2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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天野眞也氏:続いて、「営業の失敗の8割が◯◯◯」。これもみなさんにぜひイメージしていただきたいんですが、わかる方いらっしゃいますでしょうか? ちょっとテーブルは離れていますが、私と目が合ったそちらの方はどうでしょう?
回答者4:準備不足。
天野:準備不足。お隣の方はいかがですか。
回答者5:ちょっと出てこないですね。
天野:大丈夫です、大丈夫です。これはちょっと変化球かもしれませんが、実は営業の失敗の8割は「不戦敗」です。
サービスがちょっと足りないとか、コストが足りないとか、サービス・製品、コスト面で劣っているという回答が多いんです。これは負け方としては、まだ良い負け方です。リベンジができるからですね。
一方で、知らないタイミングで、知らない会社の知らないサービスで契約をされてしまうのが不戦敗で、これが一番苦しいんですよ。リベンジができないからです。
これを避けるためには何が大事か。タイミングを逃さないことですね。私はこれをいつもハンバーグに例えてお話ししています。「このハンバーグおいしいよ!」と言ったら、お客さまが「食べたばっかりだからいらない」となるのがcase01。食事をしたばかりの人に勧めても、お腹いっぱいだから食べないんですよ。みなさんもそうですよね。
case02は、「このハンバーグおいしいよ!」と言ったら、「お昼に食べたからいらない」となるパターン。今はお腹がへっているんだけど、お昼にハンバーグを食べて夜もハンバーグはきついですよね。直近でハンバーグを食べた人に勧めても食べない。
大事なのは、case03のこれなんですね。「このハンバーグおいしいよ!」「お腹も空いてるし、ハンバーグも好きだから食べたい!」。しかも喜んでくれる。このハンバーグを必要としているタイミングを把握していくことが重要です。
先ほど不戦敗と言いましたが、法人の場合は決算やいろんな予算申請も含めて、いつ提案したらいいのか。お腹がへっている人に持って行かない限り、基本的にスムーズに売れません。
一番問題なのはcase02の場合で、ここは努力したら売れる気がしちゃうんですよ。だから「足しげく通いました」とか「一生懸命コストを揃えました」ということが多い。
僕は、「こういう難しいお客さまをどうやって突破しますか?」と質問されたら、「突破しません」と答えます。case03を探すこと、今お腹がすいている人を探すことに注力しましょう。「営業の敗戦理由の第1位は不戦敗だから」ということになります。
整理しますと、企業の利益だけではなくて、個人のメリットもしっかり押さえましょう。そして、企業の「買う」は「投資」であることを理解して、しっかりと提案書にしたためて、お客さまに共通の認識を持ってもらう。さらに、不戦敗をなくすために、お客さまの欲しいタイミングを逃さないということになります。
この営業の大原則から考えると、これから求められる営業力=「シン・営業力」とは、お客さまの欲しがるものやタイミングを熟知して、お客さま個人のメリットを押さえつつ、「投資」という視点でご提案できるお客さまを中心にした営業が必要になるということですね。
そのためのHow、「どうやったらいいの?」ということで、3つのエッセンスをご紹介します。
1つ目は「観察眼」です。
(スライドを指して)これはバリュープロポジションというもので、お客さまのニーズです。自分たちだけが提供できて、他社には提供できない、このバリュープロポジションをしっかり明確にするということです。
みなさまの(会社の)営業の方を3人呼んで、「うちの特長を順番に言ってみろ」と言った時にばらつくようだと困りますから、これをしっかり揃えるようにしてください。
2つ目は「戦略眼」。
ターゲットに定めたお客さまが目指すゴールとペースを理解して、ここから逆算した戦略をしっかり立ててほしいんですね。
「どうやって立てるのか?」が、3つ目の「情報力」です。
ネットにある誰でも得られる情報ではなく、お客さまから情報を積み上げてほしいんです。
具体的には、組織情報、担当情報、案件情報、工程情報の4つです。もう少し細かく言うと、案件情報はお客さまの予算、工程情報はお客さまの中のバリューチェーンみたいなものですね。どうやって利益を出しているのかを顧客軸でしっかりと理解するということです。
今回は、特に重要な情報力にフォーカスして、この4つの情報をどうやって獲得したらいいかをみなさんに持ち帰っていただきたいと思います。そんなに難しいことではありません。
「お客さまの中にファンを見つけて、情報が集まる仕組みを作りましょう」ということなんですね。ファンの見つけ方がポイントです。どうやってこのファンを見つけるか。
みなさまは一定の量、お客さまのところに行きますが、名刺をもらった人だけで判断するのは危険だと思います。どうやってファンを見つけるかというと、まず会った人に「私と合いそうな人を紹介してください」と頼みます。そうすると、自分と合いそうな人を見繕ってくれるというのが1つ目。
もう1つは、お客さまと会っているうちに、「あ、この人と気が合うな」という人がいると思います。そういう方ってどちらかと言うと、向こうが選んでくれる可能性が高いんですよ。なので、合うなと思う人がいたら、その人の仲の良い上司や同期を紹介してもらってください。そうすることで確実にファンは見つかります。
その時に、ファンの方に先ほどの4つの情報をまとめて聞きます。1,000人、2,000人、1万人の大企業でも、部門ごとに区切っていくと数十名とか数百名なんですよ。
みなさんも自分の会社の部門の数十人とか、チームの数百人だったらご存じですよね。こういったものをしっかりと捕らえて、ファンを探し切っていただきたいんです。もしたまたま部長さんや役員の方がファンになってくれたら、これは大ファンになるわけですよ。お客さまとの出会いを増やしていけば、必ず良いかたちの紹介をもらえます。
特にこのDX時代にファン、大ファンを作る方法としては動画やプレゼン資料。いわゆる視覚を使ったコミュニケーションを徹底してやっていただきたいと思います。
冒頭にも少しお話ししましたが、今のようにコミュニケーションが薄めになると、お客さまの目を使わせないといけないんですね。本当は五感全部を使わせたいんですが、なかなか難しい。しゃべりだけで勝負するのはけっこう危険です。なぜかと言うと、百聞は一見にしかずです。
僕はキーエンス出身なので、ちょっとセンサーっぽく言いますと、脳に与える情報の割合は目が70〜80パーセントなんです。耳は10パーセントです。だから、視覚が大事だというところをぜひ覚えておいてください。
2つ目のポイントは、お客さまと歩む「二人三脚」スタイルです。
担当者への提案で終了するのではなく、稟議書の書き方に至るまでお客さまに伴走するスタイルが非常に重要です。
例えば、課長さんと仲良くなった時に、その課長さんが決済できないものは部長さんに上がるんですが、「じゃあ部長さんを紹介してください」と言っちゃうと、課長さんとの関係が希薄になります。課長さんと一緒に、「なんとか部長さん、役員さんに上がっていきましょう」という二人三脚スタイルが突破力の高いやり方だと思います。
3つ目は、ポートフォリオを組んだ情報発信です。
僕はよく「360度の情報発信」と言っています。今の時代は、SNS、ウェビナー、YouTube、メール、SEOとコンテンツの発信方法がいろいろと存在します。
さまざまなチャンネルで情報発信する。デジタルを駆使して、お客さまとのタッチポイントを増やすと、共感してくれる方との遭遇率が飛躍的に上がります。先ほどのファンの話もそうですね。
ここで気をつけていただきたいのが、先ほどバリュープロポジションの話もしましたが、きちんと言語化して、自分たちの良さを今一度社内でよくすり合わせてください。自社だけの特長を無理やりにでもひねり出すことです。
今の商材・サービスでずっと勝負をしないといけないわけではないんですよね。みなさんは槍の突端ですから、情報はこういった発信力のあるところに集まります。アンテナを高くしておくと、次の商材・サービスのヒントが集まってくるということです。
4つ目は、SaaSを活用したアプローチです。
今はさまざまなツールがあります。こういったものをフル活用して、攻めるべきターゲットを絞ったり、適切なアクションをとることが大事です。
刻一刻と変わっていく営業シーンですが、(スライドの)「『営業しない営業』を通じて、DX時代の営業を楽しみましょう!」と言って終わったら、ちょっともの足りないと思います。ここだけで終わらずに、本日お聞きいただいているみなさまにだけ、情報力を積み上げるメリットをあと2つお伝えしたいと思います。
情報力にはお客さまの理解、ファンとの関係づくりだけではなく、営業パーソンの可能性を広げる力があると僕は思うんですね。自社商品・サービスの開発における中心的存在を担うということです。
お客さまのことを最も知っているのは、我々なんです。だから、「今のサービスをどう変えていけばいいのか?」「今の商材をどう変えていけばいいのか?」といったところの中心的な存在になれる。これがまず、営業の可能性の1つ目だと思っています。
もう1つは、営業での経験が経営に直結するということです。
今の時代、お客さま軸で営業するということは、大げさな表現ですけど、「お客さまの事業計画を書く」に近いんですよ。お客さまの事業計画、中計(中期経営計画)、長計(長期経営計画)を理解して、自分たちのサービスがそこでどう活きるかを提案する。
こういう視座で養われるのは経営感覚だと思います。高い役職者のみなさん、役員さん、中小企業さんだと社長さんがいいと思いますが、臆せずにどんどんアプローチしていただきたいと思います。
(スライドの)「Fun to Challenge!」ということで、挑戦を楽しみながら、営業を楽しんでいただけたらと思います。また、こんなお話をYouTubeでもたくさん発信していますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。ありがとうございました。
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