2024.10.10
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【withnews books『平成家族』出版記念】サイボウズ青野社長と「これからの家族」の話をしよう 働き方・子育て・副業・夫婦別姓(全6記事)
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水野梓氏(以下、水野):子育てでいろいろ新しい発見があったということなんですけれど、最近学校に行っているというお話がありましたよね。けっこうwithnewsでも平成家族で不登校を取り上げたりしているんですよ。打ち合わせで青野さんが「学校があまりに変わっていなくて驚いた」とおっしゃっていたんですけど、どんなところが変わっていないんでしょうか。
青野慶久氏(以下、青野):そうですね。今、自分の子どもが小4と小2なんですけど、上の子が小学校に上がって見に行ったとき、40年前に自分が通っていた小学校とほぼ同じ風景だったんですよ。
先生が黒板にチョークで書いて、木の机と椅子が30席くらいあって、子どもがそこに座って、同じ方向を向いていて、時間割があって、給食をみんなで配膳していて。
「うおお。ここ、なんにも変わらなかったんだ」みたいな、ちょっと衝撃を受けました。なんというか、今のテクノロジーを上手く使えば、もっと一人ひとりに最適化できるはずなんですよね。
同じ授業をしたって、すぐわかる子もいれば、なかなかわからない子もいるわけで、それを同じペースで教えることは相当な無理があるはず。それにもかかわらず、一律的なやり方をまだ続けていることにけっこう衝撃を受けましたね。しかも、いまだにプリントが配られている。
(会場笑)
新学期とか始まるとびっくりですよね。いまだにわら半紙みたいな紙が配られて、あれは先生も大変ですよね。なんだか先生がかわいそうだなと思いました。
水野:もう少し学び方も多様になればいいなという感じですね。「ここ1つだけ」という選択だけではなくて。
青野:ええ、そうですね。人間はそのために、この40年間に相当いろんなものを生み出しているわけですよ。それがまったく使われていないという。いまだに竹槍で「えいっ、えいっ」とやっている感じですよね。「大丈夫か?ここ」みたいな。原始時代に戻ったような感じがありました。
水野:それでは次のテーマに。選択的夫婦別姓ということなんですけれども、これはwithnewsでも何回かちょっとご紹介させていただきまして。実は私も「なんで選べないんだろう」というのはすごく疑問で、この記事(「親が夫婦別姓、子どもの本音を聞いてみた『困ることはない。以上』」)を書かせていただいたんです。
選択的夫婦別姓があると、「子どもがかわいそうだ」という反論をよくいただくんですよ。この記事の3人の23歳の男の子たちなんですけれど、彼らはみんなご両親の姓が違うんですね。なので集まっていただいて、ちょっと本音を聞いてみようと思いまして。
そうすると、この見出しで一言なんですけど、「困ることはない。以上」と。「あ、やっぱりそうなんだな」「勝手にかわいそうと決めていたんだな」と学んだ記事をちょっと書かせていただいて。
あと、これはwithnewsではないのですが、先日青野さんが地元の今治で陳情された記事なども出ているので、ちょっとこのテーマでお話ししていければなと思います。
青野:昨日、朝日新聞がサイボウズの株価についても書いてくれましたよ。「サイボウズは冴えない」というタイトルで(笑)。
(会場笑)
水野:すみません(笑)。
青野:すみません、余計なことを言いました(笑)。
水野:裁判を戦って見えたこと、ということなんですけど、私もちょっと地裁の棄却はショックだったんですよ。どう変えていけばいいのか、青野さんはどういった構図で変えていけばいいと感じていらっしゃいますか?
青野:すごくシンプルに言いますと、最終ゴールは立法なんですよね。法律を変えれば制度ができますから、最終ゴールはそこに置かないといけない。立法する権利があるのは国会議員という人たちなので、彼らをいかに動かすか。
その動かし方は、もちろん選挙。彼らは選挙で選ばれますから、賛成している人だけ選挙で選べば変わるはずなので、やっぱりその前段階の世論を動かしていかないといけない。というわけで、今こういう啓蒙活動なんかをしています。
それともう1つは、先ほど訴訟のお話がありましたけど、司法からいくという裏技があります。これは三権分立で、裁判所には違憲立法審査権がありますから、この司法の権限を使って国会議員を動かすわけです。今はこの両輪を回そうとしている感じですね。
水野:私も夫婦別姓を選べるようになれば、ハッピーな人が増えると感じています。すごく大反対する人は、青野さんのTwitterなどにリプで送られている方もいらっしゃると思うのですが、青野さんはどう受け止めていますか?
青野:そうですね。実は、反対する人もいて当たり前だと思っています。世の中にはいろんな人がいますから。私もそれをサイボウズで学ばせてもらいました。私が「こういう会社にしたい」と言っても、「私はそうじゃない」という人をいっぱい見てきましたから。
だから、この選択的夫婦別姓についても、「どうしても私は受け入れられない」という人が世の中にいてもぜんぜん違和感がないです。なので、そこは少しでもご理解いただけるように知識を共有しながら、なんとか立法化へ持っていければと思っています。
水野:陳情とか勉強会もあったようなんですが、愛媛での地元での反応はいかがだったんですか。
青野:びっくりしましたね。今治は小さい町ですよ。ある意味保守的なところなので、このテーマについて興味を持ってくださる方があんまりいると思っていなかったんですけど、40人以上、しかもメディアもいっぱい集まって。地元のテレビ、愛媛県のテレビも3つ来ましたね。
(テレビ局が)3つ来て、3つとも流してくれたり、新聞も3つくらい書いてくれたり、反響が大きくてびっくりしました。
水野:実は地方にもそういう要望や声はあると。
青野:そうですね。私がお話しすると、「ああそうか」「そういえば自分の甥っ子が苗字が何回も変わって大変そうだった」という話とか。あと、娘さんをお持ちのお母さんが「実は娘がそのことで悩んでいて、結婚して苗字が変わるのが辛くて結婚をちょっと思い留まっているのよ」「でしょう?」みたいな。
けっこう身近にあるテーマなんですよね。なので丁寧にお話すると、共感してくださる方は多いです。
水野:先日は議員さんとも院内勉強会をやったということなんですが、ちょっとFacebookを拝見したら、反対するために行ったような方もいらっしゃったようなんですけど、その反応はいかがだったでしょうか?
青野:そうなんですよ。一昨日ですけど、議員会館に行きまして。国会議員の人を集めてくれるというので行ったんですけれど、もう自民党から立憲民主から維新の人からいろんな政党の人が30人くらい集まって、プラス秘書の人も入れると40人くらい集まってお話をしました。
その中にはいわゆる反対派の人も含まれていて。でも、話を聞いたあと「いやあ、反対しに来たんですけど、あの話を聞いて『これはありやな』と思いました」と言って帰って行かれて。
そうなんですよ。別にそんな反対するほどのことじゃないんですよね。なので正しい知識を持ってもらえれば、進むんじゃないかなと思います。
水野:SNSなども含めてですけれど、そういう反対をしている人を味方にしていくには、どんな社会に変わっていけば「みんなでより良い方向に」となっていくと考えますか?
青野:大事なのは、反対する人にもその人なりの理屈があるということですね。これを対立構造のかたちに持ち込むと進まない。平行線になるわけです。なので、まずお互いに正しい知識を共有しましょうと。
どっちがいい・悪いじゃなくて、「ここにこういう困った人がいて、こういうふうに法律を変えると、こっちの人はこう助かります。こっちの人も困りません。以上」「ああ、なるほど」みたいな。
どっちが正しい・正しくないじゃなくて、まず正確な情報を、お互いに持っている情報を共有する。私は、それが物事を進めるために大事な姿勢じゃないかなと思ってやっています。
水野:ありがとうございます。今回の働き方もそうですし、子育てや育休、選択的夫婦別姓もそうだと思うんですけど、今の日本は一律から多様になかなかシフトしない社会だとご指摘をされていましたよね。多様になっていくにはどんなことが必要だとお考えですか。
青野:まず、この多様についてちょっと語ると、英語で言うとダイバーシティなんですけど、実はすでに多様なんですよ。(会場を指して)ここにこう集まっていても、ものすごく多様です。
「同じテーマで集まった同じような世代です」と言われたらそうなのかもしれないですけど、生まれたところも違えば名前も違うし、育ってきた環境も違えば、好きなプロ野球チームだって違うはずです。
実はめちゃめちゃ多様なんですよ。それにもかかわらず、なぜかこれをカテゴライズして同じように見ちゃうから一様に見えているだけであって。そもそも、ここにいる人たちはすごく多様です。うちの3人の子どもでも、同じ遺伝子から生まれて、同じ環境で育っているくせにみんな違いますからね。
性格も顔もぜんぜん違うわけですよ。やっぱり、人間はもともと多様にできているんですよね。それを男とか女とか、〇〇人とか〇〇世代とか言っちゃうから、どんどん一様に見えてしまうだけ。なので、まずはすでに多様なんだという認識をベースにして始めた方がいいと思うんですよね。
なんだったら、一人ひとりの多様な個性が損なわれないように、その人がその人らしく生きられるように、選択肢を増やしていきましょうと。今までの社会だったら2つの選択肢しか渡せなかったけれど、新しい技術や制度や仕組みを使えば、選択肢がもっと増やせるじゃないかと。
選択肢をどんどん増やしていけば、どんどん自分に合ったものを選べるようになる。こんな感じですよね。人間はそうやって発展してきたと思うんですよ。たぶん今から50年前だったら、食べる料理とかも相当選択肢がしぼられていたと思うんです。「ご飯かパンか」ぐらいのね。
でも今は、いくらでも選び放題じゃないですか。服の柄だって昔は選べるものが少なかったのに、今はものすごくいろいろ選べるような。こうやって人間は新しい技術を活かしながら、自分たちで仕組みを進化させながら、どんどん自分らしく暮らせる社会に向かっているわけです。
それをいろんなところに適用していけばいいわけです。それができていないところがあるんであれば、進めればいい。もうすでに世の中は多様であって、それを認めていくだけじゃないのかなと思います。
水野:ありがとうございます。
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