
鈴木:ブルー編もめちゃめちゃ尖ってますよね。
生田:坂本さんは当時、こういう言い方ではないんですけど、要約すると「戦いが苛烈なものをやりたい」という方で。女性でも、坂本さん自身がバトルプランナーさんなんですよね。
鈴木:なるほど。
生田:だから「戦わざるを得ない、戦いから逃れられない、みたいなものをやりたいんだ」っていう話をして。2人でいろいろ聞き取りとかしながら、「じゃあ双子で殺し合う?」みたいな……(笑)。
鈴木:そうそう。人為的に分けられた魔導師の子どもが殺し合う運命にあるっていう。
生田:エグいものを。それがいいっていう話で(笑)。
鈴木:オープニングで「ルージュを殺せ!」って、ドーンと言われるという(笑)。ギョッ! ってなりますもんね。
生田:でもそういう意味では、ゲームとして王道を作るだけじゃなくて、もっといろんなヒーローや人々が待たれている。自分を重ねたり憧れたり、「こんなやつがいるんだ」と思うようなものをゲームで見たいんだということに、『サガ』はすごく応えるものだったなって思います。
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