2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
スペシャル対談 永里優季×玉乃淳(全1記事)
リンクをコピー
記事をブックマーク
玉乃淳氏(以下、玉乃):今日はよろしくお願いします。これまで、あまり直接関わることはなかったですけれど、小さい頃からヴェルディで、同じグランドで育った者同士、今日は最高に楽しみにしておりました。
永里優季氏(以下、永里):よろしくお願いします。
玉乃:今ちょうどオフシーズンで、ふだんはドイツ在住ですよね。冷静に考えたらすごいことですよね、フランクフルトに住んでいるって。
永里:何がすごいかはよくわからないですけれど、海外が今は好きなので、向こうでずっとチャレンジしていたいという気持ちはあります。
玉乃:こんなに急激に女子サッカーが盛り上がったのって2011年のドイツでのワールドカップ優勝ですよね? 僕はそのときにカナダに住んでいましたが、向こうでもすごい盛り上がりでした。当然日本では爆発的ななでしこブームになっていたみたいで。
永里:自分たちが変わったというより、周りが劇的に変わったっていうだけで、環境自体に大きな変化はないです。ただ周りの期待度や注目度は、明らかに優勝してから変わりましたよね。
玉乃:優勝する前のなでしこリーグもプロとしての活動だったのでしょうか?
永里:プロ選手っていうのは各チームに3、4人でした。そのほかはプロではなかったです。今は外国籍の選手もおり、スポンサードしてくれる企業さんも増えていますので、サッカーに集中できる環境に少しずつですが近づいていると思います。
玉乃:あのワールドカップの優勝フィーバーがなければ、いまだにテレビの露出もほとんどない状況だったかもしれないと思うのですが。
なんと言ってもワールドカップ優勝ですから。何が起こっていきなりそうなったのでしょうか? 優勝って当たり前ながらマグレではできるものではないと思いますので。
永里:私が思うに、そのとき、東日本大震災があって、やっぱり「日本のために」っていう思いが強くて、「勝とう!」ではなくて、「絶対に負けない!」っていう精神がすごい強く働きました。
玉乃:優勝後もその強さはキープされていますよね。急に大会前の感じに戻ってしまうってことはなかったですから。あの大会で急にチームとして覚醒したようなイメージを持っています。
永里:一度勝ってしまったので、自分たちもそれなりのプレッシャーや責任感は大会前より格段に持つようになりましたし、それによって自分たちもレベルアップして絶対に勝たなくてはいけないっていう意識が、前よりも上がったからそこまで大敗するっていうようなことがなくなったのかなっていうのは感じます。そこから海外にチャレンジする選手も増えていきましたし。
玉乃:大会前から海外にいたのは永里さんと安藤(梢)選手でしたね。それはどういったきっかけで行ったのでしょうか? まだ日本の女子サッカーが世界から注目される前だったのにも関わらず。
永里:私の場合は、北京オリンピックが終わってから、「このまま国内リーグでやっていても、これ以上自分自身成長できないのではないか?」と危機感がありまして。
それで、ヨーロッパに行きたいってなったときに、ドイツがリーグとして安定しているし、レベルも高かったので、自分で自分自身のプレーを編集して、いくつかチームに送って、興味を持ってくれたところに練習参加して、契約したという感じです。
それまで日本のサッカーは、そこまで強くなかったですので、自分で切り開くしかなかったんです。
玉乃:坂本龍子じゃないですか!
永里:これは……笑っていいんですか?
(会場笑)
玉乃:なんですか、そのバイタリティは?
永里:とにかく行きたかったんですよ、海外に。北京オリンピック準決勝でアメリカに負けて、三位決定戦でドイツに負けたんですよ。そのとき日本は初めて世界大会で上位に食い込むところまでいったのですが。アメリカとドイツに違いを感じたんですよ。
それは日本の国内リーグでは感じられなかったことなので、「これは海外に行くしかない!」と思ったんです。
玉乃:アメリカとドイツはほとんど全員がプロ契約なんですよね?
永里:はい。ドイツは25万人に対し、日本は4万人ぐらいですかね、女子のサッカー人口は。ドイツのブンデスリーガで上位対決になると5、6千人は普通に入りますし、平均して2、3千人は必ず入ります。歴史が長いですからね。
玉乃:日本は急にその「歴史」が縮まった「ふう」の状態だったのですかね?
永里:優勝は注目されるいいきっかけになりましたし、それによって女子サッカー選手を目指したいという子供も増えたと思いますし、本当に大きな出来事でした。
一方で優勝したとはいえ、まだまだ環境が整っているわけではありませんから、これからも一歩一歩成長していかなければなりません。
玉乃:海外での生活は男子のサッカー選手と一緒で、1日2時間チームの練習があって、あとの時間はフリーという感じでしょうか?
永里:そこはちょっと違って、ドイツでも完全なプロの選手と、そうではない選手もいます。給料だけでは生活できない選手は働いていたりしています。
学校に通っている選手もいます。セカンドキャリアを考えている選手がものすごく多くて。サッカーをやりながら自分は何を目指すっていうのを持っている選手は多いですね。かといって、サッカーに対して手を抜くわけじゃないと。
玉乃:具体的には引退後に何を目指している選手が多いのでしょうか?
永里:サッカーの指導者とか、トレーナーとか、スポーツに関わる仕事の人が多いですね。あとは特殊な人では弁護士目指している人とか。やはり資格を取り、専門的な分野に行きたいと考える人は多いと思います。
玉乃:永里さんは名門チェルシーに所属された経験もあり、海外でトップを目指すという大きな夢があることを知っている数少ない選手の1人だと思いますが、若い選手に伝えたいことはありますか?
永里:女子サッカーも、もっと若いうち、20代前半から海外に出てもいいのかなと思うこともありますね。プロ選手としての稼ぎも違いますし、日本では味わえない勝負の世界も体験できますし。失敗したら帰ってくればいいだけですので。
玉乃:大学生の年代にあたる女性が、普通に考えて海外に行ってプロとして厳しい環境の中でサッカーできるとは思えないですけれどね。
永里:実力的には申し分ない子もたくさんいますよ。海外でやれるだけの。技術力は向こうの選手より高いですし、いくらでも勝負できると思いますね。話を聞いていると、生活に不安があったり……。玉乃:普通ですよ、それ。永里さんが異常なんですよ。
永里:えー(笑)。
玉乃:18、19歳くらいで、「海外で勝負してくる!」って娘が言い出したら、号泣しますね、僕なら。絶対に一緒についていく……。
永里:ははははは。でも私22歳で海外に出ていますからね、ウキウキで。でもやっぱり壁にはぶち当たりました。所属チームがドイツでも優勝するようなチーム、チャンピオンズリーグにも出るようなチーム、ドイツ代表ばかりみたいなチームのなかでポジション争いしなければならない。
最初1年半はなかなかスタートから出場できなくて、ドイツのサッカーはすごく1対1を重視するサッカーで、自分が日本で培ったサッカー感は全部捨てなくていけなかったのです。
それに時間がかかって、認められるまでにすごい時間がかかりました。ボールの飛距離もスプリントのスピードも向こうと同じレベルを求められますから。おかげでさらに練習するようになりましたし、動きもダイナミックになっていったし、環境がそうさせてくれました。
結局のところ海外に行かないと身につかないと行って体感しました。「習うより、慣れろ」ってことだと感じることができました。あと、人間関係や、アジア人への偏見のところも慣れるまで大変でしたね。
玉乃:具体的な海外での待遇面も教えていただけますか?
永里:家も車も貸してくれましたし、語学学校にも通わせてくれました。すべて給料以外で。ステップアップしてトップクラスになれば夢もまた広がります。アメリカだったら1億円プレーヤーも存在しますし、アメリカでは子供たちにとってスーパースターなんですよ。
ヨーロッパでもお金持ちのクラブだと3000、4000万円を稼いでいる選手もいますから。条件面でも夢は間違いなくあります。
玉乃:向こうの選手はセアカンドキャリアに対しての意識が強いとおっしゃっていましたけど、永里さんは何か考えていますか?
永里:できるだけ長く続けて現役をやりたいと思っています。年齢的にも少し考えなくてはいけないかなとは思うのですが、現時点では見えてこないというか、けれど日本に帰ってきているときはいろいろな業種の人に会うようにして、いろんな話を聞いて、自分が持っている世界観をなるべく広げられるように取り組んでいます。
玉乃:無責任なことを言いますが、永里さんも、ドイツの選手も人気があってある種日本でもドイツでもスターじゃないですか? 「好きなことをできるだけやって、お金持ちの旦那さんを見つけて結婚する」ではいけないものなのでしょうか? 無礼を承知でうかがいますが。
永里:結局ですね、結婚をゴールにしてしまうと続かないのですね。せっかくここまでのキャリアを積み重ねてきて、結婚して終わり。
そうであれば「今までのキャリアはなんだったんだ」ってなりますし、自分自身もその経験を活かして日本のためだったり、貢献できることもあると思うので。
そのために現役中に少し模索しないといけないかなと思っています。自分だけの人生じゃないって最近感じていますので。
まだまだ歴史が浅いですし、引退後に夢があるかと言えば、まだまだな部分があると思います。辞めた後でも「こういう道があるよ」って示したいのですよね。
「頑張ってサッカーを続けていたら、こんなに楽しいことができるよ」ってことを伝えたいのですよね。
玉乃:「市議会議員になりました!」とか、「漫画の原作者になりました!」とか。
永里:ははは。そうそう。前例を作る人間だと思っているので、自分は。
玉乃:常に第一人者だから見られ続けるでしょうしね、永里さんの人生は。プレッシャーをかけるわけではないですけど。
永里:より困難な道を選んでいきたいと思っています。やっぱり苦労しなきゃダメですね。誰もやったことのないような道に進んで。
まずは東京五輪を目指します。東京五輪までは海外でプレーしていると思います。ぜひフランクフルトにも遊びに来てくださいね。
玉乃:こんな生ぬるい人生を歩んでいる僕で恐縮ではありますが、絶対遊びに行かせてください。オフシーズンの貴重な時間本当にありがとうございました。
【永里優季(ながさと・ゆうき)プロフィール】1987年7月15日生まれ神奈川県厚木市出身の現役女子プロサッカー選手。ドイツブンデスリーガの1.FFCフランクフルトに所属。なでしこJAPANのエースとしても活躍。
関連タグ:
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには