2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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「ニッポンの「学ぶ力」を変えていく。」をミッションとする一般社団法人21世紀学び研究所が主催した『ダイアローグ』出版記念セミナーに、著者の熊平美香氏とサンリオエンターテイメント代表の小巻亜矢氏が登壇。小巻氏が自己対話で気づいた「3つの判断基準」などが語られました。 本記事は、2023年8月23日に開催された講演の書き起こしになります。
久保田博氏(以下、久保田):具体的に対話のテクニックとして、何か大事なことがあったりするんでしょうか?
小巻亜矢氏(以下、小巻):テクニック的には、関係性がある程度できれば、たまたま会った場で、本当に2分でも5分でも深い対話はできるんですけれど。最初の頃はやはり「これは対話する場だよ」という場所と空間を確保した上で、でも相手が構えちゃうと思うので、「怖くないよ」という。
別にここで評価するわけでもないし、ただもっと知り合う、より良いコミュニケーションをするための5分や15分だよと最初に宣言する。心理的安全性ですよね。自分も初心者だから「対話がうまく進められるかわからないけれども、付き合ってみてよ」といった感じで。
「対話してあげますよ」「話聞いてやるよ」というのではなく、「お互いに対話の場を作りませんか?」という気持ちで取り組むといいかなと思います。難しいですよね。
熊平美香氏(以下、熊平):久保田さんは何かやっていますか?
久保田:うちの会社でも1on1をやっているんですけど、すごく難しいなと思うのは、対話の相手が直属の上司やリーダー、評価権限を持っている方だとすると、その方も人間なんで、どうしても区切るのは難しいと思うんですね。そういう関係性って何か影響があったりするんでしょうか?
小巻:なくはないし、それはしょうがないですよ。どう考えたって社長なので。さっきの「小巻さん、小巻さん」という関係になりますけど、比較的男性のほうが、上司という壁や距離を乗り越えるのに時間がかかると思うんですけれど、でもそれはしょうがない。
それがあるからといって「自分はダメな上司だ」と思う必要もなく、それを前提として、「15分後にもうちょっと壁が低くなっていたら合格」でいいと思うし。「評価じゃないよ。これは業務のキャリア面談じゃないよ」と言っても、相手はそう受け取らないと思うんですよね。
小巻:やはり評価されるんじゃないか、自分の次のキャリアに影響するんじゃないかと思うかもしれないんですけれど、評価とかに関係しないようにというのは会社側が配慮することであって。貴重な15分という時間の中でそれをクドクド宣言して「大丈夫だから言ってごらん」と言っても、相手がそのインパクトをどう受け止めるかまではコントロールできないので。
「こちら側としてはそういうのはまったくありませんよ。この対話をもってお互いより良く知り合って、何かお互いの成長になったらいいねということのための15分だよ」と。それは自分に対しても言い聞かせているんですよね。
やってみると、もちろん業務の話に及ぶこともたくさんあるんですけど、それはそれとしてということに、こちら側もだんだん慣れてくるんですよね。
例えば、テーマパークではみんないろんな要望があるんですよ。現場の環境がもっとこうだったらいいとか、こういうものを一人ひとり持っていたいとか、もうちょっと人を増やしてほしいだとか。
クレーム的なことじゃないんですけど、「今、どう?」と聞き始める時に「ちょっと大変で」とか、「休憩取れてる? 休みの日何してる?」といった話の中で、見えてくることってやはりあるんです。
それを聞いたからといって、もちろんできることはちゃんとしたルートで手を入れるんですけど、「ここの場で聞いたことを全部小巻さんが叶えてくれる」ということも違うよと最初に伝えるんですね。
上司として評価もしないけど、ここで話したことを、私が魔法の杖でタラランと叶えてあげられるわけでもないから、そこは雑談として受け止めてねって。最初の場の作り方のところで、テクニックとしてはそれを大切にしています。
「とはいっても」というところは、ある程度はしょうがない。それを繰り返すことで信頼関係が生まれて、どこかで相手が「やってよかったね」と思ってくれたらいいのかなと思います。
熊平:相手が乗っかってこなくても、あわさっていく位置は決まっていますよね、という感じがするんですよね。世の中的に多くの上司はそうじゃなくて、上司の立つ位置がそもそもずれていることも多いかなと思いました。
小巻:熊平さんの活動が大事ですよね。
熊平:がんばりたいと思います。
熊平:対話は組織を変革する上でも、人を育てる上でもとても大事なことだと思いますが、小巻さんが自己内省、自己対話にご興味を持たれたところのお話をうかがってもよろしいですか?
小巻:はい。私は本当にそれができていない真逆の人だったので、コーチングの学びの初日から一緒だった人が今日なぜかそこに座られててびっくりしたんですけど。
熊平:(笑)。
小巻:私のそうじゃなかった姿を知っている人が(笑)。
熊平:(笑)。
小巻:本当に初日ですよね。自己対話とか、コーチングとして相手の可能性を信じるとかがまったくできていなかったので、聞かれることが怖くて、何かを聞かれても答えが出てこないんですよね。忘れもしない最初の問い「人生で実現したいことは何ですか?」。
何かを聞かれて「なんて答えればいいんでしょう、私」というところでしたが、みんなけっこう答えているんですよ。私は本当に自分の答えが出てこなくて。
コーチングっていろんな角度からいろんな質問を投げかけて、例えば傾聴の手法的なこともトレーニングするんですけど、そこから3年半学び続けている中で、一番したのが自己対話だったんですよね。
人生で実現したいこと何か。「あ、答えられないんだ、私」とか、「そんなこと考えたことなかった」とかですね。「自分の人生って考えていいの?」というような。
母親だったり奥さんだったり、がむしゃらに仕事をやっていたりする中で、自己対話をしたことがなかったんですね。そんなことを繰り返す中で、深い自分の価値観ってなんだろうとか、自分のゆるぎない、いろんな判断基準がわかった時の感激ですよね。
小巻:幼い頃、私は親に「正しいか正しくないかを考えなさい」と言われて育ったので、判断基準は世の中の出来事に対しても、何でも「正しい・正しくない」で決めていたんです。でも、正しいかじゃなくて「楽しい・楽しくない」で決めている人もたくさんいて、すごく素敵だなと思ったんですね。
ですので、そんな中で自分の価値観を見つけながら、私は何かに挑戦している時が自分らしいとか、何かに感謝できている時がすごく自分が穏やかで幸せとわかったんです。それから自分は嘘くささがすごく鼻につく人だと思っています。要は、嘘くさい生き方を、自分は自分で潔しとしない人なんだとわかったので。
私の判断基準は「挑戦しているかどうか」「感謝できているかどうか」「本気かどうか」の3つ。「あなたは誰ですか?」と聞かれた時に、「小巻亜矢です」「それは名前ですよね」「私は2人の男の子のお母さんです」「それはあなたの役割ですよね」と、「あなたは誰ですか?」という問いをどんどん聞き続けていった時に価値観のようなものと出会って。
その経験があるので、自己対話というか、自分の心の声を見て見ぬふりをするのではなく、正直に捉えています。例えばネガティブな感情。何かを言われてムカついているとか、本当に殺したいほど憎々しい気持ちが生まれたとか、もう放り投げたいとか、怠けたいとか、そういうネガティブな感情すらも、自分にとって宝なんだと気づいたんです。
そういう感情があるからこそ次に進めたり、自分を休めることができたり、自分を客観的に見ることができたりするので、あらゆることを俯瞰、リフレクションした時に、次の扉が見えてくることを教わったんですよね。
そういう意味で自己対話をもっと深く勉強したくなった。あとは方法と、世の中にどんな研究があるかを知りたくて、大学院に行くというチャレンジを「するの? しないの?」と自分に聞いた時に「今でしょ」という答えが聞こえました(笑)。
熊平:ありがとうございます。それが3年くらい前の出来事ですか?
小巻:そうですね。自分がいる意味がありがたいって、よく言うよねって感じですけど(笑)。「私、これができてありがとう」という感じになれたんですよ。50歳ちょっと前に、初めて本当に涙が出そうでした。
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