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破壊的イノベーションはどこから生まれるのか ~未来推定&既存アセットを生かした新規事業の作り方~(全3記事)

企業も産業も短命化する中でビジネスの未来を予測するコツ 数兆円企業の未来推定に見る、ビジネスで長生きする秘訣

データによる技術分析や未来予測などを提供するアスタミューゼ株式会社。「破壊的イノベーションはどこから生まれるのか」をテーマとしたセミナーに、同社社長の永井歩氏が登壇。新規事業の創出に取り組むビジネスパーソンに向けて、ビジネスやテクノロジーの未来を推定するカギを語りました。

なぜ未来予測は難しいのか?

永井歩氏:今日のメインテーマは「イノベーションはどこから起きるのか」ということで、「未来の推定」について丁寧にお話しさせていただければと思います。

なぜ「未来予測/把握」は重要で難しいのか。私たちは18年間未来予測やイノベーションに取り組む中で未来予測の難しさを散々感じてきました。

それはなぜか。やはり「今の延長線上に未来があってほしい」という思いがあるから。今があって、今の延長線上にいくつかのパターンを作って、「どれがくるだろう」とシナリオを描きますが、実際はまったく違う方向から突然違う未来がやってくる。それが今の未来の延長線を壊すことがよくあります。

さらに未来を推定、分析するためにいろいろな分野の知見を考えていくのですが、複雑で膨大にいろいろな産業が成熟している今の時代では、人間が未来を全部把握するのは、量としてかなり難しい。

じゃあ機械でやるのか。各ジャンルごとにまったく違う言語体系や専門の認識があり、テキストマイニング的なアプローチだけで未来を予測するのもなかなか難しいです。

今、産業の寿命はどんどん短くなっていますし、企業の寿命も11年ぐらいです。企業も産業も、あらゆるものが突然死や変革する中で、今日参加いただいている方もより危機感を持って、未来予測やイノベーションに取り組んでいらっしゃるのではないかと思います。

ビジネスやテクノロジーの未来を推定するカギ

今までの延長線上じゃないところで、新しいイノベーションが生まれる。今の延長線上や今のシナリオの分岐ではわからない、まったく違う萌芽をいかに予測するかが重要です。

そこで私たちが注目するのが「お金と人の流れ」です。

お金と人の流れだけを見ればいいということではなく、必要十分条件の中にまず人とお金の流れを見る。その上でビジネスモデルやテクノロジーが、実際にできるかどうかを当てはめていくのが一番重要だと思っています。

テクノロジーやビジネスのロードマップを描いた時に、お金や人の流れを否定するような結論では、絶対にその未来は来ないな、と。全体から見ると微細な動きや個人の動きに対しても、どうお金がついているかを含めて確認することが重要だと思っています。つまりイノベーター企業、イノベーター個人の活動が重要です。

私たちは数兆円企業さまの未来推定や長期計画のお手伝いもたくさんやらせていただいていて、その中で特定テーマで世界の50人のイノベーター全員を、追いかけて分析することを今一緒にやっています。

例えば数千億の会社さまは、業界のリーディングカンパニーの数兆円の会社さまを意識してやっている。一方で数兆円の会社さまは大学やベンチャー企業、個人の動きを追いかけている。こんな逆転の現象が起きています。大きな企業が世の中を動かしているように見えるんですが、実態は大きな企業さまは本当に細かい個人やキープレイヤー、イノベーター個人を追いかけていると。

それぐらい一人ひとりがエンパワーメントされて、ネットワーク上で大きな影響を持つ時代に今は入っています。けっして「規模が小さいから」「個人だから」ということでばかにできない状況です。

「What(何が起こるか)」の未来予測が一番簡単

未来を分解すると、どんな未来が起こり得るかだけではなく、いつ起こり得るかもマッピングされていきます。そしてそれはどういう経緯で実現されていくのか。未来を実現するためのプレイヤーが、ネットワーク上で、どういう立ち位置で誰とつながっているかが重要になります。

どんな未来がいつ、どう起こり得るのか。それを予測する中で「What」、何が起こるかは一番簡単なんですよね。未来推定やイノベーションに関わられている方は、たくさんの記事や本などを読まれているかと思います。

するといろいろな未来の萌芽があって「確かにそういう未来がくるかもしれない」と、イーロン・マスクも言っているかもしれないと(笑)。ただそれが本当にいつ頃くるのかがわからないと、なかなか採用できないと思うんですね。

いかに「いつ頃起こり得るか」の「When」を精度良く当てるのか。答えを申し上げてしまうと、いつ頃起こり得るのかも、お金の関数だと私たちは思っています。これは日々変化していて量子コンピューターがそうだったんですが、お金のつき方が毎年増え続けると、どんどん前倒しされます。

お金と人の関数である以上、現時点で予測して「10年後も適用できるか」ではないんです。お金の流れが倍になれば、前倒しされることも含めた時間予測をしていかなくちゃいけない。それには今のプレイヤー、既存の延長線上で見ないで、今後起こり得るネットワークを見たり、今あるいろいろなジャンルとの新結合をとらえる必要があります。

未来推定の進め方

先ほどお示ししたように、時間軸の予測の中ではいろいろなデータを使って集計していきます。

例えばメタバースやモビリティの低炭素化という、比較的わかりやすくまったく違うテーマを2つ取り上げて、今日はサンプルでお見せできればと思います。

私たちは「メタバースやモビリティの低炭素化」というテーマで、具体的に「こういう世界で、こういう課題に対する未来を把握したい」というご相談をいただきます。そこに対して「どんな市場、どんな製品、どんな技術があるのか」を整理した上で未来推定に入ります。

この「どんな市場、どんな製品、どんな技術」。価値と言ってもいいんですが、そういったものを整理していくことは、実際にそれぞれのテーマが何を指し示しているかをブレイクダウンする作業でもあります。

ここ(スライド)に書いている言葉は、技術的な言葉もあれば、価値やプロセスを指す言葉もありますが、まずこれらを各テーマごとに定義することで、どんな世の中になっていくのかを推理する母集団を作ることができます。

私たちの分析の手法は「どんな未来が」「いつ頃」「どういうかたちで」となっています。「どういう未来がいつ起こり得るか」が基本で、そこに「どう起こり得るか」がプラスの付加情報として出てくる。

(スライドの)ここには「細々とクラスタリングをするんだ」「マッピングをするんだ」「統計的にお金の流れを取るんだ」「ネットワーク上の変遷を見るんだ」と書いてありますが、これを全部解説すると時間が足りないので、ご興味のある方は資料をご確認いただければと思います。

例えばメタバースというテーマにキーワードを定義して、先ほどのプロセスで分析すると、こういう変化がデータから出てきます。

それを束ねると「取引形態と環境の変化が起こり得るな」「広告やメディアに対してすごく影響があるな」などがわかります。メタバースと「関係があるのかな?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、「医療や保険がけっこう変化するんじゃないか」なども抽出されてきます。

先ほどの「When」じゃないですが、どういう時間軸で1個1個が起こり得るかがマッピングされます。

さらになぜこんなことが言えるのかというと、「こういうプレイヤーがこういうことをして、こういうことを今やってるんだよ」「こういう特許を出したんだよ」と出てきます。

例えば「米国でこういうテーマに対して、こういう研究予算がついて、こんなアプローチをしている人がいる。こういったことが実現可能になる可能性があるよ」だったり。

同じようにモビリティの低炭素化に関しても、たくさんの未来のモジュール、ブロックが出てきた中で、「1つずつだとこう」で、「クラスター化するとこういうシナリオになる」。

さらに、どういう時間軸の中で実現されていくのかを見ていくことができます。

「お金の流れ」を見ることでわかること

何が起こり得るかは、まあまあ想定できる範囲だなと。当然情報収集されている方であればまったく知らないというよりは、「聞いたことがあるな」「想像ができるな」ということかもしれません。

ただこれが実際いつ頃なのかになると、急にわからなくなる。でも実際にお金の流れを見ていくと「現時点でこれぐらいの期間なのかな」「こういうプレイヤーがやっているなら、そこにもうお金が集まっている。そこに投資している方はこれぐらいの期間で回収できると見込んでいるんだな」という推定ができます。

さらにどのように萌芽が起こり得るか。細かいネットワークやマッピングの分析ではなく、イノベーターがさまざまな領域とどのようにつながっているのかを分析することで、より解像度が高く「誰とつき合えばそれに関われるか」「自社がどう戦略的に価値を出していくのか」を検討できます。

今申し上げたような、どんな未来がいつ起こり得るか。どのように自社が関わっていくのか。そして誰が実現していくのか。私たちは18年前にこういったことができたらいいなと創業しました。実際にずっとそれらをデータとして構築してきましたが、昔に比べてだいぶ解像度が上がっています。

一方で、最終的に未来を実現するためには、ある程度「自分たちで実現するんだ」という覚悟を持ってやっていく。推定することも大事ですが、それ以上に覚悟が重要になります。それをどう一緒にやっていくのか。1人でやるのは難しいので、誰とやるのか。ぜひとも私たちにご支援させていただき、いろいろな企業さまの未来推定、長期計画のお役に立てればと思います。

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