CLOSE

悩める20代、30代に届けたい。人生に行き詰まったらゲームをしよう(全9記事)

「深い人付き合いが苦手」になる原因は、過去の傷つき体験 ぬるゲーではない人生で、“対人ガチャ”を回し続ける大切さ

『NOを言える人になる』刊行記念として、本屋B&Bで開催されたイベント「悩める20代、30代に届けたい。人生に行き詰まったらゲームをしよう」。著者である内科医/心療内科医の鈴木裕介氏と、『サガ フロンティア』『ファイナルファンタジーXII』などの制作に参加した、ゲームデザイナー/シナリオライターの生田美和氏が対談。本記事では、「深い付き合いが苦手だ」という人々に対して、人とうまく付き合っていくためのポイントを解説しました。

親しい人と距離を置くと見えるもの

鈴木裕介氏(以下、鈴木):(視聴者から)質問が来られています。「深いお付き合いが苦手です。MMO(RPG)も苦手で、『ゲームくらい一人でやらせてほしい』と思っていましたが、今日のお話を聞いてやってみようかなと思い始めました」。ありがとうございます。

「子どもの頃から“調整役”を任されていたのですが、20年の付き合いがあった友人が、SNSで私を攻撃しているのを見つけてしまい、『何をやっているのかな』と疑問に思い、どうでもよくなってしまいました。親しい友人の定義って難しいですね。今は連絡する友人はいないですが、とても快適になってしまいました。ゲームのシステムを有効活用すれば解決しそうですね」。

まさに今日の内容の(笑)。

生田美和氏(以下、生田):そうですね。

鈴木:長い関係を持つと、相手が自分の思い通りに動いてしまうことが当たり前みたいな感じになってしまって、20年の間にどこかで「期待値」というか、支配・被支配の感じになってしまうこともあるのかなと思います。

生田:先生がおっしゃる、ここからは自分の領域で、他人には踏み込んでほしくないラインがあって、時間の中でそこが曖昧になっていくというか。一緒に過ごした体験の中で、「2人でひとつの生き物」みたいになってしまう瞬間が多くあると、「私とあなたは一緒」という思い込みとかが起きやすいんだろうな。

鈴木:長いこと一緒にいると、甘えとか油断が出やすくもなるのかなとも思いますし。でも、いったん離れられてよかったんじゃないでしょうかね、とも思います。

生田:そうですね。

鈴木:思い返した時に、自分側として「この関係ってモヤモヤする部分とか、ちょっと自分の持ち出しが多いな」と思う部分があったかもしれないなとも思いますし、たぶん次の関係で、そういう観点に少しアンテナを張っていただけるといいのかなと思います。コミュニケーションの中で持ち出しが多いと苦しくなりますよね。

生田:いることが当たり前の人(の働き)は見えにくくなるというか。離れることで、その人の受け持ってくれていたものが明らかになるところも、自分がそれだけ頼っていたことに気付くこともあるので、距離を離すのはいいことだなと思います。

人に傷つけられた心は、人によってしか回復しない

鈴木:こういう体験を積み重ねると、「深い付き合いが苦手だ」と思うのは当たり前のことなので、ある意味これって傷つ付き体験というか。こういう経験の1個1個がやはり人を回避的にしていくというのは、もちろんそうですし。

もともと小さい頃から調整役をされていた方は、家族みたいな親密な関係にもちょっとした……ちょっとしたじゃないですね、重荷感というか、忌避感を感じてしかるべきだと思います。それは正当な反応だと思います。

一方でなにかコメントをするとしたら、本当に月並みなんですけど、「そうじゃない人もいます」ということくらいしか言えないんですが。

次にいい出会い方をする人は、そういう人たちとは違う人たちかもしれないし、自分の中でちょっとモヤッとすることや、違うんじゃないかと思ったことを言った時に、それを正面から受け止めてくれる人かもしれないわけなので。

もちろん、回避というのは防衛手段なので、今後も回避的に生きる自由はぜんぜんあると思います。でも、すべてのことを本当に一人でやっていくのもなかなかしんどいですよね。「ぬるゲー」ではない。

生田:そうですね。

鈴木:他人に本気で頼れないとなると、人生の難易度が何段階も上がってしまう、というのはあると思うんですよ。

生田:人に傷付けられた心って、人によってしか回復しないところがあって。自分で自分を励ましたり、慰めたりというのには限度があるというか、傷のままになっちゃうところがあって。やはりそこで、“対人ガチャ”を回し続けたほうがいいので。

鈴木:そうですね。

生田:ちょっと“石”を貯めて、少し気分が回復してきたら、もう一回誰か出会える人がいるんじゃないかと思って。そういう気持ちになるまではお休みしていくのがいい。

鈴木:そうですね。ごもっともだと思います。

日常生活に疲れたら、わざと“視力”を落としてみる

鈴木:ということで、あっという間にあと(残り)15分くらいに。

生田:もうそんなに。

鈴木:ご質問ありがとうございます。「今年から社会人になったものです。内向的な性格のため、たくさんの話が飛び交っている職場から帰ると疲れを感じています。会社員として働く中で、自分軸で生きることが難しいと感じているんですが、なにか対処法があれば教えてほしいです」ということですが、いかがでしょう?(笑)。

生田:そうですね(笑)。お仕事の種類にもよることもありますよね。飛び交っているもの全部について、すべてある程度の把握が必要なのか……。

鈴木:たぶんそうじゃないと思いますので。

生田:そしたらそこは気にせず、というところになっていくと思うんですが。

鈴木:ちょっと思い出したことがありまして。僕、最近眼鏡を変えたんですよ。前に使っていた眼鏡を検眼士さんに見てもらった時に、「見えすぎるだろう」ということで。運転の時とか、『スプラトゥーン』とかやっている時はいいんだけど。

生田:はい(笑)。

鈴木:「日常生活だと見えすぎて疲れるんじゃないか」ということで、ちょっと度を落としてもらったことがあって。おそらくいろんな背景で、それこそ今、HSP(Highly Sensitive Person:感受性が強く敏感な気質の人)と言われているような、気質としていろいろな刺激を感じやすい方もたぶんいらっしゃるんですよね。

自分にとって過多な情報を、社会とうまく折り合いをつけた上で、どう遮断していくのかというお話でもあるのかなと思います。

生きづらさの原因を見つける方法

鈴木:いわゆる感覚過敏があるのかもしれないですし、先ほどからずっとお話していた、対人関係の過敏性かもしれないですし。

影響を受け過ぎてしまう、揺さぶられ過ぎてしまうというところで、自分のどの部分が「揺さぶられる」ということを引き起こしているのかを知るために、いくつか心理学的なワークやいろんなものがあるので、そういうものに頼ってみるのも1つなのかなと思います。

感覚過敏はで対処法がありますし、対人関係の過敏でいうと、より心理学的な深堀りをしてやったほうがいいと思います。ただ、こういうふうに質問をいただいて、「自分軸で生きることが難しいな」と感じてコメントをくれたことが、とても大事なことです。

これが真実なので、少なくとも今、自分にとって心地いい状態ではないということを自覚されていることが、たぶんとても大事なことだと思います。

内向的な部分はどこで来るのか。たくさんの話が飛び交って疲れてしまうというのは、どういう自分の気質から来るのか。対人関係のパターンや癖で来るものなのかをもう1段階掘り下げられると、もうちょっと自分の生き辛さの根っこにあるものが、見つけられるんじゃないかなとも思います。

具体性に欠けたお答えで申し訳ない。お答えになっているかわからないんですが、ご質問いただいてどうもありがとうございます。

(視聴者からのコメントで)「まさか読んでいただけるとは。ありがとうございます。感激です。“持ち出し感”はすごくありました。相手に「イエス」と言い過ぎたと感じてしまう関係に、問題があったのかもしれません。離れられてよかったと思います。早めに「助けて」という練習をゲームにするのがいいかもしれないと思いました」。

なんか本当に、今日のイベントのラップアップを代わりにしていただいたような(笑)、非常にありがたいコメントですね。こちらこそ、本当にどうもありがとうございます。ということであっという間なんですが、本当に楽しかったです。

生田:こちらこそ。

「NO」を言えない人の背景にある、トラウマ反応

鈴木:最後になんかありますかね。考えてなかったな。

生田:(笑)。

鈴木:「人生に疲れたらゲームをしよう」というテーマですが、僕個人としては、本当にやりたいテーマでお話しすることができて、ありがたい時間だったなと思っております。

生田:こちらこそ、ありがとうございます。

鈴木:本当に話は月並みなんですが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします(笑)。

生田:どうぞよろしくお願いします。

鈴木:このテーマでイベントをやらせていただいて、どうもありがとうございます。一応本の販促イベントであるということを忘れてまして(笑)、ちょっとだけいいですか。

まずこっちは、『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』のリマスター版ですね。生田さんは「宝石泥棒編」のシナリオをご担当しているんですが、この瑠璃くんというキャラがぜんぜんヒーローっぽくない感じで。

生田:そうですね。そのことでは乱暴者すぎると、だいぶツッコミを(受けました)。

鈴木:リアリティがあってすごくいい。めちゃくちゃおもしろい。熱狂的な人気ですし、今、がんばって攻撃力200の剣を作ろうとしています。

そしてこっちが、『NOを言える人になる』。時代の背景を受けて(表紙が)パンダの絵に変わっているんですね。これは古いバージョンの本なんですが。

NOを言える人になる 他人のルールに縛られず、自分のルールで生きる方法

この本を書いていた時点では、「NOと言えない」ということの背景に、心理的な側面・社会的な側面を中心に書いていたんですが、やはり「NO」と言う前にフリーズせざるをえないような背景があるのではないかと思うようになってきました。

相手の言い分を聞いたまま固まって「明け渡して止まってしまう」という、どちらかというと神経学的と言っていいような、トラウマティックな反応が関連しているんだろうなということが、最近いろんなことからわかってきました。そういう意味では、もうちょっと書き加えたいなと考えているところです。

出版からしばらく経って、自分の中でけっこう発見があったので、もうちょっと突き詰めていきたいなとも思っています。重版間近なんでしたっけ? 間近なんだけども、なかなかいかないということなんだそうですが(笑)。

「NO」を言えるようになるために

鈴木:もう1個(コメントを)いただきました。「抽象的で今日のテーマとは少しずれた質問でしたが、丁寧に回答いただきありがとうございました。HSP気質を持っているんですが、対人関係の対処法に関しては知らなかったので調べてみます。おもしろい話をありがとうございます」。本当にありがとうございます。

HSPに関しては、飯村(周平)先生という方が国内有数の研究者なんですけど、飯村先生のサイトがすごく有用だと思いますので、どうぞご参考に。僕もすごく参考にして、勉強させてもらっています。

というところで締めさせていただきましょうか。なんかこんな感じで終わっていいんですかね。

生田:(笑)。

鈴木:すいません、僕得みたいな感じの時間帯だったんですが(笑)。本当に貴重な機会をありがとうございました。

生田:ありがとうございます。

鈴木:これを機に、「NO」を言う、その前にあるものにも、なにかを言えるようになっていきたいなと考えております。今日も帰って『聖剣伝説』をやります。どうもありがとうございました。

生田:ありがとうございました。

(会場拍手)

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 大企業の意思決定スピードがすごく早くなっている 今日本の経営者が変わってきている3つの要因

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!