2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
【withnews books『平成家族』出版記念】サイボウズ青野社長と「これからの家族」の話をしよう 働き方・子育て・副業・夫婦別姓(全6記事)
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水野梓氏(以下、水野):私のほうから深堀りするのはこのくらいにしまして、せっかく大勢の方がいらっしゃっていますので、青野さんに聞いてみたいことがある方は、ぜひ質問いただければと思います。
(会場挙手)
ありがとうございます。
質問者1:本日はありがとうございます。聞いてみたいのは、この時代を前に進めていくために、私たち一人ひとりができることはどんなことだろうということです。
これが質問なんですけれども、その背景として、やっぱり日本が今こうして多様性を認めようとしたりしているのは、根本的にある程度の経済原理が働いていると思うんです。
人口が減っていくのでそれを防いでいくために、例えば移民とか、あるいは男女の機会均等といったものを国がある程度仕方なく、でも戦略的にそういうふうにしていこうとしていると思っていて。
それと一緒に、やっぱり古い人たちが年を取って亡くなっていくと、だんだん社会の価値観は変わっていきます。放っておいてもある程度はそうなると思うんですけど、でも(変化のスピードが)遅いと。
私たちが私たちの世代であるうちに少しでもできること、この時代を前に進めていくにはどういうことをしていけばいいのかと考えていまして、その点をお聞かせください。
青野慶久氏(以下、青野):我慢をしないことだと思います。日本人は子どものころから「我慢は美徳である」という価値観を持ってしまう人が多いなと。
例えば先ほどの話の強制転勤がなくならないのは、我慢して(転勤に)行ってしまう人がいるから。サイボウズなんかできません。強制転勤なんかさせようとしたら「青野さん、僕、頭にきたから辞めます」で辞めます。
うちはみんなわがままなので、絶対できないですよ。なので、みなさんが我慢して「それでもやっぱりこの会社のためだ」と思ってやっているから変わらない。みなさんが変わらないから、会社全体の仕組みも変わっていかない。トップの意識も変わらない。
「強制転勤」と言われた瞬間に、みなさん辞めていってください。1年後、その会社の強制転勤制度はなくなっていますよ。
水野:辞めなかったからいけなかったんですね(笑)。
青野:そうです。
(会場笑)
水野:反省しています(笑)。
青野:シンプルな話です。今は非常にチャンスがあって、人手不足という稀有な現象が起きているので、ある意味転職しやすい時期になります。だからこそ、我慢をしないで転職できるチャンスなんです。
これが逆に仕事がない時代だったら、なかなか辞める勇気も湧いてきませんけど、今はわりとチャンスなので。働く一人ひとりがどんどんわがままになれば変わっていくんだろうと思います。
質問者1:ありがとうございます。
水野:ありがとうございます。私も自分に言われたようで「おお!」みたいな。後輩のために、次に言われたらはっきり言いたいと思います。他にもありますでしょうか。
(会場挙手)
質問者2:お話ありがとうございました。働き方についてちょっとご質問させていただきたいです。サイボウズさんがまさに副業を解禁されて、自由な働き方をして離職率が下がって売上が上がるグラフをすごく感動して拝見していました。
例えば、私の会社も副業は解禁されていて、実は「カニバらなければOKですよ」というかたちなんです。ですが、いかんせん労働集約型で、一人ひとりがお客さんをコンサルティングしているかたちになるので、その人が100パーセントあるいは110パーセントぐらいの力を出し続けていないと、会社としての売上が立たないというビジネスモデルになっていて。
そこに副業を解禁されても、「ぜんぜんできないよ」というのが実情なんです。そういう会社は今後どういう舵取りをしていったらいいのかをちょっとおうかがいしたいと思います。
青野:おお、踏み込んだ質問ですね。うれしいです。この働き方改革ブームの中で、「残業を減らそう」というのはもう世の中の当たり前になってきましたし、それに加えて副業も認めていこうという流れになっています。
次にその流れの中で経営者が悩まないといけないのは、じゃあこうやって働く人の多様性を認めて受け入れていったときに、実は「ビジネスモデルも変えないといけない」ということなんです。
労働集約的に長時間働くことを前提に作っていたビジネスモデルを変えていく。ある意味高付加価値に変えていくとか、あと先ほどの石垣のように、組み合わせるマネジメントを用いることで、今までの質を下げないようにしていくとか。ここに向き合う日が近づいているようにも思いますね。
ちょっと一例を挙げると、私はこの働き方改革の話は、6~7年間同じことを言っているんですよ。よく言っているのは、初売り1月2日に百貨店がお店を開けるじゃないですか。あんなことをするから、年末年始に休めない人が出るんじゃないですかと。
初売りなんて別に1月2日から開いてなくたってかまわないし、やめたらいいじゃないですかと。これをいろんなところで言っていたら、仙台でしゃべったときに「仙台初売りは仙台の文化だ!」といってめっちゃ怒られて。
(会場笑)
「なに言ってんだお前は!」「伝統だぞ!」みたいなことを言われて。でも、どうですか? 初売りをやめる百貨店は増えていますよね。365日営業していたラーメンの幸楽苑は、昨年の12月31日に朝日新聞さんに広告を出しました。2億円事件。
なにを言っているかというと、1月1日はお店を閉めますと。そこまでしてでも、2億円の売上を失ってでも私たちは社員を守りますみたいな。1日休んだくらいでね、どうかなと思いますけど。
(会場笑)
でも、もうそういう流れになっている。ビジネスモデルは変えられるんですよ。そこは経営者が腹を決めれば、売上が減ったって利益が減るとは限らない。売上が減っても利益を出すようなビジネスモデルを考えればいい。それが進化ですよね。
なので、ぜひそこには取り組んでいただきたいなと。メーカーも同じです。メーカーも大量生産で利益を上げていた人たちは、やっぱり量から質への転換が必要になると思います。多品種少量生産。それから、企画型の高付加価値商品。そちらにシフトすれば、働き方は多様に柔軟にしたほうが、実は利益が出るというモデルになるはずです。
ですので、まずはその辺りから。労働集約的なところは、ぜひモデルチェンジを図ってみてください。最近、サブスクリプションという言葉がありますよね。あれも1つのトレンドです。サブスクリプションがいいのは、既存のお客さんの満足度さえ維持していれば、売上が維持できるという非常に安定的なモデルが作れるところです。
毎月新しいお客さんを見つけることをしなくても、安定的に収益が上げられるというモデルですよね。なので、本当にビジネスモデルを転換することも合わせてやっていくべきだと思います。
水野:ありがとうございます。先ほどの集約型のお話ですが、後ろのほうでも頷いている方がけっこういらっしゃったので、(そういう悩みを持つ方は)多いのかなと思って聞いておりました。他に質問はございますか? まだお時間はあるので。
(会場挙手)
はい。ありがとうございます。
質問者3:お話ありがとうございます。先ほど、3日前に議員さんとお話をされたときにすごく反対をしている人がいて、でも、最後まで話を聞いたら「ふーん、なんかいいんじゃない?」みたいな感じになって帰られたというお話がありましたよね。
私も選択的夫婦別姓になればいいのになと思っているけど叶わない状況で、世の中にはだいたい3タイプくらいいるなと思うんです。夫婦別姓がいいなという人と、そんなものダメだという人と、興味がない人。
議員さんみたいに大反対な人と、興味のない人、「え、なんで嫌なの?」「いいじゃん、別に変えれば」という人に対して、どういうふうに働きかけるのが効果的なのかなと思いまして。その議員さんの心をどう動かしたのかをおうかがいしたいです。
青野:そうですね。興味がないのも、極めて自然だと思うんですよ。私もこの選択的夫婦別姓には興味がありますけど、他の社会問題にどこまで興味があるかというと、けっこう疑問です。すべてのものに熱量を注いで関心を持つなんてことはできませんから、むしろ無関心が当たり前だと思います。
ただ人間は、困っている人を見ると助けたいと思うわけです。なので「今、ここにこんなに困っている人がいますよ」という情報を正しくお伝えすれば、「それは助けられるものなら助けたいね」と返してくれる、これが人間だったりするんです。それだけかなと思います。
変に関心を持ってもらおうとかではなくて、今ある状況を伝えることなのかなと思います。これからの社会はそうやって変わっていくような気がするんですね。もうある程度成熟していますから、大筋の問題でそんなに大きいものは残っていない。非常に平和な国で、ほとんどの人が衛生的な暮らしをしている。
なので、もし今本当に問題を抱えて生きづらい人がいるのであれば、ぜひ声を挙げてほしい。僕もそれを聞いて、共感して助けられることがいっぱいあると思う。声を挙げて、「困っています」と言うことが大事かなと思います。
質問者3:ありがとうございます。
水野:以前、青野さんがLGBTと選択的夫婦別姓の問題を一緒に考えようというイベントに出られていたと思うんですけど、けっこう悩んでいることが一緒だったり、生きづらさが一緒だったりすることがありましたよね。
青野:そう。本当に多くの人にとっては、自分が当事者でなければ興味が湧かないかもしれないんだけれど、そこに困っている人がいるということを知ればお互い協力できる。
そういう問題が例えば同性婚。同性同士が結婚できない、これはおかしいだろう、結婚したい人がいるんだからいいじゃない。その代わり、こっちで別姓が言われている。これは改姓しないまま結婚したいんですけど、それはそれでいいんじゃないのと。
こうして困っている人が情報を発信して、お互いに助け合うような流れが作れれば、もっと連鎖的にいろんな問題が解決していきそうな気がしているんですよ。
水野:本当ですね。ありがとうございます。その他、質問ございますか。
(会場挙手)
質問者4:働き方についてちょっとおうかがいしたいんですけれども、先ほどの石垣モデル、100個の100通りの組み合わせがあるという話を聞いて、素晴らしいなと思って非常に感動しました。サイボウズさんがその改革を進めていく上で、たぶん青野社長がリーダーシップを取りながら進めていったと思うんです。
それは最初から上手くいったんでしょうか? いろいろ上手くいかなかったことはあったと思うのですが、そこをどう乗り越えていくかとか。もう上手くいっているのであればそれでいいかと思うんですけれども、なにか課題があれば。
青野:はい。いやあ、もう今も問題が日々起こっていますよ。
(会場笑)
石垣経営をするときに、どうしても守らないといけないルールがあるんですよ。それはなにかといいますと、まずは公明正大。嘘をつかない隠さない。「自分はこんなかたちの石です」と、それを隠さずに言ってくれないと「お前、どんなかたちの石やねん」と。隠されたらわからないですよね。しかも嘘なんかつかれた日には、もうわかりようがないです。
ここは正しい情報を絶対に伝え合うんだと。それがこの石垣経営には大事なんだというベースがないといけない。これは意外と日本の会社にはなくて、本音と建て前で、なんか嘘ついて隠してとかね。それで死にそうな会社はいっぱいあります。
そういうことがあるので、この公明正大というベースを作るのが1つ。もう1つは、自立と議論という言い方をするんですけれど、自分が働きたい働き方ができていないときには、手を挙げて主張しなさいと。誰かが気付いてそれをやってくれると思うなと。だって、石の数なんてもう無限にあるんだから、1個1個把握できないんです。
それを「青野さん、どうして僕を見てくれないんですか」と言われたってわからないよ、という話です。それは手を挙げて言えと。自立の考え方ですね。僕はこういうかたちの石で、こういう仕事をしたいと思っていて、給料はいくら欲しいですと。
「こんなスキルを身につけていきたいと思っています」と言って、それを自分で選択していく。その自立がなければ進まない。これがまだ不十分なことによっていろいろな問題も起きたりします。例えば、これだけ働き方の選択ができるのに「青野さん、僕はいったい明日何時に出社してくればいいんでしょうか?」と。「知るか」と。
(会場笑)
迷える子羊が出てくるわけです。情報を隠したりすると、周りから信頼が得られなくて上手く働けないという人も出てきますよね。なので、その公明正大の基盤を合わせて作っていく。
そうすると、ごたごたしながらも、石垣なんて日々組合せをごちゃごちゃ変えながらなんですけど、ダイナミックに動きながら、ちゃんと組み直しがきくようなマネジメントができるんじゃないかなと思います。
マネージャーが一人ひとりのことを把握して、石を組み直してあげるというのは、僕はまだ不完全だと思っているんですよ。理想としては、もっと自立度が高まって、一人ひとりが「俺はこんなかたち。あいつとあいつとこいつと組んでこんなことやろう」と。そうやって自分で勝手に新しい石垣を組み上げてくようなもの。これが僕のイメージしている石垣経営の完成形ですね。まだまだそこまでは行けていないなあと思います。ありがとうございます。
水野:ありがとうございます。自分で組み上げていく場合には、社員の自立も大事ですね。
青野:そうなんです。これが日本人はまだトレーニングされていなくて。我慢しちゃうんですよ。言われたことを「はい、わかりました」と我慢します。「本当にお前のやりたい仕事はこれか?」と。
「働きたい時間帯はここか?」「給料はもっと欲しいんじゃないのか?」「場所はここで働けるんじゃないか?」と、それを主張する訓練をしなきゃいけない。わがままは悪いことじゃなくて、わがままを言わないといけない。
わがままを言うトレーニングをしなきゃいけない、それが自立ですね。なので、本当に日本人はまだまだトレーニングが必要だなと思って見ています。
水野:ありがとうございます。
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