2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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ジャン=ポール・カルヴァーリョ氏(以下、カルヴァーリョ):ここでフォーカスしたいのは、アイデンティティの役割に関してです。今までとは、少し違ったところに焦点を当てていきたいと思っております。
社会分類は、役割と捉えることができます。それぞれに課された役割です。役割というのは、アイデンティティに紐づいていきます。これによって、我々のアクションに条件付けがされていきます。例えば、ある社会カテゴリーがあり、その社会の中の振る舞いに対して、ある特定の思想や批判が抑圧されているとします。そうすると、それらの規範、あるいは期待に添うように、自分たちの行動も変化していくはずです。
これが基本的な原則として適用されていきます。例えば、アイデンティティAがあったとします。アイデンティティBも。アイデンティティAは、選択Aにつながっていきます。そうすると、個人はこの社会カテゴリーに基づいて振る舞いをしていきます。Bに関しても同様です。社会のアイデンティティに基づき、AとB双方がある特定のものを選んだとします。それは、その社会アイデンディティが強制する、規範や期待に基づいての行動です。
そのうちの1つの事例が、ジェンダールールです。男性・女性と分けられた場合、ここにはある期待のノーム(注:行動規範)、または社会的アイデンディティがあります。これまで一般的には、男性が稼ぎ、そして女性は家庭を守ると考えられてきましたね。
けれど、この考え方は崩れつつあります。必ずしも我々が期待するほど早いスピードではありませんが。そして、社会的アイデンティティが変わることによって、職業の選択、労働の仕方が変わってきます。ここまでが、男女間の役割の差です。
ではもう1つ、宗教を例にあげていきましょう。(スライドを指して)ここにベールがあります。いろんなタイプのベールです。特にイスラム教徒の女性が身につけることのあるベール。さまざまな形のものを写真で映しています。1番厳しいタイプのものが1番右です。
こういったベールを被ることによって、ある特定の社会分類の中に自分自身を置くことになります。ベールを被るということは、非常に敬虔なイスラム教徒だということを示すことになるわけです。
そしてまた、それを実行することにより、宗教的に厳しい環境に自分を置くということになります。これは、自分の行動にも影響を与えていきます。公の場でなにか行動をする時に、どのような行動をするべきかというノームに縛られるということです。
これが宗教です。ベールを被るというのであれば、より宗教の信念を持っているように振る舞わなければなりません。けれど、被らないという選択肢もあるわけです。こういったことは、フレームワークの観点からきています。
これはジョージ・アカロフとレイチェル・クラントンの研究がもとになっています。ジョージ・アカロフは、ノーベル経済学賞を受賞された方で、この2人がアイデンティティ経済学を最初に作り上げました。それでは、アイデンティティ経済学は、私たちの時代にどのような課題を投げかけているのでしょうか。
非常に包括的な組織を作る、または多様性を認める社会を作るときに、社会的な受動性はどのように変わっていくのでしょうか。西洋のアメリカと日本では、これまでほかの先進国とはずいぶん違う経験をしてきました。
女性の労働市場に対する参加も、非常に大きな影響を与えます。それでは、我々はどのような課題に直面していて、こういったプロセスの変化はお互いにどう影響しあっているのでしょうか?
(スライドを指して)これが、20世紀初頭の女性の労働市場への参加です。たぶんこれまで起きてきた社会的現象としては1番大きなものでしょう。実は、1948年以降、1900年に比べると、アメリカにおいて15歳以上の人の6パーセントの女性しかお金をもらって仕事をすることはありませんでした。
ところが、20世紀末には62パーセントにまでなりました。これにより、社会は劇的に変わりました。影響は、経済的な変化ではなく、労働価値の変化や、女性の労働参加率の変化というかたちで現れてきたのです。
このような変化は、女性のアイデンティティ、そして役割も同時に変わってきたということを意味します。1900年代において女性というのは、家にいて母親でなければならないとされていました。上司や、有権者というポジションは期待されていませんでした。しかし、そのあと経済や政治にも参加できるようになってきました。
もし、このプロセスが止まってしまったら、どうなるでしょうか。今、フォーチュン500社のうちのCEOになっている女性の割合はほんの5パーセント以下です。また、理工系の分野においては全社員のうち女性は25パーセント以下しかいません。
この点を考える際、次のような推測が論じられることがあります。1点目は、男女間には本質的な差があるということ。それから2点目は、昇進の際に男女間に差がでてしまっていること。
アイデンティティ経済学について説明していきましょう。つまり、ある女性というものに対するノームや期待が、経済的な活動と一緒に変わりつつあるということです。科学という分野における、女性の参加率が高くなるにしたがい、これまで男性が中心であった科学者の役割がだんだんと変わってきました。
それから、これらの職業の定義そのものが変わってくることになります。そして、ある特定の分野において女性の参加が増えることで、分野自体が変わっていくことを意味します。
例えば、私が今仕事をしている経済学という分野では、女性の参加率がまだ低いと言われています。これは、もしかしたら経済学のノームが女性に対して厳しいものになっているからかもしれません。そして、そのノームがこの分野において、女性が参加することを阻害している可能性もあるわけです。
参加率が低いことは、ある特定の期待を満たすということがなかなかできないということを意味します。これは、非常に大胆なプロセスだと言えます。私は今、マーク・コヤマと共同で研究を行っています。けれども、このプロセスがあったからといって参加率が平等になっていくというわけではありません。
1番最初は、数学公式を使って計算できます。しかし、1番最初は女性の参加率が非常に低いという、不平等な状態から始まっております。
そこで、一時的なアファーマティブ・アクション(注:積極的に差別を是正する措置)を行います。女性の参加率はそのときに上がります。ある特定の条件があると、これを永遠に変えることができます。これがその例です。
しかし、別の場合には実行できません。つまり一時的なアファーマティブ・アクションでは状況は是正できないということを示しているのです。女性が労働市場において参加率が低いということになると、どうしてもアイデンティティ上の問題が出てきて、また差別も受けやすいということになります。
だからこそ、成功した女性のロールモデルが非常に重要になっていくのです。そしてまた、女性のためのメンターも同時に重要になっていきます。それができるようになれば、つまりここにあるダイナミックなプロセスの原理がわかれば、よりこの状況を平等なものに変えていくことができるわけです。
続いて移民です。これは、イギリスにおける移民の比率です。EUからイギリスに入っていった移民の数を示しています。とくに、西洋の移民の例です。
国に対して移民が増えることにより、その国のアイデンティティの危機が起きたと言われています。それから文化的同化、また移民への統合と言う点に関しても、問題が起こりました。ベールを着用する、または着用させないといったことが文化的な軋轢の象徴でもあります。
フランス、ベルギー、一部のオランダ、イタリア、スペイン、スイスそしてロシアといった地域は、ベールを禁止しました。私はこの問題に関して、2013年に文献を書きました。その論文を書いていたときに、さまざまな討論が行われていました。このベールというのは象徴的なもので、起こっているのはモラルの問題だという議論が大きかったわけです。
しかし、私はあえてこの問題を客観的に分析するよう努めました。ここでは、3つの疑問を提示しています。なぜ女性はベールを被るのか? それからなぜイスラム教徒の女性は1970年代からベールを被り始めたのか? 例えば、エジプトにおいても80パーセントの人たちが今はベールを被るようになりました。1920年にはベールを被らないというトレンドがあったのに、それがもう1度反対にベールを被ろうという傾向に変わってきているわけです。
そして3番目に、もしベールを禁止したとしたらどのような結果が生まれるのか? ということです。ベールを被るということには、いろいろな理由があります。この新しいベールの現象を見てみると、これまでとは違うタイプの理由が見えてきます。教育レベルの高い都市部に住む中流階級の女性たちが、ベールを被り始めたのです。したがってこのベールは、アイデンティティ経済学と非常に緊密な関係性を持っていると考えています。
ベールを被ることによって、その人はある特定の期待それからまたノームに対して救われていくことになります。コミュニティの中でベールを被るということは、ある意味を持ちます。そのコミュニティに従事しているというだけではなく、コミュニティに対して「ベールを被る」という決心をしているのだと、明確に意思表現ができます。
なぜ、ベールを被る女性の数が増えているのか。ベールを被る人が増えていると同時に経済的な参加率も増えています。教育のレベルも高くなっている。労働市場でもより参加できるし、また都市の環境において相互作用のパーセンテージも上がってきています。
これはセルフ・モニタリングの外であったとしても、ただ単に宗教的なものだけではない。女性たちはこのチャンスを捕まえて、そして同時にコミュニティの中での誇りを失わずにベールを被り、経済的な参加をしている。同時にまた保守的なコミュニティの中での立場を守っているということになるわけです。
したがって、ベールを被るということは決して退化ではないということになります。一部コミュニティに対して、同化をしようとしているということの象徴かもしれません。そうなってくると、ベールを禁止することの考え方が変わってきます。ベールを禁止することになると、今度はコミュニティの中においてなんらかの代替案を考えなければなりません。
さらにこの数学的なモデルを宗教的な好みということで見ていきましょう。私が論文で触れたように、ベールを禁止することは、このコミュニティの中において、より特定の宗教に対する偏見が強まる可能性があるということです。これはある特定のメカニズムに従っています。
このコミュニティを統合し、ベールを禁止することによって世俗化しようという試みは、実はその反対方向に針を振ることになってしまいます。したがって、これらのさまざまなアクションには、社会的そして数学的な解析が必要となります。その結果に、十分に注意を払うべきなのです。
これはあくまでも理論ですが、社会学者たちの研究によってこの理論が正しいことが証明され始めています。とくにさまざまな国、中東とかベルギーとかそういったところでベールの禁止をすると、それだけ彼らは近代的な影響をより受けるようになるのです。
伝統的なものではなく近代的な影響を受ける。都市化であるとか教育であるとか、それから非イスラム教徒との間のインタラクションといったものの影響を受けるのです。それに対して、ベールはコミットメントのメカニズムなのです。そして、経済学的なチャンスを捕まえるという意味でもあるわけです。
経済学はこのソーシャルアイデンティティという側面を盛り込むことによってよりリッチな研究ができるようになります。より包括的な見方ができるようになりますし、私たちはいろんなかたちで個人として社会的生き物としてアイデンティファイできるわけです。
ソーシャルグループとかコミュニティの一員としてアイデンティティを築くことができますが、この社会的分類とは私たちの行動、振る舞いに制限を与え、制限といったものを使うことによって社会的なアイデンティティといったものを明確に打ち立てていくものになるということになります。
どうもありがとうございました。
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