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2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
第15回:食品偽装問題から見る、WEBでの「五感的商品」の扱い方(全1記事)
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中山陽平氏:皆さん、こんにちは。ラウンドナップコンサルティングの中山です。
では、本日のノンスペシャリストのためのWebマーケティングラジオ、始めていきたいと思います。よろしくお願いします。
今回は、少し下火にはなりましたけれども、一時本当にお茶の間のニュースを賑わせていた「食品偽装」ですね。これに絡んだ話を少しできればと思います。あれはもちろん不祥事と言いますか、そういった類のものですので、あれそのものについて、というわけではありません。
ただ、あの騒動、つまり食品ですね。食品というものがいかにセンシティブ、非常に敏感なものなのかというのが感じられた事件だったんじゃないかなというふうに思います。
マーケティングに携わる人間としては、人があるカテゴリの商品に対してどういう感情を覚えるのか。これについてはきちんと把握しておく必要があります。
それはじゃあ具体的にはどういうことかというと、それが今回の話のメインになるんですけれども、人間が商品やサービスの良し悪しを判断する時に、一体どんなものを重視するのか。
どんなものをというのは、いわゆる定量的な情報、つまりスペックですとか、そういう、家電製品に代表されるようなものであったり。それから、交通機関のような結果というところにフォーカスされるようなもの。
ああいう商品がある一方で、そうではない、おそらくこれが商品・サービスというものの大半を占めると思うんですけれども、人間の感覚とか、主観的な気持ちとか、そういったものが大きな判断基準になる商品というもの、定性的なものが判断基準になるもの。
この2つがあるんですよね。
今回の食料品というのはまさに後者のもので、感覚的なものが非常に強い商品です。それであるがゆえに、今回は多分、加速と言いますか、周りからの「なんでそんなことしたんだ」という非難が集まったんだと思います。
今回、別にそれを擁護するわけではなくて、マーケターとしてはやっぱりそこの「なぜあれだけ盛り上がったのか」というところを押さえておいていただきたいんですよね。
それは、そういう主観的な商品だから、です。
これはコンサルでも良くお伝えするんですけれども、こういうものを「五感的商品」、五感と言うのは味覚・聴覚・視覚・嗅覚・触覚っていう人間の感覚ですね。そういった人間の感覚というものが購買判断の多くを占める商品。こういうものを「五感的商品」というふうに呼んでいます。
端的に言えば、食品あるいはオシャレ系の衣類ですね。オシャレ系じゃないものといったら機能性の衣類です。運動とかスポーツで使うものが多いですけれども。オシャレ系というのは、そういうものではなくて、いわゆるオシャレで使うような服。
それから、観光とか旅行系もそうですね。なんだかんだ言って化粧品とか、そういうものもそうですし。あとは音楽とかライブとか。そういった五感が勝負な商品というものはたくさんあります。
この「五感的商品」というのは検索すると出てこないと思います。私が勝手に名前をつけただけなので。もっといい名前がないかなと思うんですけども。とにかくこういう主観的な商品ですね。
こういう商品を扱っている方には本当に気をつけていただきたい。これは食品以外にも旅行とかファッションとか、それから音楽系とか化粧品ですね。こういったものを扱っている方はぜひ今回の騒動というものをいろいろ分析していただければと思います。
そういった五感的商品というものの難しいところは何かというところですね。それは「お客さんが主観的に判断せざると得ない」というところです。皆さんがそういう商品を扱っているのだとしたら、皆さんの商品が他の商品より優れているかどうかっていうところ証明するのってすごく大変だと思うんですよ。
「優れてる」というのは、例えば「私の扱っているこの服は、あそこの服よりオシャレだ」。こういうのは証明できないですよね。でも、そういう商品というのは、つまり全部感覚で処理されますので、1回付いた印象を弾き返すのが本当に大変なんですね。
ちょっと話ずれるんですけども、ここで質問です。
商品が2つあります。いわゆる良い商品である、服でいったら縫製ですね。縫い方とか生地とか。良い商品であるAという商品と、適当に作られた悪い商品であるBがというものがあるとします。客観的にいろいろなことを考えたら、明らかにAのほうが良い商品であると。そういうものがあると仮定します。
このAという商品とBという商品2つがあって、価格など他の条件がまったく同じであれば、普通はAを買いますよね。
じゃあ、何でこの時にAを買うのか、なんですね。これ五感的商品を扱っていてなかなか売れないという方のための1つの答えでもあるんですけれども。何で良い商品であるAのほうが売れるのか?
こういうふうに質問をさせてもらうとだいたい「それはAのほうがいい商品なんだから売れるんだろう」っていうふうに言われます。そういうふうに考える方も多いんじゃないかなと思います。
ただこれ、厳密にいうとちょっと違うんですね。その「ちょっと」が大きい。この「Aのほうが良い商品なんだから、売れるんだろう」。これを厳密にいうと、「Aのほうが良い商品だと感じたから売れた」んですね。
Aという商品の本質的な価値というのは置いておいて、お客さんがそれをいいものだと感じられたから売れたんです。良い物だと思ったから売れたんですね。
これは、例えば家電製品みたいにスペックとか判断されるものではこういうことはあまり起きないですけれども。それ以外の五感的商品、五感を駆使して判断する商品では本質的な価値というよりも、それをそういうふうに感じられたという五感の部分が大きいんですね。
細かい話あるいは言葉遊びをしているように感じるかもしれないんですけれども、ここがとても大事です。
今回の食品など場合って、変な話、味が同じであれば本質的な「味」という価値は同じなんですよね。でも、それが偽装であったりいろいろなことがあったりして、良いものだと感じられなくなってしまったことに、おそらく皆さんがっかりしているんじゃないかなと思います。
偽装だったとしても美味しかったわけじゃないですか。むしろ評価しちゃったりしますからね。つまり、「美味しさ」という本質的価値は変わってないんだけれども、あのようになってしまったことによって、良いものというふうに感じられなくなってしまった。これによって商品の価値が下がってしまった。
たぶん、もうそこの店で買ったりしないじゃないですか。そういう価値がないということなので。
だから五感的商品というのは、商品の五感的価値というのはもちろん大事なんですけれども、それを良いと感じさせられないと駄目なんですね。
商品などの通販をやっていて失敗する人は、だいたいこういうケースが多いんですよ。どういうことかというと、「うちは良い商品・素材を使ってこんなに良い商品ものを作ってるのに何で売れないんだ」って思っちゃうんですね。
でもそれは、その商品がいったいどれだけいいものを作って、どれだけ美味しくて、どれだけ信頼性のある安全なものを使っていたとしても、相手にそれが良いと思ってもらわないと意味がないわけです。
これができてないケースが多くて。そこをサボるんですね、悪い言い方をすると。「良い物を作ってるんだから売れるだろう」という昔の日本みたいな感覚になってしまうんですけども。
今はちゃんとマーケティングなり、見せ方というものを工夫するなりして、それがいいものだと「相手に伝える」という努力をしないといけません。
今回、本当にそういうところを意識していただきたいので、繰り返しになりますけれども、物というのは良いから売れるんじゃなくて、相手が良いと思ったから売れる。この差をぜひ感じていただきたいなと思います。これが、今回の「食品偽装は他人事ではない」というタイトルの趣旨ですね。
五感的商品を扱っていてなかなか売れないという方は、ぜひ写真ですとか、文章ですとか、話の持っていき方、それから良さの表現の仕方、そういったものがお客さんにとってちゃんと伝わるようなものになっているのか、というのをぜひ見てみてください。
本当にコンサルではこういう次元からお客さまの商品を見てアドバイスしたりしていますけれども、良い物を作っている人ほど結構陥りがちです。その物に対しての思い入れがあるので、無意識に、ほっといても良いものなんだから売れるんだろう、と思ってしまうんですね。
でも、その商品に対して思い入れを持っているのは「あなただけ」です。お客さんは初めて出会う商品です。だったら、説明をしなくければいけないですよね。
ぜひ、五感的商品というものを扱っている方はこういったところを注意してみていただければと思います。おそらくそれだけで大きく変わってくるんじゃないかなと思います。
ということで、食品偽装という少し前の話題ですけれども、そこから考える、いろいろなヒントというものをお伝えいたしました。ぜひともこれをお役いただければ幸いです。
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