2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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TAITAN MAN氏(以下、TAITAN):僕はほんと、大学時代とかクソふて腐れてたんですよ。
若林恵氏(以下、若林):わかる。俺もそうだった。
TAITAN:大学の2年とか、本当に誰にも話が通じないみたいな感じで、超ふて腐れてたんですよ。5年くらい経ったら、別にけっこう楽しく生きてられてることって、あるじゃないですか。それも一般的な話に落とすことができるなと思う。
今どんなに「ファッキンシットだな」と思っていたとしても「過去は変えられる」みたいな話って、解釈によってあるかなと。
若林:そうそう、そうだと思う。
TAITAN:そういうことって、けっこうマジで超大事なマインドとして人間一人ひとりがインストールしていると、もうちょっとギスギスしないのになとか思ったりはしています。
陳暁夏代氏(以下、陳暁):ちょっと話変わりますけど、私はインターネット社会になってから、過去を変えやすくなったと思ってる。
TAITAN:ありますね。そう、過去は変えられるんですよ。
陳暁:我々は今バーチャルに生きてるんです。例えば私が10年前に誰かを刺していたとしても、言わなきゃいい話なんです(笑)。「バレていなければ」みたいなことなんですよね。
最近すごくおもしろいなと思うのが、よくドラッグで芸能人が捕まったりするじゃないですか。でも今テレビに出ている王道の人たちって、過去にわりと高い頻度でドラッグで捕まってるんですけど、なかったことになってる。
要は演出・出し方・隠し方次第で、いかようにも新しいコンテキストになる。それは今っぽいなと思いました。
若林:なるほど。それはそう。だから結局、歴史というのは基本的にやっぱ現在なんだよ。
TAITAN:めちゃめちゃわかりますね。
若林:でしょ? 気が合うな。
TAITAN:ちょっと延長したいです(笑)。
若林:あはは(笑)。
陳暁:編集ですよね。
若林:そう。だから、いかに歴史を編集し直すかというね。
TAITAN:そう。今ここに流れてる時間というのは、現在であり、未来であり過去、すべてなんですよ。
若林:すごいな。
陳暁:これもバーチャルなんですよ(笑)。このイベントもなかったことにできるので。
若林:それもそうだな、それもそうだよ。あれ? 質問の答えになって……なってたよな? 大丈夫だよな?(笑)。
陳暁:なんだっけ? みたいな(笑)。
TAITAN:いや、もう(笑)。
若林:え、これもうそろそろ時間? 俺だけダラダラとセッションを続けるというね。
TAITAN:飽きた人から帰っていけばいいんじゃないですか(笑)。
若林:そうそうそう。いや、そういうわけにはいかないんだよ。何を言ってるんだよ。そろそろ終わったほうがいいというか……(スタッフの)誰を見たらいいのかというね。
じゃあせっかくなので、もう1個くらい、もしあれば手を挙げてください。(観客を指しながら)いく?手を挙げてる? さっき質問したっけ。その隣。もういい?
もう1個ぐらい、質問ないですか。簡単なやつね。
質問者3:今回のテーマがアイデンティティなので、お三方が個人的に大事にしている自分のアイデンティティって何ですか?
陳暁:うーん。(他の2人に)みんなめっちゃ考えるな(笑)。すぐ出てこないですね。
若林:多分、今回のセッションでやりたかったのって、やっぱり「アイデンティティみたいなものが1個の罠なんじゃないか」というのがあって、「それにとらわれない考え方って何かないのかな?」と。
陳暁:アイデンティティって日本語でなんですか?
若林:自己同一性。
陳暁:自己同一性?
TAITAN:めちゃめちゃわかりやすく言うと、個性。
陳暁:個性。
TAITAN:というものに、落ちますか?
若林:だから、それはもう自己……。
陳暁:信念?
TAITAN:自分が自分の……。
若林:(質問者に)じゃあ、お前自分で言ってみろよ。
(会場笑)
TAITAN:なんでいきなり(笑)。いつキレたんだよ。沸点がわかんねーよ(笑)。
若林:うそうそ(笑)。(質問者に)例えばそれって、何のことだと思って言ってる?
陳暁:そう、アイデンティティって何ですかね。
若林:ほら、ほら。
陳暁:アイデンティティの解釈自体が、人によって違うと思うんですね。
若林:そうそう。それで僕が思うのは、さっきから言っている話の延長でいうと、“一種の本質論”というものから僕らは脱却しなきゃいけないんじゃないかという思いを持っているわけ。
つまり俺らしさとは何かとか、俺の本質とは何かとか、あるいは会社の本質とは何か、雑誌の本質とは何か、メディアの本質とは何かって、基本的に「神学論争」にしかならないような気がしてる。
思考回路と対話の回路からいかに脱却できるのかみたいなことが、実は今日話したいテーマだったんすよ。
陳暁:そう。最近、強いキーワードが議論の幅や思考を狭めちゃうことが、けっこうあるなと思うんです。それこそアイデンティティとかフェミニズムとかが、それの傘下に入った瞬間に閉じちゃうというのは、ある種弊害だと思うんですよね。何が議論したかったんだっけとか。
「具体でいうと何なんだっけ」「……ということはこうじゃない?」みたいな解釈が本当はもっと枝分かれできるのに、わりと一本線にまとめられちゃうというのは、もったいないなと思います。
若林:だから歴史みたいな話も、例えば俺だと、子どもの時にロンドンとかニューヨークに住んでいたみたいな話があるのね。子どもの頃にめちゃくちゃヘビメタ好きだったというのがあるわけ。あるいは、俺は小学校の時にサッカー部に入っていたし、野球もやってた。
それで俺が今サッカー選手だったら、俺の過去の中において1番重要なのって、「小学校からサッカーをやっていた」というところがすごくクローズアップされるじゃない。わかる?
俺がミュージシャンになっていたら、子どもの頃にメタルを聴いていたというのはすごく重要なファクターになってくるわけじゃん。そこで物語が発動させられ、自分のある種のアイデンティティみたいなもの、例えば中学の時にアイアン・メイデンを初めて聴いて……みたいなのが、フィクションとして立ち上がってくるわけじゃない。
だけど、俺は別にそれは関係ない。俺の人生のストーリーでいうと、それってただの脚注でしかないみたいなことがある。そもそもアイデンティティというものの、ある種のナラティブみたいなものとか、それが構成されるコンポーネントみたいなものって、恣意的にしか選択されてないという気はするわけ。
若林:たぶん陳暁さんとかだと、今やってることとか、今の時代背景の中で中国生まれであるということだけが、異様にクローズアップされる。でも、たぶん全く違うことをやってたら、ぜんぜん違う、子どもの頃にすごく木登りが得意だったみたいなことがね。
陳暁:そうそう、私の特技はわりと分析とかなので、別に中国と関係ないんですね。
若林:関係ない、関係ない。
陳暁:だけどそこがクローズアップされちゃうから、「じゃあそっちでいいです」みたいな(笑)。
若林:そうそうそう。だからその時に自分が信じている、ある種の自分のアイデンティティの物語というのが、「それどこから発動してるんだっけ」という話は、たぶんもうちょっと疑う余地があるし、違う可能性がたぶんあるかもしれない。
陳暁:あとはアイデンティティというご質問で私が思うのは、人は死ぬまで延々と成長していくので、変わっていくと思うんですよね。変わっていくし、リアルタイムでも私の中に矛盾はたくさん発生してる。今日言ったことは、明日やっぱり違うなと思ってるかもしれない。さっきの話で、「意見が変わったらアンチが来る」みたいな話があるんです。
それがリアルなんだと思うんですよ。だって毎日変わってますもん。だって好きな彼氏と喧嘩したら、明日嫌いになるじゃないですか。それは永久のものではないので、それが仕事でもプライベートでもずっと発生していくので、アイデンティティも変動的だとは思ってます。
若林:そうそう。だから、俺も……ごめん、永遠に喋れるな。だんだん飲み屋みたいになってきた。
(会場笑)
若林:そうなんだよ。俺は酒を飲まないのに、この調子で延々喋ってられるんですよ。やめようか。まぁ最後に言っておくと、僕はさっきのセッションで(元ほぼ日CFOの)篠田さんがおっしゃっていた話で、「ライフイベントというのはある種、適切なタイミングみたいなのはない」という話。人生というのは、常に一寸先は闇なわけです。
ところがやっぱり、近代以降は国家とか国の整理の仕方と産業の整備のされ方に僕らが合わせるかたちで参加するしか、やっぱり手立てがなかったんだと思うわけ。
その仕組みの中において、たぶんアイデンティティという、ある種のキーワードが醸成されてきたという気がしてる。なので、おそらく「社会の側をもうちょっとみんなの人生に寄り添うものに作り変えていこうぜ」みたいな話になってきた時って、実はアイデンティティみたいなキーワードって本質的には無効化しなきゃおかしいんじゃないのかな、という気もしたりするんだな。
まあ、とりあえずここまでだ。
(会場笑)
若林:ちょっと今、適当に言った話なので、考えといてもらっていいですか。
TAITAN:あはは(笑)。
質問者3:はい、ありがとうございます。
若林:次にイベントをやる時に来てもらって、考えたと言ってくれれば、発言の機会を与えますので。というわけで、あー、おもしろかった。
陳暁:ありがとうございました。
TAITAN:ありがとうございました。
若林:ではお二人に大きい拍手を(笑)。
(会場拍手)
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