2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
高下淳子氏 インタビュー(全1記事)
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――簿記はどのような人に必要なものなのでしょうか?
高下淳子氏(以下、高下):簿記とは、商品の取引など、企業における経済活動の動きを整理・記録するための手段です。そのため「簿記」というと、経理部門の人向けと思われがちなのですが、経理に限らず、簿記を理解し、会社のお金の流れがわかるようになることは社会人の基本スキルといえるのではないでしょうか。
――そもそも簿記は、いつどこで始まったのですか?
高下:1494年にイタリア・ヴェネツィアの修道士ルカ・パチョーリが、『算術、幾何、比および比例全書』(通称スムマ)にヴェネツィア式の「複式簿記」を体系的にまとめたのが、簿記が世に広まったきっかけとされています。
ルカ・パチョーリは「会計の父」とよばれ、天才レオナルド・ダ・ヴィンチも彼から数学を学んだといわれています!
当時のイタリアは胡椒や絹などの東方貿易で栄えていたので、商人は簿記をつかって帳簿をつけ、儲けを管理していたんです。言葉や商習慣、法律は国によって違いがありますが、簿記のルールは世界共通です。今に至る500年以上、変わらないルールで世界中の経済の発展を支えてきたのは、すごいことですよね。
私自身、最初に簿記を勉強したときに、ルールの普遍性や仕組みの素晴らしさに感動したことを覚えています。簿記は一生の財産となるスキルなので、「簿記を知らなくても大丈夫」という謳い文句に惑わされないでください(笑)。
――高下さんのセミナーには、どういった方が参加されているのですか?
高下:もちろん経理の方もいらっしゃるのですが、経営者の方が簿記を学び直しにこられたり、営業の方が出席されることもあります。そうしたことからも、色々な方が簿記の知識を必要とされていることがわかりますね。
1日完結型のセミナーは演習問題もあり結構スパルタではありますが、やる気をもって参加していただくと、最短距離で精通できるように組み立てています。書籍を読んで興味がわいた方は、ぜひセミナーにもいらしていただきたいです。
――実は、私も簿記の勉強に挑戦したことがあるんですが、難しいし、面白くなくて挫折してしまいました(汗)。
高下:大丈夫。そういう人はとっても多いですよ。突然、仕訳をしてといわれても、よくわかんないよ……となっちゃいますよね。
簿記の勉強に挫折してしまった人も、本書の中で紹介している「T/Bメソッド」をつかって決算書作成までの全体像を理解すると、簿記にたいするイメージが変わるかもしれません。
――「T/Bメソッド」について教えてください。
高下:T/Bとは、「Trial Balance Sheet」の略語で、一般的に「残高試算表」と呼ばれる大切な経理書類です。ただし本書のメソッドでは、すべての項目を縦1行に並べる普通の残高試算表のスタイルではなく、仕訳と簿記と決算書を同時にマスターしていただくため、左右対称の「5つの箱(資産・負債・純資産・収益・費用)」に分類します。
「5つの箱」が、仕訳の本質を理解し、仕訳から決算書が作成される流れをスムーズに習得するカギになります。「T/Bメソッド」では、仕訳をして、その結果を記録・集計する作業を経て、簿記の成果物として決算書(B/SとP/L)を作成するという一連の流れを、一気に理解していただくことができます。
仕訳や会計の達人の方は、頭の中で知らず知らずの内に、このT/Bメソッドを活用されています。
仕訳が初めてという方も、「5つの箱」のなかで「現金は左側の箱」であることを覚えることからスタートすればスムーズに理解できます。仕訳は、単に取引を記録するという作業だけではなく、経営成果を記録、集計、報告するための決算書作成に不可欠なツールです。
仕訳と簿記と決算書はつながっている、というイメージがあれば、決算書分析、キャッシュフロー経営など深いところまで理解できるのではないでしょうか。
――T/Bメソッドという言葉は、以前からあったんですか?
高下:ないです。T/Bはありましたが、メソッドとつけたのは私が最初かなと……。今回、このメソッドをみなさんにご活用いただけるよう広めたいと思いまして、書籍のカバーにも名称をのせました。
本書は入門レベルからスタートし、深いところまで一通りご理解いただけるようになっているので、全く簿記について知らない人でもこの1冊からスタートできます!
――高下さんが執筆された、前作『図解 決算書を読みこなして経営分析ができる本』(以下、『決算書』)は、累計で10万部となる大ロングセラーですよね。なぜ、ここまで読まれていると思われますか?
高下:今回の新刊と同様に、『決算書』も「T/Bメソッド」のコンセプトでスタートしています。ただ、できあがった決算書を読みましょうということではなく、「T/Bメソッド」で「仕訳と簿記と決算のつながり」を理解するという内容が読者の方に支持されたのかもしれません。
また、キャッシュフローについてもふれたので、左右の位置の重要性をイメージできる点もお役にたてたのかもしれませんね。キャッシュフローを理解するためには、やはり「T/Bメソッド」で「キャッシュは左、利益は右」というイメージが重要ですので。また連結財務諸表も取りあげていますので、決算書の基本知識をこの本でひと通り学んでいただけるのではと思います。
決算書を読み解くことができれば、数字の背景にある“人・もの・お金”の動きの理解にもつながります。経営の実態を把握する、同業者間の業績比較をする、自社の経営改善のためのヒントをつかむ……など、いろいろな局面で役に立つはずです。
――簿記は、最終的に決算書や経営分析につながるというすごいシステム、ということが、もっと広まると良いですよね。『決算書』を読んだ読者の方から何か反応はありましたか?
高下:直接はないのですが、ある方が書店さんで「決算書の読み方の本のオススメ」を聞いたら、書店員の方が私の本を薦めてくださったそうです。それを聞いて嬉しかったですね。
また、書籍をつかったセミナーで、参加者の方が「やっと理解できました」と満足して帰っていかれる姿をみるとホッとします。「後輩にも薦めたい」とおっしゃってくださる参加者の方もいらっしゃいます。
――これから簿記を勉強される読者の方へ、エールをお願いします。
高下:仕訳と簿記や決算書を、ぜひ楽しくスムーズに学ぶ、あるいは学び直していただきたいと思います。ビジネスパーソンから個人事業主まで、幅広く必要とされる知識なので、簿記はきっとみなさんの助けとなるはずです。どうぞ、挫けることなく取り組んでみてください。
また、「T/Bメソッド」で決算書作成までの流れをつかんでいただいたら、次は決算書を読むことにもチャレンジしてみてください!
私の2点の書籍、『簿記のしくみが一番やさしくわかる本』と『最新版 図解 決算書を読みこなして経営分析ができる本』が、みなさんの新たな学びの助けとなれば嬉しいです。
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