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2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
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鈴木裕介氏(以下、鈴木):気になったので、さっきの「世界観」の話にちょっと戻るんですが。実際、ゲームの世界の中でも荒らしであったりとか、あまり他の人にとってはよろしくないような挙動とか不穏もあるじゃないですか。生田さんの立場で、そういうのがなるべく来ないよう、心がけられていることとかありますか?
生田美和氏(以下、生田):こういうことを言うとアレかもしれないんですが、私は起こるものだと思っています。
ただ、それをゲームを遊んでいる方たちの中で解決していこうとしたり、「これは解決しないので棲み分けよう」となっているのを見ていると、いくら運営側や作り手側が「これがルールです」とやっても、カバーしきれないのが人間なんだなという、すごく人間らしいものが出てきて。
作り手としては、神の立場には立てない。全部の問題を「わかった」と言って、「このルールでやれば問題は起きません」ということはない。何をルールとしても、必ず問題は起きて傷付く人は出てくるし、そういうふうに加害側に立ってしまう人も出てくる。
そういうものはあるんだと思って、「それを乗り越えていこう」「それでも一緒に遊べるところはあるはずだ」とやっていく。諦めずに行く姿勢がなければ、たぶんゲームは作れないと思うんですね。
生田:なにかを言われたり、トラブルが起きたりすることを恐れて、プレーヤーさんが遊んでいくものを縛っていくようなかたちにすると、確かに問題は少なくなるんだけど、おもしろくなくなってしまう。なので、問題を考えながらもそこに誠心誠意向き合って行くのが、たぶん大事なんだろうなと思います。
それはきっと、現実もそうなんですよね。間違いがないようなことを言ったり・やったりする人間が必要なのではなくて、間違うものだから、それを間違った時に「じゃあどうやって軌道修正して、私とあなたの関係を作っていこうか」ということができる人だけが、たぶん友だちになれたり。
「思い切って離れてみよう」ということができる人が、お互い関係を長く保っていられる間柄なのかなと思うので。
鈴木:まさに作り手としての矜持というか、生田さんの長年の戦いの歴史を感じるコメントですね。本当に、リアルでも同じで、お互い間違う前提でその都度軌道修正していくことが本当の人間関係だと思います。
鈴木:ちょっと話が変わるんですが、(鈴木氏の診療所が)秋葉原という土地柄、けっこう作り手さんや作家さんとかが来られるんですね。決してメンタルが強いわけではないだろうな、とも思うんですよ。
そもそも作り手を志すとか、そういう繊細な世界観を描こうという感性がある方は、どういうふうに(精神を)成り立たせていらっしゃるんですかね。クリエーターのメンタルヘルス問題。
生田:確かに作り手は繊細な方は多くて、もう駄目になっちゃう人もけっこういらして。それはたぶん、見える範囲が広かったり深くまで気付いてしまって、自分の問題にしやすい方が多いのかなというところと、(そうしたものに気づいてしまうところと)表現力みたいなものが密接(な関係)にあるんだろうなとは思うんですよね。
そこは開発でカバーしなきゃいけないところではあって、作っている自分たちの中でも、衝突はあるんですよね。それぞれのゲームの目標だったり、「これがおもしろいはずだ」という自信だったり。
それがチームの方針として許されないとなった時に、(そのゲームのファンを)裏切るような作り方をしなきゃいけない時もある。そこで(精神を)やられる人は本当に多くて。
生田:そこで私が声をかけていくのは、「でも、ここで折れたらそのゲームは世に出ない。楽しみの1つがなくなっちゃう。がんばって作れば、とりあえず自分の納得する遊びではないけど、他の遊び方をする人たちには刺さるかもしれない。ここは耐えて作り終えましょう」ということは言えるというか。
鈴木:それこそずっと作っていく中で、お偉いさんが出て全部ひっくり返したりする、みたいなことがあったりするわけですね。
生田:それもありますし、そもそもが大勢で作るものなので、自分の意見が通ることばかりではないんですよね。基本、ありがたいことに私も立ち上げから関わることが多くはあるんですが、オーダーを受けて書く立場なので、私がオーダーを持っているわけではないんですよね。
そうするとだいたい、集まってくる職人さんみたいな立場でチームを運営していく人が、「こうしたいんだ」というものを聞き取って、それに(都合が)いいものを合わせていく。「こうしたいんだ」がそもそも(ユーザーさんのイメージと)違ったりすると、「これはだいぶ難儀だぞ」という感じでやられてしまう。たぶん(精神が)一番やられるのはそこです。
鈴木:そうなんですね。
生田:「ユーザーさんを裏切ることになるのではないか?」というところが、たぶん一番つらいところ。それはみんな、それぞれの立場で意見は挙げていくんですけど、(チームの方針が)覆ることは基本はないので。
そこでもう、「ゲームへのイメージは持たない・捨てた」という人もいますし、全部シャットアウトして言われたことを機械的にやるというスイッチを入れてしまう人もいるし。最後まで抵抗して、少しでもユーザーさんやファンの方々が喜ぶかたちに持っていく人もいるし。
本当に好きだからこそ、(精神が)やられていくところがあって、そこが一番しんどいところかなと思います。
生田:私はやられもするんですが、どうしても「自分が折れたら、この作品は出ないかもしれない」というところで踏ん張ろうと思うので、そこがたぶん、ちょっと他の方とは違うかなと。
私が担当するのはメインシナリオ執筆が多いので、(自分が)「もうこの方針では書けない」となっても、「今からこの世界全部把握して、メインシナリオを書ききる人を呼ぶのは無理だ」となるのはわかってしまう。だから辛くても、腑に落ちなくても、キリがいいところまではしっかりやっていこうと。あとは、どれだけ内容を書き換えられてもいいと思って、次の人にキリよく引き継げるところまではやり遂げるようにしています。
鈴木:ユーザー目線(笑)。
生田:いやぁ、どうでしょう。それが本当に正しいかどうかはわからないです。
鈴木:「作る」というとてもハードな世界で、ずっと長くやっていらっしゃって、今でもずっと現役でトップを走っていらっしゃるので、言葉が重いですね。
生田:作り手というよりは、プレーヤー側に私が立っているんだと思うんですよ。どんなゲームでも、出ないというのは許せない。なるべくたくさんのゲームが出てほしいというのが芯にあるので。
たまたま自分がわかっていないだけで、きっとこのゲームは誰かしらに届く。実際に出せば、多くの方には刺さらなくても、すごくコアなファンを得たりすることもあるので、そこでプレーヤー目線になっちゃうんです。
鈴木:これはものすごく大きなヒントいただいた気がしますね。「自分がユーザーである」という感覚。漫画でも小説でも何でも、創作にまつわる苦悩ってかならずあると思うんですが、作り手の自分もまたその世界の1プレーヤーでもあるということを軸からブラさないことって、「ほぇ〜!」という感じがしました(笑)。
すみません、なんかぜんぜん気が利いたこと言えないんですけど、「確かに!」「すごっ!」ということがめちゃくちゃ多いので。クリエーター、クリエーションに関わる方で、すごく嫌なこと言われるとか、「評判が」みたいなことで心が折れて来られる方もすごく多いので、今度ちょっと伝えてみます。
生田:(笑)。
鈴木:「僕の尊敬するクリエイターさんがこういうことを言ってらっしゃったよ」という話を得ました。日々の診療に持ち帰れるお土産をいただいて、どうもありがとうございます。
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