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日本のENTREPRENEURSHIPや社会の将来(全3記事)

経沢香保子「17年間、広報担当を雇ったことがない」 それでもメディアに取り上げられる秘訣は?

日本で起業家を増やすために作るべきエコシステムとはなにか? アジア最大級のスタートアップ向けのカンファレンス「Tech in Asia TOKYO2017」で、「日本のENTREPRENEURSHIPや社会の将来」というセッションが行われました。しかし、登壇者ら4名が話し合った結果、セッションテーマは本番ギリギリでピポット(方向転換)。参加者らによる質疑応答を中心としたセッションへ変更されました。多くの起業家、またはその卵が集まったセッションで寄せられた質問とは? また、起業家と投資家、メディアの立場にある登壇者らが考える、日本のスタートアップ・システムに必要なものとはなんでしょうか?

メディアの人は売り込みされるのが嫌

経沢香保子氏(以下、経沢):私、しゃべってもいいですか? 私は26歳で起業してもう17年やっているんですけど、広報担当の人を雇ったことないんですよ。

古田大輔氏(以下、古田):自分が広報?

経沢:というか……でも取材はすごく多い方だと思います。メディアの人に聞くと「広報に売り込みされるとけっこう嫌だ」と言うんですよ。

古田:ああ……。

経沢:書きたくなるようなネタを提供してくれれば、その中から選ぶ。「いきなりデート」ってネーミングが面白いから、例えば婚活と結びつければ、記事ネタになると思うんですけど。

私がやってよかったなと思うのは、もちろん自分発信もそうなんですけど、例えばうちのキッズラインだったら待機児童問題とくっつけるとか、不承諾通知がきた人は買い取ってあげるとか、時代に乗せるとうまくいったような気がします。

……例えば今だったら、小池(百合子)さんが使っているといったら記事になりそうじゃないですか(笑)。小池さんがオーダーしているスーツ屋さんですとか。時代に乗るネタを作って送ると、けっこう取材依頼がくると思うんです。

古田:それは本当に勝ちパターンのやり方で、本来は記者側がやる仕事をやってくれてるんですよね。

経沢:うん、データを作って。

古田:データを作って、なにかの社会的な事象と絡めて「だからこれいいですよね」と。「いきなりデート」だとちょっと難しいですけど、最近の若い子はぜんぜんデートもしなくて、誰かと接する……恋人と接する場所がない、知り合う場所がない。そんなデータと一緒に提示してきたら「あ、それ書きやすい」みたいな。

経沢:あと「1回目のデートで結婚した人が何割」などのデータがあったら、取材したいなって。

古田:そうそう。あったら書きやすいですよね。

自らスポンサーになりコンテンツを作る

朝倉祐介氏(以下、朝倉):プレスリリースってよく読んでいるんですか? 編集部の方は。

古田:編集部の人間は読んでます。プレスリリースから面白い記事を作り上げるのが得意な人間もいるし、僕はどっちかといったら苦手だったんですけど。

あと2つめのポイントでいうと、スポンサーになってコンテンツを作ってもらうという手もあります。単純なんですけどね。

田中章雄氏(以下、田中):(笑)。

経沢:営業営業(笑)。

古田:スポンサードのコンテンツのなにが優れているのかというと、FacebookやTwitterを使ってパーソナライズができるんですよね。ターゲッティングできるじゃないですか。だから、今そのアプリを誰に使ってほしいのか。東京都内の18歳から34歳の男女でやるとか言ってもらったら、「はい、わかりました」とターゲッティングができる。

それは、スポンサードのコンテンツならではパワーなので、もし本当にそれを考えるのであれば、そういうやり方が近道ではある。

田中:そういう上流を狙うとしたら、僕がスタートアップをやってて、日本のメディア編集者の人たちのようなプロフィールをFacebookで選択して、その人たちにターゲットする記事を書けばいいんですかね? そうすると勝手に、BuzzFeedの編集者の人たちのタイムラインに毎日流れるみたいな(笑)。

古田:それは新しいやり方ですね(笑)。やっている人はいるのかもしれない、もしかしたら。

スタートアップと広告でどう関わるか

田中:もう1つぐらい質問いきます。今日3つ目のトピックを提供していただける方がいたら挙手を……あ、こちらマイクお願いします。手を挙げたままお願いします。あ、2人いらっしゃいます? じゃ僕の方がよく見えないんで、選んでください。

質問者3:どうも、こんにちは。

田中:こんにちは。

質問者3:私はグロースハックの代行サービスを主にやっています。私は社内で生成している自社メディアの担当であったり、あとは他のtoB系のサービスを提供していたり、依頼があった際に広告代理を担当しています。

弊社がベンチャー企業ということもあって、スタートアップの会社さんから、例えばフィード広告を代行してほしいなど、先ほど出ていたようなスポンサーの広告を打てないといった質問があったりするんです。

最近よくあるのが、そもそもスタートアップのサービスとして今まで市場になかったものであったり、類似性が……「これってもうすでにあるよね」みたいなものだったりするときに、どういった提案をしていったらいいのかというところで悩んでたり。

あとはフィード広告を回している際に、BuzzFeedさんでも以前取り上げられていたかと思うんですが、信頼性の問題であったり、そういった部分でどういったつきあい方をしていけばいいのか。広告でどうやってスタートアップの企業さんと関わっていけばいいのかなというところで悩んでいて。なにか助言をいただけたらすごくありがたいです。

「お客さん」を選びましょう

田中:難しい質問ですね。僕は、質問のポイントを100パーセント理解してない。もし理解できていたらそのままいっちゃってください(笑)。

古田:はい(笑)。じゃ、これも素早く2つ。

1つは、嘘をつかないことと法律などを破らないこと。だからステマ……ステルスマーケティングは絶対にやらない。これは本当に、信頼性の担保のために非常に重要ですよね。

2つ目にですね、ヨッピーさんという有名なライターの方とよくお付き合いさせてもらっているんですけれども。スポンサードを書くのもうまいヨッピーさんに「いいスポンサードのコンテンツを書く一番のコツってなんですかね?」と聞いたんです。ただひと言で「それはね、プロダクトがいいものだ」って(笑)。

(一同笑)

経沢:そうなんですよね!

古田:だから、プロダクトがよくないと、スポンサードのコンテンツはいいものをなかなか作れない。

田中:中身ありきってことですか(笑)。

経沢:難しいんですよ。でも、だからこそ依頼がくるわけじゃないですか。PR会社をやってるときもそうですけど、商品にもっと差別性があれば、たぶん私に頼んでこないよなー、みたいなのが多いんですよ。

(一同笑)

無理やり「社員で面白い人いないんですか」「社長の趣味はなんですか」など、とにかく周辺で。例えば会社で運動会をやっていたり、「この会社に入ると留学できる」というものがあったり、そういう組織軸とかいろいろ……。

田中:本質的じゃないところに(笑)。

経沢:そうかもしれない、でもなにか露出しないとはじまらない。そんなときは、まず著名人に使ってもらうというのが意外と近道だったりするなと私は思いました。

古田:それなりにいいんだけれども、要はそれをちゃんと使ってもらえそうな人にリーチしてないことはけっこうあるので。そこさえターゲッティングがきっちりできれば、うまくいくのかなという気はします。

朝倉:結論は「お客さん」を選びましょうという話ですね。

(一同笑)

経沢:かっこいい(笑)。お客さんが選べるようにいい会社にすればいいんですね。

1,000人ぐらいの人と友達になる

田中:じゃあ時間もなくなってきたので、最後に無理やりまとめに入ろうと思うんですけど。

今日、やはり若い世代の起業家あるいは経済界の人たちがすごく多い中で、こちらにいる先輩方からなにかひと言お願いします。今日ここに来て、これから帰る前にやるべきことがなにかあったら、1つアドバイスいただければと思います。

これからまだイベント……夜のパーティまであるのかな? その間、こういう場所に来ている人たちがやるべきことみたいなものがあったら。心得ですね。

どっちからいこうか。じゃあ経沢さん。得意なジャンルだと思います(笑)。

経沢:私ですか。まず1つは、やっぱり起業して成功しようと思ったら、自分が「この人みたいになりたい」という人に引っつくことが成功の秘訣だと思うんで、メンターを見つける。

田中:メンターをつかまえる。

経沢:そうです。私だったら三木谷(浩史)さんや藤田(晋)さんなど、もうとにかく「この人になりたい」という人を見つける。もう、憑依するぐらいがんばってみる。そういうのは1つあるじゃないですか。株主になってもらって、絶対にリターンで返すという作戦をとるとかもありますよね。

あともう1つは、これはじげんの平尾(丈)さんとかがやってたんですけど、1,000人ぐらいの人と友達になる。

田中:1,000人?

経沢:平尾さんはたしか大学生のときに、1,000人ぐらいの社長にインタビューに行ったんでしたっけ、正確な情報じゃなかったらすみません。

せっかく今日はこれだけ起業やビジネスに関わる人がいるので、変な人だなと思われてもいいから、いっぱい名刺交換したりLINE交換をしたり、少しでも接触してアピールを。

今日、自己紹介した人は勇者だと思うんですよね。勇者じゃないですか。たぶん、彼らの周りにこのあと名刺交換とかがいくはずです。次のカンファレンスで質問するのもありだと思うので、やっぱりアピールしなきゃ。恥ずかしいけど(なにもしなければ)始まらないということで、恥を捨てる。

田中:ありがとうございます。

人間は失敗しても馬刺しになることはない

田中:じゃ古田さん、ちょっと短めでお願いします(笑)。

古田:挨拶をするって素晴らしいことだと思うんですけど、挨拶だけしてその後ぜんぜん連絡してこない人はいっぱいいるんですよね。挨拶も、「本当に楽しかったです~」……。それだけですか。みたいな人がけっこういます。

挨拶するときに「私があなたとつながりたいと思ったのは、こういう理由で、こういうことを聞きたい」みたいなことを、そこで少しでも話す。そのあともちゃんと折に触れ、なんらかのアクションをすることが、本当の人脈作りになるんだろうなと思います。

田中:ありがとうございます。じゃ、最後に朝倉さん、お願いします。

朝倉:私はもともと、最初のキャリアが競馬の騎手だったんですね。競走馬って勝てないと肉になっちゃうんですよ。ドッグフードとか。

一方で、人間は失敗しても馬刺しになることはないので。

経沢:確かに。

朝倉:失敗しても馬刺しにはならない。ノーリスクですから。そんな感じで、なんでもリスクをとっていけばいいと思います。

田中:はい。みなさんも馬刺しにはならないということを肝に銘じて、どんどんリスクをとっていただければと思います。

こんなかたちでこのセッション、言いたい放題のセッションでした。どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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