2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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ジェーン・スー氏(以下、スー):多くの人がすでに指摘していることですが、「男社会!」と言っても、それは「一部の男性にとってことごとく有利な社会」でしかない。そのシステムからこぼれ落ちてしまう男性と私たちは、実は仲良くしていかないと、システムは絶対変わらない。
先生にも前言ったのは、男の社会で男のシステムからはみ出てしまった男の人がどこで鬱憤を晴らすかというと、自分より弱者に対してなんです。そうすると狙われるのは、女、子ども、猫! 良くない!
犬はちょっと怖がられてそんなでもないですけど、女、子ども、猫。残忍な猫の事件、たくさんあるじゃないですか。あの犯罪者たちがなんのストレスも抱えていないわけがないんですよ。
自分より弱いものにあたってストレスを発散する場合がある。そうすると、やっぱりこっちに来ちゃう。「いやいやいや、そっちの問題はそっちで片付けてくれ」というのはありますよね。
田中俊之氏(以下、田中):そういう意味でいうと、無職で悩んでいて、久々の仕事でドキドキしている人に対して、この本は少しはお役に立てそうですよね。
スー:最初はすごく抵抗するんじゃないですか?
田中:あ〜、そうですかね。
スー:誰と戦っているかって、自分の中のマッチョと戦っているわけだから、自分の中のマッチョを倒すのが一番大変なんじゃないですかね。それは、私の中のフェミニンなところと思い込みと、私が戦うのが一番大変なのと同じだと思うので。
田中:なるほど。でもそれは、『貴様女子』にも書かれていたように、別に「女らしさ」を否定する必要もないんですよね。うまく折りあっていくということが大事なのかなと思います。
僕自身、男性学をやってますけど、僕自身の男らしい部分というのはないわけでもなければ、むしろ僕、ちょっとこだわっちゃうところもあるんです。そういうところがあるよ、と自覚できることと、何に苦しんでいるのかもわからないという間にはすごい差異があると思うので、この本をそういうきっかけにしてもらえれば。
スー:そうですね。まずは、さっき言っていた人たちは、もうちょっと田中先生が世の中を変えてから、ようやく土から頭を出してくると思うんですけど。様子を見に。
もう少し手前のターゲットにしている若い男性は、やっぱり親の姿を見て、相当ハテナが出てると思うんですよね。リストラをされた親とか、こんなに働いてるのに、うちにはお金がないからという話が出てくるとか、たぶん大きいハテナがちょこちょこ出てきている20代の子ってたくさんいると思うんです。そういう人たちには相当刺さるんじゃないですかね。
田中:その子たちが大人になって働いていくわけですもんね。若い人たちが上の世代の働き方に疑問を持って働くのと、仕事をするしかないと思って働くのとでは、社会の未来はだいぶ違うかなと思います。
スーさんが『貴様女子』で書いていた、「男は外で稼いで家族を養う」というのが上の句で、それに対する下の句というのはなんだろうというと、「女は早く家庭に入り専業主婦として子どもを育てたほうが幸せだ」というのがセットになっちゃっている。
スー:そうなんですよ! 男は外で稼いで養ってナンボでしょっていうのを、私はぜったい肯定できないんですよ。なぜかと言うと、それを肯定すると、私が家に入らなくちゃいけなくなる。それは非常に嫌です。
本当に申し訳ないですけど、私が田中先生をすごくプッシュしてるのは、田中先生の言葉が広まると私にとって都合のいい世の中になる。それが一番です!
田中:知らなかったですね(笑)。
スー:実はすごく私利私慾で動いている!
田中:そうでしたか(笑)。
でも、今スーさんが言ったことは本当に大事なことで、自分が男性に「男らしさ」を期待することによって、自分の生き方も「女らしさ」というパターンにはめてしまうということですよね。男の人が「やっぱさ、女は家庭に入って早く子ども産めばいいんじゃないの」って言い放った途端に、「じゃあ俺は40年フルタイムで働くよ」ってなっちゃう。
スー:そうです。そうです。返す刀でってことになるので。
やってきた人が言うのは、気持ちはわかるがちょっと黙っててくれないかって感じなんですけど、「嫁さんのほうが稼ぎが良かったらちょっとヘコむな~」って話を比較的リベラルな若い人から聞くと、やっぱりギョッとするというか。「おぅ、おぅ、そうか……」となります。
田中:今回、『男が働かない。いいじゃないか!』という男性が働くということの固定観念に挑戦した本を書いたわけなんですけども、これは男だけの問題でもありませんし。さっきからスーさんがおっしゃっているように、女性の生き方がどうかということともセットだし。この問題の当事者って、全員ですね。
スー:先生が中で書いていらっしゃった、多様性を認めるということが今一番大事で、働きまくってもオッケー、そんなに働かなくてもオッケー、それは性別じゃなくて、「私」が決めるということですよね。
田中:はい、そうです。そんなに本の内容には踏み込まなかったんですけど、これからお読みいただけると思うので。今、言ったような話をさらに詳しく書きましたので、ぜひ楽しんで読んでいただければと思います。
50分という時間だったので、あっという間に経っちゃいました。
スー:あっという間でしたね!
田中:ありがとうございました。
スー:ありがとうございました。
(会場拍手)
司会者:ありがとうございました。まだ10分ほどございますので、ぜひ質問をと思うんですけど、どなたかいらっしゃいましたら手を上げてご質問いただければと思います。小さい会場なので、マイクがないので、ちょっと大きな声でお話しいただければと思います。めったにない機会ですので、ぜひご質問いただければと思います。
スー:ふふふ。だいたいこういう時に手を挙げる人はいないんですよ(笑)。あ、いた! ありがとうございます。
質問者1:今日はありがとうございました。あまりパブリックな場で、話しづらいかもしれないんですけど、ご自身は実生活でパートナーとどういうふうにバランスをとったり、付き合ったり、依存したりしなかったりというようなパワーバランスでやってらっしゃるのかなと思って、そのへんを伺わせていただければと思います。
田中:僕は去年結婚しまして、今、2ヶ月の子どもがいるんですね。
この本の中でも「産褥期」という言葉を紹介しましたが、多くの男性は知らないんじゃないでしょうか。産後2ヶ月くらいまで、女性は体力的にも元の状態には戻らないし、メンタル的にも不安定です。
僕、今は大学が春休みなので、三食全部作って、子どもをお風呂に入れて、家事はほぼなんでもやりながら研究や執筆をしているます仕事よりも家事・育児優先で生活しているのは、僕にとって自然なことで、どうして自然なのかと言えば、男性学という学問を研究してきたおかげだと思います。
「産後クライシス」という言葉もありますが、実際に産後を経験してみて、思うこれから子どもを持たれる男性の方は覚えておいたほうがいいと思うんですけど、子どもって育つんですよ、わりと元気に。奥様のほうが……奥様って、僕と妻の上下関係がバレちゃったとおもうんですけど(笑)。妻のほうがケアがかなり必要で、体力的にも精神的にも、それをどうするかがいま一番の課題ですね。
今回、僕、怖いなと思ったんです。2ヶ月の間、産後の妻と一緒にいて。一般の家庭の男性って育休取らないわけじゃないですか。こんな体力的にも精神的にもボロボロの状態の人が、赤ちゃんの面倒をみて、なんだったら夫にご飯を作ったりとかするんですよね。
僕の場合は、自然と家事・育児をしたいと思ってやってますし。男性学やってるからキャラを守らなきゃと思ってやってるわけじゃなくて(笑)。自然にそう思えるようになったのは幸福でしたし、でも、そこまでしても足りないんですよ。はっきり言って。赤ちゃんがいて、産後の女性がいて、実家で暮らしてないということはとんでもない重労働です。
世の男性とか、育児休業なんか認めないよとか言ってる上司は、そのことについてどう考えているのかなと。女性の我慢で成り立っていることが、この社会はめちゃくちゃ多いなと実感していています。
こういう学問やってる以上は、言ってることとやってることが違うのは、一番違うと僕は思っております。それでもうまく全部できるわけではないですけど。言ってることとやってることは違わないようにしたいなと思っております。
スー:パートナーとの関係性ということですよね。
質問者2:質問というか、解決してほしいことがあるんですけれども。今回のトークイベントがあったので、この本は今日もらったんですけど、別のお店で立ち読みをしてたんですね。
そしたら、お休みの日だったこともあるんですけど、ちっちゃい女の子、たぶん小学校3、4年くらいの子が、「『男が働かない、いいじゃないか!』調子いいよね!」って言って通り過ぎていったんですよ。
なんかそれで呪いかけられちゃって! この呪いはどうやって解いたらいいでしょうかね?
田中:いや~すごいんですよ。だから。男が働くのが当たり前だというのが。
僕の知り合いのフリーライターの方でも、親戚の男の子と平日の昼間に遊んでたら、帰ったあとに、「お母さん、○○くんはけっこうお金はあるっぽいんだけど、なんで働いてないのかな?」って言ってきたらしいんですね。
平日の昼間はいない、働くというときに、別に会社で働かなくてもいいわけじゃないですか。
スー:そうですよね。会社に属することだけが「働くこと」ではないですよね。
あと、仕事もしない、家のこともやらない、何もやらないだと問題だとは思いますけど、ほかにやっていることがあるのであれば、別に無職ですっていうこと自体はそんなに後ろめたく思わなくてもいいんじゃないかなと思いますけどね。
質問者2:たぶん男の子とか、成人した女の人が同じことを言っても、たぶんグサっとこなかったと思うんです。ちっちゃい女の子に言われたってことが、これって第二次性徴前に経験した僕の何かをエグっているというのを思い起こさせてしまって(笑)。
スー:女の子の3、4年であれば、傾向としては、母親が言ってることを真似るので、「あ~そういう家庭で育ってるんだな」ってだけの話だと思いますよ。たぶん。個人のことと言うよりは、「なるほど、お父さんが一生懸命働いているお家の子なんだな」っていうことかと。
田中:そのとおりだと思います。ありがとうございます。
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