2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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亀田誠治氏:さあ、では次に行くね。「サブスク」「今はスマホ」などといろいろと言ってきたけれど、ここ数年は……というよりもここ数ヵ月の間に、いろんな音楽の聴かれ方がされており、さらに多様性を持っているんですよ。
みなさん、ミームソング。ミーム(meme)という言葉が分かりますか? 例えば、TikTokなどでもよくあるけれど、1つの曲をいろんな人が真似をしたりして、ネット上で広がっていくんです。SNSが生み出したイノベーションなんだけれども、今、全米で、このミームソングが一世を風靡していて。このリル・ナズ・Xという人は知っている? みんな、知っている人?
(会場挙手)
あっ、少ない。これは俺も怖くて。“さっぱりさぱ男”になったらどうしようと思って、資料なども用意して来たんですが、今このリル・ナズ・Xが歌っている、「Old Town Road」という曲がアメリカのbillboardで19週間連続1位になっています。
リル・ナズ・Xが、また賢い男でして、TikTokに自分から放り込んで、ハッシュタグを付けている。前もって、3〜4ヶ月くらいの準備をかけて、この「Old Town Road」という曲をヒットさせました。
今まで、YouTubeなどで歌ってみた、踊ってみた、というものが何年か前からあったでしょう。すごくヒットして、それはそれでいろんな人に届いて、楽しい幸せを与えていました。星野源さんの恋ダンスもそうだよね。みんなでやるんだけれども、TikTokの5秒10秒で……あっ、TikTokをやっている人はいますか?
あっ、いない。えぇ、TikTokをアプリで入れている人?
(会場挙手)
入れているけどやっていないということね。見て楽しんでいるということかな? ビックリした。これは、TikTokを知っている前提で話しているので、知らなかったら大変なんだけれども。今までは恋ダンスもそうだけれども、2〜3分の楽曲全体を通してという。
イノベーションとしては同じ方向性を向いているんだけれども、TikTokは5~10秒。5秒で分からせちゃう、というところがすごくて、これが今の時代の音楽ヒットの鍵になっている。
リル・ナズ・Xに行く前に戻るんだけれども、(日米チャートのスライドを指して)これは、サブスクが何を変えたかという日米のチャートから見えてくるもの。アメリカのbillboardチャート、9月7日、最近のものです。
まずはアーティスト、Billie Eilish(ビリー・アイリッシュ)は知っているかな? みんな。Billieちゃん、僕は大好きなんだけれども、いろいろと、Ed Sheeran(エド・シーラン)、Taylor Swift(テイラー・スウィフト)も入っていますよ。
それで、まずおもしろいのが、作曲者の数を見て。これはね、欧米ではコライト、共作と言うんだけれども、1曲作るのにこんなにも作曲家の方がソングライターとして関わるわけ。1、2、3、4。もう4〜5人は当たり前で、Chris Brown ft. Drake(クリス・ブラウン・フィーチャリング・ドレイク)なんて、1、2、3、4、5、6、7人。
それで、Ed Sheeranは、なんだかシンガーソングライター風なのにもかかわらず、Ed SheeranとJustin Bieber(ジャスティン・ビーバー)の「I Don’t Care」が、1、2、3、4、5、6人。6人の人が曲作りに関わっている。
要するに、サブスクで(曲が)かかった瞬間にすぐに口ずさめるよう、さっきのTikTokの話じゃないけれども、5秒で引き込むために、曲を凝縮しているんです。サブスクが変えちゃったのは、曲の単位で、このアメリカの曲の短さを見てください。2分53秒、3分24秒……トップテンの平均が3分7秒。
(スライドを指して)これは今の日本のチャートです。日本のシングルチャートなどを見ていると、ここら辺は共作していますね。キンプリ(King&Prince)やジェネレーションズ(GENERATIONS)は共作していますが、見てこれ。
曲の長さの違い。軒並み4~5分でしょ。アメリカが平均3分7秒。日本は4分34秒。要するに、聴かれ方、受け取られ方が違うので、曲の構成・構造まで変わってきてしまったわけ。
これを言うと、「えっ、じゃあ亀田さんって洋楽志向?」などというわけではなくて、J-POPにはJ-POPの情緒というものがあって、そこを大事にしなきゃいけなくて、それを語りつくすためには、4分34秒のようなストーリー仕立てが必要。
これがイノベーティブな視点なんだけれども、それならばもっともっと楽曲を凝縮して、スマホやPCを押した瞬間に、バシッと来るような楽曲の作り方に欧米はシフトしているということなんです。
そして日本は、サブスクが浸透していなくて、いまだにCD文化。きちんとイントロがあって、平歌があって、サビがあるというような、そうした音楽を愛でていくという。日本ならではの、J-POPならではの良さはあるけれども、いい悪いは置いておいて、サブスクを中心に発信される音楽と、CDを中心に発信される音楽とでは曲の作り方が変わってきてしまったということです。
そして、先ほどのリル・ナズ・Xの話に戻るけれども、この19週連続1位になった曲を流してもらってもいいですか?
(子どもたちがリル・ナズ・Xの曲に合わせて踊る動画が流れる)
こんな風に、子どもたちまで真似をしちゃっているわけ。これホントは、渋めのカントリーギターのサンプリングがあって、そこからラップが乗るという曲なんだけれども、TikTokでどんどん拡散していって、挙句の果てに届いた先というのは、この子どもたち、親子、孫、3代、アメリカ全土津々浦々の大ヒットになっていて、6億再生だよ。
それと似ているのが(笑)、ちょっとこれFoorinの「パプリカ」を流してみて。
(子どもたちが「パプリカ」の曲に合わせて踊る動画が流れる)
(笑)J-POPの情緒ですからね、みなさんね。はい、ありがとうございます。
これはでもね、リル・ナズ・Xのヒットを見たときに、「あっ『パプリカ』の拡散と似ているな」と思いました。「パプリカ」の場合は、いろんな子どもたちが踊っていた。
今年の春に、オーディションをやったんだけれども、そのときに子どもたちに「何か一芸をやってください」と言うと、10人中9人は「パプリカ」を踊るんだよ。それで、「ははー、なるほど」と。正真正銘のヒット、もしくは正真正銘のイノベーティブなものは、子どもたちにまで届かないといけないんだということに合点がいったわけ。
リル・ナズ・Xのヒットもそうだし、このFoorinのヒットもそうです。こうやって子どもたちが無邪気に、「Old Town Road」を踊って、ラップしてという。
そうした風になって来るというのは、やっぱりこの、TikTokが作り出したイノベーション。TikTokを使って遊ぶ、それでこうやって多くの子どもたちに届いているという結果を、「イヤイヤうまい商売していますね」などというように、みんなには考えないでほしい。
ここに集まっている、前途洋々たるみなさんには、例えば子どもたちにまで届くものということは、それだけイノベーションが人を幸せにしている、人々の生活を豊かに彩っていると考えてほしい。
そうすると、いろんな新しいイノベーションが起きても、それを受け入れることができるし、新しいイノベーションが起きると、それをヒントに、「じゃあ自分たちは何をやっていこうか」ということを考え付くことができる。そういうことを肝に銘じてほしいと思います。
そのように考えると、すべての音楽もそうであり、みんなが将来向かおうとしている道でもそうなんだけれども、きっかけになるものはイノベーションなの。それはすべてのものに通じるんだけれども、この時代のテクノロジーというものを外すことはできない。
このテクノロジーは、すべてのテック企業や、テックということだけではなくて、情熱や思いというものに置き換えて考えると、すごく未来への道筋が見えてくると思います。
要するに、イノベーションを起こすのはテクノロジーではなくて、まずテクノロジーの手前にある、「作ってみたい」「こういうことがやりたい」「こういう風に自分たちの作品を届けたい」「自分たちのつくったものを拡散したい」という思い。それが、テックを起こし、推し進めて、そこにイノベーションが生まれる。すると、必ず賛同してそこに乗っかってくる、応援してくれる人が出てくる。
ですから、日本のサブスクの状況が芳しくないけれど、僕は今日、30分以上もかけて(こういうお話をして)、サブスクを本当に推奨しているんです。一刻も早くサブスクリプションに移行して、より多くの人たちが音楽を、裾野まで(広げられるようになって)来ていて、深堀りできて、そして音楽業界にお金が回っていく。
景気が悪いなどということを言っているんじゃなくて、このイノベーティブによってそういうクリエーションをどんどん起こしたいのです。そこを、ここに集まっている君たちの若いエネルギーでもって、もう僕らが考えもつかなかったようなことを、考えもつかないような速いスピードで、みんなに達成してもらいたいと思っています。
僕も例えば、いろいろな作品作りをするときにいろんなトライをするんだけれども、失敗することもあります。でもね、この新しくトライをすることが、必ず次に繋がっているんですね。
新しいトライで失敗して、成果が得られなかったとしても、必ず誰かが見ていてくれて、賛同者が現れる。賛同者が応援をしてくれて、1つのうねりが生まれて、それがイノベーションになる。だからイノベーションにとって一番大事なのは、イノベーションを起こすパッションです。本当に情熱。この情熱が一番大事だと思います。
これでこのお話を終えたいんですが、先ほどCDの話をしましたよね。TaylorSwiftちゃんのCDを買いました。ホントですよ。亀田さんはいつもレコード会社からサンプル盤をもらっていると思ったら大間違いですからね。これはTaylorのCDなんだけれども、これ、エディション1、エディション2、エディション3、エディション4、と4種類もあるの。
あのね、エディション1にはTaylorの直筆の、とある時期の日記が付いている。エディション2にも違う日記が付いている。エディション3、エディション4にも日記が付いていて、どういうことかと言うと、本人の直筆の日記付きCD。
これを4種類も発売していて、「オイオイちょっと待てよ、この売り方は日本でもやっていたやつと似てるんじゃねーか」と思うでしょ、握手券とか。似てるんじゃない? と思うかもしれないけれども、大間違いです。
欧米、アメリカでは先ほど言ったように、75パーセント以上がもうサブスクに移行しているというベースがあるんです。イノベーションによって作られた、新しい時代のグローバルな音楽の基準、土台というものができているわけ。できたうえで、こうやってTaylorちゃんは(笑)、Taylorちゃんって友達じゃありませんが、自分の日記を載っけて、CDを何パターンも作って、そしてファンとのコミュニケーションとして使っているわけです。
これもデラックスボックス、デラックスエディションなんだけれども、これだけで5,000いくらもするんだけれども、買いました。これにもいろんないいものがいっぱい付いているんです。
あれあれ、ちょっと待って、日本のほうが先にこういうことをやって、日本が開発したイノベーションじゃないの? と思うかもしれないけれども。
土台にサブスクという、きちんと未来の音楽へ移行するという土台ができあがった、建付けができあがったうえで、「CDはこうやって売ろう」というアーティストのパッション・思いがあって、そうした作られ方になっているということを忘れないでいてほしいと思います。
ということで、僕の今日のお話は終わりますけれども、音楽業界に、特に欧米ではサブスクのイノベーションが起きて大成功している。日本はまだです。これからどうなっていくのかが楽しみだし、このイノベーションを動かしていくためには、みんなの力が必要だと思っています。これで僕の今日のスピーチは終わります。どうもありがとうございました。
(会場拍手)
司会:ありがとうございました。亀田誠治様でした。
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