2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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田中俊之氏(以下、田中):『相談は踊る』(注:ジェーン・スー氏のラジオ番組)を聞いていると、自分がわからないことは、「専門の方いらっしゃいますか?」っていう投げ方をするじゃないですか。僕はあれ、すごくいいなと思っていて。
ジェーン・スー氏(以下、スー):効率優先なので(笑)。
田中:結局リスナーさんっていろんな人がいらっしゃいますから。
スー:そうなんですよ! すごいプロの方から返事が来て、本当によかったなと思うことがたくさんありました。
田中:そうですよね。僕、そうなんだって思ったのが、「タクシー、ワンメーター乗って大丈夫ですか?」みたいなときも、運転手さんに聞けないじゃないですか。「タクシーワンメーターって、本当に気にしてないですか?」とか言えないじゃないですか。だからあれすごくいいシステムだなと思って(笑)。
スー:ぜひぜひみなさん、相談あったら。もうすぐ終わりますけど。(注:『相談は踊る』は2016年4月11日からTBSラジオ『生活は踊る』内コーナーに移動)
田中:こういう本を書いていたり、タイトルがそもそも『男が働かない、いいじゃないか!』とか、男性学というのはやっぱり今の男性の働き方に対しては、否定的なのです。
否定的というのは、仕事が人生のすべてになってしまっていることに対して否定的なんですね。一生懸命に働くことを否定しているわけでは全然ないんです。その点は勘違いしないでいただきたいと思います。
なぜ仕事ばかりしていて、趣味ありません、友達いませんという男性を否定するかというと、僕は本人のためだと思っています。仕事してると気づかないんですけど、趣味がないとか友達がいないということのデメリットに。
でも定年したらみんな何もないわけです。今までは週5日10時間会社に行っていたから、ごまかしきれていたものが、急にやることもない、会ってくれる人もいないってなっちゃうし。人間ってそこから20年生きていくんですよね。
スー:そうなんですよね。難しいですよね。
田中:僕はそこに備えてくださいということだけではなくて、人生って会社以外、今、このときも会社以外の人生があってもいいと思うんですよ。せっかく生きてるんですから。楽しめればいいなと思ってるので。
仕事を否定しているというわけでは全然ないですし、一生懸命働くことを否定しているわけでもないんですけど、仕事だけになってしまうことは、ご本人にとってデメリットがあるんじゃないですかと。
第1章って読む人によって、とくにすごく仕事にコミットして働いている人にとっては、「なんだこいつ」みたいに思うかもしれないんですけど、そう思う気持ちがあればあるほど、仕事と距離が近すぎるんじゃないかなと思っていただきたいですし、後半になれば、具体的に働くって、本のなかでどうしていくかという話も出てくるので、ぜひそこは読み進めてもらいたいなと思いますね。
僕自身、仕事をしていてよかったなと思うことはいっぱいあります。ただ、ここ2、3年ですから、男性学というのが世に受け入れられてきたのは、もちろんたくさんの苦労もありました。
スーさんにもお話ししましたけど、男性学をやっていますと言うと、「もっと経済とか政治とか大きな大事な話があるだろう」とか、「そんなことやって何になるの?」みたいな嘲笑は、はっきりいってあったんですね。
男性の仕事中心の生き方を見直そうという話って、ここ最近通るようになっただけで、それまではそんなことありえないという話だったので、やっぱり通りにくかったというのがあると思うんですよ。
スー:大きな話をしなきゃいけなかったんですよね。男性はね。
田中:そうです。男性はやっぱり政治と経済とか、社会の動きとか、日経新聞とかチェックしながらそういうものを追っていく。それが男にとっての大事なことで。やっぱり生活というがごっそり抜け落ちちゃっているということなんだろうなと思うんですよね。
田中:そういえば、今度の番組って『生活は踊る』というタイトルになるんですよね。
スー:そうです。4月11日から始まります。スムーズな番宣ありがとうございます!(笑)。
田中:いえいえ(笑)。だから、『生活は踊る』を聞けないわけですよ。全然生活が踊らないわけで(笑)。おかしな話だと思うんですよね。
スー:そうですね~。自営で商売やってお店とかやってる人なんかはラジオを付けてても大丈夫なんでしょうけど、いわゆるサラリーマンという方は。
サラリーマンのときに男性を見ててつらいなと思ったのが、結局尽くして尽くして、会社も上司も「お前だから見込んで」とか言うんですけど、実際には全然見込んでもないし、切るときは余裕で切るし、差し替えなんて全然できるんですよ!
でも、それは当然で、会社として人員の差し替えがきかない会社ってダメな会社ですから、その人がいなくなっても、歯車が止まらないようにしておくのが良い会社なので。
田中:まさにおっしゃる通りですね。
スー:にもかかわらず、「俺が辞めることに対して誰も止めない」とか、「悔しがってくれない」とか。グルッと回って、「俺が辞めたあと、うまくいかなければいいのに会社」みたいな(笑)。いやいや、ないからっていう!
やっぱりそれは距離が近すぎちゃってるのと、ある種、そこに対してすべてを捧げちゃってるんですよね。女の私だって、もちろん辞めるときにみんなが惜しんでくれたらいいなとは思いましたけど、そこまでじゃないのは、期待されていないことが節々でわかるからですよ。
毎日の場面場面で、会社の将来を担う構成員としては期待されてないというのがわかるので、こちらも過剰な期待を会社にはしない。「お。来たね、敗戦処理」みたいなのがあって、それをちゃんとレシーブ返したりすると「おぉ!」って驚かれたりする。
田中:なるほど。なるほど。
スー:皮肉なことと背中合わせなんですよね。期待されているから男性は頑張っちゃうし、女は頑張るのはいても会社のためだとは思ってないと思うんですね。自分のためとか人生のためとか。
「女は」というと、今、語弊がありましたね。少なくとも、私は。そういう個人主義の人が周りにも多かったし。
田中:女性の場合、本にも書いたんですけど、女性で有能な方が上がっていったときに、「あの人は女を捨ててるよね」とか、「女じゃないからああなってるんだよ」っていう。
本当は個人差のほうが大きいにもかかわらず、ざっくりした二分法的な目線、男だから、女だからということで処理したいんですよね。
スー:先生の本で今回一番響いたのが、「誰かが悪者になっているときは、その裏で何が普通とされて、何を肯定する力が逆に働いているか」ということだったんですけど、それは本当に確かにその通りだなと思いました。
田中:今回は、新書なので一般の方に読みやすい形と思ったんですけど、理論的なバックボーンとしてどういうものを書いておかないとご納得いただけないかなと思いましたので、男性学だけではなく、社会学や社会心理学の理論をわかりやすく解説しました。
たとえば、スーさんがおもしろいと思ってくれた箇所については、無職ということがこんなに否定される男性の背景には、無職を否定して、男は働くのが普通でしょという、このルールを肯定するというカラクリがあるんじゃないかということなんですよね。
スー:そこを暗に共有するという。で、ある種、そこから外れるのを許さないというタガにもなりますしね。
田中:このカラクリの変なところは、「どうして働くことは正しいの?」ということは答えなくていいので、巧妙なんですよね。「だって働かないのって恥ずかしいじゃん」って言っているだけで、「なんで働くんですか?」とか、「働くことにどんな意味があるんですか?」ということに、実は何も答えないでも済むという、そういうカラクリもあるので。
こういうことを個人レベルでやっていくとキリがなくて、人を否定して、自分を肯定するということが癖になっちゃっていくと、比較から抜け出せないということが、僕は男性が生きていく上で一番つらいことなのかなと思います。
繰り返しになりますが、僕自身、仕事にやりがいを感じていないわけではないということで言えば、だってそもそも僕、この仕事をやっていたおかげでスーさんとトークイベントをやらせていただいているわけですからね。役得ですよ……。
(スーさんの)そもそも、スーさんのラジオを毎週、欠かさずに聞かせていただいているんですけど。
スー:ありがとうございます。
田中:ラジオを聞いている人って、勝手に親近感がわくので、スーさんとしゃべってる気分になっているんですよね。しゃべるのが夢だと思うんですよ、直接相談したり、会話するのが。僕はそれをやらせていただけているわけでして。
スー:ありがとうございます。こちらこそ。
田中:これは、僕が自分なりに頑張って、本とか出させていただいて。なんでスーさんと接点があるんだろうなと思っている方もいらっしゃると思うんですけど、そもそもの話をするとですね。
2012年の秋に男女共同参画のシンポジウムで、グループウェアを作っているサイボウズという会社の青野慶久社長とお会いしまして、サイボウズという会社の独創性については本にも書いてあるのでぜひご覧になっていただきたいと思うんですけど。
多様な働き方を取り入れているということと、僕がすごく画期的だなと思ったのは、社員の評価に対して、市場性で評価していること。つまり、この人が転職したらいくらになるかということで、評価の基準が年功序列でもなければ、勤続年数でもないんですね。
この人が外に行っちゃうよとなったときにいくらで決めるか。そうすると会社とその人の関係ってピリピリするじゃないですか。従業員は会社に雇っていただいているみたいな感じではなくなるので、すごくいいなと思っていて。
僕は、いろんな働き方が男の人でもあったらいいなと思っているので、サイボウズにすごく興味を持ちましたし、青野さんも男性学というものにすごく興味を持っていただいて。
サイボウズって自社メディアを持ってまして、『サイボウズ式』というメディアがあるんですけど、それで僕と青野さんが対談させていただいたんですね。それをスーさんが読んでいただいて、「男の人のこういう話を聞きたかったんだ」と。
スー:そうです。そうです。
田中:青野さんと語り合ったのは、今日ずっとしてるような話です。その対談にスーさんがご興味を持っていただいて、さらに、青野さんが、「ジェーン・スーさんとぜひ対談したらいかがですか?」というご提案をいただきました。14年7月28日に僕とスーさんの対談はサイボウズ式で公開されているんですけども。
これすごいですよね。3時間くらい話してましたよね。
スー:そうですね。お話ししましたね、あのときは。
田中:そのときは、スーさんの『わたプロ(私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな)』を読ませていただいて、男性の側のしんどさをここまで、わかってくださっている女性がいることに衝撃を受けました。女性の立場だから男性の人生は経験できないわけじゃないですか。
にもかかわらず、うまく咀嚼して、こういうところをわかってあげたらいいのにねみたいな提案をされていたんですよね。だから、すごく話もはずだのかなと思うんですけど。
スーさんとの対談は計5回分あって無料なので、もしよろしければ読んでいただきたいなと思うんですが。
スーさんとトークイベントをやれるという場に来れたというのは、一生懸命仕事をして、たまたまラッキーなこともあってということなので。言いたかったことというのは、仕事をするということを否定しているわけではないです。ただ、仕事が人生の全部になっちゃうのってどうなんですか、ということ。
スー:私は、それが我が事として非常にビリビリきてますね。仕事が好きで好きでしょうがなくて、プライベートと仕事の境目というのがほとんどないんですよ。
田中:今なんかとくに執筆されているから忙しいですよね。
スー:そうですね。今日あった出来事が、明日の書くことになったりするような生活をしているので、(境目は)全然ないので。だから本の中にあった比較的ドライな会社との付き合い方、働き方みたいなのがあるじゃないですか。
あれができるとすごく楽ですよね。私は個人事業主みたいになっちゃったので、そうは言ってられないんですけど。でもよく怒られます。「稼ぎ手至上主義だ!」と言われることがありますね。態度に出てるみたいですよ(笑)。
田中:いやいや、そんなことはないと思いますよ(笑)。
スー:親にも言われますし。
田中:素敵なお父さま(笑)。
スー:老いた父を援助してるのに、うるせぇ(笑)。
田中:(笑)。
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