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育て方改革第2弾!若手をつぶす等級制度、若手を育てる等級制度~等級設定のポイントから育成計画策定まで~(全2記事)

若手がごろごろ辞める会社で「給料を5万円アップ」するも効果なし… 従業員のモチベーションを上げるために必要なことは何か

せっかく採用した人材が辞めてしまう。その原因は「育成計画」の曖昧さにある可能性も。株式会社PDCAの学校が主催した本イベントでは、若手育成の課題をもとに、等級設定のポイントを語りました。後編となる本記事では、社員のモチベーションアップのために効果的な取り組みについて解説します。

人事制度が従業員のモチベーションにつながらない理由

宮地尚貴氏:実際に昨日も「1on1面談」という、面談の実施の仕方についてWebセミナーを開催させていただいたんです。ただ単に面談をやればいいというわけではなく、上司の方が部下に対して、会社として設定しているキャリアプランをきちんと理解をして、自分自身が部下に対して思っている期待と同時に、いかに伝達できるのかが求められると思います。

ただ、そもそもこういうものがないと、人によって伝える事項にばらつきがあったり、そもそも伝えられていないということが挙がってくるので、部署によってレベル感が違ったり、指導、育成への取り組み姿勢もばらつきが出てくるのかなと思います。

「じゃあ、こういった制度を作ったとしてもなんで機能しないのか?」というのを紹介していきたいなと思っています。人事制度を従業員のモチベーション向上のために入れられていたり、業績アップのために入れられている企業さまが多いと思います。

多くの企業さまでは、社員の不満を解消するため、もしくは会社が主体的に作る。結局バランスを取らざるを得なく、相対評価になってしまっている。評価制度を入れたものの厳しい評価を部下に言えない。こういった事情があると、なかなか機能しづらいところもあるのかなと思います。

昨今、特にハラスメントという1つのリスクもありますので、それを恐れてしまって、本来言うべき指摘、業務指示をなかなか出せない、言いづらい、接しづらい。「こういうのを言ったら騒ぎ立てられるんじゃないか?」みたいなところで、指導上でもちょっと悪い影響をもたらしているケースも多いなと思っています。

不満をなくす=やる気が出るというわけではない

なので、ここでモチベーション理論を交えながらお伝えできればなと思っています。ハーズバーグの二要因理論というものが存在します。

特に若年層のモチベーションの源泉とは何なのかというところで、モチベーションにまつわる理論は数多く存在はしている。その中で、今の若手の傾向とそこそこマッチしている部分が、こちらの理論にはあるのではないかなと思っています。

要は、仕事の生産性につながるようなモチベーション、要素、要因と不満は一致していないという考え方。不満に感じていることをなくせば「仕事をがんばるぞ」とは、なり得ないところがあります。

具体的にどんなことなのかといいますと、まず1つは「動機づけ要因」というものがあります。動機づけ要因とは、仕事において満足を引き起こす要因。いわゆる「仕事をがんばろう」というモチベーションです。わかりやすく言うと、上司からの期待、お客さんからの感謝、簡単に言うと承認欲求がやりがいになる方々が多いです。

承認欲求は、私も含めて、どの方もある程度持っている部分はあるとは思うんですが、特に年々色濃くなっている印象があります。「認められたい」「社会の役に立ちたい」といった欲求を感じられている方が増えているなと思います。

このセミナーを視聴いただいている方も、感じられたことある方は多いんじゃないかなと思うんです。例えば、自分の上司から「ゆくゆくは管理職になってほしい」と言われるとか、社長からそういったメッセージを届けられたとか、お客さんから「○○さんだから契約したよ」みたいなこと(を言われること)が、仕事の源泉になっている。

例えば仕事をしている中で、毎日帰るのが23時、24時で、馬車馬のように働いた。すごく嫌なこともあるけど、お客さんから認められる瞬間だとか、社長、上司、社内の方々から認められる瞬間があったからがんばることができた。ですので、不満があっても何か源泉となり得るものがあればがんばることができますと。

「全社員の給料を5万円アップ」するも効果なし

じゃあ、不満になり得る衛生要因は何なのかというと、人間関係、給与・待遇、福利厚生。これが「不公平感」みたいなところです。

ちょっとイメージいただければなと思うんですが、月給が3万円上がったらどうか。けっこう大きいですね。ただ、「よし、がんばるぞ」というのがどれぐらい続くかなんですが、せいぜい1、2週間ぐらいかなと思います。3ヶ月ぐらい経過すると「もうちょっと給料が欲しいな」と、どんどん性(さが)が出てくる。

なので、給与・待遇が動機づけになり得ない。お金を動機づけの1つの要素にされている企業さまもいらっしゃるんですが、だいたい失敗されているケースが多いなと思っています。その場その場で瞬間風速は上がっていくんですが、なかなか長期的な解決策にはならない。

ですので、少々労働条件が悪かったとしても、認められる、褒められる、自己成長、このあたりがモチベーションにつながっていくところがあります。

実際にコンサルティング業務として、その会社の育成の文化を作るために、3年間ぐらい併走させていただいている企業さまもございます。5、6年前、当初はとにかく若手の退職が激しく、ごろごろ辞めてしまう。特に、3年目から5年目ぐらいの社員が辞められる。

そこでどんな施策を打ったのかというと、全社員の給料を5万円アップ。一見なかなかできない施策を行った。従業員300名に対して一律に上げるって、なかなかしづらいことではあると思うんです。かなりすばらしい取り組みだなとは思ったんですが、結果どうなったのかというと、まったく変わらなかった。

一方でコンサルティング活動で併走させていただきながら、今は解決に向かっているという企業さまもございます。

人材定着のカギを握るのは「成長実感」

そういった企業さまも見ていても感じるのが、致命的な不満は確かに解消していかないといけない部分ではあるんですが、少しの不満を解消したからといって、本人のモチベーションの源泉になれるわけではない。

なのでやはり、認められる、自己成長している、階段を上がることができているなという、成長実感が定着につながっていきます。なので、指導のシーンで上司がいかにそこを伝えられるのか(がポイントです)。

それを伝えるためには、「何をどれだけがんばればどうなれるのか」を会社として提示していて、それをもとに指導をする機会がないと、上司側も伝えることができないんじゃないかなと思っています。だからこそ給与や条件面ではなく、キャリアを見せていくための等級や育成計画の策定が、会社として今後は特に求められると思います。

「給与、インセンティブが継続的なモチベーションにつながるのか?」というと、なかなかつながらない。採用でも同じことが言えるのかなと思っています。

採用で重要なものとして、労働条件は1つ入ってくるとは思うんです。ただ、逆に業界が魅力的だとか、会社がかなり有名だと、多少労働条件が悪くても「憧れ」「この会社で働きたい」とか、認知度があるので人が集まってきます。

中小企業だとなかなかこれができないので、「家から近くて」「なんとなく」みたいな志望動機で入られる方も一定数いらっしゃる。なので、採用の中でも多少目立たせる戦略が求められるのかなと思います。

一般的にほかと比べて給与・待遇で目立つ戦略を立てる企業さまもいらっしゃるんですが、条件で争うとずっと条件競争しないといけなくなってしまうので、やはり疲弊してしまう部分も出てくるのかなと思います。

しかも条件で会社を選ばれると、次のステップで「キャリアアップだ」ということで、また条件で違うところに行ってしまう。なので、そもそも条件採用も控えたほうがいい部分ではあります。

若手社員が仕事を選ぶうえで大切にしていることは?

先ほどお見せしたように、新人・若手の上司へのニーズのところで、「いかに指示・指導・ゴール設定が的確か」と同時に、入社前は「自らの成長に期待できる会社に入りたい」と思われている方が半分以上と圧倒的に多いです。

実際に弊社も、全国各地いろんな都道府県で新人研修を開催させていただいています。「仕事を選ぶ上で何を大切にしていますか?」と、毎年毎年ご質問させていただいている中で、割合で言うと10人中7人がやりがいを求め、10人中6人、半分以上の方が自己成長を求める。「安定した環境で自己成長しながら働いていきたい」というニーズがございます。

安定=ホワイト企業というわけではなく、安定して成長ができるかどうか。自分のキャリアに対しての安定を指しているのかなと思います。

先ほど階段の図があったと思うんですが、毎年なのかもうちょっと長いペースなのかで、ゆっくりでもいいので階段を上がれている。「自分は成長している」という実感を持つことができているのか、できていないのか。これが働きがいにつながる1つの要因なのかなと思っております。

「安定した環境で自己成長しながら働きたい」を実現していくためには、合意形成、動機づけ、期待、キャリアをいかに見せていくのか。そして会社のビジョンといかに紐づけて、日々の指導の中でコミュニケーションを取っていくのかが求められるのではないかなと思います。

キャリアステップ、ビジョン、育成計画の提示が必要

なので、教育をどうするのかぜひ決めていただきたいなと思っています。「それぞれのポジションや役割を通して必要な知識は何か?」「スキルは何か?」「どんな成果を求められるのか?」「どんな責任と役割が生じるのか?」というのを、社内の方にちょっと質問してみてください。

答えられない場合は、設定プラス周知が必要になってくると思いますし、その知識やスキルを身につけるために、どんな頻度で日々の業務を振り返って次に活かしていくのか。弊社も含め、指導の中でOJTが核になっているケースも非常に多いと思います。

なので、営業であれば同行同席がどれぐらい必要なのか。自社に合うキャリアステップや等級制度を鑑みて、合いそうなOff-JT、いわゆる社外研修はどんなものなのか。

「社内で行う勉強会では何を伝えるべきなんだろう?」とか、どんな業務経験があるとその人のノウハウになっていくのか。社内的な人事面談や定期面談は、どのぐらいの間隔、頻度でやるべきなのか。評価の面談はどのぐらいの間隔でやるのか。

自己啓発、自己学習の促進、推進はどのようなアプローチで行っていくのか。「これを勉強しろ」という投げかけだと、自己学習、自己啓発にならないところがあるので、どうやって「よし、これを学んでいくぞ」と仕向けていくのか。そのためには、キャリアステップ、ビジョン、育成計画の提示が必要になってくるかなと思っています。

失敗の要因ではなく「成功パターン」からヒントを見つける

実際に弊社でも新人が入った時は、年間の育成計画を立てています。振り返りは日報で、日にちベースでやっていく。OJT・同行同席。特に同行同席は、最初の半年間は必ず4日間分はやっていく。Off-JT、社外研修をどんな頻度でやっていくのか。まず4月は1日、プラス弊社のフォローアップ研修は10月を予定しています。

社内の勉強会は何をしていくのか。最初は業務フローがメインになっていて、あとは過去のクレームの対応履歴だとか、お客さんの事例から見る1つの成功パターンは何なのか。

弊社の考え方で言うと、失敗の要因はけっこう無限大にある。なので、成功パターンから解決策や本人の業務で成功していくための道筋を見いだしていこうということで、成功パターンからひもといていくことが多かったりします。

あとは経験として、弊社のお客さまは製造、建設業界、医療、IT系の企業さまが圧倒的に多いです。なので最初の1年間は、特に関わる機会が多い製造業界の企業さまを、月次の中で必ず1案件から2案件は担当できるように、こちら側で割り振っていったりだとか。

面談は週に1回、月曜日に15分と決めて時間設定してやっていく。評価面談で言うと、こちらも月次でやっていて、月初に必ず30分間行っていく。

育成スケジュールの事例

自己啓発のところで、こちら側から推奨本を用意はしているんですが、それと同時に先ほどお伝えしたキャリアステップも用意しているので、「なんでこれが必要なのか」という解説文もあったりします。これは読んでも読まなくても評価には関係はないんですが、こういった自己啓発の参考が入っていたりします。

あとは、例えば「2024年4月に入社すると、こんなスケジュール感で動いていきますよ」というように、日ごとに分かれていたりもします。今はどんどんスケジュールを作っているところで、多少流動的になってくる部分もあるのですが、弊社のスケジュールが出来上がってきているようなかたちです。

キャリアマップ、キャリアステップ、等級から、こういった育成計画まで落とし込むことが求められると思います。これをやっている理由としましては、弊社の社名にあるように、いかに業務上でのPDCAを最速で回していくのか。

この1ヶ月の中で1回しか業務改善していない、自分の業務を振り返って整理していない人と、毎週毎週振り返って整理している方だと、後者のほうが伸びるスピード、ノウハウが溜まっていくスピードは圧倒的に高いと思います。なので、それを促進させる1つの型として、こういった施策を社内でも実施をしています。

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