2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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古田大輔氏(以下、古田):みなさんにもぜひ、(石戸氏の記事の)シェアとか手伝っていただきたいなと思うんですけれども。なんか……どう?
石戸諭氏(以下、石戸):僕も大事なところだと思います。僕は確かに数字で貢献できる人間じゃないんですよ。
(会場笑)
はっきり、自分でも思います。それなりにがんばってはきたけどれも、瞬間的に読まれて、だけど……っていうところがあって。
僕は川久保玲さんのCOMME des GARCONSの洋服がすごく好きです。川久保さん本当にすばらしいなと思うところは、彼女はすごく強いクリエーションと、すごく強いビジネスを同時に成立させてるところです。
強いクリエーションというのは、数字的には貢献できない強いものがあるわけですよ。1着何十万円みたいなものから十何万円のジャケットとか、そういうのを出してるんですけど。一方で、1万円切るようなポロシャツとかTシャツも、別ブランドでやってるわけですね。そこで、ある程度ビジネスを回してくものをつくりながら、常に新しいものを打ち出そうしている。
僕はこのバランスが大事だと思っていて。アーティスティックな強いものばっかりつくっていたら、それはビジネスとしては回らないでしょうと思う。だけど、同時にすごくポップなものをつくって、市場に流通させていくことで、ビジネスを回していくことはできると思います。
大事なのは、クリエイションとビジネスを貫く1つの軸があることです。この軸をぶらしちゃうと、「なんでもやってんじゃん」という話になる。儲けたいだけだったら、なんでもやっていいんですよ。軽くやったほうが読まれるからね、それは。
漫画の世界でもそうなんですけど、4コマ漫画とか、日常を描いたようなエッセイ漫画のほうが、すごく読まれると思うんです。共感を得やすいからですね。
でも、同時に、強い世界観を持ってちゃんとした作品が出てこないと、業界全体がしぼんでいく。ここが本当に大事なところだと思っていて、こっちだけでもダメだし、あっちだけでもダメなんですよ。両方が同時に並立しなくちゃいけなくて。それを、僕なら僕というメディア人、1つの人格のなかで、明確な軸というのは持っておきたいと思ってます。
もちろん数字を取るものも大事です。それはすごく大事です。その一方で、この本(『リスクと生きる、死者と生きる』)に書いてるようなものも、すごく大事だと思う。だから、その2つは同時にあるんだけども、その同時に貫く1つの軸があってはじめて、2つが成り立つんだと思ってます。
石戸:それは、さっき言ったみたいに「線を取っ払う」ということです。たぶん僕の原稿のいたるところに出てくる1つのフレーズなんですよね。主旋律みたいな感じです。そこはぶれていないと思っています。
でも、全部が全部そうじゃないんですよ。適当に書いたやつもあるし(笑)。「これでいいだろう」みたいな感じで、詰めが甘いまま、出しちゃったやつもいっぱいあるんで、それはそれで反省はしつつですね。やっぱり1つの世界観みたいなものを持ったものを、ニュースでやってみたいな、と思っています。
どこかでそうなればいいなって思うし。「僕は数字で貢献できない」とは言ったけども「わかる人だけわかればいい」って思って書いたものは1つもないです。
やっぱり物書きだし、こういうのをつくっていく側、創造していく側、クリエーションしていく側と言ったらいいのかな。そういう立場にいる人間としてやっぱり、必ず「届け」と思って書いてます。
それをぶらしちゃ、絶対ダメだと思うんですよ。
この本もそうなんです。やっぱ届けたいし、どうしたってもっと読んでほしいなと思う。そこは絶対ぶれない。「わかる人だけわかればいいや」みたいな立場は取らないです。届くものだっと思ってるし、もっともっと届けたいと思う。
だから、ここの最後にちゃんと入れたんですけど、BuzzFeed Newsのスローガンで「Reporting to you」というスローガンがあります。「あなたに届けるんだ」と。
僕、これは非常に普遍的なメッセージだと思ってるんですよ。あらゆる表現というのは、やっぱり私がいて、あなたに届ける。この現象はいつの時代もそうだろうと思うんですよ。その「あなた」というのは一体誰なんだ、ということは、やっぱり原稿を出す側としては常に考えるわけです。
このニュースを届けたい「あなた」は誰か、この本を届けたい「あなた」は誰か。僕は、これを明確に設定していて、誰でもいいんじゃないんですね。「誰でもいい」って設定しちゃうと、かえって薄まって誰にも届かなくなっちゃうんですよ。
石戸:(スライドの記事を指して)これは僕が書いたんですけど。原発事故なら原発事故でいいし、2011年3月11日から、「あの日からのことというのは一体なんだったんだ?」と考えたいんだけど言葉にできない人に向けて、明確にこれを届けたいと思って書いてるわけです。
その届けたい思い。僕から、「言葉にできない」という人たちに向けて届けたいという思いが、このなかにはあります。すごく古典的なんだけど、たぶん人間が変わらず持ってる表現の形態みたいなものが宿ってると思うんですよ。
その宿ってるものをもっと洗練させていきたいな、と思ってます。インターネットはそういうところにも可能性があるし。そこを洗練させていくことで、数字も大事なんだけど、数字以上に大事なものを打ち出せる。
読んだ人が「自分の生き方、考え方に影響がありました」と言ってくれることが、僕にとって一番大事なことで。そういうものも大事にしたいです。
やっぱり数字の先にいる人に届けたいというのがあります。ただ画面越しに読んだというんじゃなくて、その人の、読んだ人たちの心のなかまで届けたい、みたいな、そんなことをいつも考えてます。
古田:Q&Aの時間に入ってきたので、みなさんから質問を集めたいんですけれども、質問ある方。どうでしょう?
(会場挙手)
古田:はい、どうぞ。
質問者1:名前とか言うんですか?
古田:いや、いいですよ、もう。
質問者1:石戸さんの非常にスイートなトーク、感動いたしました。ありがとうございます。
石戸:(笑)。
質問者1:でも、あえてチャレンジいたします。最初に「正しさや、わかりやすさを信じる人の危うさ」という話がありました。ここに対して、逆に私はチャレンジしたいんですけれども。
正しいことが「いや、それは他にも真実があるのではないか?」というふうになってしまう。じゃあ、いろんなものを提示したら、逆にわかりにくいから「やっぱりそれは嘘なのではないか」という話になりやすいのではないか。
もうちょっと詳しく話すと、原発事故の時に、そこの問題ってけっこう……。「低線量の被ばくがやっぱり危ないんじゃないか。だから……」というふうになりやすいし、じゃあ、難しい数字を出したからといって、人はわからなくなるから。私はいつもそこで悩んでいるんですけど、石戸さんはそこの危険性などについては、どう思っているのかなと。
石戸:それ、僕も悩んでるんですけど、やっぱりみんなを納得させるというのはすごく難しいゲームだと思っていて。みんなを納得させるのは難しくても、「最悪ここまで」とか、最低限……。例えば、「政策に反映されなければいいな」「こういう考え方で政策が組み立てられなければいいかな」「社会的に影響が及ばなければいいな」ぐらいラインは設定しておこうかなと思っています。
石戸:「正しさ」というのは、いろんなレイヤーがあると思うんですけど。科学的なファクト、事実の部分は大事にしなきゃいけない。それは、そのとおりなんですよ。
なぜかというと、これ、検証できるからです。検証可能な領域のなかで検証できるものは、すごく大事にしたほうがいいと思います。この本に書いてあるのは、データは大事だけど、データだけで語れないことがあるという話なんですね。
本に書いてあるいろんな人たちは、データとかをすごくよくチェックしてるし見てるけど、でも、納得というステージに行くまでには、すごく時間がかかってる。そういう人たちの姿が、この本のなかにはいっぱい出てきます。僕は、納得の過程というところまでもうちょっと丁寧に見たい、と思ったんですね。
科学的な正しさだけなら、いわゆるリスク論的なものを書くという方法もあったんですけど。それはやらなかったですよね。科学的な正しさを伝えていく時に、どうやって伝えていくかが、すごく大事になってくると思っていて。
その伝え方の1つは、人がどういうふうに科学的なものを受け取り、納得していくのか、その過程をちゃんと丁寧に伝えていくことです。数字だけドンと押し付けられても、「わかんない」という人は出てくるだろうし、当然いろんな解釈も出てくると思うんです。
だから、「正しいからいいんだ」ということに違和感がある、ということですね。「正しければそれでいい」「正しいものを理解しなければいけない」と思うことへの違和感。
質問者1:わかります。
石戸:僕は科学的な正しさを否定しているわけではないということは、すごく言いたいですね。
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